こ、こんにちわ……。
ドイツ海軍所属、潜水艦U-511です。
今回はユーのお話だそうですけど……、ちょっとどころか、大冒険が待っていたんです。
は、恥ずかしいですけど……、聞いてくれますよね……?
その1「お姉さんたちが……、いっぱい……居ます」
こんにちわ。
ドイツ海軍所属、潜水艦U-511です。
みんなからはユーって呼んでもらって、とても嬉しいです。
……ん?
今回はユーのお話……ですか?
べ、別に構わないけど……。
でも、どうしてユーのことを聞きたいのかな……?
もしかして、分かっていて言っているとか……?
………………。
こ、こういうときって、どう言えば良いんだったかな……。
え、えっと……、確か……、
が、がんばるー、がるるーっ!
………………。
……あれ、違った……ですか?
◆ ◆ ◆
今日は幼稚園がお休みの日。
お友達のレーベやマックスはお出かけしているみたいで、どこにも見当たらなかったんです。
仕方なく朝食を取ろうと食堂にやってきて、1人で美味しいごはんを食べていたんです。
プリンツも最近、先生にベッタリみたいな感じですし……、ユー、仕方ないから1人でゴロゴロしていようかなって思っていたんですけど……、
「へー、舞鶴の方から潜水艦がきてんのかー」
「そうみたいやで。なんでも、結構長い遠征の帰りに立ち寄ったみたいやわ」
「ふーん……。それ自体は珍しいことじゃないとはいえ、ここの鎮守府に潜水艦はいないからなぁ」
「そやね。佐世保は砲撃戦を重視することが多いさかい、潜水艦が配属されることは……って、1人居ったな」
そんな話をしながらユーの方を見てきたお姉さんたちは、ニッコリと笑いながら隣の席にやってきました。
「よっ、元気にしてっか?」
「あっ、え、ええっと、オハヨウゴザイマス」
「ちゃんと挨拶できるんやね。えらいえらい」
2人のうち、ユーと変わらないくらい小さな身体をしたお姉さんが、ポケットから飴玉を取り出してユーにくれました。
「Danke。あ、違った……、ありがとう」
「ええでええで。欲しかったら気軽に言うてや」
パタパタと手を振るお姉さんにお礼を言って飴玉を受け取り、ご飯の後に食べようと大事にポケットに仕舞いました。
「えっと、確か名前はU-511……だっけな?」
もう1人のお姉さんが、頬をポリポリと掻きながらユーに話しかけてきました。
なんだかその仕草が先生と似ているみたいで、少し面白いなぁって思います。
「あ、はい。みんなからは、ユーって呼ばれています」
「ほんなら、うちらもそう呼んでもかまへんかな?」
「はい。大丈夫……です」
ユーがコクリと頷くと、2人のお姉さんは安心したのかホッとした顔を浮かべていました。
知り合いが増えて、ユーはとっても嬉しいです。
でも2人のお姉さんは、いったいユーに何の用事があるんでしょう……?
「ところでユー。さっきあたしらが話していたことなんだけど、気になったりしてないか?」
「舞鶴から、潜水艦がきているって……言ってたですよね……?」
「そうそう、そないやねんけど、ユーはまだ会ったことがあらへんやろ?」
「はい……。ユーはまだこの国にきて、潜水艦の方に会ったことが……ありません」
「せやったら、一度会ってみたらええんとちゃうかなって……思ったんやけど……」
小さいほうのお姉さんがそう言いながら、ユーの顔色を伺うようにチラチラと見てきました。
今日はお休みですし、予定もないですけど……。
それに、この国の潜水艦ってどんな方なのか気になりますし……。
そんなことを考えているうちに色んな興味がわいてきて、ユーはお姉さんたちにコクリと頷いていました。
「よっしゃ。それじゃあ朝食が終わったら、行ってみよか」
「は、はい。お願いします」
そんなこんなで、ユーの休日は色んなお姉さんに会って話をする……という感じになりました。
これが、ユーの未来を大きく変えるだなんて、思っていなかったけれど……、
でも、とっても良かったと思っていますし、後悔はしていません。
食堂を出たユーは2人のお姉さんに連れられて、幼稚園よりもさらに海の方にある建物にやってきました。
ここには入渠施設や整備室など、お姉さんたちがいっぱい居るところらしく、今まで見たことのない方を見かけました。
みんなユーのことを見つけると、笑いながら頭を撫でてくれたり、小さなお姉さんのようにお菓子をくれたりしたので、ユーはとっても嬉しかったです。
おかげでポケットがいっぱいになっちゃって、少し歩き難かったですけど……。
寮に帰ったら、レーベたちと一緒に食べようかなって思います。
「ユー、着いたで」
先導していた小さなお姉さんが、ユーに話しかけながら上の方を指さしました。
そこには白いプレートに『ドッグ』と書かれていて、入口には大きめの布が上からぶら下がっていました。
後で聞いたところによると、これは暖簾……っていうやつみたいです。
勢いよく払いながら中に入るのが通だとか、蹴飛ばされた先にあると布なのに跳ね返るとか、なんだかよく分からないモノみたい……。
でも、ときどき風でヒラヒラと揺らめいているのが、なんだか面白いなぁって思います。
「今、舞鶴からきている潜水艦は、ここで修復を行っているみたいなんだが……」
「噂をすればなんとやら……みたいやね」
お姉さんたちがそう言うと、暖簾が大きく揺らめくと同時に2人の人影が見えました。
「ふぅー。ここのドッグも、気持ち良かったのね」
「舞鶴とはちょっと違う感じがしたけど、やっぱりゴーヤは温泉が良いでち」
「あれは修復ができないけど、疲労は抜けるのねー」
ドッグの中から出てきた2人を見た瞬間、ユーを連れてきてくれたお姉さんが言っていた舞鶴からきている潜水艦であるとすぐに分かりました。
明らかに他のお姉さんとは違って、特徴のある水着のようなのを着ていました。
なんだか凄く動きやすそうだけど、イク……って胸に書いてある方の潜水艦は、水着以外なにも着ていないみたいです。
大きくなったらユーもあんな風になるんでしょうか……?
………………。
恥ずかしいですけど、が、がんばります……。
………………。
あと、胸部装甲が羨ましいです。ユーも欲しいです。
「えっと、イクたちになにか用なのね?」
「違うでち。ドッグの順番待ちをしていたと思うでち」
「あっ、なるほどなのね。お待たせしちゃってごめんなのねー」
潜水艦の2人はそう言いながらお辞儀をしたところで、小さい方のお姉さんが首を振りながら話しかけました。
「いやいや、違うねん。ちょっと2人に話をしたいと思ってなー」
「ゴーヤたちにでちか?」
「そうなんだよ。実はうちの鎮守府に潜水艦はこの子しか居なくてだな……」
そう言って、大きい方のお姉さんがユーを指差したんですけど、何だか顔が少し恥ずかしそうに見えるのはなぜなんでしょう?
なんだかユーを目の前にいる潜水艦の2人に会わせてくれるという以外に、なにか考えがあるような気がするんですけど……。
もしかして、ユーをだしに使われた……ってことでしょうか……?
………………。
でも、別にそれはそれで構わない気もします。ユーも舞鶴からきた潜水艦の2人が気になりましたし、色んな話を聞いてみたいですし。
それに舞鶴と言えば、先生がやってきたところです。
もしかすると先生のことを聞けるかもしれないですから、問題ないですよね……。
………………あれ?
どうしてユーは、先生のことを知りたいなぁって思ったんでしょうか。
確かに先生は幼稚園でユーのことをしっかり見ていてくれますし、最近はみんなからも信頼されているみたいです。
それどころか、レーベもマックスも、はたまたプリンツまでもベッタリって感じですし。
もしかしてユーは、それが羨ましいって思ったのかな……?
それとも……、他になにか……。
うぅん……。よく分からないです……。
でもでも、先生以外にも聞きたいことは色々ありますから、別に気にしないで良いですよね……。
「まぁ、そういうことやさかい、良かったらちょっとお茶でもしばきに行かへん?」
「……お、お茶で叩くのでちか?」
「あっ、ちゃうねん。そう言う意味じゃなくてやね……」
小さい方のお姉さんは慌てて説明をしていましたけれど、ユーもちょっとビックリしちゃいました。
「つまりは、冷たい物でも飲みながら話でもどうだってことだ」
「ああ、それなら構わないのねー。イクたちも長距離の移動で疲れてるから、むしろ望むところなのね」
「でも、さすがにお酒はダメでちよ?」
「任務じゃなかったら飲みたいところなのね……」
胸部装甲が大きい潜水艦はそう言いながら、ガックリと肩を落とします。
ユーはまだ小さいからお酒は飲めないですけど、いったいどんな味がするのかな……。
大きくなったら、一度レーベたちとみんなで飲んでみたいです。
できればビスマルクや……先生とも一緒が良いかな……。
そうこうしているうちに2人のお姉さんが潜水艦を慰め終え、先導しながら歩き始めました。
向かう先は……食堂みたいですけど、それならユーはご飯を食べながら待っていれば良かったんじゃないかと思ってしまいました。
やっぱり、だしにされた感じがしますけど……、気のせいじゃないですよね?
次回予告
それからみんなで食堂に行き、お話をすることになりました。
イクさんやゴーヤさんは色んなことを教えてくれるんですけど、ところどころで口を濁しちゃうんですよね……。
艦娘幼稚園 第二部 スピンオフシリーズ
~ユー編~ その2「潜水艦のお仕事……?」
乞うご期待!
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