《午後13:30 『セントアーク』 市役所》
市役所へ目指した俺達B班は数分の徒歩で目的地に到着し、係員に話して担当者の元へ案内される。
人事課という事務室に案内されると白髪と地毛のグレーが半々な50代ぐらいの中年の男性がこちらへやって来た。
「君達がトールズ仕官学院の生徒さんだね? 遠いところからご苦労様。私は人事部人事課の課長のイラン、君達に依頼を頼んだ者さ」
「初めましてイランさん、こちらこそお仕事中失礼します。早速依頼についてですが落とし物の捜索と書いていましたけど、これはその名の通り落とし物を拾い集めるという内容で間違いないでしょうか?」
「あぁ、間違いないよ。この時期になると旅行客が非常に多く来てね、その分落とし物が街で数多く出るんだ。だが今日は部下の殆どが休暇で休んでいて人手が足りなかったんだ、それで依頼として出したという訳なんだよ」
成る程、部下達の休み日が重なって人手が足りなくったという何処でもよく起きる問題か。
とはいえ人気の旅行先だからこそ、人手が足りないのは現地の人々にとっては深刻な問題だ。
シュナイゼル侯爵閣下もそこ等辺も考えてこの依頼を課題にしたのだろう。
するとアリサが手を挙げて、イランさんに質問する。
「落とし物が多いって言いましたけど、具体的に1日でどれぐらい数が見付かるんですか?」
「そうだね……多い日にはざっと50個は見付かるよ」
「50! ………いくらなんでも落とし過ぎじゃないですか?」
「はははは、私も入社したばかりの頃はそう思ーーーって、何時からそこに居たんだ君はっ!?」
エレカがすぐ近くに居たことに気付かなかったイランさんはエレカが話に参加してことで初めて存在に気付き、飛び上がる程驚く。
腕の立つシュナイゼル侯爵閣下の時は何ともなかったが、これが一般の人の反応である。
お馴染みのリアクションを取られたエレカはガクッと顔を下げて凹む。
こういうやり取りはもう慣れたが、いい加減エレカもそういうリアクションに慣れれば良いと思うこの頃である。
「んん! それで私達は何処で落とし物を集めればよろしいのでしょうか?」
「あ……あぁ、駅の辺りが人手が回っていないようだから君達にはそこを中心に捜索してもらいたい」
「駅か、明日『トリスタ』に帰るのだから改めて場所を確認するのに有り難いな」
「そうだな。あっイランさん、目標としてそこで落とし物を幾つ拾えば良いっすか?」
「うーむ。駅の辺りだと他よりも多く見付かるから………最低十個まで拾って来てくれ」
「了解しました。それでは失礼します」
一言断って俺達は最初の課題をクリアする為、駅へと向かう。
『頼んだよ』とイランさんから言葉を背に市役所を後にし、そして数分の内に駅へ到着する。
「着いたが、まずは何処から捜索する?」
「その前にメンバー分けだ。7人も居るんだ、三組に別れて探した方が効率が良い」
「妥当な線だな。チーム分けはどう決める?」
「ーーー俺の独断だがアリサとラウラ、ガイウスとゼオラ、トモユキとエレカと俺。この構成でどうだ?」
俺は相性やそれぞれの性分のことを踏まえて最善の組分けを提出した。
アリサとラウラは前回も同じ班だから気軽だろうし仲も良好だ。
次にガイウスはリィンと同様誰とでも隔たりなく接することが出来る上、相手に合わせるのが上手だから誰とセットにしても問題ない。
ゼオラもマキアス以外なら問題なく接することが出来るし、都会に疎いガイウスを先導してくれるだろう。
最後に俺の方にトモユキとエレカを入れたのはもしものことを考えての結果だ。
そのもしもと言うのはエレカが迷子になった場合のこと。
知っていると思うが、エレカは存在感が非常に薄い。
気配で存在を察知出来るラウラと風の導きとやらで存在を感知出来るガイウスでもエレカの存在を掴むことが出来ない。
このB班でエレカの存在に気付けるのは俺とトモユキしか居ない。
もしもエレカが俺とトモユキ以外の誰かと一緒のチームになったとしたら、気付かない内にエレカとはぐれてしまい、エレカが迷子になってしまうかもしれないという訳だ。
はぐれて迷子になる程自分はそんなに子供じゃないと本人が反論しそうだが、見た目に反してコイツはフィーよりも一個下だ、念には念を入れた方が良い。
俺と同じようにエレカの存在を認識出来るトモユキが一緒の組なら見失うことはまず無いだろう。
そして俺が出した組分けに対し、皆は不満を出さずに『問題ない』と了承する。
組分けが決まったことで俺達は落とし物の捜索を開始する、アリサとラウラ組は駅から西側の方を。
ゼオラとガイウス組の方は東側の方を。
俺、エレカ、トモユキの三人組は北側の方へ足を運ぶ。
………目的地に着き、捜索を始めて早数十分。
俺達の組は4つの落とし物を発見する。
補足しておくと各々が任された場所に向かう前に組ごとに拾う落とし物の数を決めており、二人の組の方は最低でも三つ、俺達三人の組の方は4つ。
よって目標数に達したことで俺達の組の捜索は終了する。
後は駅に戻って他のメンバーを待つだけなのだがーーーー
「あっ、あそこにも落とし物が」
エレカが五つ目の落とし物を発見する。
その五つ目は歩道の脇に設置されたベンチの上に置かれていた。
見たところ封筒のようだが、まぁいずれのせよ見付けた以上あれも回収しなけばならない。
俺達の目標は達成したが別に5つ以上は拾っていけないということはない、なのであの封筒も回収しようと俺達はベンチへ赴く。
「いや、これは落とし物というより忘れ物じゃないか?」
「でもどっちしろ、市役所に届けた方が良いですよ。これの持ち主さんが今頃困っているかもしれませんし……」
「それもそうだな。あっーーー」
封筒を拾うとしたトモユキが偶発的に封筒を落としてしまう。
そのせいで封筒の封が外れてしまい、中身がバサァと地面に散らばる。
「「「!?」」」
次の瞬間、俺達は眼を見開く。
封筒の中に入っていた物、それは写真だった。
ただの写真なら問題無かったのだが、その写真に写っていた物が問題があった。
写真には大きく分けて二つの種類があり、一つは女性のスカートの中が写った物。
もう一つは若い女性の着替え中が写った物、それ等が沢山封筒の中から出て来たのだ。
「こここここれって………」
「盗撮写真だな」
顔を赤くして狼狽えるエレカとは対照的に平然と写真を手に取って観察するトモユキ。
偶然とはいえ、とんでもない物を見付けてしまったものだ。
とにかく憲兵を呼んでこれを引き取って貰うとしよう。
「な、君達一体何をやっているんだ!?」
すると突然背後から男の声が響く。
俺達は振り向くと5アージュ離れた先にカメラを首に下げた30代ぐらい男性が立っていた。
これはもしかするとーーー。
「……まさか犯人が自ら赴いてきれるとはな」
「あっ! い、いや、私は………」
ハッ!と愚かにも自ら白状してしまった男は後退りする。
案の定、あの男がこの如何わしい写真を撮った盗撮犯らしい。
俺達は逃がすまいと男に詰め寄ろうとする。
「くっ……!」
男は振り返って逃走を図った。
しかし、幸運にも男の走る速度は遅く。
5アージュも有った距離など関係なく、俺達はあっという間に男に追い付き、トモユキは飛び込むように両足を掴み。
エレカは右肩、俺は左肩を掴み、バランスを崩された男はうつ伏せに倒れる。
「な、何をするんだ! 離せ離せっ!!」
「観念しろ! 一緒に憲兵のところまで来てもらうぞ!」
「変態! 被害に遭った人達に謝ってもらいますよ!」
ジタバタと暴れる男を取り押さえつつ、憲兵が居る場所へと連行しようと俺達は男を起き上がらせる。
同じ女性として許させないのか、珍しく糾弾するエレカ。
そしてトモユキは言うとーーー。
「ふんっ!」
「ほぶすっ?!」
正面に回り込んで男の顔に左ストレートを打ち込んだ。
「なななななな何をするっ!?」
「やかましいぞ変態め。女性にこのような如何わしい行為を行うとは! 人を無闇に辱しめることは、してはいけないと幼子でも分かる理屈だ!」
ふむ、トモユキにしては極めて正論だな。
……だかなトモユキ、お 前 が 言 う な。
エレカも同じこと思ったようで、怪訝そうな表情を浮かべる。
そんな俺達の心境など知らず、トモユキは握り拳をゴキゴキと鳴らす。
まるで『これから殴るから覚悟しろよ』と予告するかのようだった。
「貴様によって傷付いた、五人の怒りを思い知るが良い!」
「ちょちょ、ちょっと待―――」
「まずはこれは俺の分だぁ!!」
「どどりげすぅ!!」
トモユキの右ストレートが容赦なく無抵抗な男の腹にめり込む。
「昨日好物の唐揚げが売り切れていて俺の気持ちは萎えた!」
「そ、それ……私とは何の関係もな」
「次にこれが、俺の分だぁ!!」
「らおっん!!!」
今度は蹴りで金的をかまし、男は奇声を上げる。
実に痛そうだ。
「毎日と言って良い程、電車であるキモいオバサンが俺の近くに来やがる! 一体何故なんだ!?(作者談)」
「し、知ら」
「――そして最後にこれが俺と俺と俺の分だぁ!!!」
「でぃす!! あごぅ!!! のはっあああああああああああああ!!!!」
最後に左ストレートからの右回し蹴り、そしてアッパーで止めを刺した。
「特に理由なし!」
「無いんですか!?」
とうとう、いや………ようやく見かねたエレカが突っ込みを入れる。
今更だが、俺も危うく口に出して突っ込むところだった。
「…………」
トモユキのどうでもいい理由でボコられた盗撮犯は気を失ってしまった。
やり過ぎな気もするが、ジタバタと抵抗されなくなったので良しとしよう。
―――それから数分後。
目標数であった落とし物を10個以上拾い集めた俺達B班は市役所のイランさんのところへ戻り、集めてきた落とし物を渡し、依頼を無事に達成する。
一つ目の依頼をクリアしたことで俺達は市役所を後にし、二つ目の依頼主が居る運送会社の元へ向かう途中だった。
「じゃあその盗撮犯はちゃんと憲兵に引き渡したのね」
「あぁ。しかもどうやらその盗撮犯、先々月から都市中で手配されていたらしいぞ」
「そんなに前から手配されていたと言うことは被害に遭った人が多かったんだな」
「はぁ……この由緒正しき土地にそんな不埒な輩が居座っているなんて………」
「まぁ何処へ行ってもそういう奴は居るってことだな」
運送会社に着くまで俺達は捕まえた盗撮犯について話していた。
今アリサも言ってたがあの盗撮犯は近くを巡回していた憲兵に引き渡し、無事に逮捕される。
引き渡し時、憲兵に何故盗撮犯がこんなボコボコされているのだ?と問われたが、犯人が判明したことで被害に遭った女性達がフルボッコにしたと言って何とか誤魔化した。
そんな話を繰り広げている内に俺達は運送会社に辿り着き、市役所の時と同様、担当者のところへ案内される。
担当者についての詳細は省くが、依頼内容は四つの小包をそれぞれの配達場所に届けるというもの。
何でも先日1台のトラックのエンジンが壊れてしまい、明日新品のエンジンに交換するまでそのトラックで運ぶ予定だった物を自らの手足で運ばなくてはいけなくなったらしい。
しかし人の手だけで運ぶのには流石に人手が足りなかったようで、配達物の一部の配達を手伝ってくれる人を急遽募集したという訳だ。
依頼内容を確認した俺達は四つの配達物を受け取って、依頼に取り掛かる。
幸いにも配達物の最初の一軒目は3つ目の依頼主が居る領邦軍の砦の近くに在り、一軒目に配達物を届けるついでに砦に寄って依頼内容の確認することにした。
「む?」
一軒目の配達を無事届け、砦の近くまで来た途端、ラウラが眉を吊り上げる。
どうしたのかと俺も含めて皆が不思議そうにラウラの視線を辿ってみると、砦の門の前で二人の男女が領邦軍の兵と何か話し合っていた。
貴族の夫婦なのだろうか、二人とも身なりの良い服と装飾品を着けている。
そして何処か様子がおかしかった。
領邦軍の兵士と話す二人はとても不安そうな顔をしており、妻と思わしき女性の方は眼からポロポロと涙が流し、夫と思わしき男性はその女性を宥めながら主に兵士と言葉を交わしている。
「どうしたんでしょう? 口論しているようには見えませんけど……」
「様子から見て、ただ事ではなさそうだが………」
何が遭ったかは知らないが、それ故にあの夫婦は一体兵士と何を話しているのか? 俺も含めて全員が気になった。
するとこちらの存在に気付いた門番の兵士がこちらにやって来る。
「おい君達。此処に何か用か?」
「あっ、えっと―――」
「御勤めご苦労様です。トールズ仕官学院特科クラス《Ⅶ》組の者です」
「あぁ。話に聞いていたトールズ仕官学院の学生さん達か、依頼内容を確かめに来たんだな」
「はい、討伐する大型魔獣についてですが―――」
俺達はその兵士から依頼の標的である大型魔獣の外見、特徴、出現する場所等を詳しく聞き込み、把握する。
魔獣ついて話が終わるとラウラがあの夫婦に眼を向け、
「ところであちらの御夫婦は如何されたのですか?」
「………迷子だ」
「迷子?」
「そうだ。あのお二方は此処の男爵家の夫婦なのだが……一人息子を連れて三人で外で昼食を済ませた後、街中を散歩してたら、ふと眼を離した隙にその息子さんが何処へ消えてしまったようなんだ」
「消えた? その子、歳はいくつなのですか?」
「今年、五つになったばかりだそうだ」
「五つ!? まだ物心付くか付かないぐらいの歳頃じゃない!」
年端のいかない子供がこの広い都市で行方不明になったと知って驚くアリサ。
男爵夫婦に聞こえると危惧した俺は口に人差し指を添えて彼女を鎮める。
部外者の俺達がただ悪戯に野次馬根性で聞き入るのは彼等に失礼なものだ。
………しかし、微力ながら力になれることは出来る。
「当然我々領邦軍はそんな年端のいかない子を放ってはおけず、捜索を始めてから一時間近く立つ、この都市は広いからかなりの人員を割いたのが未だに見付からない……」
「――もし良かったらその子の外見を教えてくれませんか?」
「ん? 何故だ?」
「保証は出来ませんけど、もしかしたら実習中にその子を見掛けるかも知れませんし、見付けたら憲兵に保護してもらいたいので」
「うむ……人手は多い方が良いに越したことはない。教えよう、男爵家の一人息子は背はこれくらいで白のシャツと茶色のズボンを着て、髪の色は奥方と同じ桃色だということだ」
「成る程、ありがとうございます。それでは俺達はこれで失礼します」
男爵夫婦の子の情報を得て俺達は一言断ってその場を後にする。
そして砦から十分離れると俺達は行方を眩ました男爵家の一人息子について話し出す。
「見付かると良いな、あの夫婦の子供」
「そうね。年端のいかない子が居なくなるなんて、親は心配で堪らないでしょうね」
「それは見ての通りだったしな。しっかし親を泣かせる程心配掛けるとは人騒がせなガキだぜ」
「にしてもその子、一体何処に隠れているしょうか? 兵士さんの話ではもう一時間近く捜索が続いているって言ってましたけど……」
「うむ。歳はまだ五つだと言う話だし、それだけ幼いならそんなに遠くは行っていないと思うのだが………」
「子供は眼を離すとフラッと何処かへ行ってしまうものですから、迷子自体珍しい話じゃありませんけど、危ない人に付いて行ってないか、心配ですわ」
「―――噂の人拐いじゃなければ良いんだが……」
ボソッと俺が呟くとエレカ達が一斉に視線を俺に向ける。
どいつこいつも『なにそれ?』って顔をしているが……何だ、知らないのかコイツ等?
意外と情報に疎いな。
「人拐いって何のことだ、イビト?」
「……最近になって各所で起こっている誘拐事件のことだ。犯人は子供を拐って親に高額な身代金を要求するそうだ。しかも誘拐されるのは決まって貴族の子だという話みたいだぞ」
「えっ……じゃ、じゃああの夫婦のお子さんもその人拐いに遭った可能性が……」
「無いとは言い切れないがまだそうと決まった訳じゃないだろう。それに例えそうだとしても俺達が出来ることなんて何もない、情報が少な過ぎる上に何より実習中だからな。俺達が出来ることはその子が本当に迷子な場合のみだ」
「で、ですよね………」
正論を突き付けられて認めざる負えないようにエレカを始めに皆が俺の意見に同意する。
俺達は『特別実習』という特殊な授業の一環として此処へ来ている。
冷たい言い方かもしれないがもし本当に誘拐事件だとしても実習中の俺達にそんなことに時間を割く余裕はない。
仮に男爵夫婦の一人息子を見付けることが実習の課題の一つなら喜んで捜索するのだが、知っての通り課題にそれは入ってはいない。
重ねてまだ確定してもいない誘拐事件(仮)にかまけて実習を疎かにし、実習の評価を落とすのは学生として本末転倒である。
少なくとも俺は前回のB班と同じような結果を出すつもりもないし、同じことを繰り返す程愚かではないつもりだ。
皆も実習と私事の区別は当然出来ている筈、今はどちらを優先すべきか言うまでもないだろう。
だが俺達はこれから配達の過程でこの都市の中をグルグルと回るので、その途中で男爵夫婦の一人息子を見掛けたら憲兵に引き渡すまで保護するつもりだ。
そういう訳で俺達は次の配達場所へ足を運ぶ。
―――暫くした後。
この都市には古代から存在する地下の坑道を利用して発展させた『地下鉄』という都市の地下を走る鉄道が存在する。
俺達はその地下鉄を利用し、普通に歩くよりも効率的且つ早く都市のあちこちに移動して配達物を届けて行った。
……やがて最後の配達物が残ったのだが、その最後の配達物を届けた際にアクシデントが起こる。
そのアクシデントがどういうものかと言うと、一から全部を説明するとかなり面倒臭いのでかいつまんで話すと届け宛がそこの家主ではなく、家主のペット(着ぐるみを着たオッサン)だった。
何を言っているのか分からないと思うが、俺も知りたいくらいだ。
そして間の悪い時にようやく家主が犬だと思っていたペットがオッサンであることに気付く。
「きゃああああああ!! 何処か変な犬だと思ったら貴方人間だったのーーーー!!?」
「畜生バレたっ! くっそう転職だ!!」
自分の正体が家主にバレてしまったオッサンはまさに犬の如く逃走する。
転職って、まさか次は他の家のペットになるつもりか?
「――別れる前に奥さん。お宅の息子さん、ジョーンに伝えておいてくれ。俺を拾ぶっはほぉ!!!」
何か言おうとしたオッサンだったが、玄関の所で回り込んでいたトモユキに左ストレートをお見舞いされた。
殴られてオッサンが仰向けに倒れるとトモユキはすぐさまオッサンの胸蔵を掴み。
「逃がさねぇよ変質者。無抵抗な人間を一方的に殴るとは貴様に道徳は無いのかぁ!!」
「えぇ!? ちょちょ、俺そんなことしてなブルァ!!!」
無慈悲に今度は蹴りを放つトモユキ。
色々と突っ込み所満載だが………これだけは言っておこう。
トモユキ、お 前 が 言 う な。
「人に濡れ衣を着せた上に、この家の若奥様に近付く為に犬に変装するその卑劣! 恥を知れるが良い!」
「いやいや! 前者も後者もそれこそ濡れ衣どんどこっ!!!」
とことん言わせる気は無いのか、次は往復ビンタが飛ぶ。
思えば、今回
「言い訳無用! 人の話を聞けねぇのかてめぇは!!」
――うん、だからなトモユキ。 お 前 が 言 う な。
「止めて! ダク男を虐めないで!」
「「ジョーン!」」
するとトモユキとオッサンの間に幼い男の子が庇うように割り込む。
察するに家主の子供のようだ。
「確かにダク男は酔っ払って家庭も地位も滅茶苦茶にしちゃったダメダメで度し難いクズな男だけど、それでも僕の友達なんだママ!」
「ジョーン………」
庇うような姿勢で家主を説得しようとするジョーンに感動したのか、或いはサラリと吐いた毒に傷付いたのか、声が震えるオッサン。
しかし成る程、『ダメダメで度し難いクズな男』略して〝ダク男〟か。
あのジョーンって子が付けたみたいだから………うん。良い友達を持ったなオッサン。
そしてその後、ジョーンは子供特有の眩しい上目遣いや駄々っ子交渉術で家主を何とか説得させ、このままダク男を飼い続けるのを許される。
「これからも一緒だよぉダク男!」
「ありがとう………本当にありがとうジョーン! 感謝のハグだ!」
「気持ち悪いからヤダ☆」
「ぶべらっ!!!」
最後の最後で友達のジョーンに止めを刺されるオッサンであった………。
最後は色々と端折って銀○風にしてみました!
しかし、神テンポで有名なギャグ漫画○和のようにはいきませんでした。
強引且つ分かり難くて大雑把な仕様ですいません……orz