艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 タブレットが無くなると本当に不便……
執筆も全く進んでないので大ピンチ。ポメラのキーピッチが狭過ぎて効率が……
でもでも、更新は出来るだけ早めに頑張りますっ。



 犬を抱いて三千里……ではなく、コンビニについた主人公とヲ級。
そこで出会った店長に、子犬の飼い主をと聞いてみたのだが……


その2「ア~ク~ロ~ス~」

「う~ん……ヲ級ちゃんの頼みだから聞いてあげたいけど……」

 

 いつものコンビニの入口前。

 

 寒空の下で駐車場と店の周りを掃除していた店長は、残念そうな表情でそう言った。

 

「やっぱりダメですか……」

 

 コンビニで犬を飼うのはさすがに無理としても、店長の家ならどうだろうと淡い期待で持ちながら買い物ついでに聞いてみたのだが、返事は予想に反せず難しいとのことだった。

 

「家で飼うのは問題ないんだけどねぇ……」

 

「ヲ……? ソレジャアナゼ……」

 

「ウチって、猫ちゃんがいっぱいいるのよ~。その中に、犬がどうしてもダメな子がいちゃってねぇ……」

 

「ヲヲ……ソレナラ仕方ガ無イカ……」

 

「本当にゴメンね~」

 

「いえいえ。無理を言っているのはこっちなんでそんなに謝らないでください」

 

 俺とヲ級は店長さんに深々と頭を下げてお礼を言って買い物をしようとしたが、犬を連れたまま店に入る訳にもいかない。俺は犬を持って外で待ち、ヲ級に買う物を頼んで中に入るように伝えた。

 

「ソレデハ、ミッションヲ開始スル!」

 

「うむ。そこまで重要なアレじゃないけど、宜しく頼んだ」

 

 敬礼するヲ級に少し呆れながら手を振ったのだが、そんな光景を店長さんは手持ちのスマホでパシャパシャと写真を撮っていた。

 

 あぁ……またファンクラブのブログとか、舞鶴鎮守府の広報に写真が載っちゃうんだろうか。

 

 どうやら以前の写真も青葉だけでなく、いろんな人からの投稿などで集まっているらしい。つまり青葉をとっちめてもあまり意味が無いらしいのだが、鎮守府の広報という名目上口を出すのも難しく、半場諦めていたりするんだよね。

 

 それよりも、あそこまで大々的に外部に広報しておいて本当に大丈夫なのかと心配になっていたのだが、高雄にそのことを尋ねてみたところ「鹵獲艦の有効活用として申請していますし、あの子をどうこうしようとする輩は全力で排除するように手配してありますので」と、ある意味恐ろしい答えが返ってきた。

 

 全力で排除って……相手がメディアや国の科学研究所とか、どう足掻いても太刀打ちできないレベルもあると思うんだけどなぁ。

 

 舞鶴鎮守府はあくまで国の機関であるからして、上層部から命令が下ればそれに従わなければならないはずである。例え元帥が首を横に振ったとしても、やろうと思えば実力行使に出てくる可能性が高いのだ。

 

 もちろんメディアに関しては数の力なのだが……ブログやこの前の女子学生を見る限り、ちょっとしたブームを起こそうと考える輩が出てきそうなんだけど、それも気配は無さそうなのだ。

 

 まぁ、どうこう考えていたところで、俺ができることはたかが知れている。しかし、全力を持ってヲ級を守ることは兄として当たり前だから、例え世界を敵に回したところで止める気は無い。

 

 何事も無いのが一番だから、今のままで充分なんだけどね……と、小さくため息を吐いた。

 

「う~ん……」

 

 掃除をしていた店長(ゴツイ挙げ句にお姉)が箒の動きを止めて、何やら俺の顔を見ながら唸っていた。

 

「ど、どうしたんですか……?」

 

「なんだか様になっているわねぇ……と、思ったのよ~」

 

「………………」

 

 店長の言葉を聞いて、俺は後ずさった。抱えている子犬の震えも心なしか大きくなり、首を左右に何度も振っている。

 

「……あら。もしかして、変な風に捉えちゃってないかしら?」

 

「おもいっきり捉えています」

 

「あらやぁねぇ~。けど、お兄さんは私の好みじゃないから、安心して良いわよ~」

 

「は、はぁ……そうですか……」

 

 そうは言いつつも、一定の距離を取りつつ店長の動きをじっと見つめる俺。正直常時近寄りがたい雰囲気を醸し出している店長の言動なのだが、良くもまぁこれでコンビニがやっていけるよなぁと思う。

 

 人が寄らなかったら客商売は成り立たないと思うんだけど、それにしてはいつ来ても客は居るんだよな……このコンビニ。

 

 常連である俺がそう言うなと思ってしまったりするが、なぜかふと足が向いてしまうのだ。ヲ級はデザートの品揃えとクオリティが良いからだと言っていたが、俺の場合は鎮守府にある売店で事足りるのに……非常に謎である。

 

「もうちょっとマッチョで角刈りだったら良いんだけどねぇ~」

 

「暫く散髪には行かないようにします」

 

 額から汗が滴り落ちながら言った俺に頷くように、子犬もコクコクと首を縦に振っていた。

 

「あら~、残念ね~」

 

 そう言いながらケラケラと笑う店長は箒を再び動かし始め、広い駐車場の端の方へと向かっていった。

 

「ふぅ……事なきを得た……かな」

 

「クゥ~ン……」

 

 大の大人と子犬が揃って白いため息を吐くという、珍しい光景がそこにはあったのかもしれない。

 

 

 

 

 

「タダイマ、オ兄チャン……ッテ、ナンデソンナニ黄昏テルノ?」

 

 コンビニ袋を持ってスキップ交じりで店から出てきたヲ級は、自動扉の横で座り込みながら空を眺めていた俺を見る。

 

「あ、あぁ……ちょっとな……」

 

 先ほどの店長との会話で傷ついてしまった心を修復していたのさ……なんて、ちょっとカッコ良くも無いセリフを吐く気にもなれず、俺はゆっくりと犬を抱えたまま立ちあがった。

 

「ところで、頼んでいた物は買えたのか?」

 

「ソレハモチロン。僕ト愛宕ノ夜食用デザートニ、オ兄チャンニ頼マレタスナック菓子ト週刊誌。ソレニ、グラビア雑誌ニ、コンド……」

 

「言わせねえし買ってこいとも言ってねぇよっ!?」

 

 俺は慌ててヲ級の口を塞ぎに手を出すが、予想していたと言わんばかりに不敵な笑みを浮かべながら触手で防いだ。

 

「何ヲビックリシテイルノカナ……オ兄チャン。僕ハ買ッテキタ物ヲ言ッテイルダケダヨ?」

 

「後半の二つは俺が頼んだやつじゃねぇっ! しかも最後の二つはどうやって売ってもらったんだよっ!?」

 

「……勘違イモ甚ダシイト思ウケド、最後ニ言オウトシタノハ、今度コノコンビニデ発売予定ノ新作デザートサンプル……ナンダケド?」

 

 そう言いながらも不敵な笑みを崩さないヲ級。

 

 明らかに確信犯じゃねぇかよっ!

 

「くっ……しかし、グラビア雑誌は頼んでないぞっ!」

 

「アァ、コレハ元帥カラ頼マレタンダヨ」

 

 アイツはいったい何をヲ級にやらせてんだよっ!

 

 羞恥プレイとか強制させてんなら今すぐぶん殴りに行くところだけど、ヲ級にとってこんなのは朝飯前だかんねっ!

 

 ――って、そういうことを言っているんじゃねぇよっ!

 

「何ヲ興奮シテイルンダヨ……オ兄チャン……?」

 

 ちょっとばかり嫌そうな目で見つめてきたヲ級だが、俺の心境はそんなことはどうでも良いと言わんばかりに怒りで沸騰していた。

 

 幼稚園児にグラビア雑誌を買ってきてくれと頼む鎮守府最高司令官。

 

 うむ、今すぐあの人に告げ口というメールをしておかないとな。

 

 俺はすぐさまポケットの中に入れてある携帯電話を取り出して、高速で文字を入力する。

 

「オオォ……マルデポケベルニメッセージヲ送ル玄人バリニ……」

 

 いや、例えが古過ぎやしないか……それ……

 

 確かに昔は公衆電話で無茶苦茶早く入力する人いたけどさぁ。

 

 今の人だと大半が分かんないんじゃね?

 

 とまぁ、そんな心の中の突っ込み連打をかましながらもメールを打ち終えた俺は、きちんと送信できたのを確認してからポケットの中へとしまい込んだ。

 

「よし。とりあえず鎮守府に戻るか」

 

「ン……ソウダネ」

 

 まだ少しボケ足りないといった感じの表情を浮かべていたヲ級だが、外の寒さに耐えるのも嫌になったのかコクリと頷いた。

 

 そして来た道を戻って歩いていく。

 

「トコロデオ兄チャン。店長ハダメダッタケド、他ニアテハアルノカナ?」

 

「うーん……とりあえず思い当るところをあたって行こうとは思うけど……」

 

「コノ際オ兄チャンガ飼ッチャエバ良インジャナイカナ?」

 

「それも考えたんだが、寮はペット禁止なんだよなぁ……」

 

「アァ、ソウ言エバソウダッタネ……」

 

 言って、ヲ級は俺が抱えている子犬を見る。少しは元気が戻ってきているのか、子犬はマジマジとヲ級の顔を見返していた。

 

「……名前ハ……『メンチ』ダネ。モチロン非常食デ」

 

「色々と物騒すぎるぞ、それ……」

 

「飼イ主ハ、コトゴトク落トシ穴ニ落チマクル……」

 

「いや、俺の所属しているのは幼稚園であって、秘密結社では無いんだが……」

 

 これもまた少し古いネタである。

 

 本当に大丈夫かなぁと思ったりもするが、良く考えれば今までにそんなレベルじゃない古いネタを振りまくっているのだから、時すでに遅しかもしれない。

 

 ――って、いったい何を考えているんだろう。

 

 そして、この犬を助けた橋にさしかかった。俺は橋を渡りながら川の方を見てみたが、飛び込んだ女の子の姿どころか人っ子一人見えなかった。

 

「サッキノ女ノ子ガ気ニナルノカナ?」

 

「そりゃあ気にならないと言えばうそになるな。この寒い中、川に飛び込んでくれて犬を助けてくれたんだし、お礼も言い足りないだろ?」

 

「マァ、ソウダケド……」

 

 そう呟きながら少し不満げな表情を浮かべたヲ級は、プイッ……と顔を背けて俺の前を歩いていく。

 

 ……いったい何が不満なんだろう?

 

 俺は小さくため息を吐きながら、ヲ級の後に続いて少し早足で歩いていった。

 




次回予告

 コンビニ店長は無理でした。
まぁ、子犬のことを考えたら良かったとは思うんだけど。

 誰か他に飼ってくれる人が居ないかと探した主人公だが、残念ながら見つからず。
今日はもう無理だと判断し、寮に子犬を置いて夕食を食べに行くのだが……


 艦娘幼稚園 ~新しい仲間がやってきた!~
 その3「まさかのダブル天丼」


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