艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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※今話で青葉編が終了し、同人誌用の執筆のために暫く艦娘幼稚園の更新はストップ致します。
 ですが、艦これ二次小説「深海感染」の更新を引き続き行いますので、そちらの方を宜しくお願い致します!

 また、艦娘幼稚園の更新再開は深海感染の前書き&後書きにて告知すると思いますので、宜しければチェック並びにお閲覧をお願い致します。


 那珂の身体を元に戻すことができました。
写真の方はちょっと残念でしたけど、新聞は発行できそうなので良かったと思っていたんですが……

 まさかまさかのオチの嵐が、青葉を襲っちゃてますっ!?


その11「オチの嵐」(完)

 

 結論から言いますと、色んな方のおかげで那珂の身体は元通りに戻る事ができました。

 

 この結果を受けて青葉は元帥に褒められ、ちょっとしたボーナスを受け取る事もできました。

 

 報酬的には大きくなかったですが、レポートは新聞で発行しても良いという許可も貰ったので、結果的に満足ですね。

 

 できればあの写真を売り物リストに入れたかったですけど、さすがにそれをやったら最後、川内型の三人から地の果てまで追いかけられちゃうかもしれませんし。

 

 ここは新聞の売り上げで懐を温めつつ、薬の方で何かできないかと企もうと思っていたんですが……

 

 

 

「身体を元に戻せる薬があると聞いて来たんですけどっ!」

 

 そう言いながら鼻息を荒くしていたのは、幼稚園に通っている比叡でした。

 

「え、えっと……誰からその話を……?」

 

「那珂ちゃんさんに聞いてきましたっ! ぜひその薬を私にっ!」

 

「霧島にも宜しくお願いしますっ!」

 

 更には比叡の妹である霧島も一緒に居たんですが、確かにこの二人は那珂よりも前に子供化してしまった艦娘でしたよね。

 

 佐世保の明石が神通に教えた『応急修理女神の強制使用』を初めて行った二人ですし、確かに那珂が治ったのならば……と、欲しがるのも無理はありません。

 

 しかし、長女である金剛が幼稚園児である以上、元の身体に戻ってしまえば佐世保から来た意味が無くなるのではないでしょうか……?

 

「そ、それは確かに……金剛お姉様と一緒に居られなくなる可能性がありますけど……」

 

「べ、別に霧島は先生にアタック……いえ、なんでもありません」

 

 ははぁ……なるほどー。

 

 確か佐世保に来た際に先生と一悶着を起こしたと聞いていましたが、最近仲が良くなっていると思ったらそういう事だったんですねー。

 

 うむむ……先生ったら本当に子供達に気に入られ過ぎです。さすがの青葉も呆れ返っちゃいそうですが、それはそれで先生らしいと言えなくもありません。

 

 しかし、元の身体に戻った二人が先生にアタックするとなると、青葉としても見過ごす訳にはいきません。ですが、ここで断るのもまた難しいんですよね。

 

 薬の効果を試したのは那珂だけですし、信憑性を高める為にと考えれば青葉にとって不利益では無い筈です。それにもう一度愛宕に頼めば薬の方は何とかなるかもしれません。

 

 新聞の方にも追加情報が載せられますし、情報量は申し分なしになりますからねー。

 

 まぁ、先生へのアタックの方は、上手く誘導すればなんとかなるでしょう。

 

「分かりました。それじゃあ、この瓶の中身を決まった分量だけ飲んで下さいね」

 

「あ、ありがとうございますっ!」

 

「これで元の身体に戻れば……」

 

 満面の笑みを浮かべた比叡に、眼鏡をキラリと光らせた霧島は、においと苦さに耐えながらも薬を飲み干しました。

 

 そして――那珂と同じ様にまばゆい光を発した後、子供の姿から元の艦娘の姿へと戻った二人が、ビックリした顔で立ち尽くしていました。

 

「きっ、霧島が全裸で不適な笑みをっ!?」

 

「ひ、比叡姉様こそ一糸纏わぬ姿で仁王立ちをっ!?」

 

「「きゃああああっ! いったいなんでこんな事にーーーっ!?」」

 

 ――とまぁ、予想できた結果に青葉は頷きながら、もちろん写真に収めさせて頂きました。

 

 ただ、残念ながら那珂の時と同じ様に、完全ブチ切れモードになってしまった二人にカメラを破壊されてしまいまして……うぅぅ……

 

 自業自得と言われればそれまでですけど、相手は戦艦で二人掛かりですから仕方がないですね。

 

 そうして、全ては丸く収まった……と、思っていたんですが……

 

 

 

 

 

「………………」

 

「………………」

 

「な、なぜなんでしょうか……?」

 

 比叡と霧島が薬を飲んでから一時間後。

 

 二人は青葉の部屋にやってきたんですが、もの凄く怒っている顔で仁王立ちをしながら、青葉を見上げていました。

 

「言いたい事は無いのですか?」

 

「今なら言い訳くらいは聞いてあげますが?」

 

「い、いや……青葉もさっぱりでして……」

 

 冷や汗をかきながらそう言いましたが、正直青葉もビックリしまくっているんです。

 

 だって二人の姿は……その……

 

 

 

 子供の姿に戻ってしまっているんですから。

 

 

 

「どうしてこうなったのか教えて下さいっ!」

 

「だ、だから青葉では全然分からないんですよぉっ!」

 

「薬を持っていたのは青葉なのでしょう? ならば分からない筈がありませんっ!」

 

「ですから、薬を作ったのは愛宕さんなんですってーーーっ!」

 

「ならすぐに理由を問いただしてきて下さいっ!」

 

「わ、分かりました……しくしく……」

 

 ――と、こんな風に問題が発生してしまったのです。

 

 青葉は言われた通り愛宕の所へ行き、二人に説明して欲しいと何度も土下座をして頼み込み、なんとか部屋までご足労を願ったのでした。

 

「あらあら~。見事に縮んじゃって……って、いつも通りなんですけどね~」

 

「そ、それはそうですけど、薬を飲んだ直後は元の身体に戻っていたんですっ!」

 

「それから30分程は問題ありませんでしたが、急に身体が光り出したと思ったら元に……」

 

「ふむ~……そうですねぇ……」

 

 愛宕はそう言って、大鯨から借りてきた本をペラペラとめくりながら二人の姿を見ていました。

 

「ちなみに、比叡ちゃんと霧島ちゃんが子供の姿になったのはいつの頃でしたか~?」

 

「えっと……確か、3ヶ月程前だった筈ですけど……」

 

「明石さんに治療を受けてこの身体になって、意識を取り戻した時からになるのなら、正確には94日と7時間と言うところでしょうか」

 

 二人の性格の差なのか、答えの正確性が極端に違いますけど……霧島はそこまで覚えていたんですね……

 

「あ~……うん、なるほどなるほど~」

 

 すると二人の返事を聞いた愛宕が急に本を読みながら頷きました。

 

「「……?」」

 

 その仕種に少し困惑したような表情を浮かべた二人ですが、すぐに愛宕は苦笑を浮かべて本を閉じました。

 

「タイムオーバーの様ですね~」

 

「は……はい……っ!?」

 

「どうやらこの薬で子供化してしまった身体を元に戻せるのは、変化してから一ヶ月以内なんですよ~」

 

「「えええええっ!?」」

 

「ですから、比叡ちゃんと霧島ちゃんが元の身体に戻るには、この薬では効力が足りてないんですよね~」

 

「そ、それじゃあもっと強い薬を飲めばっ!?」

 

「う~ん……この本にその様な薬を作る方法は書いていないですねぇ~」

 

「そ、そんな……それでは先生に……」

 

「あらあら、どうしたんですか霧島ちゃん?」

 

「い、いえっ、なんでもありませんっ!」

 

 愛宕の問いに慌てふためいた霧島は眼鏡の位置を直す振りをして、冷静さを取り繕っていました。

 

 ふむー……なるほど。薬の効き目は期間が限定されるんですねー。

 

 しかしそれだと、わざと子供化したり大きくなったりする薬を作れたとしても……安定しなかったり期間限定になっちゃうから……危険度が増しちゃうという事でしょうか。

 

 むむむ……どうやらこの薬を改良して一儲けという企みは、止めておいた方が良いかもしれませんね。

 

 問題が起きてしまったら最後、責任を負いきれる自信がありませんし、地の果てまで逃げるのはさすがに嫌ですからねー。

 

 旨い話には裏がある。

 

 やはり、地道に稼ぐのが一番って事ですねー。

 

 

 

 

 

 まぁ、そんなこんなで今回の一騒動は終わった……と、思われていました。

 

 ただ、どうやら青葉は……いえ、皆さんが完全に忘れていた事があったんですよね。

 

 それが分かったのは、次の日の事でした。

 

 

 

「しくしくしく……」

 

 泣きながら青葉の部屋にやってきた一人の子供。

 

 昨日と同じ光景に冷や汗タラタラの青葉なんですが、さすがにかける言葉がありません。

 

 ――そう。比叡と霧島の二人が子供化した事を何人もの人や艦娘と話をしましたが、一向にこの子の事は出てきていませんでした。

 

 青く長い髪の毛が特徴的な、佐世保からやってきた艦娘。

 

 五月雨が……大粒の涙を流しながら青葉に訴えていたんです。

 

「元の身体に……戻れないんですよね……?」

 

「ざ、残念ながら比叡と霧島が薬を飲んだ結果は……今伝えた通りです……」

 

「そ、そうですか……愛宕先生から聞いた通りなんですね……」

 

「もし新しい薬ができたらお伝えしますけど……今のところその予定は無いみたいです」

 

「それじゃあ仕方ないですよね……」

 

 そう言った五月雨は泣くのを止めて、強がる風に笑みを浮かべました。

 

「結果的に戻れなかったんですから、しょげていたって仕方がないです」

 

「そ、そうですよっ! 前向きに生きていれば何とかなる筈ですっ!」

 

「ですよねっ。ドジッちゃっても、凹んじゃダメですよね」

 

 五月雨の言葉に笑みを浮かべながら青葉も頷いたのですが……

 

「たとえ忘れ去られていても、一生懸命頑張れば何とかなりますからっ!」

 

「うぐ……っ」

 

「それじゃあ、五月雨は今日も幼稚園で頑張ってきますっ! 青葉さんどうもでしたっ!」

 

「は、はい。で、ではまた……」

 

 深々とお辞儀をして部屋から出ていく五月雨の背を見ながら、非常に申し訳なく思う今日この頃……

 

 もう少しだけ、周りに目を配った方が良いですよね……と、後悔したのはここだけの話です。

 

 

 

 

 

 あと、余談ではあるんですが、

 

 明石の言葉が気になった青葉は、時間が空いたのを見計らって医務室に行ったんです。

 

「あー……見事に胃に穴が空いているねぇ……」

 

 レントゲン写真を見た艦娘専門医師が苦笑を浮かべながら言ったのを聞き、マジ凹みしたのは胸の内にしまっておく事にしました。

 

 そして身体を休める為に休養申請をしようと考えながら、医務室から出ようと思ったんですが……

 

「うーん……うーん……」

 

 あれ、なんだか奥の方で呻き声が聞こえるんですけど……

 

「あ、あの……奥の方は大丈夫なんでしょうか?」

 

「ん、あぁ。奥で元帥が寝込んでいるんだけどね……全くもって原因が分からなくて困っているんだよ」

 

「……え?」

 

「外傷も無いし内蔵にも問題が無いのに、針で刺されたような痛みや発疹が出るんだけど……なんかの呪いでも受けちゃっているんじゃ無いかな?」

 

「い、いやいや……お医者さんの先生がそんな事を言っちゃったら……マズくないですか……?」

 

「あ、あはは……そうだね。今のは聞かなかったという事にしておいてくれるかな」

 

「え、ええ。青葉了解です……」

 

 言って、医務室から出た青葉の脳裏に浮かんだのは、千代田と食堂で話していたあの言葉……

 

 

 

「でも、さっきの材料って本当に凄いわよね」

 

「ですねー。よくもまぁ、あんなのを持っているって話ですよー」

 

「うんうん。それもそうだけど……」

 

 そう言った千代田は少しだけ顔をしかめて頬を掻きました。

 

「……何か、気になる事でも?」

 

「いや……ね。持っているって事は、使うつもりだったっのかなぁと……」

 

「た、確かに……」

 

 

 

 もしかして、黒魔術で……なんて事はないですよね……?

 

 あは……あはははは……

 

 

 

 艦娘幼稚園スピンオフシリーズ

 青葉の取材遠征日記 完

 





 はい、これにて第二回スピンオフ青葉編終了でございますっ!
いやぁ……色々とやりすぎちゃいましたねー。でも、書きながら笑えてたんで良しとしましょう。

 青葉編では複数のオチを導入し、かつ全部を見破られないように……と、そんな考えを持って構成してみました。
もちろん、青葉が主人公なのでシリアスなんてものは極端に排除し、イケイケドンドンで書いちゃいましたが……温かい目で見守ってくれると嬉しいです。


 さて、以前よりお伝えしました通り、今話を持って暫く艦娘幼稚園の更新は休止させて頂きます。理由は同人誌用の執筆に集中するためです。
より良い作品を目指すため、申し訳ありませんがお待ち頂けますようお願い致します。

 また、現在並行して更新しています「深海感染」の更新は引き続き行います。
既に―ZERO―の完結まで書き終えておりますので、次回の艦娘幼稚園まで繋ぎとして読んで頂けますと嬉しいです。

 艦娘幼稚園の復帰情報も深海感染の前書き&後書き、ツイッター等で告知致しますので、宜しくお願い致しますね。


 確定情報ではありませんが、ここで少しばかり情報を。

 6月中旬に行われます大阪でのイベントで、艦娘幼稚園シリーズの新刊同人誌を頒布できるように段取り中です。進み次第告知させて頂きます。

 艦娘幼稚園の復帰章は、青葉に続いた順位であった「しおい編」を考えてます。

 ではでは、これからも艦娘幼稚園、並びに深海感染やその他の作品を宜しくお願い致します。


 リュウ@立月己田


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