急に鳴り響いた警報に驚く主人公。
しかしそれは、愛宕も子どもたちも同じだった。
暫くして鎮守府内に流れた放送に、愛宕は青ざめ我を失い、なんとか正気に戻す主人公。
はたしてコードEとはなんなのか? その謎に、迫りますっ!
艦娘幼稚園 ~かくれんぼ(コードE)大作戦!?~
さぁ、かくれんぼの時間だっ!
余談ですが……知り合いのお話。
小破で疲労なし進軍。2-4BOSSで2艦轟沈。弾着カットインで沈んだそうです。
怖くて出撃できません……助けて愛宕先生っ!
その1「コードE発令!」
ウウウウゥゥゥゥゥゥーーーーーーッ!
「なっ、なんだぁっ!?」
いつものように幼稚園の中で、子どもたちと一緒にいたある日の昼下がり。耳を塞ぎたくなるくらいの轟音が鳴り響き、俺は驚いて声を上げた。
「みんなっ、こっちに集まってきてくださいっ!」
愛宕が部屋の中にいた子どもたちに大きな声で集合をかける。子どもたちは少し戸惑いつつも愛宕の元へと歩いていき、俺も続いて隣に立った。
「あ、愛宕さん、この音はいったい!?」
「落ち着いてください、先生。子どもたちに不安が広がってしまいます」
「あっ、す、すみませんっ」
愛宕の言葉を聞いて冷静さを取り戻した俺は、子どもたちを不安にさせないように笑顔を取り繕った。
「はい、みなさ~ん、このまま少しだけ待ってくださいね~。もう少ししたら放送が流れるので、聞き逃さないように、しっかりと耳を澄ましておきましょう~」
「は~い」と手をあげた子どもたちは、その場で床に体育座りをする。不安な表情を浮かべていた子どもたちも多かったが、愛宕のにこやかな笑顔と声に励まされるように、少しずつ緊張をほぐして普段の表情へと戻していく。
ウゥゥゥゥーッ……
音は徐々に小さくなり、やがて静まった。音の具合から、それが鎮守府内に響いていたサイレンであるということが分かり、胸をなで下ろす傍ら、なぜサイレンが流れたのかと考えると再び不安が襲ってきた。だけど、子どもたちに不安が広がってはいけないので、表情には出さず、笑顔を浮かべたまま考える。
サイレン……
思いつくのは、鳴る=危険という図式。
サイレンが鳴ると村人が襲ってきたり、ギチギチノイズの後に顔のない人型が襲ってくるようなことは、あくまでゲームの中の話である。
人によっては、サイレンが鳴れば空襲を思い出すかもしれないし、ただ単に時間を知らせるだけの場合もあるだろう。しかし、この鎮守府に配属してから、俺は今回初めてサイレンの音を聞いた。つまりそれは、時間を知らせるためだけの音では無いということが分かるのだが……
「いったい、何の為のサイレンなんだろう……」
ぼそりと、子どもたちに聞こえないように俺は呟いた。不安は声になって口から漏れ、額からは冷や汗となってこぼれ落ちる。
ガガ……ッ、キーーーン……
ノイズ音の後、甲高い音が辺りに響き渡り、俺の心臓を鷲掴みにする。まさか、本当に奇妙な人型のモンスターが襲ってくるのだろうか!?
でも、ナースはちょっとエロいから、見てみたい気もするけど。
「緊急連絡、緊急連絡っ。元帥から、鎮守府内の全員に通達します……」
スピーカーから聞き覚えのある声が鎮守府内に響いた。この声は愛宕の姉であり、舞鶴鎮守府の最高権力者である元帥の秘書艦の、高雄の声に間違いないはずだ。
「コードEが発令されました。繰り返します。コードEが発令されました。至急、艦娘は全員、大会議室に集合するように。また、それ以外の者は通常業務とし、ターゲットを確認した場合のみ、至急上官に連絡するように。繰り返します……」
高雄の緊張した声が、スピーカーから何度も繰り返し発せられた。いつもの雰囲気はまるでなく、焦りが声に、明らかににじみ出ているように聞こえた。
「コードE……まさか……そんな……」
背後から悲壮な呟きが聞こえた俺は、恐る恐る振り向いてみる。愛宕は青ざめた表情を浮かべ、ありえないほど狼狽えた様子で、何度も何度も同じ言葉を繰り返し呟いていた。
「あ、愛宕さんっ! ど、どうしたんですかっ!?」
あまりの変わりように驚いた俺は、子どもたちへの配慮すら忘れて愛宕の両肩をがっしりと掴み、揺さぶりながら声をかける。
「大丈夫ですか!? 愛宕さんっ!!」
「……っ!?」
ハッと目を大きく見開いた愛宕は、周りの子どもたちの表情を見てすぐに正気を取り戻し、「だっ、大丈夫です先生……」と言いながら、コクリと頷いた。ほっと息を吐いた俺は同じように頷き、愛宕の肩から手を離す。
「みなさん、よく聞いてくださいね~」
両手を叩いてパンパンと鳴らした愛宕は、笑みを取り戻しながら子どもたちに声をかける。
「鎮守府内に、コードEが発令されました。その為、私はすぐに元帥の元に行かなければなりません。後のことは先生に任せますので、じっかり言うことを聞いて、良い子にしましょうね~」
「「「はーい、愛宕せんせーいっ」」」
愛宕の狼狽えぶりに不安の表情を浮かべていた子どもたちだったが、いつもと同じように元気よく笑顔を見せて話しかける様子を見て安心したのか、元気良く返事をして手をあげていた。
「それでは先生……申し訳ありませんが、子どもたちのことをよろしくお願いします」
「わ、分かりました。大変みたいですけど、頑張ってください」
「ええ、では……お願いしますっ!」
キッ……と、険しい表情へと一瞬だけ浮かべた愛宕だったが、すぐに笑顔を子どもたちに向けながら手を振って、部屋から出ていった。
「コードE……いったい、なんなんだよ……」
まったくもって訳が分からない俺は、独りでに呟いた。
今までに聞いたことのない『コードE』という名称。配属されるときの書類も、愛宕からも、一切聞いた覚えがない。
それはいったいなぜなのか――と、悩んでいた俺は、すっかり子どもたちに気を配る事を忘れていた。
そんな俺の様子に気づいた一人の子どもが、ゆっくりと近づき声をかけてくる。
「先生、大丈夫かな?」
「あ、あぁ、時雨か。俺は大丈夫なんだけど……」
俺は後頭部を掻きながら、何と言っていいものかと考える。サイレンのこともコードEと呼ばれることも俺の知識には無く、子どもたちにどう対応して良いものかさっぱり分からない。
「先生は、コードEのことに対して気にしてるんじゃないかな?」
そんな俺の気持ちを察したかのように、時雨は周りの子どもたちに聞こえないように、耳打ちしてきた。
「時雨は……知ってるのか?」
「うん……と言っても、名前しか知らないけど、今までに二回ほど経験はしているかな」
時雨は淡々と、呟くように語る。
「そう……なのか。ちなみに、過去二回の時は……どうなったんだ?」
「別に、僕たちには何の変化も無かったかな。だけど、お姉さんたちは……もの凄く大変そうだったよ」
「お姉さんたちは……か。確かに、さっきの放送でも全員集合って言ってたもんな」
「それほどの大事というのは間違いないみたいだけど、収まった後に、愛宕先生やお姉さんたちに聞いてみても、何があったかは話してくれなかったんだよね……」
「そうか……」
子どもたちに秘密にしなければならないことが、今回も起こったということだろうか。舞鶴鎮守府がそんな状況に置かれているのならば、俺も何かしなければならないと思い、すぐにでも駆け出しそうになるが、あくまで俺の役割は子どもたちを安心させ、いつもと同じように過ごせるようするのが最優先事項なのだ。放送でも通常業務を指示され、愛宕にも子どもたちをよろしくとお願いされたのだ。ここから俺が離れてしまうことは、何が何でも避けなければいけない。
「せ、先生……私たち……どうしたらいいのかな……?」
俺の元に潮が近づき、話しかけてきた。よく見てみると、俺と時雨の周りには不安な表情を浮かべた子どもたちが囲むように視線を向けている。
「よし……それじゃあまずはだな……」
ごほん……と、咳払いをした俺は、満面の笑みを浮かべて子どもたちの顔を見る。
「みんなでかくれんぼでもしようかっ!」
いつもと同じように、幼稚園の中で子どもたちが楽しく過ごせるよう、元気いっぱいで声をかけた。
次回予告
かくれんぼを開始した主人公。
ひとまずはコードEを忘れ、子どもたちと存分に遊ぶぜっ!
いままでに登場してきた艦娘(園児)が一斉にかくれんぼっ!?
更に新キャラまでもが現れて……いったいどうなる艦娘幼稚園!
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