艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 日は6号館G-42a「GROUND-Zero」様のスペースか、4号館あ-05b「一本杭」様のスペースにて売り子をしていますので、お気軽にお越しくださいませっ!



 それでは出発です!
……と思ったら、色々と大変なことばかりが起きてしまいました。
それでもなんとか舞鶴に到着したんですけど、着いて早々とんでもないことが……?


その5「ブチッ……と鳴ったんです」

 

「ふぅ……。やっと着いたぜ……」

 

「ほんまに……、疲れたわ……」

 

「へ、へとへと……です……」

 

 ユーたちが出発してから、半日くらいが経った後。

 

 見たこともない景色の中に、佐世保と同じような感じの建物が並んでいるのが見えました。いくつかはレンガ造りのようなモノもありますけど、それ以外は似ている気がします。

 

 空は真っ赤な夕焼けで、ユーたち3人はフラフラです。

 

 それもこれも、佐世保から舞鶴に来る際に、色々あったんですけど……。

 

 

 

 

 

「ウチの艦載機が敵を発見っ! 前方にイ級2艦……、余裕やねっ!」

 

 後ろに続いていたユーは龍驤お姉さんの声を聞いて、急いで潜水を開始します。

 

「そのまま遠距離から爆撃しちまえっ!」

 

「言われんでもやって……って、外してもうたっ!」

 

「ちょっ、し、仕方がねぇ! あたしが砲撃で……、外したっ!?」

 

 ぶくぶく……。これでお姉さんたちが敵を倒してくれるまで待てば安心です……って、上からなにか……?

 

「はぁああん! いっぱい落ちてきました……っ!」

 

 水中でいっぱい爆発が起きていて、すっごく……危ないです!

 

「か、回避だ回避っ! あたしらの後方に早く逃げろっ!」

 

 ユーは急いで後ろに下がって、当たらないように頑張ります。

 

「第二波爆撃機っ! はよう頼むでっ!」

 

「でえぇぇい! 摩耶様の攻撃、喰らえーーーっ!」

 

 ……とまぁ、こんな感じで初めての戦闘を経験したり、

 

 

 

 

 

「……なんか、お腹空かないか?」

 

 太陽が頭の上にあるくらいになると、摩耶お姉さんがお腹を押さえながら話しかけてきました。

 

「時間は……、もう昼やね。予定より随分遅れてるから、このまま航行しながら食べるしかなさそうやね」

 

 確かにユーも、お腹の辺りからぐぅぐぅと音が鳴っています。

 

 そろそろなにか、食べたいんですけど……。

 

「ちっ、しゃあねぇか。非常食は……持ってたっけな?」

 

「あっ、そう言えば、ウチは持ってきてへんわ」

 

「げげっ。あたしも忘れてるみたいだぜ……」

 

 お姉さんたちはガックリと肩を落としてへこんでいました。

 

 でもユーはちゃんと準備をしてきていますから、お姉さんたちにも分けてあげようと話しかけます。

 

「ユー、お菓子なら少しは持っています……けど……」

 

「ほ、ほんまかっ!? 悪いんやけど、ちょっとだけ分けてくれへん?」

 

「良いですよ……って、あれ……?」

 

 防水仕様のポシェットからチョコレートや飴玉を取り出そうと手を伸ばしたんですけど、なんだか変な感じがしました。

 

 嫌な予感がしながらよく見てみると、ポシェットの端っこが破れていて、中身が全部なくなっていました……。

 

「あうぅ……。さっきの戦いで、どこかにいっちゃったみたいです……」

 

「がーーーん!」

 

「ま、マジかよ……」

 

 2人のお姉さんはショックで大きく膝をつき……って、ここは海の上ですから、危ないですよ……?

 

「うわぁっ、危なっ!」

 

「こんなところでへこんでたら、完全に沈んでまうやんっ!」

 

 慌てたお姉さんたちは体勢を元に戻し、額の汗をぬぐいながら「ふぅー……」と息を吐きました。

 

 ……とまぁ、そんなこんなで、色々あったんです。色々。

 

 

 

 

 

 そして話は戻るんですけど、ユーたち3人は埠頭に上がって艤装を外し終えました。

 

 慣れない航行に潜水と疲れましたけど、この国にくる方がもっと大変だったので、ユーはまだまだ大丈夫です。

 

 首をコキコキと鳴らしながらストレッチをしているお姉さんたちの顔も、いつも通りに戻っていました。

 

「とりあえず到着したんだし、まずは挨拶に行った方が良いよな?」

 

「せやね。安西提督から、ここの元帥に頼ればええって聞いたけど……」

 

 龍驤お姉さんはそう言いながら、埠頭の上からキョロキョロと辺りを見渡します。

 

「とりあえずレンガ造りの建物やと聞いてるし、そっちの方へ行ってみよか」

 

「そうだな。後はその辺にいるヤツに聞けば分かるだろ」

 

 お姉さんたちはスタスタと歩きだしたので、ユーもその後に続きました。

 

 埠頭から建物がいっぱいある方へ進むと、ちらほらと人影も見えるようになりました。

 

「……あれって、誰だ?」

 

「うちの鎮守府に所属する艦娘じゃないよな……?」

 

「でも、あのちっちゃい娘、すっごく可愛くないか?」

 

「もしかして幼稚園に入る為に、護衛してきたんじゃないかな?」

 

「おぉ……。また天使たちが増えるのか……」

 

 いつの間にか人の数が増え、ユーの姿を物珍しそうに見てきます。ちょっと恥ずかしくなってきたので、摩耶お姉さんの後ろに隠れようとしたんですけど……、

 

「ほらほら、見世物とちゃうねんから、あんまりジロジロ見んといてーな」

 

 龍驤お姉さんはそう言って、周りにいる人たちを追い払おうと手を振っていました。

 

 見た目はユーと同じでちっちゃいですけど、とっても頼りになるお姉さんです。

 

 ただ、残念なのは……、

 

「……なんだあれ。あのちっこい娘の見た目は悪くないけど、言葉使いがおばさん臭いな」

 

「バリバリの関西弁だけど、いったいどこからきたんだろ……?」

 

「いや、でもイントネーションが微妙に変じゃなかった?」

 

「まさかのエセ疑惑とかっ!?」

 

 ……と、こんな感じでヒソヒソ話が過熱しちゃっていますけど、耳を澄ませなくても聞こえちゃうくらいの音量なんです……よね。

 

「~~~~~~っ!」

 

 もちろんその話は龍驤お姉さんにも聞こえているようで、両手の拳を握りながら、ワナワナと肩が震えて……。

 

「ウチのことをまな板って呼んだ奴はどこのどいつやっ!」

 

 見事にキレちゃったんですよね……。

 

「ちょっ、龍驤! 言ってない! 誰もそんなことは言ってないぜっ!?」

 

「そんなことあるかいっ! 今のは明らかに言うとったわ!」

 

 摩耶お姉さんが龍驤お姉さんを抑えようと羽交い絞めにしますが、収まらないどころか更に暴れ出そうとするみたいで、

 

「心の中で確実に叫んどったわーーーっ!」

 

 真っ赤な涙を号泣しながら、今にも艦載機を発艦させようという風に見えました。

 

「お、おいおい……。これってちょっとヤバくないか?」

 

「いやでも、このタイプは今までになかったよな?」

 

「まな板か……。確かに言い得ているかもしれないよね」

 

「むしろエセ関西弁にフラットな胸部装甲……。マニアック属性としては最強……、いや、最凶だよねー」

 

 

 

 ブチンッ。

 

 

 

「「「……あっ」」」

 

 作業員服を着た男性の一言が聞こえた瞬間、明らかになにかが切れるような音が鳴り、一斉に龍驤お姉さんの方へ視線が向けられました。

 

 ピタリと身動き一つしないその姿に、ユーはゴクリと唾を飲み込みます。

 

 ……これは、非常に危ない……気がしますよね?

 

「りゅ、龍驤……。お、落ちつけ。落ちつくんだ……」

 

 羽交い絞めをしたままの摩耶お姉さんが声をかけますが、その表情は明らかに怯えた色で青く染まり、小刻みに身体を震わせているように見えました。

 

 反比例するように、龍驤お姉さんの顔はどんどんと真っ赤になっていって……、

 

「全員この場でしばき倒したるっっっ!」

 

 そう叫んだ瞬間、身体の大きさに似合わず摩耶お姉さんの腕を力任せに振りほどき、飛行甲板の巻物を広げて艦載機を発艦させちゃいました。

 

 その数なんと、55機。

 

 まさかの全艦出撃です……。

 

「龍驤っ! 止めろ! 止めろって!」

 

「五月蠅いわっ! こいつら全員まとめて、病院送りにしたるねんっ!」

 

 摩耶お姉さんは慌てて止めようと両手を伸ばしますが、龍驤お姉さんはその手を振り払って艦載機に指示を送っていました。

 

「ひえぇぇぇっ! お助けーーーっ!」

 

 周りにいた人たちはビックリした顔で散開し、我先にへと逃げ出します。だけどそんな中、龍驤お姉さんを完全に怒らせてしまった男性が近づいてきて……って、なにを考えているんでしょうか?

 

「ちょっとストップ」

 

「ああ”っ!?」

 

 男性は急に真面目な顔を浮かべて話しかけましたけど、龍驤お姉さんは……凄い顔になっちゃっています。

 

 まるで漫画に出てくる高校生くらいの……、その、マイクチェックみたいな……?

 

 さすがにこれは、描画禁止だと思います……。

 

「なんやねんっ! さっさと喋らんと爆撃するでぇっ!」

 

「だ、ダメだって龍驤っ!」

 

 大きく叫ぶ摩耶お姉さんですけど、有無を言わさず爆撃しないだけマシだと思うのは、ユーの気のせいでしょうか……。

 

 もしかして、龍驤お姉さんって意外に冷静だったり……?

 

 いや……、でも、佐世保ならともかく、遠足にきている舞鶴で問題を起こしちゃったら、やっぱりマズイですよね……。

 

「いやぁー。まさか幼女が艦載機を発艦できるとは思わなくてさー」

 

「「………………は?」」

 

 男性がそう話した瞬間、龍驤お姉さんも摩耶お姉さんも大きく目を見開いたまま固まっちゃいました。

 

「俺もちょっとばかり言い過ぎた感があるから謝るよ。本音を言えばオシオキが欲しいけど、問題を起こすのも具合が悪いでしょ?」

 

「お、お前……、今言ったことの意味……、分かってんのか……?」

 

 ガタガタと身体を震わせた摩耶お姉さんが問いかけますが、男性は首を傾げて「なんで?」と言わんばかりの表情を浮かべていました。

 

「えっと、だから俺、謝ったんだけど……」

 

「……全艦、前方の目標物に急降下爆撃開始」

 

 龍驤お姉さんの腕が小さく振り払われ、上空に飛んでいた艦載機が急上昇を開始しました。

 

「ま、待てっ! このままじゃあたしらも……」

 

「これって……、オシオキの予感……っ!」

 

「ここは今からソロモン海やぁっ!」

 

「嘘ーーーっ!?」

 

 摩耶お姉さんの悲鳴があがるのと、艦載機から爆弾が落とされたのは同じタイミングだったと思うんですけど……、

 

「危ないと思うので、ユーは離れますね……」

 

 ユーは少し離れた場所にいたので、難を逃れる為に建物の影に隠れることにしたんですよね。

 

「止めろ! 止めてくれぇぇぇっ!」

 

「ひゃっはーーーっ! 新鮮なオシオキだぜぇっ!」

 

 逃げまどう摩耶お姉さんに、喜んだ顔で立ち尽くす男性の姿。

 

 そして、悪鬼羅刹のような顔の龍驤お姉さんが、脳裏に焼き付いちゃいました……。

 

 

 

 これってやっぱり、口は災いの元……ですけど、どうして男性は喜んでいるんでしょうか……?

 




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次回予告

 龍驤お姉さんの大暴走によって、ユーたちはある場所へ連れて行かれました。
それは、舞鶴鎮守府で一番偉い人の部屋なんですけれど……。


 艦娘幼稚園 第二部 スピンオフシリーズ
 ~ユー編~ その6「元帥さんと、秘書艦さん」


 乞うご期待!

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