ビックリ仰天な青葉ですが、更なる恐ろしさが現れるっ!?
出てきた料理に驚き、逃げる方法を思いつきながら……更に悪化っ!?
はたして青葉は無事にこの島から脱出する事が出来るのかっ!
そして、那珂の身体の解決法はどうなるのかっ!
………………
やばいです。マジやばいです。
完全に青葉が失敗でした。深海棲艦なめていました。
「ドウシタ、食ベナイノカ?」
「あ、いや……い、頂きます……」
目の前に置かれた料理の数々……いえ、これを料理と言っちゃって良いんでしょうか?
見た目は完全に黒焦げの魚の様な物体から、未だプスプスと黒い煙が上がっています。他のお皿にはまだマシに見えてしまうお刺身みたいなモノもあるのですが、問題は活き造りなんですよ……
つまり、切り身だけじゃなくて……姿形が丸々残っていて……どんな魚かが分かってしまうのですが……
見た目がマジでヤバいですって! 何ですかこの不細工な顔っ!
ブヨブヨの人の様な感じが洒落になりませんよっ! なんでこんなの食べようとするんですかっ!?
というか、そもそもこれは魚なんですかっ!?
「ン……? モシカシテ、コノ魚ガ珍シイノカ?」
「は、はい……見た事……ないですね……」
「確カニソウダロウナ。コノ魚ハ本来、カナリ遠クノ海域ニ生息シテイル筈ナノダガ……迷イ込ンダ挙句ニ増エタノダロウ」
「そ、そうなんですか……」
「カサゴ目ウラナイカジカ科ノ魚類デナ。ブロブフィッシュ、ト呼バレテイタ筈ダ。味ハ蟹ニ近ク、ゼラチン質デ甘ミガアル」
そう言いながら、ル級は器用にお箸を使ってパクリと一切れ食べちゃいました。
「コノネットリトシタ食感ニ、甘サ加減ガナントモ言エヌ……」
うっとりとした表情を浮かべて次々と口に運ぶ姿を見ると、試してみたくなる様な気持も浮かばなくは無いんですが……
………………
やっぱり……ジャ●・ザ・ハ●トにしか見えません……
こうなると刺身は遠慮して、焼魚っぽいモノにお箸を伸ばすしかないんですが……どうして鉄板でもないのに、未だ煙が上がっているんでしょう……
しかしこのまま食べないのも悪いですし、ここは腹を括って一口だけでも頂かなければと身を解したんですが……
な、なんで中身まで真っ黒なんでしょうか……
これって、完全に墨化しちゃっていませんか……?
「フフフ……ソノ料理ニハ、サスガニ驚イタダロウ。ソレハ我々深海棲艦ニ伝ワル、由緒正シキ調理法ナノダ」
「ゆ、由緒……正しき……」
「ソノ名モ、黒炭魚ッ! コレデモカト焼キマクッタ魚ハ、見事ニ炭トナッテ燃料ノ代ワリニ早変ワリッ!」
「それって食べる気無いですよねっ! 燃料って言っちゃっていますよねっ!?」
「ウム……ソモソモ、味ヲ楽シムモノデハ無イカラナ」
「なんで来客用に出しちゃうんですかっ!?」
「コレガ我々ノモテナシダカラナ。チナミニ先生ノ時ハ、砲弾デ粉砕スル戦場調理法デ……」
「粉砕の時点で調理とは言いませんよっ!?」
「ハッ……確カニ……ッ!」
「気づいていませんでしたーーーっ!」
やっぱりダメですっ! こんなの食べる気なんて起こりませんっ!
「ムゥ……ソウカ。コレデハダメナノカ……」
言って、ル級は残念そうに肩を落としていました。調理場の方に居たホ級も心なしか落胆した表情に見えますし、もてなしてくれたのは確かなんですよね……
そう考えると、青葉の態度もちょっと悪かったように思えます。ただ……やっぱり頂くのは遠慮したいですけど。
こうなったら、青葉が一肌脱いじゃうしかありませんねー。
「もし……良かったらですけど、調理場をお借りしても良いですか?」
「ソレハ問題無イガ……イッタイ何ヲ……?」
「折角もてなして貰ったんですから、ちょっとしたお返しをしようと思いまして」
「イ、イヤ……シカシ、コレデハ期待ニ沿エナカッタノデハ……」
「まぁまぁ、ちょっとだけ待っていて下さいっ」
青葉はル級にそう言ってから調理場に向かい、ホ級に声をかけて隣で見て貰う事にしました。
それじゃあ久しぶりのクッキング……張り切っちゃいましょう~♪
「お待たせしましたー」
なんだかんだで調理を終えた青葉は、ホ級と一緒にいくつかのお皿をル級の前に持ってきて、机の上に並べました。
「コ、コレハ……」
目をキラキラとさせたル級が、口からよだれを垂らさんという勢いで料理を眺めちゃっています。
「左から順に鰤の照り焼き、鯖の龍田揚げ、鰯のつみれ煮ですねー」
「ナ、ナント……美味ソウナ……」
そう言いながらお皿と青葉の顔を交互に見つめまくったル級が、まだかまだかと言わんばかりに期待の目で見上げてくるんですけど……
傍から見ると待てを命ぜられている犬みたいなので、ちょっと可哀想と言うか情けないと言うか……
「と、取り敢えず、皆で一緒に食べましょうか……」
「ウェイ!」
……いや、なんつー返事をするんですかル級は。
深海棲艦の誇りと言うか、そんな感じなモノはどこかにやっちゃったんですかっ!?
「ル級ハ欲望ニ忠実ダカラネ……」
ぼそりと呟いたホ級の言葉に納得した青葉は、あまり深く考えないようにしようと思いながらお箸を取って、両手を合わせました。
「それじゃあ、いただき……」
「先手必勝ッ!」
「ル級ノ思イ通リニ、サセルカッ!」
カカカッ! パシッ! ギュワンッ!
………………
いや、お箸で攻防とか……危な過ぎるんですけど……
というか、最後の効果音っていったい……
「コ、コノル級ノ箸ヲ捌クダトッ!?」
「ソノヨウナ動キナド、恐レルニ足リンッ! 海上ナラマダシモ、ココハ陸ノ上ゾッ!」
「クゥッ! セメテ艤装ガアレバ……」
いやいやいやっ、料理を前にして何をするつもりですかル級はっ!
そんな事をしたら、料理が粉砕しちゃって食べちゃうどころか……って、先生と同じ目にあっちゃいますよっ!
そうこうしている間にもル級とホ級の端による攻防は白熱しちゃっていますし、いつの間にか周りにギャラリーも増えてきて……
「ナンダアレ……滅茶苦茶美味ソウダゾ……」
「見タ事ノ無イ飯ガ……誰ガ作ッタノダ……?」
「殺シテデモ……奪イ取ル……」
最後のはマジで勘弁ですーーーっ!
どんなに飢えちゃっているんですかっ! そんなに食糧難じゃないですよねっ!?
だんだん視線が青葉の方に集まって……これは大ピンチですよぉぉぉっ!
「モシカシテ、貴方ガ作ッタノカ?」
「あ、え、えっと……そうですけど……」
周りのギャラリーの中から1人の深海棲艦が声をかけてきたので返事をしましたけど、これはもしやチャンスでは……っ!?
「もし良かったら、作り方をお教えしちゃいますよっ!」
「本当カッ!?」
「もちろんですっ! だから今すぐ調理場に向かいましょうっ!」
「ワ、分カッタ……ッテ、ナゼソンナニ引ッパルノダ……?」
「き、気にしなくて大丈夫ですっ!」
もちろん本音はこの場から逃げ去りたいからですけど、それはさすがに言えませんから誤魔化しながら走っちゃいますっ!
いざ行かん、安息できる地……調理場へっ!
「つ、疲れ……ました……」
椅子に座って肩を落としながらうなだれている青葉の姿は、真っ白に燃え尽きたボクサーの様な感じになっているかもしれません。
あれから調理場で料理を教えるつもりが、ル級とホ級の追加注文を皮切りにギャラリーも食べたいと騒ぎ始め、大量に料理を作る羽目になっちゃいました。
その間、調理場に連れてきた深海棲艦も手伝ってくれたので、なんとか乗り切ったという感じなんですが……もう暫くは料理を作りたくないですね……
「ムハー……オ腹ガイッパイデ、満足シタデゴザル」
休んでいる青葉に近づいてきたル級なんですが、もはや原型が留めていない喋りになっていませんか?
「キャラが変わっていません……?」
「気ノセイデゴザルヨ?」
「疲れてなかったら、砲弾をぶちこみたくなるんですけど……」
「イヤマァ、冗談ナノダガ……」
そう言いながら、ル級は急に青葉に頭を下げました。
「美味イ食事ヲ、アリガトウ。モテナス側トシテハ正直ダメダメダガ、仲間ガ大イニ喜ベタノハ青葉ノオカゲダ」
「い、いやまぁ……別に良いんですけどね……」
正直に言っちゃうと、料理と呼んで良いのかどうか分からないモノを食べたくなかっただけなんですから、感謝されるのは筋違いなんですけどね。
それでもやっぱり、嬉しかったりしますから……まぁ、良いでしょう。
「コノ礼ヲ何カデ返シタイノダガ、青葉ニ望ミハアルカ……?」
「望み……ですか?」
いきなりそんな事を言われても、浮かんでこないのですが……
「デキル限リノ事ニハ答エタイト思ウ。モシ望ムナラ……一夜ノ過チデモ……」
「……いやいや、それは無いです」
「……チッ」
「舌打ちされちゃいましたっ!?」
「気ノセイダゾ?」
「語尾に信頼度が皆無ですっ!」
「ムゥ……青葉ノツッコミガ、ダンダン先生ト同ジニ思エテキタナ……」
「ここにきて先生の属性が青葉にっ!?」
それってもしかして、踏んだり蹴ったりになっちゃうヤツじゃないですよねっ!?
「冗談ハヨシ子サンニシテ、何カ無イノカ?」
……うわー、その手のボケはツッコミきれないですよー。
しかし、望みと言われても……今、青葉が欲しいのは情報くらいですし……ダメ元で聞いてみますかねー。
「それじゃあ、一つ情報が欲しいんですけど」
「情報ダト? 私ノスリーサイズカ?」
「いや、それは全然興味無いです」
「バッサリト斬ラレタ……ガ、悪クハ無イ……」
なんか頬を染めちゃっているんですけど、ル級ってドMなんですかね……?
そんな情報は全くもっていらないんですけど、ちゃんと話をしないと話が逸れまくっちゃいますね。
「青葉が欲しい情報は、子供化してしまった艦娘を治す方法なんです」
「子供化……?」
「ええ、実はこんな事がありまして……」
そう言いながら青葉はル級に事の説明をして、那珂を治す方法が無いかと尋ねてみました。
「フムゥ……ナルホドナー」
「なんだか、金髪のロボットの様な語尾でしたけど、気のせいですよね?」
「気ノセイジャ無イカモシレナイガ気ノセイダ」
「どっちなんですかそれっ!?」
「全テ気ノセイダ」
「もはや良く分かりませんっ!」
「ウム。私モ分カラヌ」
「ダメダメだーーーっ!」
やっぱり逸れまくっちゃっていますっ! 既に修復できそうにないですよぉっ!
「シカシ、子供化シタ者ヲ治ストナルト……生半可デハ済ミソウニ無イナ……」
「うーん……やっぱり難しいですか……」
期待はしていませんでしたが、やはりという答えに青葉も少しだけ落胆しちゃいました。
そもそも実例自体が少ない挙句に、初めてだと思われる明石が治せていない状況なんですから、無理があるんですかねぇ……
「ダガ、全ク手ガ無イトモ言エナイゾ?」
「……はえ?」
「トアル知リ合イノ艦娘ナラ、ドウニカシテクレルカモシレンノダ」
「か、艦娘が……ですか?」
ル級の言葉に二重の意味でビックリしましたが、これは朗報じゃないでしょうか。
「タダ、問題モアルダケニ……難シイカモシレナイト、先ニ言ッテオク」
「こ、ここまで聞いて脅されるとは思ってなかったんですが」
「イヤマァ、雰囲気モ大事ダロウ?」
「……雰囲気だけなんですか?」
「ドッチカナー」
「………………」
いやもう、このル級をどうにかできる方法ってないんですかね……?
だんだん腹が立ってきたんですけど、腕っ節では勝てそうに無いですからジト目で睨んじゃっているんですが。
「ソノ目、ナカナカノ興奮ガ……」
ドMにジト目は禁止ですね。
本当に、もうやだこのル級……
「イヤァー、ソレ程デモー」
「心の中まで読んで答えないで下さいっ!」
「アッハッハー」
――とまぁ、踏んだり蹴ったりの青葉でした。
マジで先生と同じになっちゃっている気がして、泣きそうになってきたんですけど……ね。
次回予告
ル級から聞いた『とある艦娘』の居場所へと向かう青葉!
それを発見したのも束の間、やばげなアイテムに驚きですっ!
そして遂に……アイツが現れるっ!?
艦娘幼稚園 スピンオフシリーズ『青葉の取材遠征日記』
その8「独立型艦娘機構……って、なんでしょう?」
乞うご期待!
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