艦娘幼稚園   作:リュウ@立月己田

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 霧島は2人を連れて去っていった。
この行動が、後に主人公の首を絞める――ことになったのかは不明だが、とある事件が巻き起こる。

 電と暁が探し物をしているのを見つけ、話を聞くうちにだんだんと怒りが溜まってしまい……


その5「盗難事件発生!?」

 

 サッカーを一通り楽しんだ子供達を着替えさせる為に建物へと戻らせた俺は、折り畳んだゴールとボールを綺麗に洗ってから倉庫に向かう。倉庫の中に道具を戻し終えて腕時計を見ると、子供達の着替えが終わるのはもう少しかかりそうなので、携帯電話のゲームアプリで少し時間を潰してから、部屋に向かう為にゆっくりと通路を歩いていた。

 

「あれ、先生なのです」

 

 角を曲がったところで、何か探し物をしているような感じの電と目が合い、声を掛けられた。

 

「やあ、電。それに暁も一緒に、ここで何をしているんだ?」

 

「ちょっと探し物をしているのです」

 

「暁も一緒に探しているの。だけど、全然見つからなくて困っちゃうわ」

 

「一体何を探しているんだ? もし良かったら俺も協力するけど……」

 

 子供達の着替えが終わるまではもう少し時間があるし、少しくらいなら問題は無いだろう。俺はそう思って2人に問い掛けてみたのだが……

 

「……先生に、協力してもらっても良いのでしょうか?」

 

「そうよね……ちょっと問題があるわよね……」

 

 気まずそうな表情を浮かべた2人は内緒話をするように相談しながら、俺の顔をチラチラと横目で見ていた。

 

 いや、聞こえちゃってるんだけど、俺ってそんなに信用無いのだろうか?

 

 それはそれで悲しくなるんだけど、今までちゃんとやってきたつもりなんだけどなぁ……

 

「でも、先生にも探してもらった方が、早く見つかるかもしれないのです」

 

「そうは言うけど……モノがモノだけに……大丈夫かしら?」

 

「電は先生を信用してるのですっ」

 

「そ、そこまで電が言うのなら、暁は構わないけど……」

 

 相談を終えた2人は俺の顔を見て、真剣な表情で口を開いた。

 

「先生、実はあるモノが無くなってしまったのです!」

 

「あるモノ……?」

 

「そうなの。なんと、愛宕先生のブラジャーが忽然と消えてしまったの」

 

「……なんだと?」

 

「「ひっ!?」」

 

 2人の言葉を聞いた瞬間、腹の中からもの凄い怒りが込み上げてきて、俺はボソリと呟いた。

 

 ――って、なんだか電も暁もすんごい怯えている風に見えるんだけど、どうしたんだろ?

 

「せ、せせせっ、先生の顔が鬼のように見えるのです……」

 

「こ、これが噂に聞く……先生の……怒った顔なの……っ!?」

 

「え、いや、あの……俺ってそんなに怖い顔してる?」

 

「元帥が悪い事をして怒っている高雄お姉さんより怖い顔なのです……」

 

「青葉お姉さんを追い詰める愛宕先生の顔よりも凄いわ……」

 

 ……まじっすか。

 

 確かに凄くムカついたけれど、そんなに顔に出した覚えは無いんだけどなぁ。

 

 ――と言うか、俺の怒った顔が噂になっているって、本当だろうか?

 

 その話をしたのは……確か遠足の時だったけど、結局俺が別の話題を振って逸らしたしなぁ。

 

「そ、そんなに怒らないで欲しいのです……」

 

「あ、あぁ、ごめんごめん。別に2人に対してじゃないから安心して良いよ」

 

「だけど、どうして先生はそんな顔をしたのかしら……?」

 

「そりゃあ、愛宕先生のブラジャーが盗んだ下着泥棒に対して無茶苦茶ムカついたんだけど」

 

「そ、それにしたって……凄い怒りっぷりだったのです……」

 

「そんなに顔に出てたのかなぁ……」

 

 ウンウンと頭を上下に何度も振る2人の様子を見て、気をつけないといけないな……と、俺は反省した。

 

「と、ともあれ、愛宕先生が困っているらしいのです。だから、先生も助けてあげて欲しいのです」

 

「ああ、それなら俺も協力するけど……」

 

「ちなみに、愛宕先生の勝負下着らしいから、早く見つけてあげないと大変みたいね」

 

「ますます許せんっ! 盗んだ奴を拷問しないと気がすまねぇ!」

 

「「ぴゃああっ!?」」

 

 拳を握り締めて叫び声をあげてしまい、電と暁が半泣きになりながら俺から離れるように飛び退いた。

 

「ああっ、ご、ごめんっ! 驚かせるつもりは無かったんだけど……」

 

「せ、先生が……先生が怖いのです……」

 

「を、ヲ級ちゃんが怖がるのも……わ、分かる……わ」

 

 ガクガクと身体を震わせて抱き合う電と暁に謝りながら、笑みを向けて頭を優しく撫でる。

 

 それから2人が落ち着くまで慰めていたが、俺の心の中は表情とは裏腹に、一つの思いでいっぱいになっていた。

 

 下着泥棒、ぶっ殺す――と。

 

 

 

 

 

 それから俺は子供達の元へと戻り、暁と電から聞いた事を話して、みんなに注意するように伝えた。龍田が犯人は俺じゃないかと言ってきたが、たちの悪い冗談は止すようにと真面目な顔で注意すると、やはり先程の暁と電のように子供達は驚き、慌てながら素直に言う事を聞いてくれた。

 

 はて……それ程までに俺の顔が怖くなっているのだろうか?

 

 全く自分としては分からないのだけれど、近くに鏡が無いので見る事ができない。やろうと思えば携帯電話のカメラ機能で写せば良いのだが、それをやった後で自分自身がへこみそうな気がするので、できる限り笑顔でいれば良いだろうと思いながら子供達の面倒を見ていた。

 

 ――そして本日の終業時間になったので、子供達を寮へと帰した後、俺は着替えの為にスタッフルームへとやってきた。

 

「あっ、お疲れ様です~」

 

「お疲れ様です、愛宕先生。今日は色々と大変でしたね」

 

「そうですね~……って、何の事でしょう?」

 

「えっと……暁や電から聞いたんですが、何やら泥棒の被害に遭われたとか……」

 

「あぁ~、先生もお知りになったんですか~」

 

 そう言った愛宕は、少し申し訳なさそうに苦笑を浮かべた。

 

「お恥ずかしながら、私の勝負下着が盗まれちゃいまして……。ここのロッカーに入れていたのですけど、一体何処に消えてしまったのか……」

 

「鍵は掛けていたんですよね?」

 

「それが、ちょっとばかり失念しちゃってまして……掛け忘れてしまったんですよ~」

 

 愛宕は舌を出しながら、頭を自分の拳でコツンと叩いた。

 

 ………………

 

 可愛いなぁ、もうっ!

 

 しかし、泥棒に下着を盗まれたにも関わらず、それ程困っているように見えないのはどうしてだろうか。ましてや勝負下着なら、なおさらの事だと思うんだけど。

 

「ちなみに、盗まれたのはそれ以外に何かあるんですか? ロッカーの中だったら、貴重品とかもあったでしょうし……」

 

「それが、下着以外は何も取られてなかったんですよね~」

 

 言って、不思議そうな顔を浮かべた愛宕は、エプロンを脱いでロッカーの中にしまい込んだ。

 

 ふむ……やはり変だな……

 

 この鎮守府内に不審者が入る事自体難しいのだが、仮に入れたとしても、わざわざ幼稚園のスタッフルームを物色するという事が不自然過ぎる。例えば艦娘の変態マニアが忍び込んで下着をゲットしようと考えたのなら、こんな所ではなくて艦娘の寮に行く方がよっぽど効率が良いだろう。まさかとは思うが、艦娘かつ子供というマニアックにも程がある変態がいたと仮定して、そいつが欲しがる下着を盗ろうとするならば、やはり愛宕の下着を盗むということが考え難い。

 

 という事は、愛宕を狙っての犯行なのか……?

 

 思考を巡らせながらエプロンを脱いだ俺は、愛宕と同じようにロッカーを開けてしまい込もうとした時、ふと中に黒い布切れが入っているのに気づいた。

 

「……ん、なんだこれ?」

 

 そう呟いて、布切れを手に取ってマジマジと見る。

 

「どうしたんですか~?」

 

 俺の疑問の声に気づいた愛宕が近づいて来ると、手に持ったソレを見て、驚いた表情を浮かべた。

 

「あらあら? どうしてそんなところに私の下着があるのでしょうか~?」

 

「……え?」

 

 その言葉を聞いた俺は、何度も手に持った布切れと愛宕の顔を繰り返し見て、恐る恐るソレを両手で広げた。

 

「………………」

 

 大きなまるいレースがついた2つの黒い布に、細い紐が2本ある。何処からどう見ても、それは完全にブラジャーだった。

 

「………………」

 

 凄く大きく、凄くエロイ。

 

 まさに勝負下着と言える、完璧な官能的物体に、思わず鼻血が吹き出しそうになるのを堪えつつ、俺はポケットの中へと捩込もうと……じゃなくてだなっ!

 

「なんで愛宕先生の勝負下着が俺のロッカーに入ってるのっ!?」

 

「あら~、なんででしょうね~」

 

 いやいやいやっ、緊張感が全く無い声を上げてますけど、端から見れば完全に俺が犯人扱いされる場面ですよね――って、何を考えてるんだーーーっ!

 

 身に覚えが無いのに思わず有りもしない罪を暴露しちゃうところだったよっ! これは明らかにパニクっちゃってるよっ!

 

 

 

 バターンッ!

 

 

 

「――っ!?」

 

 大きな音にびっくりした俺は、すぐさま振り向いた。

 

「み、見てください金剛姉様っ! 暁や電が言っていた、愛宕先生の盗まれたブラジャーが先生の手にっ!」

 

「なっ、なんということでしょうー。あんなにまじめだったせんせいが、じつはしたぎどろぼうだったなんてー」

 

 扉を開けて叫ぶように声を上げた霧島が、金剛に様子を見え易いように半身をずらしながら俺を指差していた。そして、見事な棒読みで喋りながら同じように俺を指差した比叡だが、その額には大量の汗が浮かんでいる。

 

「な、な、な……なんで……先生がそんな事をしているのデスカーッ!」

 

「い、いやいやいやっ、こ、これは誰かの罠だっ!」

 

 と言うか、どう考えても霧島の仕組んだことだよねっ!? そうじゃないと、何もかもがタイミング良過ぎるし、比叡の棒読みの理由も簡単に説明できちゃうじゃんっ!

 

 ただ、比叡のリフォーム的なナレーションっぽい喋り方は、ちょっと面白かったけどさっ!

 

「信じられまセーン! 先生が……先生が……ッ!」

 

 愕然とした表情を浮かべた金剛はワナワナと肩を震わせた後、急にきびすを返して「こうしちゃいられまセーン!」と叫んでから、部屋の外へと走っていった。

 

「こ、金剛っ!」

 

 焦った俺は何とか誤解を解こうと金剛を追い掛けようとするが、扉の前を立ち塞がるように霧島が両手を広げた。




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次回予告

 まさかの展開に驚く主人公。
そして立ち塞がる霧島が叫び声をあげる。
更には下着の持ち主である愛宕がとんでもない事を言い出して……?

 はたして主人公は無事でいられるのかっ!?
今章はこれでラストですっ!

艦娘幼稚園 ~金剛4姉妹の恋~ その6「合計何人?」完


 乞うご期待!

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