艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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艦娘幼稚園 第二部 第三章
 ~佐世保鎮守府幼稚園の子供たち 教育編~


 EDになっても教育者としての仕事は辞めない主人公。
明石が治してくれるすべを探してくれるまで、ビスマルクへの対処を進めていく。

 でも結局、やってることは同じなのかもしれないです(ぇ



~佐世保鎮守府幼稚園の子供たち 教育編~
その1「父親の心境」


 

「……であるからして、行動するときは常に互いを信頼することが大切なんだ」

 

 俺はホワイトボードの前に立ち、教科書を開けながら2人の子供に向かって授業をしていた。

 

 この時点では至って普通の幼稚園風景――であるが、俺の内心は全く落ち着いていない。

 

 なぜかと言えば、明石のツボ押しによる後遺症によって、俺のアレは完全に不能となってしまっている。だけどそれを理由に幼稚園を休む訳にはいかないし、ビスマルク1人に任せておくには気が休まらない。

 

 例えインフルエンザにかかって39度の熱があったとしても、這ってでも授業を行う。それくらいの気構えがないと、俺の目的は達成できないのだ。

 

 もちろん、それによって子供たちに病気が蔓延することになるのは避けたいので、きちんと判断をした上で動きはするけれど、不能については……って、どうにも思考がこっち寄りになってしまう。

 

 それくらいへこみまくっている――と、いう訳なのだが、俺は何とか冷静を装いつつ授業を中断しないように気をつけながら言葉を続ける。

 

「艦娘として海上に出るのはまだ先だけれど、気構えをしっかりしていくのは大切だし、普段の行動にも影響する。つまり、みんなで仲良くやっていこうってことだな」

 

「うん。それはもちろんだね、先生」

 

 レーベが俺の言葉に納得するように言うと、隣に座っているマックスもコクリと頷いていた。

 

「……ところで2人に質問なんだが、この鎮守府内に友達はどれくらい居るんだ?」

 

「えっと……、横に居るマックスはもちろんだし、ユーやプリンツもあたりまえだよね」

 

「そうね……。私も同じだわ」

 

「その他には?」

 

「ええっと……、他には……」

 

 レーベは少し難しそうな顔をして考え込むが、どうやら思いつかなかったようだ。

 

「ざ、残念だけど、居ないかな……」

 

「私たちのような子供の姿をした艦娘は、あまり居ないから……」

 

「ふむ……、確かにそうだが……」

 

 おおよそ想像した答えに納得しながら、俺はゆっくりと頷いた。

 

 ここで少しだけ気になったのは、ビスマルクの名前が出なかったことである。

 

 やはり2人ともビスマルクは同じ教える側である艦娘と思っているので、友達という枠で区切ってはいないようである。

 

 まぁ、そうでないと威厳とかがなくなっちゃうんだけど、仲の良い関係であるのもまた大切だ。

 

 決して、俺の名前も出なかったのがへこんでいるという訳ではない。

 

「それじゃあ、この鎮守府に居る艦娘の――お姉さんたちとは話したりしないのかな?」

 

「寮とかでなら話はするけど、そこまで仲が良いって感じじゃないんだよね……」

 

「私も同じよ……」

 

 レーベとマックスは残念そうな顔を浮かべている。

 

 つまり、できるならば歩み寄りたいとは思っているようだな。

 

 ならば答えは簡単だ。自ら動いて現状を変えれば良い。

 

「それなら積極的に自分から話しかければ良いんだよ。向こうが嫌がってなければ大丈夫だし、レーベやマックスは可愛いから無下に断られもしないだろう」

 

「そ、そう……かな?」

 

 ほんのりと頬を染めたレーベが首を傾げながら俺に問う。

 

 初めは誰もが恥ずかしいだろうけれど、勇気を出して一歩を踏み出さなければならないのだ。

 

 だから、恥ずかしがっていては……

 

「さすが先生ね……。ここで口説いてくるとは思わなかったわ……」

 

 そう言って、レーベと同じように頬を染めるマックス。

 

 ……あれ、何やら勘違いされちゃってないですか?

 

「いや、別に口説いてないよ?」

 

「えっ、でも今……可愛いって言ったよね?」

 

「あっ……、そ、それはだな……」

 

 しまった。

 

また勘違いをさせてしまったというのか。

 

 前回もそうだったが、俺は考えなしに喋ってしまって問題を引き起こしてしまうみたいである。

 

 ただ単に本音を言っているだけなのだが、それがどうにも厄介なようで……。

 

「……まさか、先生は私たちに嘘をついたというの?」

 

「そ、そうじゃない。お前たちが可愛いのは事実だし、付き合いは短いけど目に入れても痛くないと思っている。だからこそ、元気にスクスク育つように……」

 

「付き合い……か。ふふっ……」

 

「……なるほど。そうやって私たちを自分好みに育てようとしているのね」

 

 にへら……と、笑みを浮かべるレーベに、恥ずかしげに言ってから視線を少しだけ逸らすマックス。

 

 うむ。またもや、やっちゃったようである。

 

 ………………。

 

 俺って馬鹿じゃね?

 

「それじゃあ、先生好みの艦娘になるように僕も頑張るよ」

 

「いやいやいや、そういうつもりで言ったんじゃなくてだな……」

 

「あら、また先生は嘘をついたと……?」

 

 キュピーン……と、効果音が鳴るような厳しい視線を向けるマックス。

 

 龍田以上ではないにしても、子供とは思えない迫力に、俺は気後れしてしまいそうになる。

 

 ……だが、ここで引いたら男じゃない。

 

「嘘なんかついてないよ。ただ、勘違いをさせてしまったことは謝らないといけないかな」

 

 レーベやマックスが言ったように、俺が子供たちを自分好みに育て上げようとしているのであったら、それはもう完全にビスマルクと同じである。

 

 まさに逆……ではなく、完全に光源氏計画だ。

 

 ついでに訂正するとするならば、ビスマルクは本気だけれど、俺は言葉のあやである。

 

 もちろん、レーベやマックスを俺好みに育て上げるような権利と環境が整っているのなら、どれほど嬉しいことか……って、ちょっと待て。

 

 俺はそんなことをこれっぽっちも思っていないと言いたいところなのに、なぜかそういう思考が渦巻いてしまうのは、心のどこかに欲望のようなモノがあるのだろうか?

 

 それって……かなりヤバくないか?

 

 教育者として、失格というレベルじゃないと思うんだけど。

 

 つまり、犯罪者予備軍の仲間入り。一歩踏み出せば、ニュースや週刊誌にでかでかと載ってしまうようなことを……

 

「……先生の目が、何やら怪しいのだけれど」

 

「ま、まさか僕たちのことを想像して……?」

 

「多分、先生の脳内では私たちがひんむかれて、あられもない姿になっているのかもしれないわ」

 

「そ、そんな……っ! で、でも僕は……それでも頑張るよっ!」

 

「黙ってたら言いたい放題になっちゃっているんだけど、そんな思考はこれっぽっちも持ってないから安心してね……」

 

「……あら、残念ね」

 

「そ、そうなんだ……」

 

 本気で残念そうにしている2人。

 

 うむむ、さっきのとは違うけれど、これは本当にヤバい状況だよなぁ……。

 

 好かれるのはありがたいんだが、度が行き過ぎるのは止めて欲しい。舞鶴のときもそうだったけれど、艦娘って早熟だったりするんだろうか?

 

 確かに一部の艦娘は、見た目の年齢と胸部装甲があっていない者も居るけれど。

 

 いや、別に疾しい気持ちは全くない。ただ、ちょっとだけ目の保養にさせてもらっているだけなので……

 

「今度は嫌な気配が、先生から感じるのだけれど……」

 

「今のは僕にも分かったかな。ちょっと、幻滅しちゃうよね……」

 

 言って、2人は冷たい視線を俺に向けながら、深いため息を吐いた。

 

 見事な好感度ダウン――である。

 

 むぐぐ。想像していることが分かってしまうなんて、やっぱり俺は顔に出てしまうのだろうか。

 

 もう少し気をつけなければいけないのだが、そもそも人前で想像しなければ良いだけなんだよね。

 

 この辺りは無意識でやってしまう癖なので、徐々に直していかなければならないようだ。

 

「と、とにかく、変な想像もお前たちを口説いたりもしていない。ただ少し気になるのは、幼稚園の中だけではなく、他にも知り合いや仲の良い相手を作ったらいいと思うんだ。

 寮に居る艦娘や鎮守府内の作業員、他にも色々な人が居るんだし、交友を広げるのは決して悪いことじゃないんだぞ?」

 

 俺は話を正しい流れに戻して2人に伝える。

 

 もちろんこれは、2人が艦娘としてやっていけるようにとの考えもあるのだが、ビスマルクに対しての手段でもある。

 

 幼稚園という巣から踏み出すための一歩であり、親代わりのビスマルクから旅立つためのモノ。

 

 まだまだ早い気もするが、準備をするのは悪くない。今すぐそれをしろというつもりはないけれど、外堀を埋める作業としてもやっておきたいのだ。

 

 つまりは包囲網。

 

 子供たちのビスマルクに対する信頼度を大きく落とす気はないが、責任感がなさ過ぎるということを知ってもらう必要がある。そうすることでお互いに緊張感が生まれてくれれば、言動も少しはマシになってくれるかもしれないだろう。

 

 これだけで全てが良くなるとは思わないが、やらないよりはやるべきだ。それにどちらにしろ、幼稚園を卒園した後のことを考えれば、やっておいて損はない。

 

 そして一人前の艦娘となり、活躍してくれればいうことはないのだから。

 

 ゆくゆくは艦隊の中でも認められる存在となり、やがて提督に見初められ……

 

 ………………。

 

「貴様のような小童に教え子は渡さんっ!」

 

 鉄・拳・制・裁。

 

 でっかい蟹みたいなロシア軍人並みの拳を叩きつけてやるっ!

 

 何度起き上がってお願いしようが無駄なモノは無駄だっ!

 

 レーベやマックスを幸せにできるのは俺しかいないんだよっっっ!

 

「「………………」」

 

 ふははははっ! そうして俺の周りには、沢山の教え子たちが……って、あれ?

 

「……せ、先生はいきなり何を言っているのかな?」

 

「た、多分これも、妄想だと思うわ……」

 

 ガチで引いちゃってる2人が、ボソボソと相談している姿が見える。

 

 ビスマルクの好感度が下がる前に、俺の方がダメになっちゃってる気がするんですが。

 

 これって……やっぱりマズイよね?

 

「ぼ、僕……、ちょっとだけ自身がなくなっちゃったかも……」

 

「もう少しだけ、考え直した方が良いのかもしれないわね……」

 

 そう言いつつも、俺を可哀想な目で見るレーベとマックス。

 

 だから、人前で妄想するんじゃないって思っていたのに……である。

 





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次回予告

 妄想し過ぎてポカをする。見事なり先生。
だけど、へこんでばかりもいられない。ビスマルク包囲網を完成させるべく、主人公は頑張るのだ――と、気合いを入れようとしたかったのに……。


 艦娘幼稚園 第二部 第三章
 ~佐世保鎮守府幼稚園の子供たち 教育編~ その2「危険な●●●」

 乞うご期待!

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