艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 あえて言おう、シリアルであると。


 ええええええっ、いつの間にっっっ!?
主人公の心の中は大パニック状態。
だけど、良く考えれば思い当たる節はあった。

 そして感動の再会が……恐ろしい悲劇を巻き起こすっ!?

 ……色んな意味で、ゴメンナサイ。


その11「我、感動ノ為、戦闘ス」

 

「ま、まさか……」

 

 驚いた顔で呟いたのは元帥だった。

 

 周りに居る艦娘達も同じように驚きの表情を浮かべ、額に汗を浮かべている。

 

 しかしそんな中、俺だけはすぐに察知し、大きなため息を吐いていた。

 

 昼食を食べに鳳翔さんの食堂に行ったとき、俺は子供達にばれないように、一旦部屋に帰って普段着に着替えていた。

 

 いつものように、カッターシャツにスラックス。上からエプロンを羽織れば幼稚園の先生に早変わりだ。

 

 だけど、あのときエプロンは羽織っていない。つまり、エプロンで隠せるであろう場所が見えてしまう。

 

 普段着には着替えたけれど、下着までは変えなかった。

 

 夕張から受け取ったインナーだけなら、それでも問題は無い。しかしあのとき俺は何を考えていたのか、うっかり防弾チョッキの上からカッターシャツを着ていたのだ。

 

 それを気づいたのは、食事が終わってからのこと。

 

 時既に遅しと焦ったけれど、ヲ級と金剛は気づいたような素振りをしなかったので、安心していたのだが……いや、そうじゃない。

 

 あのときヲ級は俺が何かを隠していると言っていた。俺は咄嗟に嘘をつき、二人の行動に合わせることで逃れたと思っていたのだが、実際はそうじゃなかったのだろう。

 

「サスガニアレハ、バレバレダヨネ」

 

 ――と、主語をぶつ切りにして答えを言ったヲ級に、俺はガックリと肩を落とす。

 

 もちろん、周りの皆は何のことだと頭を捻った。ヲ級もこの辺りは空気を読んでくれたのだろうと胸を撫で下ろしつつ、俺は腕を振り上げた。

 

「「「……っ!?」」」

 

 ヲ級の頭上に振り上げられた俺の腕。それを子供達が見た瞬間、ビクリと身体を大きく震わせた。

 

 さすがのヲ級も表情が変わる。笑みは消え、焦った顔で俺を見上げた。

 

 そして――俺の腕はヲ級の頭へと振り下ろされ、子供達は一斉に目を閉じる。

 

 だけど、俺は先に言った。

 

 怒っていないから――と。

 

 振り下ろした手をヲ級の頭部に置き、ポンポンと軽く叩く。

 

 転んで泣いている子供をあやすように。優しく笑みを浮かべながら。

 

「……ヲ?」

 

 閉じていた眼を開き、頭の感触を確かめながら、ヲ級は俺の顔を見る。

 

「馬鹿……なんでついてくるんだよ……」

 

 嫌がるなんて気は無い。だけど、こんな危険な場所についてきて欲しくは無かった。

 

 その思いが俺の顔を、辛く、悲しいモノへと変えてしまう。

 

「ヲ級は……それに私達も、先生のことが心配だったのデース!」

 

「そ、そう……ですっ。黙って行っちゃうなんて……」

 

「先生ったら酷いっぽいっ!」

 

「そうだぜ先生っ! いくらなんでも水臭いぜっ!」

 

「天龍ちゃんったら、先生に置いて行かれるってヲ級ちゃんから聞いて、悲しくて泣いちゃってたんだから~」

 

「なっ!? た、龍田お前っ!」

 

「あら~。私は別に嘘は言ってないわよ~?」

 

 そんな俺を心配するように、子供達はいつものように喋り出す。

 

 ヲ級を庇いながら、俺を元気づけようと言葉をかけてくれる。 

 

 それは、あのときと同じ。

 

 俺が元中将に仕組まれた査問会への呼び出しを受けたことを知り、心配して元帥に陳情しに行った五人の子供達。

 

 そして今回の鍵となるヲ級を追加した六人が、俺の目の前に居る。

 

 行動理由はまったく同じ。

 

 子供達は、黙って行こうとした俺を心配して、ついてきたのだ。

 

 その気持ちに、俺は耐えられないくらいの嬉しさが胸にこみ上げる。

 

 だけどその思いとは裏腹に、大きな心配が降りかかる。

 

 間もなくこの艦は戦場へと向かう。

 

 そんな危険な場所に、子供達を居させる訳にはいかない。

 

 しかし、今この状況に置いて、子供達だけを退避させるなんてことは難しく、俺にはどうすることもできない。

 

 だけど、この状況はもう一つの可能性へと繋がった。ここに子供達が居るのなら――元帥はどうするのだろう?

 

 子供達まで危険に晒すことを良しとするとは思えない。元帥には時間が無いとはいえ、それはあまりにも不本意だろう。

 

 それに何よりも俺が期待するのは、ここにヲ級が居ることで、ル級の頼みを引き受けられる可能性が出てきたのだ。ならば、無謀な戦いは――避けられるのかもしれない。

 

 これは俺達とル級の双方にとって、願ってもいないチャンスだろう。まぁ、ル級はヲ級の存在を察知していたみたいだけれど。

 

 そして、俺の思いは――元帥へと伝わった。

 

「えっと……凄くビックリなんだけど、結果的にヲ級ちゃんはここに居るんだよね?」

 

「ええ……正直に言って想定外にも程がありますけど……」

 

 俺は子供達の顔を見ながら、苦笑を浮かべて元帥に言う。

 

「つ、つまりは……結果オーライってこと……?」

 

 そう言った元帥は、肩の荷が下りたという風に身体中の力を抜いてため息を吐く――が、

 

「そんな単純なことではないでしょうっ!」

 

「あ、う、うん。それはそうなんだけど……」

 

「これから戦いに行く艦の中に、子供達が居るなんて……どうしてしっかりチェックしてなかったんですかっ!?」

 

 大きな高雄の声がそこらじゅうに響き、子供達が一斉に驚いてしまう。

 

「あ、あのさ、高雄。そんなに大きな声を出しちゃったら、敵に見つかっちゃうからさ……」

 

 慌てた元帥が、高雄を落ち着かせようとしたのだが……

 

「口答えしないで下さいっ!」

 

 完全にプッツン状態の高雄は、急に右足を頭上に振り上げて、

 

「ひえぇっ!?」

 

 ――と、優雅かつ見事な高雄のかかと落としが元帥の鼻っ面を掠め、ビックリ仰天して腰を落としたのは……いつものことだった。

 

 ちなみに元帥に直撃させなかったとはいえ、甲板がベッコリとへこんだのはここだけの話である。

 

 

 

 ……いや、洒落になんないよ?

 

 

 

 

 

「仮ニモ上官相手ニアノヨウナ態度ヲ取ル部下トハ……艦娘ト人間ノ関係ハ不可思議ダナ……」

 

「あー、いや……アレはちょっと特殊なモノで……」

 

 額に汗を浮かべつつ呟いたル級に、控えめに突っ込む俺。

 

 ちなみに子供達は高雄の豹変した姿に、ガチで怯えていた。

 

 どれくらいかって言うと、潮と天龍は隠れていた艦橋の影に戻り、顔だけ出して震えていた。

 

 金剛と夕立は俺の背中に隠れるようにしているけれど、龍田は気にせずニコニコしている。いや、している風に見えているだけで、実際には足がガタガタ震えているけれど。

 

 しかしそんな中、ヲ級だけは高雄の方を見ず、ル級の方へと視線を向けていた。

 

 久しぶりの再開。俺が海底からヲ級を連れて行ってから約半年ほど。その間、ヲ級は地上に出て色んなことを経験しただろうし、ル級の方も元中将の件で大変だったのだろう。

 

 お互いはシッカリと顔を見合い、そしてヲ級がル級へと走り出した。

 

「ル級……ル級姉ェッ!」

 

「ヲ級チャーーーンッ!」

 

 まるで頭突きをするように前傾姿勢で走るヲ級を、ル級は受け止めようと両手を広げる。

 

 いや、それ以前に、なんでル級『姉ぇ』なの……?

 

 ――そう、心の中でツッコミを入れたけれど、それはまだ序の口だった。

 

「……っ!?」

 

 ヲ級の顔を見た俺は、驚きのあまり息を詰まらせた。

 

 あの笑みは……何かを企んでいるときの顔だっ!

 

「後ろ溜めから前プラス強パンチッ!」

 

「甘イッ! ソノヨウナ攻撃ハ回避行動デ楽々ダッ!」

 

 ちなみに説明しておくと、ヲ級がしたのは頭突きである。

 

 ただし、水平に飛びながらなんだけど。

 

 ど、どうやったんだよ一体……

 

「ヲ級ちゃんが……スー●ー頭突きをっ!?」

 

 あー……知っているんですね、元帥。

 

 見事にそれです。それしか思いつきません。

 

 そしてル級に避けられてしまったヲ級は一定距離を飛んだ後、空中で上手く体勢を取って着地し、振り向きざまに……

 

「カーラーノー……超級覇●電影弾ッ!」

 

「何ノッ! オ●チ独歩直伝回シ受ケッ!」

 

 

 

 グワラキーーーンッ!

 

 

 

「「な、なんだってーーーっ!?」」

 

 ――と、大声をあげたのは俺と元帥。

 

 他の皆は、完全に呆れた顔で固まっている。

 

「グヌヌ……マサカコノ技ヲ見切ラレルトハ……」

 

「マダマダ甘イナ……ヲ級ニ技ヲ教エタノハ、コノル級ダゾ……?」

 

「クッ……ダガ、マダ負ケテハイナイ……ッ!」

 

 つば競り合いのように競り合っていた二人は、急に間合いを取るように後退し、新しい構えを取る。

 

「あ、あれは……まさかっ!」

 

「南●虎破龍の構えと……北●龍撃虎の構え……っ!?」

 

「相打ちを狙うつもりか……っ!」

 

 まさかこんな場面を目の前で見られるとは思っていなかったと、手に汗をかきながらグッと握る俺と元帥。この先を絶対に見逃さないようにと真剣にヲ級とル級の動向を見ていると、急に首元をガッシリと握られた感触に驚いた俺と元帥はゆっくりと振り返った。

 

 そこには、ニッコリと笑みを浮かべている高雄が立っており、

 

 真っ黒なオーラを背に纏わせていた。

 

「解説なんかしてないで、早く止めなさいっ!」

 

「「は、はいっ!」」

 

 一括された俺達は慌てて高雄から逃げるように走り、ヲ級とル級の間に立った。

 

「と、取り敢えず落ち着こうね……」

 

「そ、そうそう。久しぶりの再開で、決死の戦いなんてするもんじゃないからさ……」

 

 ヲ級には俺が、ル級には元帥が説得するように立ちはだかり、何とか戦いを止めるように言うと……

 

「イヤ、冗談ダヨ?」

 

「マァ、コレガイツモノ挨拶ダカラナ」

 

 ――と、非常にはた迷惑な行動だと心の中で呟きながら、俺と元帥は大きくため息を吐いたのであった。

 

 

 

 

 

「ふぅ……取り敢えず、落ち着いたみたいですね……」

 

 高雄はジト目で俺と元帥を睨みながら、もう一度大きなため息を吐く。

 

 原因はヲ級とル級にあるんだと思うんだけど、実況解説をしていた俺や元帥にも責任はある。いや……あるとは言え、やっぱり腑に落ちないのは、ヲ級とル級が怒られている俺達を見て、笑みを浮かべているからなんだけれど。

 

 結局のところ、ヲ級のいつものノリはル級から授かったものだと、全くもって必要の無いことを知ってしまった、そこで、ふとあることに気づいた俺はル級に聞いてみることにする。

 

「……ル級、一つ聞いていいか?」

 

「改マッテ、何ヲ聞キタイノダ? 一ツニツキ一発デOKダゾ」

 

「またそのネタ使うのかよっ! つーか、お笑いできないとか言ってなかったか!?」

 

「ソレ自体ガネタダッタノダト気ヅカナカッタノカ……?」

 

 驚きの表情を浮かべるル級に、大きなため息を吐く俺。

 

 やっぱり嘘……と言うか、ネタだったのか……

 

 そうじゃないかとは思っていたけれど、直接言われると凹むモノがあるな……

 

「………………」

 

 そしてまたもや高雄に睨まれる俺。マジで怖いので止めて欲しいんですが……

 

 それに、潮と天龍はまだ艦橋の影で震えているし、高雄にとっても少なからず影響があると思うんだけど。

 

 金剛の方はもう大丈夫そうだけど……と思って見ていると、急に夕立が手を叩いてからル級を指差して、口を開けた。

 

「もしかして、深海棲艦って面白い人ばっかりっぽい?」

 

 そう聞いた夕立の一言に、何故かル級は親指を立てて満面の笑みを浮かべ、

 

 高雄と扶桑は、黙ったまま首を横に振っていた。

 

 

 

 なんでル級はそんなに嬉しそうなんだよ……

 

 




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次回予告

 芸人にとって、面白い人と言われるのは生き甲斐なのです。

 そんな冗談はさておいて、感動? の再開を済ませたヲ級とル級。
北方棲姫を探し出すため、ル級はヲ級に『チカラ』を使ってくれと頼むのだが……


 艦娘幼稚園 ~決戦、呉鎮守府~ その12「ヲ級と先生の目覚め」


 乞うご期待!

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