※余談ではありますが、現在ツイッターの方で艦これ二次小説『深海感染―ONE―』をまったり連載中です。
深海感染―ZERO―のその後の話となりますが、宜しければお願い致します。
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久しぶりの幼稚園ではいつも通りの災難続きだった!
でも大丈夫。これが普通だからねっ!
ということで、幼稚園の業務を終えた主人公。
明石の行方の捜索と周りの視線から逃げるように、ある場所へと向かったのだが……
色々あって幼稚園の業務を終えたのだが、結局ビスマルクが居ても居なくても俺の不幸は変わらなかった。
とはいえ、このまま夕食を取って自室に戻ってしまうのでは意味がない。あまり目立たないようにしながら明石の行方を探し出し、あわよくば不能の治療法を聞き出したいところである。
しかし、現状において俺の噂はかなり悪化しているようで、初めて佐世保に来たときよりも突き刺さるような視線を辺りから感じている。
正直に言ってかなり居辛い環境なので、食堂には人が少なくなった時間帯を見計らって……というのが本音なのだ。
「……となると、暫くはどこかで時間を潰すのが良いんだけど」
人が少ないところ=自室という公式が成立してしまうが、それだと明石の情報が得られない。ある程度の視線は我慢するとして、気軽に話すことができる相手となると……
「やっぱり、あいつだよなぁ……」
真っ先に頭の中に浮かんだ艦娘の居場所を考えながら、俺は心持ち早足で歩いて行った。
「やっぱりここだったか」
「おや、どしたん? そんなけったいな顔をして……」
整備室の扉を開けた俺を見たまな板……ではなく龍驤は、少し驚いたような顔をしながら問い掛けてきた。
「いや……、ちょっと視線が痛過ぎてね……」
「ああ、例の噂絡みかいな。
何やら踏んだり蹴ったりらしいけど、大丈夫……には見えへんね」
言って、視線は俺に向けたままハサミをチョキチョキと動かしていた龍驤は、長方形の白い紙を見もせずに切っていた。
「まぁ、人の噂も七十五日って言うさかい、暫くは我慢することやね」
「長過ぎて先に心が折れそうだけどね……」
「その辺は仕方ないんとちゃう?
何だかんだと言っても、日頃の行いがモノを言うんやし」
「それって、素直に貶しているよな……?」
「いんや、実は褒めてたりするんやで?」
「……言葉と表情が全く合ってないんだけど?」
「あ、やっぱり?」
ニヤリ……と、不敵な笑みを浮かべた龍驤にジト目を向ける俺。
しかし龍驤は全く気にすることなく「ククク……」と、笑いながら机に向かった。
「ひいふうみい……、こんなもんで大丈夫かなー」
飛行機のような形をした白い紙を机の上に並べて納得するように頷いた龍驤は、それらを一まとめにしてからポケットに入れる。そして今度は、大きな巻き物を机の上に広げ、綺麗なハンカチで拭き始めた。
「それって、飛行甲板……だよな?」
「そうやで。こうやって毎日手入れをしてやることで、ウチの艦載機も気持ち良く飛び立てるんや」
「なるほどな……」
俺は腕を組みながら龍驤の動きを見つめ、感心するように息を吐く。
「……ところで、わざわざウチを探していたみたいやけど、いったい何のようなん?」
「ああ、それなんだけど……」
「ハッ! も、もしかしてウチを口説きに来たとか?」
「………………」
一瞬驚いたような表情を浮かべた龍驤だが、その目は完全に俺をからかっているのだと分かる。
「いやぁ……、ちょっち照れるなぁー。
でも、そんなことをしたら、ビスマルクや幼稚園の子供たちが黙って……」
「そんなの関係ないよ」
「………………へ?」
俺は首を左右に振ってから言葉を遮ると、龍驤はぽかんとした表情で固まった。
どうにも龍驤にからかわれたらやり返さないと気が済まない俺は、ここぞとばかりに近づいていって、机の上に少し強めに左手を置いて音を鳴らした。
壁ドンならぬ机ドン。
しかし、まだこれで終わりではない。
「え、え、え……っ!?」
うろたえている龍驤の顎に右手で触れ、クイッと俺の顔を正面になるように向けさせる。
「ちょっ、こ、これって……、う……ぁっ……」
そして俺は顔を龍驤に目一杯近づけ、肌が触れ合うギリギリのところで止めた。
「………………」
何も言わずに、ジッと龍驤の目を見る。
こういうのは言葉を出すより、無言の方が効果あり。
さぁ、どうする龍驤!?
俺をからかいまくったその罪を、とくと味わうが良いっ!
「あ、あかん……、あかんてぇ……」
頬どころか耳まで真っ赤になった龍驤は、両眼をキョロキョロと忙しなく動かしている。
そして最後はトドメのこれで……っ!
「はわわっ!?」
顎に触れていた右手に力を入れ、ほんの少しだけ龍驤の顔の角度を上向きにした。
――そう。これこそキスをする寸前の体勢……ッ!
これで焦らないヤツはいないはずっ!
ただし失敗するとセクハラ扱いなる可能性があるが、龍驤ならば関西のノリだと言えば……
「う……、うぅぅ……」
………………。
……あれ?
龍驤……さん……?
「か、堪忍……やぁ……。ホンマ、堪忍やでぇ……」
両目からボロボロと大粒の涙が零れてらっしゃるんですけど……。
これって、ガチで泣かせちゃったってことですかね……?
「あああああっ、あのっ、ええっと……!」
焦った俺は即座に龍驤から離れて、両手をワタワタと動かしてしまう。
こ、こういうときはどうすれば良かったんだっけ……っ!?
「こ……、こんなんされたら……、もう、お嫁に行けへんやん……」
「ええええええええええっ!?」
「せ、責任……取って……くれるんやね……?」
「い、いやいやいやっ! そこまでのことはしてないよっ!?」
「そ、そんな……っ! 酷いっ、酷過ぎやわっ!」
大きな声をあげた龍驤は机の上に両手を伏せるようにして顔を埋め、わんわんと泣きだした……ように見えた。
………………。
ちょっと待て。
何だかんだで、これって前と同じだよな?
確か以前も、からかい返した俺を龍驤が更に陥れようとした。
そのときは完全に騙されたのだが、今回はそうはいかない。
周りに人気がないのも確認した上での行動なので変な噂が立つようなことはない。ここでガツンとやっておかなければ後々に影響してしまうだろうから、きちんと言いきっておくべきなのだ。
「そ、そんな風に泣いた振りをしても……」
「ひっく……ひっく……」
………………。
あるぇー?
龍驤の肩がフルフルと震えて、マジ泣きしているようにしか見えないんですが?
これじゃあ俺って、か弱い女の子を泣かしちゃったガキ大将って感じじゃないですかー。
小学校でこんな状況になったら、周りの女子から言葉攻めにあってトラウマ化するフラグみたいなやつ。
………………。
……いや、マジでどうしよう。
幼稚園の子供たちが泣いている場面はいくつかあったが、俺が原因でというのは余りなかったし、半ばとばっちりみたいなモノだった。
しかし良く考えてみれば、今回龍驤を泣かしてしまったのはからかい合いの応酬の果てであり、俺に落ち度が全くない訳ではなく、むしろ責任は重大と言えるだろう。
舞鶴で似たようなことをしたが、相手は青葉であってそれ程大した問題にはならなかったし、変な噂も立たなかった。だが、この状況を他の誰かに見られたり、龍驤自身が怒って言いふらされたりしてしまった日には……
「……やっぱり、己の身をわきまえる為にも調教が必要よ。
そして、私なしでは生きられないようにしてあげるわっ!」
……と、ビスマルクが真っ黒なボンテージに身を包んで登場する可能性があるだけでなく、
「先生……、また浮気をしたんだね……」
「ふうん……。これはもう、許し難い事実ね……」
レーベとマックスが虫を射殺すであろう冷たい視線を俺に突き刺しながら、小一時間では済まない説教タイムが始まることこの上なし。
「ビスマルク姉さまだけでなく、他の方にまで手をつけるなんて……許せませんっ!
ふぁいやーーーっ!」
プリンツミキサーが下腹部に直撃し、床にもんどり打つ姿が容易に想像でき、
「やっぱり先生は……、ロリコン……ですって……」
しまいにはユーからも蔑んだ目で見下ろされる未来が確定してしまうのであった。
――と、ここまで想像したところで、両膝がガクガクと震える俺。
これはなんとしても、龍驤を慰めつつ弁解しないといけないのであるが……
「……なんや反応がないけど、やっぱり前と一緒やったらひっかからへんかー」
「………………え?」
「……あれ、なんなんその顔?
もしかして、ウチの早とちりやったん……?」
「え、いや、ええっと……、ソンナコトナイヨ?」
「ごっつう怪しい口調に変わってるけど……、自分でばらしてしもうたさかいしゃーないか。
まぁ、次はもうちょっと凝った感じでやらんと上手く騙せへんなぁー」
「………………」
どうやら龍驤は嘘泣きだったらしい。
まさに九死に一生を得たのだが、またもや騙されるところだった。
つーか、いい加減懲りろって話である。
つくづく成長しないヤツだよなぁ……俺って。
「……ちょっとだけ、焦ってしもうたけどな」
「……え、何か言った?」
「い、いや、なんでもないで。なんでも……な」
「そ、そうか……。それなら良いんだけど……」
藪蛇を突いても嫌なので、これ以上の詮索はしない方が良いだろう。
今までのことを考えれば、全戦全敗の俺にとって龍驤は天敵と言えてしまう相手なのだ。
これからはからかい合うのではなく、話を逸らしながら本音を探る方向が良いだろう。
「あっ、そうや……」
そんなことを考えていると、龍驤がポンッと手を叩いて何かを思いついたように声をかけてくる。
「ところで、聞いておきたいんやけど……」
「な、なんだ……?」
今度こそは気をつけねばと心構えをしながら聞き返すと、龍驤は人差し指をピンとたててから小さく首を傾げ、
「ほんで、ウチにいったい何のようやったん?」
――と、あっけらかんに言う龍驤に、俺はガックリと肩を落としたのであった。
いやまぁ、俺が悪いんだけどさ。
※ヤンデル大鯨ちゃんのオシオキ日記の最新話を更新しました。宜しければ是非であります。
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次回予告
結局龍驤には一歩及ばない主人公。
しかし本目的はそれではない。明石の行方が知りたいのだ。
主人公は龍驤にそのことを尋ねたのだが……
艦娘幼稚園 第二部 第四章
~明石誘拐事件発生!?~ その13「病院送り」
乞うご期待!
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