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まさかの展開に驚く主人公。
そして立ち塞がる霧島が叫び声をあげる。
更には下着の持ち主である愛宕がとんでもない事を言い出して……?
はたして主人公は無事でいられるのかっ!?
今章はこれでラストですっ!
「どこへ行こうというのですっ!」
扉の前に立ち塞がった霧島は、両手を広げて俺に叫ぶ。
「飛行石を持って逃げる――じゃなくて、金剛を追い掛ける為だよっ!」
「それをさせる訳にはいきませんっ! こんな変態行為をする先生なんかを、金剛姉様に近づけてなるものですかっ!」
「――なっ! そ、そもそもこれを仕組んだのは霧島じゃないのかっ!?」
「どこにそんな証拠があると言うのですか?」
「そ、それは……っ!」
ニヤリと不適な笑みを浮かべた霧島を睨みながら、俺は歯ぎしりをして悔しがる。確かに霧島の言う通り、俺は何の証拠も握っていない。明らかにこれは罠だと分かっているのに、この状況を突然見た金剛に違うと言い切れる証拠が見つからないのだ。
そしてそれは、愛宕に対しても同じ事である。一連の会話で察してくれるかもしれないが、端から見れば俺が怪しいのもまた事実。霧島が俺のロッカーに愛宕の下着を入れる理由を理解していたとしても、やはり俺は男であり、もしかするともしかするのではないかという考えが過ぎるかもしれないのだ。
「先……生……」
「あ、愛宕先生……っ!?」
戸惑うような愛宕の呟く声を聞いて、俺は焦りながら振り返る。
いつものような明るい笑顔ではなく、かといって怒っている感じでもなく、
むしろ、何かを思いついたような表情で、愛宕は口元に指を当てた。
「もしかして、先生は私の下着が欲しかったのでしょうか……?」
「そ、それ……は……」
どう答えれば納得してもらえるのか分からず、俺は戸惑いながら口を開こうとするが、言葉は出ない。
そんな様子を見ていた霧島は、勝ち誇ったような表情を浮かべた――のだが、
「それならそうと、言ってくだされば差し上げますのに~」
言って、愛宕は頭を傾げていた。
「「「………………」」」
唖然。
そうとしか表現しきれない表情を、俺と霧島と比叡は浮かべていた。
開いた口が塞がらない。信じられない言葉を聞いた。天変地異が起こったとしてもありえないだろう。
――そう心の中で叫ぶ比叡と霧島の声が、なぜか俺の耳へと入ってきた。
「な、な、な……」
ガクガクと身体を震わせた霧島が、俺と愛宕に指を向ける。
比叡は顎が外れたんじゃないかと思うくらいに口を開けたまま、氷のように固まっている。
そして俺の脳内では、人生最大のお祭りが行われていた。
だっしゃああああああああああああああああああっっっ!
大声で叫び声をあげた褌姿の俺が、某プロレスラーの如く拳を振り上げて神輿の上で踊っている。
まさに人生最高のハッピーエンド。このまま死んでも悔いはない。
しかし、そんな俺を現実に引き戻す大きな声が、目の前から叩きつけられる。
「何を言っているんですかっ! 破廉恥にも程があるでしょう!」
霧島が両手の拳を握り締めながら目をつぶり、俺と愛宕に向かって声を上げた。
「仮にも淑女である貴方が、こんな変態ロリコン先生に向かって好意を向けるなんて事が……許されるはずがありませんっ!」
「あらあら~、どうして霧島ちゃんは先生の事をそんなに悪く言うのでしょうか~?」
「だ、だってそれは……っ!」
金剛姉様の為……
そう、言おうと思ったのだろう。
そんな霧島の手を、いつの間にか後ろにいた榛名が力強く握っていた。
「もう……止めてください、霧島……」
「は、榛名……」
「こんな事をするのは……間違っています。これで金剛お姉様が救われたと……思ってもらえると考えられるのですか……?」
「そ、それ……は……」
榛名の真剣な眼差しに押され、目を逸らした霧島は顔を伏せた。
罪悪感に押し潰され、表情は悲しみへと変わり、その目は涙で滲んでいく。
「それでも……金剛姉様には幸せに……なってほしくて……」
「嘘に塗れた足場の上に立つ金剛お姉様を見て……それでも霧島は笑っていられるの……?」
「……っ!」
榛名の言葉に霧島はハッと顔を上げ、ボロボロと大粒の涙を頬に流す。そんな霧島の頭を、榛名は優しく撫でていた。
「霧島は本当は優しい妹……だけど、今回はちょっとやり過ぎちゃった。そうですよね……?」
「は、はい……」
コクリと頷いた霧島は、もう大丈夫という風に榛名に笑みを向けた。それを見た榛名は、同じように笑みを浮かべて頷き返す。
「それじゃあ、ちゃんと……」
――そう、榛名が霧島に言おうとした瞬間だった。
「そうですか~。そうだったんですね~」
榛名と霧島を見つめていた俺の背中越しに、明らかにいつもとは違う声色が聞こえ、俺はビクリと肩を震わせる。
「――っ、っっ!」
声にならない声を上げた比叡が、口から泡を吹き出して白目を向く。
「いくら子供の姿とは言え、先生を悪者に仕立てようとするなんて……さすがにちょっと許せませんね~」
ニッコリと笑みを浮かべた愛宕は、ゆっくり、ゆっくりと霧島の元へと近づいていく。
それは破滅の足音。
誰もがそれを理解し、指先一つ動かす事ができないくらい、恐怖に身体を縛られていた。
「あ……ぁ……ぅあ……」
抱き合う榛名と霧島は、愛宕の姿を見ながら大きく身体を震わせる。逃げなければという思いがあるのにも関わらず、足がすくんで動けない。
そんな姿を見た俺は、首を左右に振りながら愛宕に向かって手を広げた。
「あら~?」
「ありがとうございます、愛宕先生」
そう言って、俺はペコリと頭を下げた。
「俺の為に怒ってくださるのは嬉しいです。ですが、ここは任せてもらえませんか?」
「あらあらあら……」
大丈夫ですから……と言う風に笑みを向け、俺は愛宕にもう一度頭を下げた。
「……ずるいです」
そんな俺を見て、いつもと同じ声で答えた愛宕。
「すみません」
いつものように、礼を言う俺。
「先生にそう言われちゃったら、仕方ないですね~」
少し呆れた表情でそう言ってから、愛宕はそのまま部屋から出ていった。
「……ふぅ」
肩の力を抜いて、俺は小さくため息を吐く。
こうする必要はあったのだろうか。
愛宕との仲を考えれば、失敗だったんじゃないだろうか。
そんな考えが過ぎったりもしたが、それ以上に見逃す事ができなかった。
「さて……と」
そう呟いて、俺は榛名と霧島を見る。
「「……ひっ!?」」
愛宕の恐怖からは解放されたけれど、未だ俺の姿はここにある。
一難去ってもまた一難。むしろ二難じゃないだけマシってもんだろう?
そんな、有りそうで無さそうな言葉を頭で考えながら、俺は2人の頭に手を置いた。
「「……っ!」」
ビクリと身体を震わせ目をつぶる2人。
今から何をされるのだろうか。
思いっきり叩かれるのではないだろうか。
子供であっても艦娘であり、戦艦である2人でも、やはり自分より大きな相手の手は怖いらしい。
だけど、俺はそんな事はしない。
例え何があっても、子供達に手をあげるような事はしたくない。
「「………………?」」
俺は2人に微笑みながら頭を撫でる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「別に怒っていないから、怖がる必要はないからね」
俺はそれだけを呟いて、暫く2人の頭を撫で続けたのだった。
それから榛名と霧島を落ち着つくまで撫で、泡を吹いて倒れていた比叡を起こして慰めた。
その間、俺は一切3人を怒る事無く笑みを浮かべ、できる限りたわいのない会話を繰り返した。
佐世保であった出来事や、金剛に会ったら何がしたかったなど、徐々に3人は心を開くように話し出し、次第に笑みがこぼれていた。
結局のところ、3人は俺に金剛が取られてしまったのではないかという不安が大きかったのだろうと分かっていた俺は、この会話でそれを確信し、きちんと話をする事でお互いの理解を深めていったのだ。
そうして窓の外は暗くなり、そろそろ寮に帰させないといけない時間になる。俺は3人を送っていこうと声を掛けたのだが……
「そこまで甘える訳にはいきませんからね」
――と、榛名に言われてしまい、苦笑を浮かべながら部屋から出ていくのを見送る事にした。
3人の表情は随分と明るくなり、明日からは大丈夫だろうと思いながら、俺はため息を吐く。
愛宕には少し悪い事をしてしまったと、苦笑を浮かべながら窓の鍵を掛け、スタッフルームを後にしようとしたところだった。
コンコン……
「ん、誰だ……?」
急にノックする音が聞こえ、一拍置いて扉が開かれる。
「あ、あの……先生……」
「あれ、金剛じゃないか。もしかして、こんな時間まで幼稚園の中にいたのか?」
「そ、そうなんデスケド……そ、ソノ……」
背中の後ろに何かを隠しながらモジモジとしていた金剛は、急に目をつぶって俺に何かを突きつけた。
「ぬ、脱ぎたてデース!」
「……は?」
「受け取ってクダサーイ!」
そう言って俺の手に布切れを無理矢理握らせ、ダッシュで部屋を出ていった。
「………………」
その目に映るのは、真っ白な布。
可愛い熊さんの刺繍が入ったふんわりとした布。
――そして、ほんのり暖かいソレは、
紛れもなく、金剛のパンツだった。
いったい俺にどうしろと……
つーか、こんな所を他の誰かに見られたら、確実にロリコン扱い受けるじゃねぇかっ!
せっかく3人と理解を深めたのにさぁっ!
――そう心の中で叫んだ、幼稚園での一幕だった。
◆ ◆ ◆
そして次の朝。
いつものように朝礼が終わり、俺と愛宕の担当別に子供達が分かれてから、遊戯室で事は起きた。
「………………」
俺はゴクリと唾を飲み込む。
目の前には比叡、榛名、霧島が仁王立ちし、真剣な表情で俺の顔を見つめている。
あ、あの……昨日あんなに話し合ったのに、まだ何が問題があるんでしょうか……?
さすがにこの状況に気づいた他の子供達も、固唾を飲んで見守っていた。ただし、とばっちりは受けないようにと、少し離れた位置でだ。
ぶっちゃけて酷過ぎると思うが、その中にはヲ級の姿もある。しかし、あいつだけは顔はニヤニヤと笑みを浮かべており、この状況を単純に面白そうだからとか、ライバルが減るとかそういう考えの下で動かないのだろう。
どちらにしても、俺にとってこの状況は好ましくない。せっかく問題が解消したと思っていたのに、次の日になったら元通りとは、ただのぬか喜びである。
「な、何をしているんデスカーッ!」
「こ、金剛……っ」
すると、朝礼後にトイレに向かった金剛が部屋に入ってくるなりこの状況を見つけ、大声を上げながら俺たちの間に走ってきた。そして俺の前に立つときびすを返し、妹達3人に向かって激情の顔を向ける。
「何度言ったら分かってくれるんデスッ!」
大きな声を張り上げて、金剛は両手をいっぱいに広げた。そんな金剛の表情を見て、3人は同時にため息を吐く。
「金剛お姉さま、別に私達は先生を認めないと言おうとしているのではありませんっ!」
「Why!? それならなぜ、先生の前に立って睨んでいるのデスカ?」
「別に睨んでいる訳ではないのです。ただ、少し緊張してしまって……」
「「緊張?」」
榛名の言葉を聞いた俺と金剛は、同じように顔を傾げた。
「ですが、この前に金剛姉さまがおっしゃった事について、私達はお約束する事ができそうにありません」
メガネのブリッジをクイッと上げて霧島が言う。
「な、なんだかよく分からないんだけど……いったい何が言いたいんだ?」
「そ、その通りデース。比叡はさっき、先生を認めないとは言わないと……」
「ええ。ですから、それとは違う約束について守れないという事なんです」
「そ、それとは違う約束って……マサカッ!?」
霧島の言葉に何を気づき、驚いた表情を浮かべた金剛は大きな声を挙げた。
「チョット待テ、ソレカラ先ハ、言ワセナイ」
「なんで五・七・五で、いきなり入ってくるんだお前は……」
「ヲ級の言う通りデス! これ以上言わせてシマッテハ……」
慌てたヲ級は3人に向かい、金剛は俺の耳を塞ごうとする。しかし、それよりも早く比叡、榛名、霧島の3人はニッコリと笑みを浮かべ、タイミングを合わせて口を開いた。
「「「みんなには悪いですが、先生は私が頂きますっ!」」」
「……は?」
呆気にとられた俺は、ぽかん……と口を広げ、
「気合、入れて、頂きます!」
「榛名は、全力でアタックします!」
「艦隊の頭脳で……先生を虜にしてあげますね!」
3人は口々にそう言った。
――そして、その後すぐに遊戯室内に絶叫がこだましたのは言うまでも無い。
今日も、賑やかな幼稚園の日々が始まります――ってね。
………………
そんな簡単に終わらせられる状況じゃねぇよっ!
艦娘幼稚園 ~金剛4姉妹の恋~ 終わり
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これにて ~金剛4姉妹の恋~ は終了です。
どうだったでしょうか。良ければ感想お願い致します。
さて、次回はいったいどんなお話かといいますと……とあるキャラをメインにした物となります。
題名を見ればすぐに分かる……ええ、それは見事にです。
不定期更新ですが、宜しくお願いします!
次回予告
バトルが鎮守府内で放送された事によってヲ級は周知の事実となった。
しかし、幼稚園以外のヲ級はいったい何をしているのだろうか?
そんな疑問が浮かんだ主人公は、ある休日を使ってヲ級を観察する事にします。
更には、あの艦娘が今章でついに登場しちゃうっ!?
艦娘幼稚園 ~ヲ級観察日記~ その1「コンビからトリオへ」
乞うご期待!
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