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パネェ……ル級の仲間信頼度がマジパネェ……(主人公、心の中の言葉
ちょっと休憩をはさみつつ、3人は北方棲姫の気配を頼りに呉鎮守府内を捜索する。
そこで出会う深海棲艦の話に、主人公の心が崩壊するっ!?
「辺リニハ、誰モ居ナイ……カナ?」
排水施設があった建物から出た俺達は、子供二名と段ボール箱という傍から見ても怪しい集団にも関わらず、ル級の日頃の行いのおかげで難なく捜索をする事ができた。
そうとなれば、できるだけ早く北方棲姫を見つけ出すべきだと思っていたのだが、段ボール箱を被って移動するというのはなかなかの重労働であり、足腰が悲鳴をあげてきた俺を心配したヲ級が休憩しようと言い出したのだ。
そうして俺達は近くにあった小さな建物に入ったのだが、どうやらこの建物は電気関係の施設らしく、金網の向こうに大きな配電盤がたくさん並んでいた。奥に行くには南京錠を外さないといけないけれど、休憩が目的なのでその必要性は無く、周りに誰もいないことを確認したレ級のジェスチャーを見て、段ボール箱から出た。
「ふぅ……ちょっと休憩だな……」
俺はそう言いながら、地面に腰を下ろす。ヲ級はそんな俺の隣にちょこんと座り、小さなため息を吐いていた。
思いやりを持つ弟で良かったと嬉しくなってしまうけれど、海中での騒動があっただけに、若干褒めにくい。それでも感謝をしているのは間違いないので、優しくいつものように頭を撫でてあげた。
「ヲッ……」
頭に手を置いた瞬間は少し驚いた表情を浮かべていたけれど、すぐにリラックスしているように目を細めていた。
「……チョット、羨マシイ」
「ん、レ級も撫でてあげようか?」
「ウンッ!」
ヲ級の反対側に座ったレ級は、笑顔で俺の顔を見上げてくる。俺も笑顔を返し、もう片方の手で頭を撫でてあげる。
「手伝ってくれて、ありがとな」
「全然ダイジョーブッ! ソレニ、アノ人間、レ級嫌イッ!」
「そうなのか……って、もしかして何かされたのか?」
「ン……」
言葉を詰まらせたレ級は笑顔を崩す。悲しそうなその顔を見て、俺の頭の中に嫌な考えが過ぎった。
まさか元中将がロリコンで、レ級を手籠めにしようなんてことをしていたら……絶対に許せない。もしそうなら、地獄の果てまで追いかけてやるっ!
「レ級、思い出したくないなら別に……」
「アイツ、レ級ガル級ト遊ボウトスルト、イツモ文句言ウッ!」
「……文句って?」
「馬鹿ガウツルカラ、付キ合ウノハヤメロッテ。ソンナノ、ウツル訳無イノニ……」
「あー……うん、そう……だな……」
………………
すっごい返答しにくいのだが、あながち間違っていないような気がするのは……やっぱり日頃の行いなんだろうなぁ……
もしかして元中将って、何気に優しくね?
いや、でもさすがにフルボッコにされたことを思い出すと許す気にはなれない。それに、艦娘を兵器扱いする考え方の段階で相容れる気は全く無い。
だからこそ、仕組まれた査問会という無謀な戦いにも、俺は向かって行ったのだ。まぁ、幼稚園を取り潰そうとする時点で黙ってはいられなかったんだけどね。
「ソレニ、ミンナアイツノコトハ嫌ッテル。北方棲姫様ヲ捕マエタッテ、イッパイイッパイ、怒ッテル……」
「ああ、そうだな。だから、頑張って北方棲姫を探し出して、あいつを追い出そうな」
「ウンッ! レ級ガンバルッ!」
「ヲ級モガンバルヨッ!」
「ソウダネッ! レ級トヲ級、ソレニ先生モイレバ、全然ダイジョーブッ!」
言って、レ級とヲ級は拳を振りあげる。
俺もニッコリ笑って同じように拳をあげ、頑張るぞと気持ちを込めて二人に頷きかけた。
「さて、そろそろ休憩を終わらせて、捜索に戻ろう」
そう言って立ち上がった俺に、レ級とヲ級は頷いた。
「ところで、北方棲姫の居場所はどれくらいまで感知できているんだ?」
「ウーン……近クダトイウノハ分カルンダケド、似タ感ジノ気配ガ多インダヨネ……」
ヲ級は悩むような仕草をしながら、集中するために目を閉じようとする。確かに呉鎮守府内にはたくさんの深海棲艦が居るだろうから、ヲ級が言うように似た気配を感じるのは仕方が無いのかもしれない。しかし、どうにかして居場所を突き止めないと、危険を冒して潜入した意味が無くなってしまうのだが……
そんな焦りが俺の心に生まれ始めたとき、レ級はヲ級の肩に手を置いて、真剣な表情で言葉をかけた。
「ヲ級ッ、ココハ一ツ、アレヲ思イ出スンダッ!」
「アレ……ッテ、マサカッ!?」
「ウンッ、アレダヨッ!」
二人はコクコクと頷き合い、ヲ級はしっかりと目を閉じて、レ級がヲ級の顔の前に手を突き出した。
……いったい、何をしているんだろう?
何だか見たことのあるような、感じなんだけど……
「ヲ級ヨ……考エルノデハ無イ……感ジルノダ……」
「ワカッタ……ヤッテミル……」
………………
いや、あかんて。
これはあかんやつや。
フォ●スじゃなくて、北方棲姫を感じろって言ってるんだよっ!
完全にル級だなっ! あいつの仕業なんだなっ!?
馬鹿がうつっちゃてんじゃねーかーーーっ!
「ハッ……コノ気配ハ……間違イ無イッ!」
そして見つけちゃうヲ級。そこに痺れも憧れもしない。
二人揃って教育し直さないと、将来が怖過ぎる。
無事に帰ったら、スパルタ教育で矯正してやるぜーーーっ!
「何ダカ、身ノ危険ヲ感ジルンダケド……」
「激シク同意。オ兄チャンカラ、黒イオーラガ見エマス……」
「き、気のせいじゃないかな……?」
俺は慌てて上がりそうになったテンションを戻し、二人に向かって左右に首を振る。ジト目が少々痛かったけれど、俺は口笛を吹きながら気づかない振りをして、話を戻すべくヲ級に声をかけた。
「そ、それで、北方棲姫の居場所は分かったのか?」
「完璧ニ……トハ言エナイケド、大体ノ場所ハ掴メタヨッ!」
「ヤッタネッ!」
二人はハイタッチを交わして喜び合い、グルグルと俺の周りを走り回った。
ふぅ……これで、先に進めそうだ。
まだまだ油断はできないけれど、進むべき道がある。必ず成功させて皆の元へに帰るんだと強く願いながら、すぐ傍にある段ボール箱に目をやった。
また……これを被らないといけないんだよな……
マジで足腰が痛いんだよね……
◆ ◆ ◆
ヲ級の『チカラ』によって、北方棲姫が居るであろう場所に目星がついた俺達は、再びレ級の案内によって向かうことになった。
ちなみに、休憩していた建物から出てすぐのところで……
「ヤァ、レ級。オ散歩カイ?」
「違ウノッ。ル級ノ荷物ヲ搬送中ッ!」
「ナ、ナニッ!? ソ、ソレハ……オ疲レダナ……」
「ジャア急グカラ、マタネッ!」
「アァ、クレグレモ気ヲツケテナ……」
――と、可哀想な目でレ級を見つめる軽巡ホ級との会話があったり、
「ムッ、君ハ確カ……サラワレタハズノ、ヲ級ジャナイカッ!?」
「イエ、僕ハソノヲ級ジャ無イデス。ル級ニヨッテ生ミ出サレタ、新型ヲ級……名付ケテ『超時空要塞ヲ級』デス」
「マ、マタ……ル級ガヤラカシタノカ……」
――と、雷巡チ級が冷や汗をダラダラとかきながら、ヲ級から距離を取っていたり、
「アー……マタ合コン失敗シタワー……」
「レレッ、気ヲ落トサナイデ。次ガアルヨッ!」
「ダケドコレデ、モウ25回目ナノヨ……」
「ヲヲ……ソレハ凹ムネ。デモ、ドウシテソンナニ……?」
「良イ感ジニナルト、イツモル級ガ邪魔ヲシテ……砲弾ヲ撃ツノダ……」
「ソ、ソレハ……大変ダネ……」
「モウ、ル級ト同ジ合コンハ……行キタクナイ……」
――と、ガチ泣きする重巡リ級が肩を落として通り過ぎて行った。
………………
……いや、もうツッコミどころが満載過ぎて、どうして良いか分かんないよっ!
全てにル級が絡んでいる挙句、ほとんどあいつが悪いじゃねぇかっ! 仲間への伝達が上手くいっているかどうかより、そもそもあいつに仲の良い存在がいるのかっ!?
「サスガハ、ル級姉ェ……コンナニ上手ク行クトハ、思ワナカッタヨ……」
そう言ったヲ級は、俺が被っている段ボールを見つめながら感心しているようだけど、正直に言って勘違いだと思う。これが本当にル級の仕組んだことだったのならば、どれだけ前から仕込み作業をしていたのかとツッコミたくなるし、失っているモノが大き過ぎる。
仲間内での信頼度が、すでにゼロ……いや、マイナスになっている。これじゃあ完全に、舞鶴鎮守府内の女性関係沙汰による元帥と同レベルなのだ。
……って、別に元帥にことを貶すつもりは無いのだけれど、何故か同一視してしまうのは、似ているところがあるのだろう。
もしかするとル級を信用したのって、これが関係しているんじゃないだろうな……?
「……ヲッ、ソコノ建物ニ……反応アリッ!」
急に立ち止まったヲ級が指し示した先には、周りよりも一つ背の抜けた建物があり、俺達は急いでそこへと向かう。
その建物の入口には、鎮守府内の一番重要な施設であり、言わば本拠地と言える場所を示す、『呉鎮守府庁舎』の看板が掲げられていた。
「ココハ……アイツガ居ルトコロダヨッ!」
レ級がそう言った瞬間、俺は段ボール箱の中で顔を歪ませる。
つまりここは、元中将の目が届く範囲の可能性が非常に高い。北方棲姫を捕えている場所にしているのも頷けるが、できればそうでなかった方が良かったのに……と、ため息を吐きたくなる。
「ヲ級、この建物のどこに北方棲姫が捕われているか、分かるか?」
「ン……ト、モウ少シ近ヅカナイト、細カイ場所マデハ……」
「そうか……ならやっぱり、中に入らないとダメか……」
だが、悔んでいたって仕方が無い。この建物の中に北方棲姫が捕われているのなら、居場所を見つけ出してル級に伝えるまでだ。そうすればル級達の弱みは無くなり、元中将を追い出して呉鎮守府を奪還することができる。
しかし問題は、この建物内部で移動するのに段ボールが有効に働いてくれるかである。今までの状況を見る限り、ル級のことを知っている深海棲艦なら大丈夫そうなのではあるが……
「レ級、この中には元中将の息のかかった深海棲艦は、どれくらい居るんだ? あと、監視カメラとかは設置されているか?」
「ソレハ……レ級、分カラナイ。ケド、カメラハ……アッタト思ウ……」
「ある……か……」
元中将がこの建物に北方棲姫を捕え、隠しているとするならば、息のかかっていない深海棲艦を多く配置するということは考えにくい。となれば、内部に居る深海棲艦に段ボール箱が通じる可能性は低くなるが、監視カメラが設置されているならば、生身の身体で動き回るのは非常に危険だろう。
どちらにしても何かの対策をしなければ、建物の中に入るのは無謀である。かといって、この段ボール箱以外に有効と思えるモノを持っていない俺は、結局これに頼るしかないのだが。
「とはいえ、真正面からこんばんわ……ってのは、さすがに無謀だよなぁ……」
せめて裏口があればそちらから入るのだけれど……と、ダメ元でレ級に聞いてみたところ、
「ソレナラ、コッチニ別ノ入口ガアルヨッ!」
――と、答えたので案内してもらうと、見張りどころか鍵もかかっていない裏口を見つけてしまい、拍子抜けしてしまったのであった。
ま、まぁ、俺達にとってありがたいので突っ込む気は無いんだけどさ……
余りにも不用心過ぎないかなと、思っちゃうんですよね……
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次回予告
裏口は基本。ただし罠に注意。
内部に潜入出来た3人だが、予想通りカメラがあった。
どうにかして通りぬけようとするが、思わぬヤツが現れる……!?
艦娘幼稚園 ~決戦、呉鎮守府~ その17「謎は解けた!?」
乞うご期待!
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