https://ryurontei.booth.pm/items/69110
書籍サンプルの方も更新してたりします。
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イベント始まりましたねー。
いやもう、執筆に遅れでそうでマジ止めて……とは言えませんが、とりあえず甲クリアは完全に時間とられそうなので、乙で行く事にします。
まさかのファンクラブ……しかし、それ以上に驚いてしまった青葉の捏造に怒り、凹む主人公。
そんな中、話を続けていくうちに、しおいからとんでもない情報がもたらされた。
「うぅ……すみません。ちょっとだけ、取り乱しちゃいました……」
俺の説得によりなんとか冷静になってくれたしおいは、頭を下げて謝っていた。それでもまだ目の辺りが湿っている気がするんだけれど、こんな場面を他の誰か……特に青葉にでも見られようものなら、またもや状況は悪化しかねないかもしれない。
その場合は、絶対に逃がさないで問い詰めるけど。
容赦は全く無し。かくなる上は、小一時間どころか何時間でも正座させて説教します。
「うん、取り敢えず分かってくれたら大丈夫かな。それで、話を修正するんだけど……」
言って、俺は深海で出会った深海棲艦のレ級や子供達のことをしおいに話した。
「まさか深海にまでそんな施設があるなんて……」
「俺もビックリしたけどね。抵抗して犬死にするよりも、生き延びて脱出の機会を伺おうという点はあながち間違ってはいなかったかな」
「そうですよっ! 先生が帰ってこなかったら、ファンクラブの人達が悲しんじゃいますからねっ!」
「あー……うん。その件は……しばらく忘れておきたいなぁ」
さすがにヲ級のファンクラブとは違うと信じたいけれど、ホームページで変な写真がアップされてたりしないよね……?
「それで、先生は深海で先生になって……どうしたんですか?」
「まぁ、こことあまり変わらなかったって言うのが正直な感想かな。深海棲艦の子供が俺に危害を加える……ってことは……うん、あまり無かったけど」
「微妙に断言できてないところが怪しいですよね?」
「いやまぁ、地上と海底では勝手が違ったってことだよ。向こうでは普通でも、俺にとっては普通じゃなかったから大変だっただけさ」
「あー……」
なるほど――と、しおいは苦笑を浮かべながら頷いた。
水を運んでくれたら海水だったとか、食事は殆ど生か焼き魚しか無く、用意したと思ったら粉砕されたとか……説明しなくても言葉のニュアンスで大体は伝わってくれたのかもしれない。
いや、さすがに勘が良くても明確には無理だろうけれど、察してくれている辺りしおいも空気が読める艦娘のようだ。
「そんなこんなで数日が経って、深海棲艦が場所を変えることになって……俺は脱出することになったんだ」
この辺りは少し話を変えておかないといけない。レ級に提案されたことなどを素直に話しては、俺が深海棲艦と繋がっていたのではと疑われる恐れがあるからだ。
「それで、ヲ級ちゃんを人質にして……恐ろしい子っ!」
「いや、そんな酷い人みたいな目で見られるのはちょっと……靴に画鋲が入っていた訳でもあるまいし……」
「あはは、冗談ですよ」
ケラケラと笑ったしおいは一息ついてから真顔になり、納得したように頷いた。
「確かに先生がおっしゃったのと青葉新聞とは食い違いがありますねー」
「いやいや、食い違いどころか完全にねつ造だからね……」
「まぁ、みんな面白半分で読んでいますから、信憑性は薄いって気づいていますよ」
じゃあなんでさっきは涙目で取り乱していたんだよ……と突っ込みたくなるが、振り返すのは嫌なので黙っておくことにしよう。
「それで結局のところなんですけど、やっぱり先生の顔色が変になったのは理解できないんですが」
「あー、そうだね。そこのところなんだけど……」
ごまかす気は無かったけれど、これで一段落にならなかったのは残念だと少し思いながら、深海での出会いによって俺の気持ちが変わったことを、問題が起こらない程度にそれとなく話していく。
海底で出会ったレ級の思考。
人が行ってきた数々の地球への罪。
深海棲艦の子供達との触れ合いで、分かりあえるのではないかと思ったこと。
そしてヲ級がこの鎮守府、そして対外的に情報が流れても問題になっていないと思われること。
まぁ最後のは元帥や高雄が頑張ってくれているかもしれないけれど、そういった考えがあっても良いんじゃないかという風に、あくまで当たり障りがない程度に話した。
「………………」
その間、しおいは黙ったまま俺の言葉に耳を傾け、時折頷いてくれていた。
そしてヲ級の件も含め、元帥への感謝の気持ちがあることも伝えておこうと、幼稚園を潰そうとする中将との戦いの話をしていたときだった。
「あれ、その中将って……どんな感じの人だったんですか……?」
それまでずっと耳を傾けていたしおいが不意に口を開いた。俺は少し驚きつつも、俺は記憶を辿りに中将の顔や背格好を伝えると、しおいは真剣な表情を浮かべて俯きながら口を開いた。
「やっぱり……ううん、でもそれって……」
青ざめた……とは言い過ぎかもしれないが、かなり不安な表情を浮かべたしおいは俯きながら独り言を呟いていた。
「もしかするとしおい先生も知っている人かな……って、階級が中将なんだから会ったことくらいはあるか……」
中将の艦隊にしおいが配属されていた……なんてことは無いとは思うけれど、面識くらいはあるかもしれない。どちらにしろ、中将は目的のためなら大破進軍も辞さない考えだったので、今更祈っても仕方ないのかもしれないけれど、そうであってほしくないという思いが頭の中を埋め尽くしていた。
「あ、いえ……実は会ったことは無いんですけど……」
「そうなんだ。それじゃあ良かった……けど、話が噛み合わなくないかな?」
「え、ええ。会ったことは無いのですが、見たことはあるというか……多分ですけど……」
「会ったことは無いけど見たことがある? それってつまり……遠目から見たとかそういうこと?」
「そういうのでもないんですけど……」
歯に物が詰まったような物言いで喋るしおいに不安を覚えつつ、俺はどうしようかと黙り込んだ。
この先を聞くと、なんだか嫌なことが起きてしまうような気がする。しかし中将は確か、左遷させられたと噂で聞いたことがあるから……それほど危険視するようなことは無いと思うのだけれど……
「あくまで……あくまで未確認な情報としてお話します。ですから、できれば他の人には言わないで欲しいのですが……」
しおいは俺の目をしっかりと見つめながらそう言ってきた。ここまできて「じゃあいいです」とも言えず、俺はゴクリと唾を飲み込んでから頭を一度だけ縦に振った。
しおいも同じように頷き、一拍置いてから口を開く。
「実は数日前のことなんですが、とある偵察部隊が遠い海域を調べるためにいくつかの写真を撮ってきたのです。その写真には深海棲艦の姿が写っていて……もしかすると先生が海底で出会った子供かもしれない姿もあったのですが……」
「それは……うん、昨日青葉が見せてくれたやつかもしれないね」
「え、あっ、そうなんですか? あれって結構な機密情報なんですけど……」
「ふ、普通に写真を見せられたんだけど……そうだったの?」
そんな物をなぜ青葉が持っていたのだろうと思ってしまうが、その情報をここで話しているしおいも結構危ない気がする。でもまぁ、ここまできたら好奇心もあるし、突っ込むのは無しにしよう。
「まぁ青葉ですから、仕方ないと言えばそうなんですが……そこは置いときますね」
しおいはそう言ってゴホンと咳をしてから仕切り直し、再び口を開いた。
「先生が青葉から見た写真以外にもいくつかあったのですが、その中に一枚……深海棲艦と一緒に居る男性の姿が写っていたのです」
「え……?」
「ピントがあまり合っていなくて少しぼやけてはいたんですが、背格好や顔の特徴は……たぶんですが中将ではないかと思います」
「い、いや……そ、それは思い違いとか見間違いとか……そういうのじゃ……」
噂では左遷されたはず。
だけど、あくまで聞いたのは噂であって、もしかすると全然違うかもしれない。
例えそうだったとしても、一緒に写っていたということは――
「つ、つまり俺と一緒のような……捕虜とか……」
仮に左遷されたとしても、海軍の中では上層部に位置するところに立っていた人物である。すでに見捨てられたてそういう状況になるように仕組まれていたのなら分からないが、もしそうでなかったとすれば海軍にとって汚点になってしまう事実ではないだろうか。
しかし俺の心配は、全く別の方面から突きつけられることになる。
「いえ……どうやら、そうでもないみたいなんです」
しおいは大きくため息を吐き、一度目を閉じてから俺に言った。
「服装は海軍の物でしたが、色合いが……黒色になっていました」
「黒色……?」
「正確にはドス黒い色です……」
「そ、それって……」
血が変色してそんな色になったのでは?
そう言いかけた口を慌てて閉じる。
想像してはいけない考えが、俺の頭に駆け巡った。自らの血で濡れた軍服。無残に傷つけられて死ぬ寸前であったところを撮影することができた。いくら中将に酷い仕打ちを受けて未だ恨みが残っているとはいえ、そんな状況に陥っていたのだと聞かされれば可哀相にも思えてくる。
しかし、無情にもしおいから放たれた言葉は、俺の想像のはるか上をいくモノだった。
「中将……いえ、元中将は……深海棲艦側に就いたと思われます」
「………………は?」
しおいの言葉に唖然とし、目を見開いて、口をぽかんと開けたまま。
まさに開いた口が塞がらないとは、この時のことを言う。
「い、いや……だって……そんなことは……」
「はい。有り得ない……それが普通です。ですけど、先生は海底から……帰ってきていますよね?」
それも有り得ない――と、しおいは目で訴えかけるように見つめてきた。
そして俺の頭に浮かぶのは……海底でレ級が言ったあの時の言葉だった。
「我ラガ困リシ時、人ノ姿デ現レル。ソノ名ハ伝説ノ先生ト……」
あの時は冗談だと思っていた。
しかし、レ級が言ったことが本当だったのなら。
中将こそが、深海棲艦にとっての先生――いや、提督だったのだろうか。
もしくは先生は俺だったとして、別の伝説があったのかもしれない。
だが、どちらにしても、しおいの言っていることが本当だったとすれば……
「俺達……いや、人類や艦娘にとって、最悪の状況じゃ……」
俺が呟いた途端、しおいは苦悶の表情を浮かべながらコクリと頷いた。
つい最近、佐世保鎮守府が深海棲艦に襲撃される事件が発生した。今までにない大掛かりな攻撃により、佐世保は落ちなかったものの大きな被害を受けたという。
そしてその襲撃は、輸送タンカーが狙われているという陽動から開始されたらしいのだ。
もしそれらが、中将が深海棲艦側に就いたことで行われた作戦であったのならば、その責任の一端は――俺にもあるのかもしれないのではないだろうか。
そんな考えが頭を過ぎり、頭痛となって俺に襲いかかってくる。
「せ、先生……顔色が悪そうですけど……」
「あ、う、うん。ごめんごめん。ちょっと気分が悪くなっちゃったみたいかな……」
大丈夫だとしおいに手を振って答えた俺は、脂汗で滲んだ額を手で拭う。思いのほか纏わり付いた汗の量に少し驚きつつも、ポケットの中に入れていたハンカチで拭いて深呼吸をした。
「今言ったことはあくまで推測ですし、未確認の情報が混じっていますから……心配しないでくださいね」
俺を気遣うようにしおいがそう言ってくれたけれど、不安にまみれた心を拭い去ってくれる程ではない。だけど、その気遣いに答えようと俺はしおいに向かって笑みを浮かべて返事をした。
「………………」
そんな俺を見て、同じように笑みを浮かべるしおい。
しかし、明らかに気遣かっているのは明白で、
しおいはここまでにしておいた方が良いだろうと、話を切り上げたのだった。
「ごめん……話の途中だったのに……」
「いえ、私もちょっと失言でした。先生に責任を押し付けるような感じになっちゃったのは……本当にごめんなさい」
あれ……そうだったっけ……?
そこまでは感じなかったんだけれど……って、それは何気に酷くない?
「でも、先生がどうしてあの時、変な顔色になったのかは分かりました」
「えっ、そうなの?」
「はい。先生はあきつ丸ちゃんだけじゃなくて、ヲ級ちゃんや他の子供達……それに私達のことも考えてくれてたんですよね?」
「あー……」
改めて言われると恥ずかしくてこの上ないのだが、間違ってはいないだけに言葉が出ない。それに、みんなが同じように暮らせるという思いが少しでも伝わったのならば――それは間違いではないのだから。
「やっぱり先生は先生です。そして、みんなの味方なんですよねっ!」
言って、しおいは立ち上がる。
ニッコリと笑った顔で、俺をしっかりと見つめながら――こう言った。
「改めて、これからよろしくお願いしますっ!」
大きく頭を下げるしおい。
その姿を見ながら、俺は笑みを浮かべて口を開いた。
「こちらこそ、よろしくね」
※「艦娘幼稚園 ~遠足日和と亡霊の罠~」の通信販売を行っております!
https://ryurontei.booth.pm/items/69110
書籍サンプルの方も更新してたりします。
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※深海提督と称された中将とは、艦娘幼稚園~俺が先生になった理由~ 中、後編で登場したオリジナルキャラです。
覚えてくれてる人いるかなー?
あっ、もちろん、感想板の絡みも含んでおりますよー。
次回予告
まさかの情報を聞いてしまった主人公。
その思いはやがて、自分の心を苦しめてしまう事になるのだろうか……?
だがしかし、主人公にはやる事がたくさんある。子供達に振り回されても、楽しい日々を過ごしていくのだと。
スタッフルームに戻った主人公としおいは、愛宕から粋な提案を受けて喜び出す。
しかし、どこからか泣き叫ぶような声が聞こえてきて……?
艦娘幼稚園 ~新規配属されました……であります~ その8「宴前のハプニング?」
乞うご期待!
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