艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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※6月21日、インテックス大阪で開催される我、夜戦に突入す!3【獄炎】の4号館B37aにて、時雨のスピンオフ同人誌を新刊を頒布予定でありますっ!
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※色んな意味でキャラ崩壊を起こしていますが、あたたかい目で見守って頂けると嬉しいです。

 転勤と呼び出しの理由を知った主人公。
ビスマルクは以前から誘っていたことを、現実にしたのであった。

 しかし、そうなれば問題が。
障害がなくなったビスマルクは、ここぞとばかりに暴走し……


その5「逆光源氏計画」

「そういうことだったのか……」

 

 衝撃の告知後――

 

 スタッフルームに通された俺は、ソファに座りながら貰ったコーヒーを飲んで一息つき、ビスマルクの説明に耳を傾けていた。

 

 しかし、驚くにも程がある。

 

 誰に聞いても行けば分かるの一点張りだったのは、まず間違いなく俺を驚かせるためだったのだろう。それにしたって少しばかり性質が悪いと思うんだが、元帥ならまだしも高雄が乗ったのは……ビスマルクとの関係があるからだろう。

 

「……その感じだと、高雄は何も言っていなかったって、ことでしょう?」

 

 ビスマルクはそう言いながら、少しばかり不満気な表情を浮かべていた。

 

 やっぱり高雄とは犬猿の仲らしく、名前を呼ぶ時点で嫌そうだ。

 

 でも、以前に直接会ったときは、そんなに悪い関係でもなさそうでは……あったようななかったような。

 

 まぁ、その辺りは本人たちでどうにかしてもらうことにしよう。

 

「元帥も高雄も……、そして安西提督すら言ってくれなかったよ。舞鶴に居る二人はともかく、安西提督まで隠しているとは思わなかったけど、これってやっぱりビスマルクの差し金なのか?」

 

「なぜ私がそんなことをしなければならないの? 馬鹿なの? 死ぬの?」

 

「ちょっ、それっていくらなんでも言い過ぎじゃね!?」

 

 どこぞのツンデレ魔法使いになっちゃってるじゃねえかっ! それじゃあ何かっ、俺はビスマルクの使い魔になっちまうのかっ!?

 

 あっ、でもそれだったら契約のキスをされちゃって……、もうお嫁にいけないっ!

 

 ………………。

 

 いやいや、ちょっと待て。

 

 内心ノリで言ってみたが、お婿じゃないところはどうしてなんだ。これってやっぱり天龍たちの発言が原因なのか?

 

 それって完全に洗脳されてるってことですよねっ!?

 

 ダメだ! これはどうにかしないと手遅れに……なんて思っていると、

 

「とりあえず、あなたを舞鶴から呼び寄せたのは、幼稚園の運営を手伝ってもらうためよ。だから、これからは私をご主人様と呼びなさい」

 

 あながち間違っていなかったーーーっ!

 

「冗談よ……と、言うつもりだったけれど、あなたの目を見たら本気でそうしようかと思ってきたわ」

 

「いや、マジで勘弁して下さい……」

 

「あら、残念ね」

 

 言葉は軽いけれど、本気で残念そうな顔をしているのは気のせいでしょうか……?

 

 以前から口説かれていたことを考えれば本気と書いてマジなんだろう。

 

 だが、俺には愛宕という最愛の女性が居るのだ。転勤によって離れ離れになったとしても、俺の心は揺るがないぜっ!

 

「せっかく私のフルコースを準備しておいたのに……。これを断るなんて、凄くもったいないわよ?」

 

「え、えっと……、それはどういう……?」

 

「ふふっ、聞きたいかしら?」

 

「いえ、遠慮しておきます」

 

 シニカル過ぎるビスマルクの笑みに恐れをなした俺は、ブンブンと首を激しく振って断った。

 

 フルコースという言葉に騙されてはダメだ。それは間違いなく、料理かなんかではない。

 

 いや、料理という言葉自体は正解かもしれない。ただし、俺がその材料になってしまいそうだけどね。

 

「それ以外に聞きたいことはあるかしら?」

 

 本当に残念そうな顔を浮かべながらため息を吐いたビスマルクは、俺に向かって問いかける。

 

「んー、そうだな……」

 

 色々と聞きたいことは山ほどあるけれど、さっきから攻められっぱなしというのはどうにも良くない。俺はさっきの仕返しとばかりに、尋ねることにした。

 

「そういえば、ここにくる途中で1人の艦娘から聞いたんだけど、ビスマルクって彼氏がいたんだよね?」

 

「ふえっ!?」

 

 俺の言葉を聞いた瞬間、ビスマルクは大きく目を見開いて可愛らしい声をあげた。

 

「いやー、なかなか隅に置けないよなー。ビスマルクって美人さんだし、性格も良いからさぞもてると思っていたら、すでに彼氏持ちとは……いやー、残念だなー」

 

「あっ……、そ、それは……」

 

 顔を真っ赤にしたビスマルクは、どう答えて良いのか分からずにしどろもどろになっている。

 

 こうかはばつぐんだ!

 

 よし、ここは畳みかけるが吉!

 

 俺を困らせた仕返しを、存分にやってやるぜっ!

 

「俺ってまだ独り身だし、そろそろ身を固めても良いかなぁとか思っていたんだけれど……仕方ないかー」

 

「えっ!? そ、それって……」

 

「まぁ、俺も舞鶴に最近良い感じになってきている人がいるから、おあいこと言えばそうだよねー。

 俺、舞鶴に帰ったら、彼女とケッコンするん……」

 

「……待ちなさい」

 

「んがっ!?」

 

 掴まれた。

 

 それはもう、ガッチリと頭のてっぺんを思いっきり鷲掴みにされちゃいました。

 

 つーか、マジで痛ぇっ! このままだと頭がスイカのように割れちまうっ!

 

 艦娘の腕力マジパネェーーーッ!

 

「私が居るのに、浮気をしていたってことかしら?」

 

「い、いやいやっ、なんでそういうことになっちゃうのっ! 別に俺たち付き合っていないよねっ!?」

 

 あ、俺たちとか言っちゃった。

 

 なんだかちょっとだけ恥ずかしい……って、そんなことを言っている場合じゃないほど痛いから……

 

 ………………。

 

 …………。

 

 ……あれ、痛くない?

 

 頭は未だビスマルクに掴まれているけれど、痛みはほとんど感じない。しかし、いつでも握り潰されてしまうような感覚からは、さっさと逃げ出したいところなんだけど……。

 

「お、お、お……」

 

「……おおお?」

 

 なんだかビスマルクの顔が更に真っ赤になって……、身体が小刻みに揺れてませんかね?

 

 できればついでに、頭を掴んでいる手を離してくれるとありがたいんですが……。

 

「お、俺たちだなんて……、そ、そんな……」

 

「……へ?」

 

「あ、あなたが良いなら……、その、私は……えっと……、べ、別に良いのよ?」

 

「……はい?」

 

 ビスマルクはいったい、何を言ってるんだ?

 

 龍譲は俺のことをビスマルクの彼氏だと勘違いしたが、それは間違いだった訳で……

 

「う、浮気の一つや二つくらい……、許してあげなくもないわっ!」

 

「………………」

 

「私は寛大なのよっ! さあ、敬いなさい! そして私を愛するとここで告白しなさいっ!」

 

 なぜかビスマルクの背中辺りに後光が見えるくらい光り輝いている。というか、完全にキラキラ状態だ。

 

 つーか、どれだけ上からなんだろうと思ってもみるが、ビスマルクの顔は真っ赤に染まったままなんだし、結構恥ずかしかったりするんだろうが……

 

「なんでやねんっ!」

 

 あ……、龍譲のがうつっちゃった。

 

 まぁ、出身が近いから時々出ちゃうけど……って、冷静に判断している場合じゃねぇっ!

 

「い、いや……、ビスマルクはいったい何を言っているんだ」

 

「なに? もしかして、私のことが嫌だって言うの?」

 

「突発過ぎてついていけないだけだよっ!?」

 

 そもそもビスマルクには彼氏が居るんじゃなかったのかっ!?

 

 だからこそ仕返しとばかりにやったのに、なんでこんな展開になっちまってるんだよっ!

 

「あ……、そう、そうね。私が間違っていたわ……」

 

 すると、なぜか急に納得したような顔を浮かべ、俺の頭を掴んでいた手をゆっくりと離してくれた。

 

 ふぅ……、助かった……。

 

 どうやらこれは、若気の至りみたいなやつだろう。もしくは恥ずかしさによる照れ隠し。

 

 ビスマルクの表情を見る限り後者のようだが、これ以上からかうのはマズイ気がするので突っ込みは避けておくべきだ。

 

「ご、誤解が解けて……何よりです……」

 

 俺は辺り触りない言葉を呟いてから、大きくため息を吐いたのだが、

 

「誤解? 何を勘違いしているの?」

 

「……え?」

 

「あなたがここに居る間に、しっかりと調教してあげるわ」

 

「………………は?」

 

 ビスマルクは何を言っているんだろう。

 

 俺みたいな至って普通の青年を調教するだなんて……、どういう了見ですかっ!?

 

 ちょっとばかり子供たちに好かれやすいけれど、昔から不幸がまとわりついて踏んだり蹴ったりの日常にも我慢しつつ、なんとか頑張っているだけの俺をそんな……そんな……っ!

 

 ビスマルクに調教されるとか、どんなご褒美……じゃなくて、不幸なんですかーーーっ!?

 

 マジで扶桑が言ってた通り、俺の方が断然不幸に感じてきたよっ!

 

 誰か俺のステータスをマジで測ってくんないかなっ!?

 

「そう……、私好みの従順なドMに……」

 

「大問題発言は禁止ーーーっ!」

 

 何を言っているんですかビスマルクはーーーっ!?

 

 そんな言葉、幼稚園の中で使っちゃいけませんっ!

 

 スタッフルームだからといって、油断したらダメなんだからねっ!

 

 例えば――そう。俺のロッカー内に忍び込んで、カッターシャツをクンカクンカする子供だっているんだからよぉっ!

 

 それに、そんな趣味はひとかけらも持っていませんからっ!

 

 ………………。

 

 …………。

 

 ……たぶんだけどねっ!

 

「これぞ光源氏計画よっ! ついに私もこの国に馴染むことができるのねっ!」

 

「使い方が微妙に違うし、頭に逆がつかなきゃ変だからねーーーっ!」

 

 俺の叫びは新築の幼稚園内に響き渡るどころか、鎮守府に居る大半の人が聞こえていたらしい。

 

 着任早々、新たな噂を作ってしまう俺。

 

 そして、助けを呼ぼうにも舞鶴からは非常に遠い佐世保の地。

 

 どう考えても、枕を涙で濡らさない日々は当分の間訪れないのではないかと思う今日この頃。

 

 これからいったいどんな惨事が起こるのかと思うと、すでに心はズタボロです。

 

 さぁ、久しぶりに、心の奥底で泣きましょう。

 

 しくしくしく……ってね。

 

 

 

 お後はよろしくないよっ!

 




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次回予告

 大暴走のビスマルクを止めることができず、心の中で泣きまくる主人公。
しかしこのままでは前に進まないのでと、幼稚園の中を案内してもらうことになる。

 そして、子供たちの前に立ったとき、またもやデジャヴが襲い来る……?


 艦娘幼稚園 第二部
 ~流されて佐世保鎮守府~ その6「色んなところが瓜二つ」

 乞うご期待!

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