艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 宜しければお読みくださいませ。



 しおいの見本となるべく頑張ろうとする主人公。
しかしそんな思いは完全に破壊しようと、みんなが揃ってやっちゃった?

 もうね、新キャラ増えたらお決まりなんですよね。これ。


その2「R-15の嵐」

「よーし、それじゃあみんな集まってくれー」

 

 俺に続いてしおいとあきつ丸が部屋に入ってきたのを確認してから、子供達を集めるために声をかけた。

 

「おっ、早速自己紹介を始めるのかっ?」

 

「ああ、その通りだよ天龍。まずはみんなの名前を覚えてもらわないといけないからな」

 

 天龍との会話を聞いた他の子供達は、にこやかな表情を浮かべて俺の周りに集まってきた。だがその中に一人だけ、ほんの少し不満げな表情を浮かべている子もいるのだが……

 

「よし、これで全員だな。それじゃあまずは……しおい先生、お願いします」

 

「わ、わかりましたっ!」

 

 少し緊張しているのか、しおいは背筋をピンと伸ばしてから子供達に向かってお辞儀をする。

 

「さっきも挨拶はしましたけど、改めまして『しおい』です。元気いっぱいが取り柄だから、みんなも元気よく色々と話しかけてね!」

 

「「「よろしくお願いしまーす」」」

 

 ニッコリと笑ったしおいに向かって、子供達はお辞儀をしてから大きな返事をする。

 

「それじゃあ次はあきつ丸だな」

 

「了解であります。

 陸軍からやってきたあきつ丸であります。こちらには友達と呼べる者は一人も居りません故、仲良くしてくれると幸いであります」

 

「「「よろしくねー」」」

 

 そう言って、あきつ丸もペコリと頭を下げた。

 

 ――えっと、まるゆは友達じゃないんだな。

 

 まぁ、小さいあきつ丸と艦娘のまるゆだから、あきつ丸の方が一線退いているのかもしれない。それでも、同じ陸軍という関係があるのだから、それなりに仲が良いとかはあると思うんだけど。

 

「それじゃあ、今度は……そうだな。天龍から自己紹介をしてくれるか?」

 

「オッケーだぜ先生。

 俺の名は天龍だ。しおい先生と同じで元気いっぱいが取り柄だからよろしくなっ!」

 

「うん、よろしくね。天龍ちゃん」

 

「よろしくであります」

 

 うむ。普通に問題ない自己紹介だ。

 

 それじゃあ次は龍田かな……と思っていると、天龍が何かを思い出したかのようにハッと顔を上げ、

 

「ちなみに先生は俺の嫁だから手出しをするんじゃないぜっ!」

 

 ――と、大問題発言をぶちかました。

 

 もちろん、完全無欠なドヤ顔で。

 

 いや、完全無欠って何だ。

 

 ………………

 

 初っぱなから前途多難過ぎだろうがよぉっ!

 

「なるほど。噂通りの先生ってことですね!」

 

「何の噂っ!?」

 

 しおいの言葉にすぐさま反応した俺なんだけど、一人納得する表情で頷いていても全然分からないんですけどっ!?

 

「……不純であります。これは、憲兵に報告しなければならないであります」

 

「いやいやいや! あきつ丸、はやまっちゃダメだからっ!」

 

 慌てて説明しようとするのだが、さっきの天龍の言葉に不満げな表情を浮かべた数人が前に出て、一斉に右手を突き出してきた。

 

「「「ちょっと待ったーーーっ!」」」

 

 ……え、なにこれ?

 

 どこぞの深夜番組ですか?

 

「天龍ちゃんの発言はいつものことだけど、新しく着た人にはちゃんとした情報を伝えないとダメだよね。

 僕は時雨。先生を嫁にするのは誰が何と言おうと、僕だからね」

 

「ノンノン! 天龍や時雨の言っていることは間違いデース! 先生をお嫁さんにするのは、この金剛って初めから決まってマース!」

 

「金剛お姉さまには悪いですけど、比叡も負けてはいられません! 先生とキャッキャウフフするのは比叡の夢なんですからっ!」

 

「いいえ、榛名も負けてられません! ここは一歩も退かずに全力を尽くして先生をお嫁さんにしますっ!」

 

「ふう……ライバルが多いのは分かっていますが、この霧島を差し置いてというのはどうかと思いますけどね。

 先生を嫁にする……それは私、霧島以外にあり得ませんよ?」

 

 そして一斉に名乗りを上げる子供達。

 

 自己紹介にはなっている。なっているんだけど……

 

 

 

 内容がヤバ過ぎるでしょうがっ!

 

 

 

 あきつ丸の顔が完全にどん引き状態だよっ!

 

 つーか、前にも言ったけど、なんで俺が嫁扱いなのっ!?

 

 しおいは逆に微笑ましく笑っているんだけど、それはそれでなんか怖いし……って、更に怖い顔のヤツがいたーーーっ!

 

「黙レ愚民共ガ……」

 

 ラスボス降臨っ!

 

 ――じゃなくて、暴言吐き過ぎだよヲ級っ!

 

「オ兄チャンヲ嫁ニスルノハ、コノ僕ダッテイツモ言ッテルデショウガッ! 天地ガ砕ケテモ、海ガ真ッ二ツニ割レタトシテモ、コノ事実ハ変ワラナインダヨッ!」

 

 もはや言っていることが神々レベルなんですけどっ!

 

 そしてすでに収拾がつきそうにない状況に俺の心はダウン寸前ですっ!

 

「モテモテですねぇ~」

 

「いやいやいや、そんなに簡単に済まされるとちょっと怖いんだけど、全部子供達が勝手に言っているだけだからねっ!」

 

「あれあれ、そうなんですかー?」

 

 言って、ニヤニヤと笑みを浮かべるしおい……って、意味ありげ過ぎて聞くのも怖いよっ!

 

「これは確実に通報しなければならないレベルであります。今すぐダッシュで憲兵に……」

 

「お願い止めて頼むからっ!」

 

 部屋の外へと飛び出ようとするあきつ丸を止めようと、手をガッチリとつかんで阻止したのだが……

 

「あら~、今度はあきつ丸ちゃんに浮気なのかしら~?」

 

「……は?」

 

 龍田の声に目が点になる俺。

 

 同じく目が点になる天龍、時雨、金剛、比叡、榛名、霧島、ヲ級……そして、あきつ丸。

 

「さて……と。今から修羅場が始まるから、私たちは後ろの方で高みの見物にしましょうね~」

 

 龍田はそう言って、夕立と潮の手を掴んで部屋の隅へと移動し、

 

 言った通りの修羅場が開始されたのだった。

 

「先生……嘘だよな? まさか俺の目の前で浮気をするなんて、ありえないよな?」

 

「て、ててて、天龍っ! 目が据わっているってレベルじゃないぞっ!?」

 

「うふ……うふふふふふ……。そっか、そうなんだね……先生……」

 

「すでに時雨がヤン状態だーーーっ!?」

 

「信じられまセーン! この前ちゃんと脱ぎたてパンツを渡したじゃないデスカーッ!」

 

「更に悪化させることを言わないでーーーっ!」

 

「通報したであります」

 

「いつの間に携帯電話持ってたの――って、それ俺のじゃんっ!?」

 

「ポケットの中に落ちていたであります」

 

「それ落ちていたんじゃなくて入ってたんだよっ! ――ってか、なんでそんなことできるのっ!?」

 

「陸軍スキルであります」

 

「マジかーーーっ!?」

 

 俺は慌ててあきつ丸から携帯電話をふんだくり、「さっきの通報は間違いですからっ!」と大声で叫んでから電源ボタンを押して通話を切った。

 

「まぁ、すべて冗談であります」

 

「心臓に悪いからマジで止めてっ!」

 

「気合い! 入れて! 既成事実っ!」

 

「なんで比叡が半脱ぎになってるんだよっ! つーか、真っ昼間とかそういうレベルじゃなくて、すでにアウトラインをオーバーランッ!」

 

「は、榛名は……そ、そのっ、夜でしたら……」

 

「恥ずかしそうに言ってもダメだからーーーっ!」

 

「大丈夫です。霧島はしっかりと針で穴を開けて……」

 

「何に穴を開けるのかすんごい怖いんだけど、やっぱりアウトラインがオーバーランしまくりだかんねっ!」

 

「コノ際、全員マトメテハーレムルートニ……」

 

「さっきと言っていることが真逆なんだけど、一番怖いエンディングに直行しそうだからーーーっ!」

 

「はっ、確かにヲ級の方法なら全員が幸せになれるのかっ!?」

 

「いやいやいやっ、俺は絶対に幸せになれないからっ! 確実に捕まっちゃって処刑されるのがオチだし、何より天龍はそれで良いのかよっ!?」

 

「むぐぐ……結構悩んじまうぜ……」

 

「ダメよ天龍ちゃん~。そんなことになったら、真っ先に先生のアレを切り落としちゃうんだから~」

 

「やーめーてーーーっ!」

 

 何でこの時だけちゃっかり顔を出してくるんだよ龍田はっ!

 

「な、なんだか……楽しそうだよね……」

 

 潮はそんな俺たちを見ながら呟いたけど、俺は全然楽しくないからねっ!

 

「すでに手遅れっぽい!」

 

 正解ですっ!

 

「あははっ、本当に噂通りで面白いところなんですねっ!」

 

「いやいやいや……マジで違うからね……」

 

 お腹を抱えて笑うしおいに向かって、泣きそうになりながら弁解する俺。

 

 そんな俺たちを後目に、あきつ丸は輪から離れた三人へと向かって歩いていった。

 

「ところで、そこに居られる三人の名前を伺ってもよろしいでありますか?」

 

「私は龍田よ~。天龍ちゃんの妹なの~」

 

「う、潮です……よろしく……」

 

「夕立だよ。よろしくねっ!」

 

「みなさんよろしくであります!」

 

 お互いに頭を下げ合って挨拶をしているのを見て、とりあえず色々とあったけれど自己紹介は終えたのだとホッと胸を撫で下ろし……

 

「とりあえず、夜戦は一週間区切りが良いんじゃないでしょうかっ!」

 

「ひ、比叡お姉さまがそう言うのであれば、榛名は構いませんけど……」

 

「けれど、その場合だと……天龍、時雨、ヲ級、金剛姉さま、比叡姉さま、榛名、そして私でちょうど7人。ええ、完璧ですね」

 

「残念ダケド、ソノ計算ハ問題ガ有ルネ。愛宕ノ班ニ居ル雷ト電ヲ忘レタラ可哀想ダヨ」

 

「そうなると……週に二回は連戦になっちゃいマスネー」

 

「おいおい、なに言ってんだよ。土曜日の夜戦は全員参加だろ?」

 

「そうだね。天龍ちゃんの意見に僕は賛同するよ」

 

「でもそれだったら、九人を六日間で割り振らないといけませんから……」

 

 ――と、榛名がそう言って子供達が一斉に「う~ん……」と唸り声をあげた。

 

 ………………

 

 ちょっと待てよお前らーーーっ!

 

 いつの間にやらハーレムエンド確定で勝手に話を進めてるんじゃねぇよっ!

 

 それになんだっ! 九人で六日間割り振った挙げ句に土曜日は全員参加とか……

 

 確実に一週間も耐えられる訳ねぇだろうがぁぁぁっっっっっ!

 

 そんなん元帥でも発狂するわっ! つーか、確実に逮捕されるようなレベルじゃ済まねぇよっ!

 

 仕置人に処刑確定で、更には晒されて、生きていることを嫌になるくらい拷問されちゃうかんねっ!

 

 はぁ……はぁ……

 

 突っ込みが多すぎて息が絶え絶えに……

 

「ホラ、オ兄チャンガ想像シテ、アンナニ興奮ヲ……」

 

「突っ込み疲れで息が上がってるんだよぉっ!」

 

「マサニ突ッ込ムトコロヲ想像シテ……」

 

「人の話を聞けーーーっ!」

 

 ――とまぁ、初っぱなの自己紹介から前途多難な日になってしまったのでしたとさ。

 




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次回予告

 いやはや、幼稚園でしちゃいけない会話だったね。

 突っ込み疲れの主人公。
自己紹介騒動は何とか終え、午前の授業に入らねばと気を引き締める。
――と、そんな矢先から問題発生。対処すべく一時部屋から離れたのだが……


 艦娘幼稚園 ~新規配属されました……であります~ その3「雨の日は」

 乞うご期待!

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