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是非、宜しくお願い致しますっ!
号泣したのはビス子でした。
もう先生は変態でいいんじゃないかな。
しかし、ビスマルクを一端の教育者とするにはまだまだダメだ……と、主人公は明石の元へ向かうことにした。
だが、良く考えれば明石の居場所が分からない。
そんなとき、助けてくれるのはいつもの艦娘。
――そう。まな板えもんの登場です(ぉ
さて、ここでもう一度話を整理しよう。
俺が佐世保鎮守府の幼稚園に来たのは、責任者であるビスマルクを一端の教育者に仕立て上げるためと判断した。
なぜそんな風に考えたのかは、幼稚園におけるビスマルクの行動を見ればすぐに分かるだろう。
正直に言って、ビスマルクは大きな子供……いや、暁だ。
しかし、そう考えるとビスマルクについて気になることが出てくる。
本来ビスマルクも佐世保鎮守府の艦娘として艦隊に所属し、いくつもの海戦を経験していたのだろう。
そして、なんらかの理由によって幼稚園の先生となり、今に至るはずである。
安西提督に聞いた話によれば、ビスマルクを幼稚園の責任者にしたのは明石だと言う。おおよそ、レーベやマックス、プリンツにユーと、祖国が同じということで決めたのだとは思うのだが、完全に人材ミスだったと言えよう。
つまりは、人材ミスの原因は責任者としての自覚のなさ。そしてそれは、艦隊に属していたときであっても同じはずなのだ。
ビスマルクは戦艦なのだから、場合によっては旗艦であったかもしれない。そうでなかったとしても艦隊として出撃する以上、何らかの責任を持った上で行動する。
だが、今のビスマルクにはそれが全く感じられない。いくらなんでも有り得なさ過ぎるのだ。
まさか、ビスマルクと同じような艦娘ばかりだったとは考えにくいからね……。
それこそ収拾がつかないレベルじゃなくなるし、安西提督も頭を抱えるしかないだろう。
――と、いうことで、俺はビスマルクが幼稚園の先生となる前がどんな感じだったのかを調べることにした。
しかし、佐世保の地ではまだまだ若輩者。ビスマルクに案内してもらう訳にもいかないし、どこに行けば情報を得られるか分からない。
食堂で情報収集というのがベターだろうが、今はビスマルクがビールを飲みに行っているはずなので難しいだろう。
やはり、明石に当たってみるのが一番だろうか。
そうと決まれば善は急げ。明石の元へとレッツらゴー……と、思いきや、
「それで、明石はどこにいるのだろう……?」
独り言を呟いてみても、誰も答えてはくれない。
まぁ、周りに誰も居ないから当たり前なんだけれど。
明石の名前から思い出されるのは、工作艦ということだけだ。それなら整備室辺りかと思ったが、未だ慣れぬ佐世保鎮守府。誰かに聞きながら向かうしかないと思ったところに、数少ない見知った艦娘の姿を見つけた。
「あれあれ~。どっかで見た顔が歩いとると思ったら、キミかいな~」
「こんばんわ、龍譲さん。どこかにお出かけですか?」
俺はペコリと龍驤に頭を下げ、笑みを浮かべながら質問を投げかけた。
「出撃から帰ってきたんやけどねー……って、その前に」
そう言った龍驤は、いきなり裏手打ちで俺に突っ込みを入れる。
「キミさ、ちょくちょく敬語が混じってるけど、堅苦しいからやめにせえへん?」
「えっと……、龍驤さんが構わないって言うなら……」
「さん付けもなしで頼むわ。どうにも背中がこそばゆうてかなわんのよ」
そこまで言われたら止めるべきだろう。もちろん、俺としても敬語を使うのはあまり好きではないからね。
理由はボロが出てしまいそうになるからだけど、その辺りは口外しない方が良いだろう。
「了解。それじゃあ普通に喋りますわ」
……って、ちょっとだけ関西弁が出ちゃったんだけど。
「実は、ちょっとお願いがあるんだけど……」
俺は龍驤にお願いして、明石の居場所へと案内してもらうことにした。
龍驤に先導されて、佐世保鎮守府内を歩いて行く。
空は夕焼けから闇へと変わり、建物の窓から漏れる明かりが少しばかり眩かった。
「しかし、なんでいきなり明石のところになんて行きたがるん?」
俺の方へと振り向いた龍驤はそれとなしに質問を投げかけてきたが、隠す必要はないので素直に答えることにする。
「実は、ビスマルクの行動が……ちょっと問題かなと思ってね」
「あー……、アレやね。なんとなくやけど、分かる気がするわ……」
言って、龍驤は深いため息を吐いた。
せっかくの機会なので、龍驤にも艦隊に居たときのビスマルクについて聞いてみることにする。
「分かる気がするってことは、やっぱり……?」
「んーっと、そうやねぇ……。ビスマルクは旗艦として優秀やったことは確かやで。ただ、少し融通がきかんかったことがあってな……」
「……と、いうと?」
「一言で表すならマイペースやね」
「あぁ、なるほど……」
それって、今とあんまり変わっていないってことだろうか。
龍驤の顔色も少し気まずそうに見えるし、あまり言いたくないこともあるのだろう。俺としても悪口を聞くというのはあまり嬉しくないので、根掘り葉掘り聞こうとは思わないのだが……。
「まぁ、悪いヤツじゃないってことは確かなんやけど、好き嫌いでいうと、仲間内でも結構別れてたかもね」
「やっぱりそうなっちゃうか……」
固い性格の艦娘と一緒に組むのなら、ぶつかり合うこともあるだろう。ましてやビスマルクの性格を考えれば、引くとは思い難い。
もしかすると、龍驤の顔色が悪いのは過去に何かあったからかもしれない。
艦娘同士……、更には戦艦なのだから、喧嘩となればただでは済まないだろう。
さすがに轟沈なんてことはないだろうけれど、ドックにお世話になることくらいはあったのかもしれない。
あれ……、ということは、ビスマルクが幼稚園の責任者になったのって……
「それより、明石のとこまでは案内するけど、ウチは部屋の中に入らへんしね」
そんなことを考えていると、龍驤は更に顔を不機嫌そうにして俺から視線を外した。
んっ……、それってどういう意味だ?
もしかして、明石と龍驤は相性が悪いとか、そういうことだろうか?
顔色が悪かったり視線を逸らしたりしたのって、ビスマルクのことじゃなくて明石が原因なのか……?
「まぁ、キミも明石と話をするときは気いつけてな」
「は、はぁ……」
「とにかく、明石と話をするのは止めへんけど、絶対に気を許したらあかんで?」
念を押す龍驤だけど、明石っていったいどんな艦娘なんだろう……。
あくまで知識としか知らない俺としては、工作艦であることしか分からない。
「気を許すなって言っても、まさか襲われたりする訳じゃないだろうし……」
「いやいや、ほんまに襲われたりするんやで?」
「……は?」
目が点になる俺に気にすることなく、龍驤は額に汗を浮かばせながら言葉を続けた。
「明石はこの鎮守府で一番怒らせたらあかん艦娘って言われてるんや。古参であるのはもちろん、提督勢から絶大な支持を得とる。工作艦としてドックが足りへんときに役に立つし、以前の襲撃の際も大活躍やってん」
以前の襲撃という言葉に、俺は記憶を探り当てた。
確か、比叡や霧島、五月雨が子供化することになった事件であり、鎮守府が深海棲艦に直接攻撃されたという前代未聞の事件だったはずだ。
その後、呉襲撃事件があったせいで大きく報じられることはなくなったが、これが切っ掛けという人も少なくはない。ただ、どちらにしろ現在は、舞鶴と一部の深海棲艦との停戦が結ばれたおかげで、平穏な日々が続いているようにも見える。
「まぁ、それ以外にも、一部の提督に喜ばれていることがあるんやけど……」
言って、龍驤はげんなりとした顔を浮かべた。
……え、何その顔。
そして、濁しまくった言葉は……ま、まさか……
エロイことなんかが行われちゃったりしてるんですかっ!?
「いやいや、さすがに外で話して良い内容じゃ……」
「……は? い、いきなり何を言うてるん……って、あぁっ!?」
すると龍驤は俺の考えを読みとったのか、真っ赤な顔でガン見してきた。
「き、キミ……、さすがにそれはないで……」
「あ、えっ、そ、そうなの……?」
「い、いくらなんでも、その考えはあかんわ……」
「いやぁ……、龍驤がいきなり言葉を濁しまくるから、てっきりそうかと……」
俺は少し頬を赤くしながら後頭部を掻く。思い違いというのは恥ずかしいモノだが、想像したことがアレなだけに余計たちが悪い。
「あー、そうか……。それは確かに、ウチも悪かったかなぁ……」
龍驤はそう言って、赤くした頬をポリポリと掻いていた。
うーわー。何これ。凄く気まずい空気なんですけどー。
「と、とりあえず、そういったサービスではないんやけど……、確かにベッドを使うまでは一緒やし……」
「……へ?」
「あ、いやっ、勘違いしたらあかんよっ! 癒しという点では間違ってへんけど、全く違うんやからねっ!」
「な、なんだか分かり難いけど、気にはなっちゃうな……」
「そ、それって、どっちの意味でっ!?」
耳まで真っ赤にしながら叫ぶ龍驤。
ちょっとだけ可愛いんですが。
「いやいや、龍驤が思っているようなことじゃないんでしょ?」
「そらそうや……って、なんやうちがエロいことを想像してるみたいやんかっ!」
「それって、どういった想像なのかな?」
「な、な、な……っ!」
龍驤は俺の顔を指差しながらワナワナと身体を震わせ、
「うわあああああんっ! 完全にセクハラされてもうたーーーっ!」
「ちょっ、人聞きが悪いことを叫ぶんじゃねえよっ!」
「先生に汚されてもうて、もうお嫁に行けへんやんかーーーっ!」
龍驤は大泣きしながら叫びまくり、猛ダッシュで俺から逃げ去った。
やばい……、これはちょっとばかりからかい過ぎただろうか。
どうにも反応が面白かっただけに……って、しまったぞ。
龍驤から明石の居場所について、ハッキリと聞いてなかったんですが。
自分自身の失態に気づいた俺は大きくため息を吐きながら肩をすくめ、空を見上げる。
夜空に光る星々は舞鶴と同じく、キラキラと輝いていた。
ただし、俺の心の中はどんよりと分厚い雲がかかってますけどね。
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是非、宜しくお願い致しますっ!
イベントでスペースに来て下さった方々に深くお礼申しあげます。
次回予告
まな板えもん……ではなく、龍驤と別れた主人公。
なんとか明石の元に辿り着いたのだが、ビスマルクとはまた違った厄介な艦娘であった。
そして遂に、主人公に最大の試練が舞い降りる……っ!?
艦娘幼稚園 第二部 第二章
~明石という名の艦娘~ その6「絶対絶命先生」(完)
乞うご期待!
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