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※今話は下ネタ酷過ぎかもしれません。ご注意ください。
毎回ノリが同じなのでどうにかしたい主人公。
しかし、暴走したビスマルクは止まらない。
更には大問題発言をぶちかまし、強硬手段に出ようとするが……
遂に……アレがばれちゃったっ!?
「ふぅ……」
スタッフルームに入った俺は、大きく息を吐きながらエプロンの紐を解いていた。
もちろん紐は青くないし、背中の方で結んである。間違っても両腕ではないことを断言しておこう。
お菓子イベントを終えてからは大した問題もなく、予定通りの業務を行うことができた。
何よりありがたいのは、ビスマルクと一緒に子供たちを教える状況ではないということであり、この時間はかなり心に余裕が持てるのである。
とはいえ、プリンツの攻撃を避けなければいけなかったり、レーベとマックスの好感度が意味不明なほど高かったりするので、完全に気を抜けるような時間はないのだけれど。
それでもビスマルクが居ないのは非常に楽……って、どれだけ脅威なのかとへこんでしまうのだが。
うむむ、色んな意味でおそるべし……である。
「お疲れさまー」
「……お疲れさまです」
噂をすれば何とやら。
疲れ切った表情で部屋に入ってきたビスマルクは、エプロンを外すことなくコーヒーメーカーのスイッチを押していた。
どれだけコーヒーが好きなんだよ……と、思ってしまうかもしれないが、ビスマルクの気持ちが分からなくもない。
仕事の後の一服というのは格別であり、できれば俺も飲みたいところなのだが……
「あなたも飲むかしら?」
「そう言いながら、俺が処分しておいたはずの瓶をなぜ持っているのかを問い詰めたいっ!」
「フフフ……。私の辞書に不可能という文字はないのよ?」
「理性と常識の文字は確実になさそうだけどね!」
「そんなもの、とっくの昔に捨てておいたわ」
「大事なんだから捨てるんじゃねぇよっ!」
そう叫びながら、大きくため息を吐く俺。
身の危険もそうだけど、突っ込む体力も必要だから大変だ。
いや、まてよ……。
ということは、突っ込みを入れなければ大丈夫ということか……?
「その場合は、問答無用で襲うわよ?」
「勝手に心の中を読んだ挙句にボケるんじゃないと何度も言ってるでしょうがっ!」
「あら、残念」
全く残念そうに見えない顔で、両手の平を上に向けながら肩をすくめるビスマルク。
俗に言う通信販売のポーズである……って、冷静に状況を見ているだけマシってモノだろうか。
しかし、俺のそんな気持ちもどこへやら。
ビスマルクは腰の両側に手を添えて、胸を大きく張りながら、とんでもないことを口走ったのである。
「それじゃあ早速LAN直結するわよっ!」
「何が早速なんだよっ! 何度も時間と場所をわきまえろって言ってるよねっ!?」
そもそも俺に、そんな端子はついてないからねっ!
「昼間のお菓子のお礼……とくと味わうが良いわっ!」
「お礼をするのなら、もう少し相手の気持ちを考えてくれても良いんじゃないかなぁっ!」
襲ってくるビスマルクの腕を素早く払いのけ、バックステップで距離を取る。
捕まったら何もかもが終わりになる。
一瞬も気が抜けないとはこのことだが、元中将と戦ったときより緊張している気がするんだけれど。
それって半端じゃない気がするんだが、つまりビスマルクはそれほどの脅威となり得てしまうのだ。
後、ついでに言えば、毎回こんな感じじゃない?
そろそろマンネリのような気が……
「隙ありっ!」
「ぐっ!?」
余計なことを考えてしまったせいでビスマルクの強襲を避け切れず、腕を捕まれてしまった俺は簡単に組み伏せられてしまう。
「フフフ……。これであなたは私のモノよ……」
ビスマルクはニンマリと不適な笑みを浮かべて俺を見下ろしている気がするが、残念ながら背後に回られているため顔が見えない。
「や、やめろっ! こんなことをして何になるって言うんだっ!」
「それはもちろん、私が満足できるわね」
「俺の意志は完全に無視かよっ!」
「大丈夫よ。全てが終われば縋り付いてくることになるわ」
自信たっぷりに言うビスマルクだが、ここで俺はふと考える。
よくよく考えてみれば、俺は現在不能状態だ。
つまり、襲われても最後までは不可能ということになるのだが。
……これって、俺の不戦勝だろうか?
全く嬉しくないんだけれど……ね。
「それじゃあ早速……」
「やーーーめーーーてーーーっ!」
そうであっても、やっぱり襲われるのは勘弁願いたい。
俺には心に決めた愛宕がいるし、無理矢理というのはどうにも良くない。
それに、こういうのは両者合意ってもんが道理だろう?
「ここまできたんだから、観念しないさいっ!」
「そんなことができるか馬鹿野郎っ!」
「私は野郎じゃないわ!」
「馬鹿女郎!」
「くっ、言い換えたところで何になるというの……っ!」
その割には焦っているような表情に変わったのはなぜなのだろうか。
もしかして、女郎の意味が分かっていなかったりするのか……?
「またもや隙ありよっ!」
「ちょっ、さすがにそこは……」
ビスマルクの手が俺の下腹部へと素早く襲い掛かり、ぶっきらぼうに掴んでしまう。
「痛ぇっ!」
俺は慌ててビスマルクを突き飛ばし、何とか距離を取ったのだが、
「………………え?」
ビスマルクは目を大きく開き、信じられないといった表情を浮かべていた。
「ど、どう……して……?」
ガクガクと肩を震わせるビスマルク。
そして、徐々に顔が赤くなり、憤怒の表情へと変わっていく。
「何で勃ってないのよっ!」
「時間と場所と言葉をわきまえろーーーっ!」
俺の叫び声がスタッフルームの窓を大きく揺らしたのは、ここだけの話である。
完全にアウトだからねっ!
「……と、いうことだ」
俺はビスマルクに明石のツボ押しによって不能になった経緯を説明し、海よりも深いため息を吐いた。
もしかすると深海にまで届いてしまうかもしれないが、例のヤツは舞鶴近くの島に住んでいるはずなので大丈夫だろう。
まさかとは思うが、俺の窮地を察知してここにやって来るようなことはないと思うし。
まぁ、助けに来るよりも笑いに来るというのが正しいだろうが。
ル級のことだから間違いないね。
「な、なんて……ことなの……」
そして、俺の話を聞いたビスマルクが愕然とし、床に両手と両膝をついてへこみまくっていた。
こんな感じになるのだったら、襲われる前に口で説明しておいた方が良かったかもしれない。
信じるか信じないかは別にして……、だけどね。
「まぁ、明石が治し方を探してくれているから、一生このままってことはないと思うけどな……」
そんなことになったのなら、俺はこの先どうすれば良いのかとマジへこみしてしまうのだが、治ると言い切ってしまうのも具合が悪いと思うので、ビスマルクには濁しておくことにする。
いや、本当に早く治って欲しいんですが。
そうじゃないと大手を振って舞鶴には帰れないし、愛宕に合わせる顔がない。
まぁ……、付き合っている訳じゃないけどさ……。
「くっ……、明石が絡んでいる以上、変にことを荒らげる訳にもいかないわね……」
そう言って、親指の先を歯で噛みまくるビスマルク。
あまり宜しくない癖だから、止めた方が良いと思うんだけど。
ついでに明石の名を言った時点でビスマルクが嫌そうな顔をしたのは、過去に何かあったのだろうか?
「そういう訳だから、俺を襲ったところでビスマルクの本懐は遂げられないからな」
「くぅぅ……っ!」
ビスマルクは悔しそうに拳を床に何度も叩きつけ……って、そんなに俺のことを思ってくれてたの……?
それはそれで嬉しいような悲しいような。
い、いやいや、別にもったいないなぁとか思っている訳じゃないんだからな。
気を許したら最後、骨の髄までしゃぶられるのは目に見えている。
そうして俺の未来は、暗雲立ち込める世界へとまっしぐらなのだ。
後はビスマルクの下僕として、毎日を過ごすことに……。
なんて不幸なんだ……と、思いきや、今とあんまり変わらないような気がする。
多分気のせいだ。
きっと気のせいだ。
……気のせいだと思いたい。
気のせい……だよね……?
「分かったわ……。そういうことなら、私の方でも何とかできるように色々と当たってみましょう」
ゆっくりと立ち上がったビスマルクは、悪い考えを払拭するように頭をブンブンと振って俺を見た。
「……え?」
「え? ――じゃないわ。
あなたのためなら一肌や二肌、脱ぐなんてことは朝飯前なのよっ」
「ビ、ビスマルク……」
二肌はいらない気もするが、気持ちは純粋に嬉しい。
不能になってしまってへこんだのは事実だし、早く治したいのも嘘ではないのだ。
その結果、またビスマルクから襲われてしまう可能性も高いだろうが……、それはそれでなんとかすれば良いだけの話である。
まずは身体を治すこと。
そうすれば、前向きな考えも進んでいくだろう。
「ありがとな……、ビスマルク」
「いいえ。あなたのためなら何でもするし、この命だって捧げてみせるわ」
「い、いやいや。さすがに命までは……」
「何を言うのよ。私が信じるあなたを思う気持ちは、決して嘘ではないのだから」
「そ、そうか……」
真剣な眼差しでそう言われてしまえば、もはや返す言葉はない。
つーか、マジでビスマルクがカッコイイんですけど。
やだこれ惚れそう。
なーんてことも、ありえなくもないかもしれない。
――いや、ないけどね?
いますぐ抱かれたい艦娘ランキング上位に割り込んだりはしてないよ?
ちなみに1位は愛宕です。
2位以下は考えてないけど。
ビスマルクは……5位くらいになったかなぁ……。
………………。
いや、冗談だけどさ。
「しかし、まさか明石が秘孔の使い手だったとはね……。道理で太刀打ちできない訳よ……」
「………………は?」
ビスマルクは何を言っているんでしょうか。
仮にも戦艦であるビスマルクが工作艦である明石に勝てないとか、ぶっちゃけてもありえないと思うんだけど。
それとも戦闘以外……と、いうことだろうか?
「しかし、私も北斗羅漢撃の使い手として負ける訳には……」
「まだそのネタ引っ張るのかよっ!」
明石に至っては偽物の方だったし、羅漢撃の使い手は兄弟の中で最弱だからねっ!?
再度あげてしまった叫び声によって何度目かの窓ガラスが響く中、ビスマルクは舌をペロンと出して可愛らしい仕種をする。
呆れた顔を浮かべた俺は小さくため息を吐いたが、不能となったことを隠し続けていた心の重荷から少しだけ解放されたことで、肩の荷が軽くなったような気がした。
ただ、このとき俺は気づいていなかった。
スタッフルームの出入口の扉から、俺達を伺っている視線があったことを……。
※現在BOOTHにて『艦娘幼稚園シリーズ』の書き下ろし同人誌を通信販売&ダウンロード販売中であります! 是非、宜しくお願い致しますっ!
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次回予告
ビスマルクェ……
もうね、やり過ぎにもほどがあるんですよ。
でもまぁ、主人公の不能が発覚したことで無理矢理襲おうとするのは治まった……?
そう考えると治らない方が良いのかもしれないが、それすらも問屋は卸さない。
そう――、視線の相手がいる限り。
艦娘幼稚園 第二部 第三章
~佐世保鎮守府幼稚園の子供たち 教育編~ その8「喧嘩仲裁の果てに」(完)
乞うご期待!
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