「深海感染」というタイトルで更新していきますので、宜しくお願い致します!
大鯨から本を預かり、やっと舞鶴に帰ってくる事ができました。
ですが、本を読もうとした青葉に更なる悲劇がやってきますっ!?
そして……貴方はいったい何者なんですかーーーっ!
舞鶴鎮守府に帰って来た青葉は早速元帥に報告をしようと、指令室を訪れました。
「青葉帰投しましたっ。突撃インタビューをしちゃいます?」
初っ端から掴みはオッケー! これで元帥もニッコリと……
「あら、お帰りなさい。随分と、遅いお帰りで……」
「た、高雄秘書艦……っ!?」
「そんなに慌ててどうしたのかしら。私の顔に何かついている?」
「い、いえいえっ! なんでもありませんよっ!」
せ、背中にっ、真っ黒なオーラが『ゴゴゴゴゴ……』という効果音と共に沸々と湧き上がっているように見えるんですがっ!
やばいですっ、完全にお怒りモードですっ! 帰っていきなり修羅場直行コースですっ!
「ご、ごごごっ、ごめんなさいっ! 色々と調べているうちに遅くなっちゃいましたっ!」
「期限は決めていなかったみたいですから、構いませんけどね。それでも連絡くらいは寄こすべきですわよ?」
「も、申し訳ありませんですっ!」
「まぁ、反省はしているみたいですから不問にしますけど……成果はあったのかしら?」
「は、はいっ! 一応、それなりの物は……」
青葉はそう言ってから、高雄秘書艦に大鯨から預かってきた本を差し出しました。
「これは……?」
「大鯨と言う艦娘から預かってきたんですが……」
「な……っ! 青葉はあの大鯨に会ったのですかっ!?」
「え、ええ……ちょっとした成り行きと言いますか……なんと言うか……」
その答えに驚愕した表情を浮かべた高雄秘書艦はブルブルと肩を震わせながら、顔を左右に振って本を受け取ろうとしませんでした。
「分かりました。青葉は引き続き那珂の治療に専念して下さい」
「え……でも……」
「これ以上何も言わなくて良いわ。できるだけ早く、その本を持って外に出て行って!」
「は、はいっ!」
超強烈なメンチビーム……と、言わんばかりの睨みを受けた青葉は、逃げるように指令室から脱出しました。
い、いったい、大鯨と高雄秘書艦の間には何があったんでしょうか……
青葉、気になります……けど、調べたら最後な気がしてなりませんね……
取り敢えず言われた通り那珂の身体を治す方法を調べる為、本が読める場所を探して鎮守府内を歩いていました。
本を読む為にわざわざ場所を選ぶのか――と、お思いかもしれませんが、この本から感じる異様な雰囲気に一人で読むのは危険かもしれないという直感めいた何かを感じちゃっているんですよね……
本来ならば神通や那珂と一緒に読めば良いんですが、まだ治ると確定している訳ではないので、ぬか喜びさせるのも悪いと思ったからなんです。
しかし、そう考えると良い場所ってなかなか浮かんできません。別に友達が少ないからじゃないんですけど、今の時間的に任務や演習を行っている可能性が高いので、寮に戻っても期待できないんですよ……
「――となれば、やっぱりあそこが妥当ですかね」
困った時は何とやら――ではありませんが、いつも誰かが居るであろう鳳翔さんの食堂へと足を向けたのでした。
「こんにちわー」
「あら、こんな時間に珍しいじゃない」
入口の引き戸をガラガラと開けて挨拶をした青葉に、すぐ返事をしたのは千代田でした。
「ちょっと小腹が空いちゃったんですけど、お願いできますか?」
「んーっと、そうね……カレーパンなんてどうかしら?」
「おおっ、それはぜひお願いしたいですっ!」
「分かったわ。それじゃあ席で待っていてね」
千代田はそう言って、厨房へと向かいました。
食堂の中には数人の作業員と艦娘が居るようで、一人で本を読むよりかは幾分かマシだと思います。カレーパンを待っている間に大鯨から預かった本でも開いてみますかね――と、椅子を引いて座ってから、表紙をマジマジと眺めてみました。
表面は革張りで、箔押しの様に文字や模様にへこみがあります。これだけだと、少し高めのどこにでもある様な本に思えるんですが、問題は模様なんですよね……
「これって……明らかに魔法陣ですよね……」
なんだか黒魔術でも唱えられそうな雰囲気に、額に汗が浮かび上がってきます。なのに、本が触れている手の部分はヒンヤリと冷たい気がして……うぅ、怖いですよぉ……
でもでも、このまま中を見ないと言う訳にもいきません。せっかく他の人や艦娘が居る食堂にやって来たんですから、勇気を振り絞って開いてみる事にしましょう!
「ごくり……」
大きく唾を飲み込みながら、表紙をゆっくりと開きました。まずは白紙のページがあって、その次のページには……なんですかこれ……?
書かれている文字が英語のアルファベットに見えるんですが、ほんの少し違う様にも見えます。それに、明らかに文法と言うか単語にすらならない様な文字列に、どう読んで良いのかさっぱり分かりませんでした。
「むむむ……これはいったい、なんなのでしょう……?」
頭を捻りながら本を傾けたり反対に持ってみたりしてみますが、全くもって意味が分かりません。ペラペラとページをめくって絵が沢山載っているページを発見しましたが、その殆どが見た事が無いモノばかりで理解不能でした。
「読めないし理解できないじゃあ、借りてきた意味が無いですよね……」
真ん中くらいのページまで通して見てみましたが、同じ様なページが続いているだけにしか感じられず、大きくため息を吐いて机の上に置きました。
「カレーパン、お待たせしましたー」
「あぁ、ありがとです……」
「どうしたの青葉。さっきと比べて極端に元気が無くなったみたいに見えるんだけど」
「いやぁ……ちょっと困った事がありましてですね……」
「困った事?」
頭を傾げた千代田に本の事を説明する前に、持ってきて頂いたカレーパンにかぶりつきます。
「むぐむぐ……うーん、やっぱり美味しいですねぇ~」
「揚げたてだから余計にねー。昨日の残りのカレーを使っているから、味に深みが出ているのよ」
「やっぱりカレーは二日目ですねぇ……」
しみじみと答えながら本へと視線を移してみるものの、やっぱり理解はできそうにありません。
「なんだかヘンテコな本を読んでいるみたいだけど、もしかして困った事って言うのはこれかしら?」
「そうなんですよー。とある艦娘から借りてきたんですけど、中身が全く分からなくて……まいっちゃっているんです……」
「ふーん……ちょっと見せてもらって良い?」
「どうぞどうぞ」
言って、一旦閉じた本を千代田に渡してみましたが、数ページ開いたところで顔が困惑へと変わり、徐々に眉間にシワが寄った後、頭の頭頂部辺りから白い煙りがプスプスと上がってきました。
「………………」
「あ、あの……無理しなくても良いんですよ……?」
「な、何と言うか……その……」
「全然分からないですよね?」
「う……うん……」
千代田はげんなりとした表情を浮かべながら青葉に本を返すと、近くの椅子に座って机に俯せになるようにへたり込みました。
「うー……あー……」
「だ、大丈夫です?」
「頭がショートしちゃったみたいで、暫くダメかも……」
そんなになるまで読まなくても良いのに……と、思いながら大きくため息を吐きます。
しかし、どうして大鯨はこんな本を青葉に渡したんでしょうか?
普通に考えれば、本の内容を理解できないのは分かる筈なのに……ですが……
「あら~、青葉じゃないですか~」
「……え?」
急に真後ろから声が聞こえたので振り返ってみると、すぐ傍に最強の天敵と言えてしまう艦娘……幼稚園のドン……ではなくて、元第一艦隊の裏番長……でもなくて、愛宕が立っていました。
「あ、あああっ、愛宕……さんっ!?」
「あらあら~、そんなに驚いて、どうしたのかしら~?」
「い、いえっ、べ、別になんでもないですっ!」
ニッコリと笑みを浮かべながらそう言った愛宕ですが、完全に声に脅しが入っていました。
近くに座ってへたっていた千代田もそれを察知したのか、そそくさと立ち上がって厨房へと退避し……って、この白状者ーーーっ!
「そう? なら良いのですが~……」
明らかに青葉の内心を読み切っている様な口調で答えた愛宕でしたが、手に持っている本に気づいた途端に表情を一変させました。
「あらあら、その本……懐かしいですね~」
「えっ、愛宕さん……この本を知っているんですかっ!?」
「ええ。ちょっと昔に人体錬せ……ではなくて、色々と勉強したんですよ~」
「は……はいっ!?」
い、今……とんでもない事を口走った様な気がするんですが、表紙の絵柄にその言葉って……もしかしてこの本は、錬金術的なモノなんですかっ!?
それが本当なら、大鯨はなんで青葉にこんな危険そうなモノを渡したんですかっ!
「あれ……でも、その本……私が知っているのとは違うみたいですねぇ~」
「え……あ、そ、そうなんですか?」
……もしかして、青葉の思い違いでしょうか。そうだったら、ホッと一安心と言ったところなんですが。
「うん、そうですね~。どうやら私が読んだことのある本よりも、ずーーーっと高位魔術が沢山書かれている禁書みたいですよ~」
「なんてモノを渡すんですかあの人はっ!」
禁書ってなんですか禁書って!
そんなモノをむやみに貸し出すんじゃないですよっ! 何かあったらどうするんですかっ!
「しかし、どうして青葉がそれを持っているんでしょうか~? 不釣り合いにも程があると思うんですけどね~」
それは青葉も全力で同意しちゃいますっ!
でも今までの会話から分かる通り、愛宕がこの本を知っているのは確かなようです。つまり、内容を理解できる可能性が高い訳ですから……ここを逃す手はありませんっ!
「実は、那珂の身体が子供化しちゃった事件について色々と調べていたんですが……」
「あぁ、そう言えば先日そんな事がありましたね~」
愛宕がニッコリと笑みを浮かべると、両手を叩いて頷きました。
「元帥に許可を貰って佐世保に行ったりしていたんですけど、ひょんな事から出会った艦娘からこの本を借りて来たんです」
「ふむふむ、なるほど~。ちなみにその艦娘って、どなたなんですか~?」
「大鯨……って名前の艦娘なんですが……」
「……ヤン鯨ですか。それなら納得できちゃいますね~」
「……えっ!?」
「いえいえ、こっちの話ですよ~。そう言う事なら納得がいきますね~」
そう言った愛宕は「あはは~」と笑っていましたけど、一瞬だけガチで怖い顔をしていましたよっ!?
何か確執でもあるんでしょうか……? でも、それを問いただそうとしたら確実に殺られてしまう気がしてなりません……
君子危うきに近寄らず。触らぬ神に祟りなし。
さすがの青葉もここは退かざるを得ません。本音を言えば、愛宕に絡むのは極力避けたいです。
でもまぁ、那珂の身体を治す事が最優先ですし、同じ仲間である以上協力してくれるでしょう。
「そ、それでもし良ければ……この本を読んで、子供化した身体を治す方法を調べて欲しいんですが……」
「構いませんよ~。それに、是非本の中身を拝見したいと思っていましたから~」
「それじゃあ、宜しくお願いしますっ!」
素早く立ち上がって大きく頭を下げてから、愛宕に本を渡しました。
後は愛宕に託すのみ。青葉にできる事は、もうこれしかありません。
ペラペラとページをめくりながら中を拝見する愛宕の動作を見つめながら、青葉はギュッと拳を握り締めました。
※新規の艦これ二次小説を公開開始しております!
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次回予告
愛宕裏番……もとい、先生はいったい何者なんですかっ!
そんな青葉の心とは裏腹に、ついに那珂の身体を元に戻す方法が判明する。
そして……那珂ちゃんパワーアップ!?
艦娘幼稚園 スピンオフシリーズ『青葉の取材遠征日記』
その10「スキャンダル写真?」
乞うご期待!
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