艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 モテモテな主人公は滅べばばいいのです。

 遂にレーベとマックスまで落としてしまった主人公。
本人にはそんな気がなくても、そろそろオシオキ確定--と、思いきや、まさかの事態に陥っちゃう!?

 まぁ、踏んだり蹴ったりはいつものことなんですけどね。



その4「号泣したのは誰でしょう?」

 

 それから必死の思いでレーベとマックスを説得したのだが、何を言っても暖簾に腕押し状態の聞く耳持たずであり、徐々に俺の体力は奪われていった。

 

「ふうん……。世間体的には黙っておいた方が良いから、口外はしないわ」

 

「そうだね。先生との関係は、僕たちだけの秘密ってことだね」

 

「だーかーら、そもそもの時点でおかしいんだってばっ!」

 

「それと……、ビスマルクにばれたら面倒だから、幼稚園の中でもスキンシップはやらない方がいいわ」

 

「うぅ……、それはちょっと残念……かな」

 

「俺たちって、いったいどこまで進んじゃってんのっ!?」

 

 舞鶴幼稚園では子供たちの頭を撫でる程度で我慢していたのに、それ以上のことをしちゃったら限界突破は目の前じゃないかっ!

 

 ……………あれ?

 

 いやいや、それはおかしい。自分で言っといてなんだけど、我慢なんかしてないんだからね。

 

 ……うん、全くしてない。全然してない。断固してない。

 

 嘘じゃないから信用してよねっ!

 

「先生。私たちが艦娘として海上に出て、きちんと成長した暁にはちゃんとケッコンするから、それまでは我慢して待ってて……」

 

「フラグ建設とかそういうレベルじゃないでしょうがーーーっ!」

 

 俺はマックスが最後まで喋りきる前に、大声をあげて妨害した。

 

 これ以上の会話を続けていると、確実に俺の精神が病んでしまう。

 

 下手をすれば、本当に手を出しかねない……って、いやいや、そうじゃないからさぁっ!

 

「ともあれ、俺は2人と付き合うとかそういうんじゃないからっ! あくまで先生と教え子という立場であって、それ以上の関係は……」

 

「……ふうん。そう……なのね」

 

 すると俺の言葉を最後まで聞かず、勝手に納得するマックス。

 

 先に言葉を遮ったのは俺の方だけど、何やら怪しい雰囲気に顔をしかめてしまうのだが……

 

「つまり、そういうシチュエーションが興奮するのね……」

 

「全く分かってなーーーーーーーーーーーーーーーいっ!」

 

 両腕で頭を抱えて絶叫する俺。

 

 すでに俺の精神力ゲージは真っ赤に染まってしまっている。

 

「そ、そうなんだ……。うん。でも、先生が好きなら僕……頑張ってみるよ」

 

「頑張らなくて良いからっ! 頼むから普通にしてくれれば良いだけだからっ!」

 

「なるほど……。すでに先生は世間体を気にして、そういう風に言っているのね」

 

「間違ってないけど、理解の仕方がやっぱりおかしいからねっ!」

 

 どう説得しようが、全く効果がない。

 

 何を言ってもマックスが見事なまでに受け流し、更に悪化させた返事によって俺の心が削られる。そして、話の流れに乗ったレーベが追い打ちを決めてくれるのだ。

 

 まさに完璧なコンビ芸。

 

 ……いや、芸ではないと思うけど。

 

「とにかく、俺は2人に手を出したりするつもりはないからなっ!」

 

 こうなったらハッキリと言いきるしかない。

 

 拒絶し過ぎて泣かせてしまうのは不本意だが、背に腹は代えられないからね。

 

「……ふうん。放置プレイなんて、先生は相当マニアックなのね」

 

「ビスマルクと変わらないって思えてきたんですけどっ!?」

 

「気のせい……よ」

 

 そう言ったマックスだけど、それじゃあなんで目を逸らしているのかなっ!?

 

 しかし、全く太刀打ちできていない俺がこれ以上何を言ったところで、状況を変えられるとは思い難い。

 

 ならば考え方を変えるしかないと、俺は頭を捻りながら流れを整理することにした。

 

 まず、マックスが俺とビスマルクの関係について聞いてきた。それに対して俺が少し分かり難い質問をしたことによって、誤解が生じたのだ。

 

 2人は俺のことを好いてくれている……と、思うのだが、それはそれでありがたい。だけど、あくまで先生と教え子という関係以上に進むつもりはないのだから、過度な期待や行動は勘弁願いたいのである。

 

 そりゃあ、上目遣いのレーベが可愛過ぎて、自室にお持ち帰りしそうになっちゃったけれど……。

 

 その件は水に流して貰いたい。完全に心の中の、言葉の綾というモノだ。

 

 とにかく、その後2人のアタックが始まったのだが、本元の質問に答えていないのが悪いのではないのだろうか。

 

 それならば――と、俺は2人の方へ顔を向けて口を開く。

 

「とりあえずハッキリ言っておくけど、俺はビスマルクと良い関係になりたいとは思ってないか……ら……」

 

 言い終える前に、俺の目に映ったモノ。

 

 それは――、不機嫌な表情で扉の前に居た、ビスマルクの姿だった。

 

「………………」

 

 両腕を抱き、仁王立ちと言わんばかりのポーズで俺を睨みつけるビスマルク。

 

 その身体は小刻みに震え、徐々に表情が崩れていき、

 

「嫌われた……。あなたにに嫌われてしまったなんて……うわああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっんっっっ!」

 

 そのままの体勢で、滝のような涙を流しながら大泣きした。

 

 ついでに、あまりの鳴き声の大きさに耳がほとんど聞こえなくなり、窓ガラスにヒビが入ってしまったのは御愛嬌ということにしておこう。

 

 いや、半端じゃないんだけどね……。

 

 

 

 

 

「うぐ……ひっく……」

 

「わ、悪かったから……。だから、泣きやんでおくれよビスマルク……」

 

「そ、それじゃあ、私のことが嫌いって言わないでくれる?」

 

「だからそれは言葉の綾だったんだって。俺がビスマルクのことを嫌いだなんて、言ったことはないだろう?」

 

「で、でも……、良い関係になりたくないって……」

 

「そ、そりゃあ、子供たちの前では言えないこともあるじゃないか……」

 

「そ、そうよね……。ふふっ、なるほど……ね」

 

「……え?」

 

「つまり、あなたは恥ずかしかった……。そういうことね?」

 

「あー、う、うん……。そんなところかなぁ……」

 

「それじゃあ仕方ないわね。良いわ、許してあげる」

 

「う、うん。ありがとね、ビスマルク」

 

「ええ、これくらいのことは大丈夫よ。なんたって、愛するあなたの彼女ですからっ!」

 

 ――とまぁ、こんな感じでいつも通りのビスマルクに戻った訳ではあるが。

 

 いやいや、だから違うんだって。

 

 いつの間に俺が彼氏というポジションになっちゃったんだよ……。

 

 そんなこんなでビスマルクに何度も慰めの言葉をかけ、話の流れでそう言ってしまったとフォローをして泣きやんだのは、それから1時間以上が過ぎた後だった。

 

 立ち直ったビスマルクがまたもや勘違いをしてしまった感があるものの、あの状況で放っておくことはできないので、やむを得ずの判断である。

 

 もちろん、レーベやマックスに何か言われては余計に話がややこしくなるので、スタッフルームまで連れてきたのではあるが。

 

 ちなみにその際、プリンツが鬼のような形相で俺のスネを蹴りまくっていたんだが、ヲ級のアレと比べたらそれほど痛くもなかったので、半ば無視してビスマルクを連れ込んだのだ。

 

 あ、いや、もちろん連れ込んだという意味に疾しいことは一つもない。

 

 間違っても、勘違いしないように。

 

 そもそも、どうしてビスマルクは俺たちが居る部屋に来たのだろうと思ったのだが、俺がレーベやマックスを説得しているうちに叫ぶことになってしまい、五月蠅くて授業に集中できないとプリンツが怒りだしたからだそうだ。

 

 つまり、結果的に俺が起こした自業自得であり、またもや持ち前の不幸スキルを発揮した……と、いうことである。

 

 唯一の幸運は、ビスマルクが俺を調教しようとしなかったことくらいであるが、大泣きの方も面倒ではあったからね。

 

 うむ。相変わらずなだけに、怒りを向ける矛先が全くない。

 

 ついでに言うと、佐世保に愚痴る相手も居ないので、ストレス発散がし辛いのである。

 

 さすがに安西提督を誘う……なんてことは、いくらなんでもしない方が良いだろう。あの人の性格上断られないような気もするが、提督業で大変なのに愚痴を聞かせるというのは、まさに鬼畜の所業である。

 

 もちろん、ビスマルクをもう少し慰めるという意味で食事誘う手もあるが、それをすると更に悪化しないとも限らない。

 

ただでさえビスマルク誘惑に、プリンツの攻撃、レーベとマックスが名乗りをあげたのだ。

 

 幼稚園にはもう1人のユーが居るが、仲間外れにしては可哀想だろう……なんてことは思ったりしない。今の段階で身体が持たないのに、更に問題が増えるのは本気で避けておきたいからね。

 

「……あら、もうこんな時間ね」

 

 ビスマルクの声に気づいた俺は、スタッフルームの壁時計に目をやってみる。

 

 時間は夕方より少し前。終業時間は30分先である。

 

「なんだかんだで、今日は授業をちゃんとやれなかったよなぁ……」

 

「それじゃあ、今日はこの辺で良いんじゃないかしら?」

 

「いやいやいや、まだ時間残ってるよっ!?」

 

「えー、もう早退で良いじゃないー。早く食堂に行って、ビールを飲みたいー」

 

「やっぱり全く変わってないーーーっ!」

 

 どれだけ泣きまくっても、ビスマルクが変わるようなことはなかったみたいである……と、俺はガックリと肩を落とす。

 

 そこにバシバシと、身体中に響いてしまう平手を叩きつけるビスマルク。

 

 マジで痛いので止めて欲しいところではあるが、泣かしてしまった負い目から言うことができず、俺は仕方なくされるがままだった。

 

 

 

 

 

 結局、押し切られる形で幼稚園は早目に終業となり、ビスマルクは気分良く食堂に向かって行った。

 

 その際、俺は何度も食事に誘われたんだけれど、少し考えるところがあってお断りしたのだ。

 

 このままでは幼稚園の業務はグダグダになってしまう。それを直すには、俺がしっかりと頑張らなければならないのだ。

 

 それにはまず、本元であるビスマルクを落とさなければならない。

 

 ここでもう一度注意しておくが、女性医師やレーベたちが言ったような恋愛的な方法でも、目的を達成できるかもしれないだろう。しかしそれをした場合、舞鶴に残してきた愛宕がどうなってしまうのだろうか。

 

 これが俺の思い過ごしとなれば、それはそれでへこみ倒してしまうことになってしまうのだが、それについては考えなくても良い。

 

 ようは、ビスマルクを一端の教育者に仕立て上げれば良いだけなのだ。

 

 まぁ、それが簡単でないことは重々分かっているけどね。

 

 ぶっちゃけちゃうと、本当にできるのだろうかと不安になってしまうのではあるが……。

 

 それでも俺はやるしかない。どうにかしてビスマルクを教育し、胸を張って舞鶴に帰るのだ。

 

 ここでの教育がビスマルクの調教と同じでないことだけは、ハッキリと言っておく。

 

 俺にはそんな趣味は……ない。

 

 ないと……思うはず……だ。

 

 ………………。

 

 それも……ありなのか……?

 

 いやいや、そうじゃなくて。

 

 それよりも、今度こそ愛宕と一緒になるように……。

 

 ………………。

 

 うむ、素晴らしい。

 

 

 

 それから暫くの間、スタッフルームで1人クネクネと体をよじらせている男性が居たという噂が流れたけれど、聞かなかったことにしておいた。

 

 

 

 まさに、自業自得である。

 




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次回予告

 号泣したのはビス子でした。

 もう先生は変態でいいんじゃないかな。
しかし、ビスマルクを一端の教育者とするにはまだまだダメだ……と、主人公は明石の元へ向かうことにした。

 だが、良く考えれば明石の居場所が分からない。
そんなとき、助けてくれるのはいつもの艦娘。

 ――そう。まな板えもんの登場です(ぉ


 艦娘幼稚園 第二部 第二章
 ~明石という名の艦娘~ その5「憲兵さん、こっちです」

 乞うご期待!

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