艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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次回予告

 なにやら4人で先生の話をしているみたいですけど、ユーは1人さみしくお留守番……?

 なので、ちょっとだけ楽しもうと思ったんです……。


その3「おいしいです」

 

 少し離れた場所で龍驤お姉さんと摩耶お姉さん、それにイクさんとゴーヤさんが、ごにょごにょと内緒話をしています。

 

 ユーは完全に除け者になっちゃってますけど、静かにジュースを飲みながらみんなの様子を伺っていました。

 

「そんで……、先生の話なんやけど……?」

 

「ついでに噂についても教えてくれよな……」

 

「問題ないでちけど、ゴーヤたちが喋ったってことは言わないで欲しいでち」

 

「下手にばれちゃうと、裏番長がオシオキにきちゃうのね……」

 

「分かった。それはちゃんと守るさかい、ちゃっちゃと教えてーな」

 

 4人のお姉さんたちが内緒話をしているのって、なんだかちょっと面白いです。

 

 ただ、残念なことに、お姉さんたちの声が徐々に小さくなってしまい、これ以上の話は分からなかったです。

 

 小さい子には聞かせない方が良いとか言っていましたけど、ユーにはまだ早いんでしょうか……?

 

 仕方ないのでユーは食堂のカウンターの方へ行って、ケーキのセットを注文することにしました。

 

 

 

 

 

 それからしばらく経った後、4人のお姉さんたちの輪が解かれて、座っていた席へと戻ってきました。

 

「ユー、お待たせ……って、なんやこれっ!?」

 

「もぐもぐ……。美味しいです」

 

 最後の一口を放り込んでから紅茶を一飲みして、龍驤さんに頷いてから答えます。

 

「ユー、待っている間に食べちゃいました」

 

「そ、それは見て分かるけど、お皿の数が半端ないでぇっ!」

 

「なかなか話が終わらなかったので、いっぱい食べちゃいました」

 

 何度か話しかけても返事がなかったので帰ろうかとも思ったんですけど、しおいって人の話を聞きたかったので我慢してました。

 

 ですから、いっぱいケーキを食べるくらい良いですよね?

 

「あ、あのさ……。それの勘定ってどうしたんだ……?」

 

「ユーはお金を持ってないので、ツケときました」

 

「……い、いやいや。さすがに幼稚園児にツケはきかないよな……?」

 

 恐る恐る問いかけてくる摩耶さんですけど、言われた通り、食堂のおばちゃんはダメって言っていました。

 

 ですからユーは、こうやって一言追加したんです。

 

「龍驤お姉さんを待っている時間が暇だから、ダメですか? って言いました」

 

「な、なん……やて……っ!?」

 

 いきなり龍驤お姉さんの顔が青ざめると、一目散に食堂のカウンターの方へと走って行きます。

 

「ちょっ、それはないでぇっ! 堪忍してぇなっ!」

 

 そして龍驤お姉さんの大きな悲鳴が食堂内に響き渡りました。

 

「あ、あの、摩耶お姉さん……。ユーは、悪いことをしちゃったですか……?」

 

「あー、いや。まぁ、仕方ないんじゃないかな……」

 

 ユーの問いかけに摩耶お姉さんは、頬を掻きながら曖昧な表情を浮かべていました。

 

「小さい子を放っておくと、大変なことになるでち……」

 

「まさに因果応報なのねー」

 

 ゴーヤさんとイクさんは、我関せずといった風に笑っています。

 

 ちょうど良い機会なので、ユーはしおいという人について聞いてみることにしました。

 

「あ、あの……、ユーも質問良いですか?」

 

「なんなのねー?」

 

「しおい……って人のことと、あと……ユーの国に行った潜水艦のお話も聞きたいです」

 

「しおいとハチのことでちか……。しおいについては話せるでちけど、ハチの話は直接聞いた方が分かり易いかも……でち」

 

「確かに、詳しい話ってあんまり聞いてなかった気がするのねー」

 

「そう……なんですか……」

 

 色々とお話を聞きたかっただけに、残念です……と思っていたんですけど、

 

「もし良かったら、イクたちと一緒に舞鶴にきてみたらどうなのね?」

 

「……え?」

 

 イクさんが提案してきたことに驚いて、ユーは固まってしまいました。

 

「それは妙案でち……けど、さすがに小さい子を連れていくのには許可が大変そうでち」

 

「聞いてみないと分からないのねー」

 

「それはそうでちけど……」

 

 ゴーヤさんはそう言いながら腕を組んで考え込み、イクさんはニコニコと笑顔を浮かべています。

 

 ユーが舞鶴という所に行くなんて考えもしませんでしたけど、興味があるのも事実です。

 

 潜水艦のお姉さんたちがいっぱい居るところを見てみたいですし、お話もいっぱいしてみたいです。

 

 それに舞鶴の幼稚園がどんな感じなのかも気になりますから、できるならばイクさんとゴーヤさんと一緒に行けないでしょうか。

 

「はぁ……、散々やったで、まったく……」

 

 すると龍驤さんが小さなお財布を上下逆さまにしながら、落ち込んだ顔で戻ってきました。

 

「今月はピンチって感じを通り越して、極貧生活の始まりやで……」

 

「ま、まぁ……なんだ。こういうときもあるからさ……」

 

「……同情するなら、銭を寄こしてくれへん?」

 

「それは無理だ。なぜならあたしも今月はピンチだからな……」

 

 そう言って、摩耶お姉さんも財布を逆さまにして振っていました。

 

 お姉さんたちも、大変なことってあるんですね……。

 

 

 

 

 

 それからイクさんの提案ができるかどうかを龍驤お姉さんと摩耶お姉さんに話してから、安西提督に会いに行くことになりました。

 

 そして、安西提督の執務室にやってきたんですけど……。

 

「ふむぅ……。ユーくんを舞鶴にですか……」

 

「せやねん。後学の為に潜水艦が多い舞鶴で経験をさせるのも良いと思うし、向こうの幼稚園とも交流できるやろ?」

 

「しかし佐世保から舞鶴となると、危険も伴うことに……」

 

「別に海路を使わんでも移動する方法はいくつでもあるし、その辺りはウチに考えがあるから任しといてくれへんかな?」

 

「……ということは、龍驤が同伴するのですか?」

 

「できれば摩耶も一緒にと思ってるんやけど、かまへんやろか?」

 

「うぅむ……」

 

 ペラペラと喋る龍驤さんの話を聞いて、安西提督は頭を捻っていました。

 

「一応スケジュールも確認してあるんやけど、明日以降のウチと摩耶はそんなに忙しくないねんよ」

 

「そ、そうそう。だから、ユーとあたしらの勉強も兼ねて、ちょっとだけ遠征って感じで……だめかな?」

 

 続けて摩耶さんも安西提督を説得します。

 

 ユーの為にここまでしてくれるなんて凄く良いお姉さんなんだ……と思いますけど、それ以上に必死さが見え隠れしている気がします。

 

 龍驤お姉さんも摩耶お姉さんも、舞鶴に行って誰かのお話を聞きたいんでしょうか?

 

「確かにスケジュール上は問題なさそうですね……。龍驤の言うことも分かりますし、舞鶴には摩耶の姉も居ることですから……」

 

「そ、そうだよな! 久しぶりに姉貴たちに会いたいぜっ!」

 

 摩耶お姉さんは叫びながら、ガッツポーズのように拳を振り上げます。

 

 でも、表情が慌てていたのは、気のせいじゃないですよね?

 

「分かりました。ここ最近、休みもあまり取れていなかったと思いますから、ゆっくりしてきても構いませんよ」

 

「ほ、ほんまっ!?」

 

「やったぜっ! さすがは安西提督だなっ!」

 

 龍驤お驤姉さんと摩耶お姉さんはその場でジャンプをしながら喜び合い、両手を繋いでいました。

 

「ですが、あくまで今回はユーくんを舞鶴に連れていくということで宜しいですね?」

 

「それはもちろんやでっ!」

 

「なら構いません。一応余裕を持って明日から3日間を与えますので、怪我がないように気をつけて行って下さい」

 

「サンキューな、提督っ!」

 

「いえいえ。とりあえず必要経費は今日中に会計に申請し、幼稚園の方にも連絡をしておくようにお願いしますよ」

 

「了解。後はこの龍驤に任せといたら完璧やっ!」

 

 龍驤お姉さんは自慢気に言いながら胸をドンと叩きましたけど、その後盛大にむせていました。

 

 摩耶お姉さんならクッションがあるから大丈夫かもしれませんけど……仕方ないですよね?

 

 さすがは、独特なシルエット……ですって。

 

 

 

 

 

 それから龍驤お姉さんに明日の準備をするように言われたので、ユーは寮に戻って荷物をまとめることにしました。

 

 すると部屋の入口にある扉が開いて、誰かが中に入ってきました。

 

「あれ? どこかにお出かけするの?」

 

 どうやらお出かけしていたプリンツが帰ってきたみたいなんですけど、ユーの姿を見るなり不思議そうな顔で問いかけてきます。

 

「明日から3日間、舞鶴の方へお出かけしてきます」

 

「……えっ! そ、それってどういうことっ!?」

 

「ユー、潜水艦のお姉さんたちのお話を聞いてくることになったんです」

 

「ぜ、全然分からないんだけどっ!」

 

「詳しくは摩耶お姉さんから先生にお話しをしてくれますから、大丈夫です」

 

「だからなんでいきなりそういうことになってるのっ!?」

 

 慌てふためくプリンツに説明する為、ユーは荷物をまとめながら今日のことを話し始めました。

 

 どうやらプリンツは、ユーが舞鶴まで家出をするみたいなことを考えていたみたいで、ビックリしたそうです。

 

 確かに言われてみれば荷物をまとめていましたけど、明日から3日間って言いましたから、分かると思ったんですけど……。

 

 でも、ユーがプリンツの立場だったら、同じようにビックリするかもしれません。

 

「そっか……。それじゃあ、暫くはユーが居ないんだね……」

 

「寂しい……ですか?」

 

「えっ、いや、別に寂しくはないよっ!」

 

「……そうですか」

 

「あっ、その、ユーのことがどうでも良いと思っている訳じゃなくって!」

 

 ユーは落ち込んだように肩を落としてみると、プリンツは慌ててフォローをしてくれました。

 

 何だかんだと言ってもプリンツは色々と面倒を見てくれたり、優しくしてくれたりするので大好きです。

 

 だから、ユーは少しの間プリンツと離れるのが寂しいですけど、それを言っちゃうと舞鶴に行くのが辛くなっちゃうので言わないことにしました。

 

 それに、同じくらい舞鶴にいる潜水艦のお姉さんに会って話をするのが楽しみですから。

 

 ユーも少しは成長したんですし、そろそろ1人でなんでもできるようにならないといけませんよね。

 

 ……舞鶴に行くのは、龍驤お姉さんと摩耶お姉さんも一緒ですけど。

 

 それでも、準備くらいはちゃんとできますから。

 

「き、気をつけて行ってくるようにね」

 

「お姉さんたちも一緒ですから、大丈夫です」

 

「そうだね。でも、過信はしないようにね」

 

「Danke。ありがとです」

 

 ユーはニッコリ微笑んでプリンツに頷きます。

 

 プリンツも同じように頷き返してくれた後、荷物のチェックを手伝ってくれました。

 

 1人でできると言いたいところですけど、やっぱり嬉しいですよ……ね。

 





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次回予告

 しっかり寝たユーは早起きをして、待ち合わせの場所に向かったんですが……。

 あれ、なんだか変じゃないですか……?

 艦娘幼稚園 第二部 スピンオフシリーズ
 ~ユー編~ その4「先生が悪党に染まってきた水夫のような感じに見えるんですけど……」


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