ジョジョの奇妙な学園 ~stardust stratos~   作:エア_

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やぁ


第八話~一世紀に及ぶ因縁と新しい力

「さて、何処から話しましょうか」

 

学園へ戻り、少し経った頃。承太郎はラウラと共にセシリアの部屋に訪れていた。勿論内容はジョースター家についての関わりについてだ。初めは知っているかどうかだったのだが、話すことが多いとのことだ。だがまさかオルコット家に呼ばれるとは二人も思ってもみなかった。ちょうど夏休みに入るからとの事で、三人揃って旅客機でイギリスへと向かった。

 

オルコット家はとても大きく、物語などで聞くような豪邸であった。あらゆる物が想像の物のようで、それはもう社会的な地位の差を感じるほどだった。

 

・・・・・・とはいうが、実は承太郎の家もそれなりの豪邸であるのは確かなのだが、やはり日本人の生活を多くしていた彼からすれば西洋の豪邸はまさに夢物語であった。ラウラも平常心を装うが、内心相当に緊張をしていた。彼が隣にいなかったら畏まっているに違いない。

 

「私の家に残っております写真の中に、ジョースター卿との写真が御座いましたね」

 

そして今はその豪邸の二階、セシリアの部屋の向かい側にある部屋で、言うには代々伝わる思い出の品を置いてあるとの事らしい。そこにはよく彼女も訪れているらしく、清掃も行き届いていた。

 

セシリアがその思い出の品の中からひとつを取り出した。それは黒髪の厳格な顔つきの中年の男性が、隣にいるブロンドの柔和な表情の男性と握手をしながら笑顔でこちらに顔を向けた写真だった。ブロンドのほうは、どこかセシリアに似ているようにも見える。彼女の髪の色も考えればこちらが彼女の曽祖父に当たるのではないだろうか。

 

「こちらの黒髪のお方が空条さん、貴方の高祖父ジョナサン・ジョースター様のお父上に当たるジョージ・ジョースター卿ですわ」

 

「・・・・・・この方が、承太郎殿の曾々々おじいさんという事ですか?」

 

「あぁ、その呼び方で間違いねぇよ。オルコット、続きを頼む」

 

「わかりました。このお方、ジョースター卿はこれよりも前から我々オルコット家とは長い付き合いでしたの。パーティや乗馬など、深く関わりを持っていたとか。しかし、このジョースター卿を境に、私どもはジョースター家の方との交流はなかった。それこそが」

 

再び何かを探すセシリア、一分もせずに見つけ出したのは新聞だった。当時の新聞だという話だ。

 

「この【ジョースター卿殺人及び、ジョースター家炎上】。当時吸血鬼騒ぎのあった時期に起きた悲しい事件です」

 

外国に滞在が長かったお陰かそれなりに各国の言葉が話せるようになっていた承太郎はその当時の新聞を読むことにした。手にした感触はとても古く、まさに歴史に触れているような感覚になった。インクもとても古く、所々擦れて何も見えなくなっている。

 

しかし、号外と書かれたこの大きな一面の文字はピッシリとすべて書かれていた。

 

「・・・・・・ほぉ」

 

「どのような文が書かれていたのですか?」

 

「あぁ、この時代は科学がそんなに進歩してねぇのは理解していたが、こうも魔女だ吸血鬼だと騒いでるなんてな」

 

内容は要約すると、ジョースター家の炎上は魔女の仕業。ジョースター卿が死んだのは吸血鬼の仕業だという事であった。その中にも、彼らが探していた手がかりであるDIOという文字が存在していた。

 

「やはり、承太郎殿と戦った男はこの新聞に載っているDIOと言うことでしょうか」

 

「まだわからん・・・・・・オルコット、この他に何かないか? ジョースター家と、このディオ・ブランドーについては」

 

「少々お待ちを・・・・・・チェルシー」

 

2~3度手を叩きながらそういうと、扉の前に待機していたのか一人のメイドが入ってきた。勿論断りを入れるあたり、流石は英国メイドであると二人は関心を持った。

 

「はい、お呼びでしょうかお嬢様」

 

「えぇチェルシー。我がオルコット家とジョースター家の関係はとても深く、それは一世紀以上前からの関わりを持つ家。その家の者が参られましたわ。我が家にもジョースター家についての物がいくつもあるはずです。ほかの者も使ってよろしいですから、探していただきませんこと?」

 

「仰せのままに、お嬢様。少々お時間をとらせて頂きます」

 

「かまいませんわ」

 

チェルシーと呼ばれたメイドは二人に簡単に会釈をした後、すぐにその場を去った。セシリアの頼みに答えるべく執事メイド総動員しているのである。従者の鏡であった。

 

「それにしてもセシリアは、何と言うかお嬢様口調というよりメイド口調だな」

 

「鋭い一撃でしたわ、ラウラさん・・・・・・そうなんですの、私昔からメイドに構って貰ってばかりで気がつけばメイド口調になってしまいましたの。あぁ、こんなの一夏さんに見せられませんわ」

 

「・・・・・・あぁ、あいつは変なところに鋭いからな」

 

「えぇ! そうなのですよ! この前も香水を替えたというのに気がつかず、何故かその日の昼食について疑問を持っていましたのよ! 私が和食を食べるのがそんなに珍しいことですか!?」

 

こいつも苦労してるんだなぁとあのラウラでさえ思った。本来なら自分も同じ目にあっているのだがここは別の世界。競争相手も殆どいない上に、依存した相手は超硬派な巨漢。競争相手すら面識がないため普通な生活を出来ているのだ。

 

ちなみにだが、黒兎隊は全力でラウラを応援しているとの事。

 

「一体全体、何故香水じゃなくで昼食なんだ?」

 

「本当ですわ! 知り合いに相談して男性が好みそうな香水を探しましたのに、あの唐変木で鈍感で朴念仁は~っ!!」

 

「まぁ、惚れたほうが負けだってぇ事だぜ? オルコット」

 

「そ、それは・・・・・・わかっていますわ」

 

承太郎に核心を突かれたせいで顔を赤くしながらもじもじと手を彷徨わせるセシリア。そんな姿に少し不憫だなと思いながらも声に出して応援するのは他の奴ら(箒、鈴音など)に悪いと感じ、承太郎は心のうちで静かに応援するのであった。

 

「とりあえず、俺は一度ジジイに連絡をしてみる。あっちの情報と照らし合わせをして、吸血鬼騒動が今回のと同じ奴なのか知らなきゃあならねぇ」

 

「はい。ではチェルシー達が捜索していますから今のうちに」

 

「あぁ、すまねぇが席を外すぜ」

 

承太郎はそう言うと部屋から一人出ていった。残ったのはセシリアとラウラの二人だけだった。改めて部屋の豪華さに当てられたラウラは何も話せないでいた。

 

「そんなに畏まらずとも」

 

「そうは言うが、私はこういった場所に来た事がなくてな。正直緊張しっぱなしなのだ」

 

「あらあら・・・・・・それにしても承太郎さんとの関係はどうですか? 進展しましたか?」

 

「・・・・・・進展?」

 

セシリアの問いに首を傾げるラウラ。そんな姿を見て彼女は、自覚すら持ってなかったのだと改めて理解した。それも仕方がないと言える。残念ながらラウラ自身が今優先順位を承太郎を最優先としており、恋愛を認識する前に優先順位が変更したため、気がつくことすらなかったのだ。

 

「えぇそうですわ。承太郎さんとの距離です」

 

「・・・・・・正直、私が力不足のせいで足手纏いになってると思っていて、な」

 

「そう、ですか」

 

ラウラの落ち込みように、それ以上の返答を求められなかった。あの一件以来、彼女は決定的何かが欠損し、自信というものが完全に消失している。訓練の時は先導に立ち、教師のようにその豊富な知識を彼女たちに提供しているというのに、どこか自信というものを喪失していた。一体何が欠損したのかセシリアも知らないが、彼女から直接聞くわけにも何か核心をつきそうで誰も聞けないのだった。

 

「本当に申し訳ないと思っている。あんなに手伝ってもらったというのに」

 

「何を仰いますの、当然の事ですわ。安心なさってくださいな」

 

「だが・・・・・・ふっ。いや、何も言わないさ。感謝している」

 

「うふふ、これからもお任せください」

 

そこからはISの話やら世界の軍事情勢やらと普通の女子高生とはかけ離れた内容ではあるが、それでいて女子高生のように楽しそうな会話をしていた。二人の時折見せる笑顔が、年相応の表情で、軍人やら貴族やら一切なく、一人の女子高生の顔をしていた。まぁ内容はもう女子高生が話すようなものではないが・・・・・・。

 

 

 

 

「ジジイ、ジョースター家について・・・・・・ジョナサン・ジョースターについて話が聞きてぇんだが」

 

[・・・・・・承太郎、何処からその名前を聞いた?]

 

「悪ぃが、今は時間がねぇんでな。ジョナサン・ジョースター、ディオ・ブランドー、吸血鬼。この三つについて至急に頼む」

 

[・・・・・・わかった、話そうじゃあないか。ディオ・ブランドーという存在。そしてジョースター家の因縁についてのぅ]

 

そして語られた内容は壮絶なものであった。ジョセフの口から語られたジョナサン・ジョースターの激動の数ヶ月。何もかもが普通と異なり、全てが奇妙な物語。彼には想像もつかない話だった。

 

[我が祖父、ジョナサン・ジョースターは偉大な人間じゃったよ。どんな苦しい状況でもその心には勇気を必ず持ち、それでいて恐怖を己のものにしていた。わしら一族の誇りじゃよ]

 

「・・・・・・そうか」

 

ジョセフの語る声は、それは懐かしそうに、それでいて自慢しているように語っていた。承太郎もそんな彼の嬉しそうな声に、いい歳扱いてと静かに笑った。まるで自分のように語るジョセフに、彼自身もそれなりに敬意を払っていたのだ。

 

[まぁ全ては、今は亡きSPW財団創設者、ロバート・E・O・スピードワゴンやジョナサンの妻でありわしの祖母であったエリナ・ジョースターの話じゃがな]

 

「それでもだ。感謝するぜ、ジジイ」

 

[・・・・・・もしや承太郎、お前]

 

「安心しな。これは俺の問題だ。ちゃんと片付ける」

 

承太郎はそう言うと、ジョセフの言葉を聴かずに携帯の通話を切った。悟られないように急いで切ってしまったが、彼がそんなことで戸惑っていられる時間はなかった。相手を知らなければ、状況を有利に動かせない。それは闘いにおいて基本だ。昔の偉い人の言葉にはあった。敵を知り己を知れば百戦あなかしこあなかしこ。平安時代の哲学剣士、ミヤモト・マサシの言葉である。まぁ、そんな偉人なんて承太郎には全く一切これっぽっちも関係ないのでこの文は気にしなくていい。文字稼ぎである。

 

電話は十分程度だったはずなのに、部屋に戻るとすでに多くのメイドが文献やら重要書類を持ってきていた。その中から一人前に出てフリルを持ち、お辞儀をする女性が現れた。先ほどのチェルシーである。

 

「空条様、御目当ての物が御座いましたら私目にお申し付けください」

 

「そういう事ですから空条さん。探しましょう」

 

セシリアの計らいにより、数多く集まった資料。流石は貴族だと感心しながらも、交流が絶たれていたオルコット家が最後まで残していてくれたということに頭が上がらなかった。

 

「あぁ、感謝するぜ。オルコット」

 

感謝の言葉を贈った彼は、当時の文献に目を通した。やはり内容はジョセフが話した奇怪なことは殆ど載っておらず、当時の不可解事件として取り上げられていた。

 

これで、ジョセフによる真実と、世間での当時の捉え方を比較できた。そして共通の内容を手に入れることが出来た。

 

共通したキーワード、それはやはりディオと吸血鬼騒動、そしてジョナサン・ジョースターだった。だが、それにより例の男が自らを吸血鬼と呼んでいる事もわかっている。つまりはこのディオとDIOは関係者または血縁者と考えられる。

 

数時間に亘る情報集めは、中々な収穫を得ていた。

 

「収穫は御座いましたか?」

 

「あぁ、ディオに関しては謎めいた箇所がまだ多くあるが、ジョースター家については多く見つかった。感謝するぜ」

 

「それは何よりですわ・・・・・・ところで、空条さんはいったい何故このディオ・ブランドーを追ったのですか? 例の憑依型ISを操る謎の男と関係が御座いまして?」

 

「・・・・・・悪いが、これは俺の問題でな。すまねぇが詳しくは話せねぇ」

 

資料をメイドに渡しながら、承太郎はそう言った。セシリアは少し不満げだったが、彼には彼なりに考えがあるのだと思い、大人しくその件に関しては身を引いた。そろそろ本国へ戻らなければならなくなった彼は、最後に多くのコピーした資料を受け取った。

 

「そうですか、残念ですわ・・・・・・ですが、もしもの時は私を頼ってください。ジョースター家と深い交流のあったオルコット家、お互いに助け合った間柄です。困った際は是非お手伝いさせてください」

 

「あぁ、ありがとう」

 

二人は互いの右手を差し出し、握手を交わした。再び交流を果たせた両家の姿がそこにあったのだ。

 

「もしもの時は、SPW財団かジョースター財団に声をかけてくれ。SPW財団なら俺が、ジョースター財団ならジジイが対応出来る」

 

「えぇ、その時はどうぞよろしくお願いしますわ」

 

セシリアはまだ仕事が残っているからと、日本へは承太郎とラウラのみが向かうことになった。

 

飛行場に着いた一同、セシリア達に見送られ承太郎達は飛行機に乗り日本へと向かった。多大なる情報を抱え、彼らはIS学園を目指したのだ。

 

 

 

 

そのころ、とある海域に浮かぶ小さな島の地下にある研究所にて、篠ノ乃束が頭を抱えていた。

 

内容はそう、承太郎となぞの男が使っていたISについてだ。

 

あれから千冬に情報を横流ししてもらいながら、承太郎の使うIS【スター・プラチナ】の概要を詳しく調べていたのだ。

 

「う~ん、スペックは上々。本来は観測用に作られた機体だけど、大会用と実践用にステータスを変更できるのか~。だからあの英国中華ペアと接戦したのも納得する。あの男が使っていたステルスISは間違いなく実践兵器をゆうに越した力を内包していたもの」

 

いくつも表示されるコンソールとスクリーン。その一つ一つを同時進行で行い、スター・プラチナのデータを高速で処理していた。そして彼女は初めて自分以外に拍手を送った。

 

三人寄れば文殊の知恵とはよく言うが、まさか自分の作ったISと互角の性能を作り上げるとは思っても見なかったのだ。近接という一点集中にしたからこそこのスペックなのだろう。愚直に真っ直ぐ、それでいて興味深い。それが束の持った感想であった。

 

「でもこのモーターの数を操ってるあたり、彼の精神力は並外れと言えるね。しかも彼自身も強いときた。そりゃあヨーロッパ代表なんて大層な物貰えるはずだよ、これ人間の関節と筋肉の数動かしてる。人間業じゃないね」

 

コンソールをまるでピアノの鍵盤を弾くようにタイピングし、解析を続ける。一つ一つに音をつけられたなら、本当に音楽を奏でているように感じられるのではなかろうか。薄暗い、というより電気がついておらず、ただひとつそのスクリーンの発行しか光源を持ち合わせていない研究所でまるでマッドな科学者のように寝ず食わず飲まずな研究をしていた。絶対に体を壊すのでやめてほしいところだ。

 

「というか、本当なんで人間と同じ筋肉の数だけモーター入れたかなぁ。普通は動作的に考えて邪魔になるのに・・・・・・まぁ、体内からの人型として初めての試みだからってのもあるんだろうけど・・・・・・いくらなんでも詰め込みすぎじゃない? それとも何かそうしなければならないことがあるのかな?」

 

目は充血し、隈が幅広くできている。相当疲れているのが目に見えてわかる。誰しもがこの女性は疲れている。そう見て判断できるくらい顔色が悪かった。

 

「それにしても、本当にあの灰色のIS。いったいどこで作ったのやら。まさか束さんの作ったレーダーにすら映らなくて、ただ単にハイパーセンサーでその輪郭しか捉えられない。そのうえスタープラチナよりも高出力のモーターを搭載。さらには一瞬で、それもセンサーで捉えられることなく間合いに近づくほどの瞬間スピード。どこのモーター使ってるって話よね。完全に束さんが作ったモーターよりも12.15倍は高い出力を最低でも有していると考えてよい・・・・・・凄くむかつくんだけどね」

 

悪態をつきながらも相手を褒める。それは天才であるからこそ、認めるところは認める。それが彼女、篠ノ乃束であった。

 

だがまぁ、認める認めない云々依然にこの灰色の何かは気に食わない存在であった。自分の大切な妹を交渉材料にし、ついには脅迫にまで使った男。その男が使用した自分の作り上げてきたISよりも数十~数百倍(一つのモーター自体が束モーターの12.15倍、それが筋肉と関節の数存在し、出力自体も憑依型という利点から直列配置の高出力)のパワーを有している本格的観測型超近接ISであるスター・プラチナと正面切って殴り合いをして打ち負かすほどの化け物級のIS。認めてはいるが納得できないでいたのだ。おまけに超光学ステルス機構もあるらしい。ふざけるのも大概にしろと彼女は内心叫んでいた。

 

「対策・・・・・・か。このIS自体の型番が確認されてないから、失敗作だって切り捨てたレスナンバーなのか、はたまたあの男か別の誰かが作り上げたオリジナルコアなのか・・・・・・たしか殆どのブラックボックスはスター・プラチナが解明しているって聞いたけどコアの中枢まではわからなかったって言ってたし・・・・・・頭痛の種が生まれすぎだよ、ほんと」

 

彼女は愚痴をこぼす。誰もいない研究所で一人言葉を呟く。空しく響くその声は、どこか寂しげで、それでいて楽しげな何とも言えないものだった。

 

彼女自身楽しんでいるのかもしれない。自分のような孤高の天才は他にも存在したという研究者としての競争心を滾らせたのかもしれない。

 

彼女自身寂しいのかもしれない。自分の作った最高傑作にこうもあっさりと近づき、そして追い抜いた存在に、虚無感に駆られたのかもしれない。

 

「でもまぁ。束さんはまだまだ現役だからね。どこの誰ともわからないペーペーに遅れは取れないってもんさ~」

 

何か思い立ったのか突然立ち上がり、ガラクタと呼んでいいほど無骨に積み上げられた機械の中に飛び込んだ。そして次の瞬間、そこから青色の火花が散る。それはバーナーで焼くようなそんな色。そう、彼女はまた創りはじめたのだ。

 

「とりま、空条承太郎に負けないISをつくらなきゃね。これは天才発明家としての見せ所だね」

 

彼女の手は既に創造し、生み出す手となった。眼前の奇怪の塊を機械へと作り変え、そして器械を用いて機械を表す。一つ作り出せばすぐに別のものが生み出され、生み出されたものがまた一つになってゆく。それは以前の塊ではなく一つの芸術作品。太古より変わりはしない変化の最終形態。

 

芸術とは美しくあるべきなのだ。そう彼女は露呈した。

 

発明とは聡明であるべきなのだ。そう彼女は豪語した。

 

機械とは的確であるべきなのだ。そう彼女は絶叫した。

 

誰も聞いていないその言葉、何の意味を持つのかわからないその言葉。しかし彼女は納得しているらしく何度も誇らしげに頷きながら、目の前に生み出された機械の芸術品を眺めたのだ。

 

「さて、最高速度で作り上げた第4世代型ISの最高峰。スピードもパワーもそしてシールドも、何もかもが規格外。あのスター・プラチナの実践モードとため張れる機体に作り上げられた。あとはこれにコアを取り付けるだけ。そうだなぁ・・・・・・やっぱりいっくんのISコアにしよう。そうしよう!」

 

僅か数分で作り上げられたその機体は、まさに一夏の持っている白式を思わせるカラーバリエーション。純白でありながら何物にも染まらないような堂々とした白。束が改めて見た時の感想である。スマートでありながら、それでいて従来の装甲型。肩のウィングスラスターの数が6枚になり、背中にはバレルショルダー(肩に搭載する銃。ラウラの所持するパンツァー・カノニーナよりも少し小さい)が搭載されていた。右手には雪片弐型を彷彿とさせながらも、それでいてより日本刀に近づいたビームブレード【雪片参型―閉―】が、左手には弐型よりもビームの刃がより大きくなり太刀やら大剣と大差ないビームソード【雪片肆型―開―】が搭載してある。前腕部には小型のバルカン砲がむき出しになっており、その周囲にはレーザー砲が覆うように取り付けられていた。

 

ミサイルやらはないが、もうすでにこれは一つの要塞。化け物と大差なかった。

 

「相変わらずエネルギー効率は微妙にしたからこれで本当に箒ちゃんと完全ペアの閑静だね・・・・・・さぁいつ渡そうかなぁ、この子は」

 

嬉しそうに眺める束はふと名前をつけていないと叫んだ。この突然叫ぶのはやめてもらえないものか。

 

「名前はそうだねぇ~。うん、白百合ってのはあれだしなぁ~。普通に白式改にでも~」

 

テキトーになってきだした名前付け。一応親なのだから子の名前はちゃんとしてほしい。キラキラネームなんてつけられた日には暴動を起こすんじゃないだろうか。

 

「闇を切り裂く、熱き稲妻ってのにちなんで白雷にしよう。スピードあるし、力も相当だし、高出力だし、燃費悪いし」

 

酷い親を見たものだ。

 

 

 




一夏強制強化フラグです。確かにセカンドシフトしましたが、束さんからすれば目の前で見た承太郎のスター・プラチナの方がすごく見えたんでしょうね。

まぁ、一夏がそれを選ぶかは分かりませんがね? 作るだけ作るで終わるかも・・・・・・ぅゎ、タチバょゎぃ

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