艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 まさかの情報を聞いてしまった主人公。
その思いはやがて、自分の心を苦しめてしまう事になるのだろうか……?
だがしかし、主人公にはやる事がたくさんある。子供達に振り回されても、楽しい日々を過ごしていくのだと。

 スタッフルームに戻った主人公としおいは、愛宕から粋な提案を受けて喜び出す。
しかし、どこからか泣き叫ぶような声が聞こえてきて……?



その8「宴前のハプニング?」

 

 会話を終えた俺達は一度シーツの確認をしたけれど、まだ乾き切るのには時間がかかりそうなので、しおいと一緒にスタッフルームに戻ることにした。

 

「子供達のお昼寝の時間は何時までなんですか?」

 

「まだ30分くらいあるかな。それまでにしなければいけない仕事は終わっちゃっているし、ゆっくり休憩すれば良いよ」

 

「なんだかんだでお話している間に結構休んじゃっていましたけど……」

 

「まぁ、それも良いんじゃないかな。初日からバタバタするのもアレだしさ」

 

 苦笑を浮かべつつしおいに言った俺は、スタッフルームの扉を開けて先に中に入る。

 

「あら~、先生としおい先生。お疲れ様です~」

 

「お疲れ様です、愛宕先生。そちらの仕事の方も終わったんですね」

 

「はい~。先生がしっかりやってくださいましたので、助かっていますよ~」

 

 素直に褒められてちょっと嬉しくなるも、できるだけ顔に出さないようにと頭を小さく下げて会釈をした。

 

 俺に続いて部屋に入ってきたしおいも愛宕と挨拶を済ませて、ソファに座ってくつろぎだす。

 

 ふむ、なんだかんだでしおいって図太いよなぁ……

 

 初日からあそこまでリラックスできるのもどうなんだろうと思うけど、面識のある愛宕と一緒ってのが大きいのだろうか。

 

「そうそう。お二人に少し相談があるのですが~」

 

「ん……と、なんですか?」

 

 両手を軽くパンッと叩いた愛宕は、満面の笑みを浮かべながら俺としおいに声をかけた。

 

「今日からしおいちゃんはしおい先生になりましたし、あきつ丸ちゃんも幼稚園に編入したんですから、歓迎会を開きたいと思うのですが……どうでしょうか~?」

 

「おっ、それは良いですね。そういうことなら是非協力しますよ」

 

「わわっ、しおい……凄く嬉しいですっ!」

 

 愛宕の提案に驚いたしおいは、その場で万歳をしそうなくらいの勢いで立ち上がりながら喜びの声を上げた。

 

「ところで愛宕先生、その歓迎会はいつやる予定なんですか?」

 

「それはもちろん早い方が良いですから、今から確認してみます~」

 

 言って、愛宕はポケットから取り出した携帯電話を使ってどこかに電話をかけだした。

 

「あっ、もしもし~。はい、愛宕です~。ええ、そう……この前にお願いしていた件なんですけど……」

 

 にこやかに電話をする愛宕だが、話の内容から前もって連絡していたようだ。

 

 さすがは仕事が速いと感心するが、もし当の本人が嫌だと言ったらどうするつもりだったのだろう?

 

「大丈夫ですか? ええ、うんうん。それじゃあ……はい、お願いしますね~」

 

 話し終えた愛宕は電話を切って、再び俺としおいの顔を見てからニッコリと微笑んだ。

 

「今日の夕方からオッケーみたいなので、子供達に終礼の時に伝えますね~」

 

「了解です。ちなみに場所は……やっぱり?」

 

「はい~。鳳翔さんの食堂の二階を貸し切っちゃいました~」

 

 そこならあきつ丸も文句は言わないだろうと俺も笑みをこぼす。昼食の時にあれほど喜んだのだから、文句どころか歓喜をあげるかもしれない。そんな光景を思い浮かべると、今から楽しみになって少しばかり胸が躍りそうになっていた。

 

「鳳翔さんの食堂で歓迎会……しおい感激ですっ!」

 

 そしてもう一人も目をキラキラとさせて喜んでいたので、愛宕の狙いは完璧に大当りだ。ここまで喜んでくれるのなら、企画した愛宕も嬉しいだろうと顔を見てみると……

 

「うふふ~、今晩はたくさん食べて飲みますよ~♪」

 

 ――と言いながら、口元によだれらしきモノが見えてしまった俺は思わず顔を逸らしたのだが、

 

 

 

 もしかして、単にガッツリ食べたいだけじゃ……ないですよね?

 

 

 

 そう、心の中で呟いたのはここだけの秘密である。

 

 

 

 

「……っ、……っ!」

 

「……ん?」

 

 歓迎会が決まった後、三人で談笑しながらコーヒータイムを楽しんでいた。すると、遠くの方で悲鳴のような声が聞こえた気がしたので、俺は耳を済ませてみる。

 

「どこから……だ?」

 

 部屋中を見回してみるが声の主は見えず、どうやら外の方から聞こえてきているようだった。

 

「どうしたんですか、先生?」

 

「外から……悲鳴のような声が聞こえませんか?」

 

 俺の言葉を聞いた愛宕としおいは両耳に音が集まるように広げた手を当てて、耳を澄ましながら辺りを見回した。

 

「……っ、ぁ……っ!」

 

「ほ、本当ですね。確かに遠くの方から聞こえてきますっ!」

 

 驚いた表情を浮かべたしおいがそう言うと、愛宕は真剣な表情で扉の方へと駆け出した。俺もしおいも遅れないようにと、手に持っていた缶コーヒーを置いてスタッフルームから外へと出る。

 

「……っ、先生、しおい先生、こちらですっ!」

 

 通路に出た愛宕はすぐに声の出先を察知し、俺達に向かって声をかけてから広場の方へと走り出す。

 

「「了解ですっ!」」

 

 偶然にもハモった返事をあげた俺達は同じように通路を走り、通路の角を曲がって先にある扉を抜けた途端、目を疑うような光景を発見してしまった。

 

「うわあぁぁぁぁぁん――でありますっ!」

 

 両手を上げながら泣き叫び、広場をぐるぐると駆け回るあきつ丸。

 

 そして、その後ろから尻尾をパタパタと振って追いかけているメンチの姿が見える。

 

「「「………………」」」

 

 唖然とした俺達三人は、あきつ丸を助けなければいけないということを一瞬忘れてしまい、笑顔を浮かべながら見守ってしまいそうになっていた。

 

 だって、可愛いんだってばよ。

 

 ――と、何故かどこぞの忍者のような口癖になってしまったが、微笑ましい光景をいつまでも見ていたいという気持ちが勝ってしまったせいだと理解していただければなぁと思う。

 

 ……って、そんな状況じゃないよっ!

 

「こ、こらメンチッ! なんであきつ丸を追いかけるんだっ!?」

 

 俺はぐるぐると広場を走るあきつ丸とメンチの移動ルートを即座に読み、すぐに追いつけるポイントへと走って待ち構える。正面から走ってくるあきつ丸を避けて、メンチを捕まえようとしたのだが……

 

「助けてでありますーーーっ!」

 

「なっ!?」

 

 メンチに追いかけられる恐怖に我を忘れたあきつ丸は、避けようとした俺の身体に突進するように抱き着こうとして急に進路を変え、

 

 咄嗟の動きに対応できず、ヤバイと思った瞬間、

 

 見事にその頭が……俺の下腹部へと直撃した。

 

 

 

 ドムッ!

 

 

 

「はうあっ!?」

 

「た、たたたっ、助かったでありますっ!」

 

 あきつ丸はそのままおでこをグリグリと押し付け、更に下腹部への攻撃を追加する。

 

 いや、当の本人はそんなつもりは無いのだろうけれど、被害者の俺にとってはそのダメージは計り知れないものであり……

 

「ひ、久しぶりの……直撃に……追加コンボは………………がく……っ」

 

 白目を向いたまま、その場に倒れ込んでしまったのであった。

 

 

 

 金剛のバーニングミキサー並に……やべぇよ……

 




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次回予告

 久しく食らった下腹部への攻撃。
やはり戦艦でなくてもその威力は……じゃなくて、どうしてあきつ丸はメンチに追いかけられていたのか。
 その謎は、いとも簡単に……?


 艦娘幼稚園 ~新規配属されました……であります~ その9「じゅるり×2」

 乞うご期待!

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