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本当に冗談だったのかはさておいて。
EDになっても相変わらずビスマルクに振り回される主人公だが、めげずに包囲網を完成させるべく、今度はユーとプリンツの授業をするのだが……。
結局ビスマルクにからかわれまくった俺は、休憩時間中に質問をすることができず、仕方なく次の授業に向かうことにした。
今度の担当はプリンツとユー。レーベとマックスに教えた授業と同じ内容なので、面倒なことはない。
どうせなら一度に4人を教えることの方が効率的に良いのだが、目的のためなら仕方がない。それに、子供たちの中でもプリンツは一番の強敵なので、できる限り人数が少ない方がやり易いだろう。
「………………」
プリンツは授業中にジッと俺を睨みつけているだけで、タックルをしてくる気配はなかった。
その視線さえなければきちんと授業を聞く良い生徒……と、思えるのだけれど、小さな虫なら黙殺してしまいそうな威力に、俺の胃に大きなダメージを与えてくれる。
さすがに勘弁して欲しいので授業の会話の流れで色々と話をしてみたのだが……
「仲間同士の信頼は必要不可欠だ。だから、いつも仲良くしている方が良いんだけれど……プリンツ」
「………………」
へんじがない。
「おーい、プリンツー」
「………………」
ただのしかばねのようだ。
「……死んでません」
「どうして俺の心を読めるんだよ……」
「顔に出ているからです」
「い、いや、いくらなんでも……」
「先生はド変態ですから、何をやっても顔に出るんです」
冷たい視線を送りながら、淡々と言い続けるプリンツ。
すんごい酷過ぎると思うんだけど、ここで怒ったら水の泡だよなぁ。
「………………」
言い返さないでいると、プリンツはぷいっと顔を背けた。
こういった行動は子供らしいのに、俺を責める言葉に関しては一端の大人である。
もし俺がドの付くMならばご褒美と感じてしまうのだろうが、そうじゃないだけに辛いところである。
この際、ビスマルクにしっかりと調教してもらってMに近代化改修してもらえたら、それはそれで幸せな日々を過ごせるのかもしれないが。
まぁ、そんな気はさらさらないので、選択肢から早々に消去しておく。
むしろ初めから選択肢に載せるなよ……と、言いたいところではあるが。
あと、俺は艦娘じゃないから改修は不可能だ。
もちろん、艦おっさんでも艦息子でもない。
「あ、あの……、先生……」
「ん、どうした、ユー?」
おずおずと話しかけてきたユーは、俺の返事に少し戸惑うような間を置いてから口を開いた。
「先生は……ド変態なの……?」
「ぶっっっ!」
純粋無垢な瞳を向けながらとんでもないことを口走るユー……って、これは完全に罰ゲームじゃないですかー!
「ち、ち、違うからっ! プリンツが言ったことは、ただの冗談だからねっ!」
「そ……、そうなの?」
「いいえ。先生はド変態です」
「え、えっと……、どっちが本当……なのかな?」
「だから、俺は変態じゃないからっ!」
「ビスマルク姉さまを見つめる目がエロすぎる癖にっ!」
「うー……。わ、分かんないよぅ……」
キョロキョロと俺とビスマルクの顔を見ながら不安そうな顔を浮かべるユーなんだけど、何を言ってもプリンツに邪魔をされてしまう。
どれだけ俺のことが嫌いなんだよプリンツは……。
しかしまぁ、ビスマルクを思う気持ちがプリンツを動かしていることも分かっている。
そこを上手く突けば、良い方向に向かってくれるんじゃないかと思っているのだが……
「がるるるるーっ!」
「なんでいきなり唸りだすのっ!?」
「口で言って聞かない先生には、威嚇後即攻撃ですっ!」
「暴力反対っ! 仲良くしようってさっき言ったばかりだよっ!」
椅子から立ち上がろうとするプリンツから慌てて離れた俺は、ホワイトボードの後ろに回り込んで身体を隠す。
「ま、まだ早いかもしれないけど……、ユーもなんだか、がるるーって言った方が……良い気がしてきた……」
夜の戦いじゃないですってっ!
ユーの呟きに心の中で突っ込みながら、必死でプリンツから逃れなければいけない授業になってしまったとさ。
◆ ◆ ◆
今日の授業が全て終わり、終礼を済ませて幼稚園内の戸締りチェックを行った俺は、最後に玄関の鍵を閉めて大きく背伸びをする。
ビスマルクから何度も食事に誘われたが、用事があると言って断った。もちろんこれは嘘ではないのだが、あまり断り続けるのも考えモノだろう。
痺れを切らしたビスマルクが何をするのかなんてことは、想像もしたくない。ついでにプリンツからの攻撃も注意しなければならないからね。
ちなみに用事というのは、とある国に関する本を探すということなのだが、それがどこにあるかは分からない。
ビスマルクに聞こうと思ったけれど、それを理由に食事に強制連行という可能性が高かっただけに避けておいたんだよね。
スタッフルームでからかわれなかったらその場で聞くつもりだったのだが、この際驚かせる方向にしようと思う。
何をするかはお楽しみ。まぁ、すぐに分かることだってばよ。
「……と、思ったのは良いものの、全くアテはなかったりするんだよなぁ」
俺は独り言を呟きながら、どこに向かうでもなく鎮守府内を歩き回る。
本がある場所を考えれば図書館が真っ先に浮かぶが、今の時間だと閉館しているだろう。それに、この近辺に図書館があるという情報も俺は知らないのだが。
鎮守府内にも似たような施設――つまり、資料室のような場所はあると思うのだが、どこにあるのか全く知らない。
だからこそ、ビスマルクに聞こうと思っていたんだけどね。
「……ん?」
この辺りに居る誰かに聞こうかと思っていたところ、俺の視界に見知った艦娘の姿が見えた。
「ちわー。三河屋でーす」
「先生はいつの間に転職したっちゅーねん!」
龍驤は見事な素早い返しで裏手突っ込みをし、満足げに笑みを浮かべていた。
うーむ、今日も完璧な関西人だ。
イントネーションは微妙だけどさ。
「あかんなー。ギャラリーが少ないと、調子がでえへんわー」
「いやいや、見事な突っ込みだったよ?」
「どうせなら舞台でやりたいんやけど……、先生のボケはなかなかやし、この際コンビを組んでええかもね」
「時間に余裕があるんなら構わないんだけどね……」
残念だけど今はやることがあるのでお断りし、漫才は次の機会に取っておこう。
「ところで先生はウチに何の用なん?」
「ああ、それなんだけど……」
言って、俺は本がある場所を龍驤に聞こうと思ったのだが、
「あっ、そういや一つ聞き忘れてたわ。こないだの明石んとこ、どうやったん?」
「そ、それは……」
痛いところを突かれてしまい、俺は言葉を詰まらせる。
とはいえ、龍驤は俺が不能になってしまったことを知っている訳ではないだろうし、ごく一般的な世間話に違いない。ここで変に誤魔化さず、普段を装いながら返せば良いと思ったんだけど……
「………………」
龍驤の目が、何やら鋭いんですが。
まさか、不能のことを知っているというのか……っ!?
「………………」
いや……、この目は……違うっ!
これは、俺に対して怒っているときの目だっ!
「……あっ、そうか」
呟くように放った言葉に、龍驤はピクリと眉を動かした。
そしてまた、俺の目をジッと睨みつけている。
「こ、こないだのこと……、まだ怒ってらっしゃるんですよね……?」
「せやな……。まだ先生には、セクハラについて謝ってもらってへんしね」
「そ、その節は……、申し訳なかったです……」
俺は素直にそう言って、龍驤に深々と頭を下げた。
確かにこないだのはやり過ぎたと思っているからね。
場合によっては訴えられてもおかしくなかったかもしれないし。
この人痴漢ですっ! なんてことになったのなら、確実にヤバいことになっていた。
「まぁ、謝ってくれたし……、許さへんでもないんやけど……」
そう言いながら、龍驤はキラリと目を光らせた。
……な、何やらイヤな予感がするんですが。
「どうせやったら、明石にやられたことを聞いておかんとなぁ~」
ニンマリと不敵な笑みを浮かべる龍驤だが、これは完全に仕返しである。
つまりは、全く許してくれてないってことだよね?
「そ、そうですね……。でも、この話を聞いたら……マズイ気がしなくもないんだけど……」」
ならば……と、いうふうに、俺は神妙な顔つきで龍驤に言う。
「えっ、な、なにそれ?」
「いやぁ……。まさか、あんなことが起きるとは思ってなかったんですがね……」
意味ありげに言った俺を見た龍驤の顔が、みるみるうちに焦るような表情へと変わっていた。
「え……、な、何があったん……?」
「そ、それは……その……」
俺は苦悶の表情を浮かべて、龍驤から目を逸らしてみる。
演技に自信はないけれど、顔を見せないようにすることで、それなりに効果はあるだろうか。
「だ、だからあかんって言ったやんっ! 何をされたんかしらへんけど……って、まさかっ!?」
俺の目論見は的中し、何かに気づいたような反応をした龍驤はたたらを踏んで、一歩、二歩と離れて行く。
「そ、そんな……。まさかそんなことって……」
愕然とした表情。
ガクガクと震える肩。
いやいや、やり出したのはこっちだけれど、いったいどんな想像をしているんだろうか?
自分から言うつもりはないけれど、不能が露見するのは具合が悪いので、そろそろこの辺りで止めておこうと思ったのだが……
「明石に……調教されたんっ!?」
「どうして発想がそっちに行くのかなっ!」
もしかして、ビスマルク以外にもそういう属性の艦娘ってたくさん居るのかっ!?
「あれ、違うん?」
「いや、もしそうなってたら、俺はこの場に無事で立っていないと思うんだけど」
「そりゃ確かに、先生の言う通りやね」
そう言って、ケラケラと笑う龍驤。
やっぱり分かっていてやったようだ。
むぐぐ……。騙すつもりが騙されてしまうとは……不甲斐ない。
「まぁ、その感じやとたいしたこともされてへんみたいやし、何ごともなくて良かったやん」
「……そうだね」
実際には不能になっちゃったんだけどね。
そんなことを言う訳にも行かず、俺はガックリと肩を落として深いため息を吐く。
龍驤はまたもや笑いながら俺の肩を叩き、大粒の飴玉をポケットから取り出して渡してくれた。
本当に、大阪のおばちゃんだよな……。
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次回予告
まな板えもん……ではなく、龍驤と別れた主人公。
目的をすっかり忘れていたことを思い出し、ひとまず夕食を取りに食堂へと向かう。
するとそこで、新たな艦娘と話をすることになったのだ。
艦娘幼稚園 第二部 第三章
~佐世保鎮守府幼稚園の子供たち 教育編~ その4「裏メニューと裏事情」
乞うご期待!
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