ジョジョの奇妙な学園 ~stardust stratos~   作:エア_

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難産も難産。大難産でした。

文章を10回以上は白紙に戻しましたね。

でもこの結果。本当に申し訳ない。

では、そんなのでも良いと仰るのならば本編をどうぞ。


第四話~天災、襲来

臨海学校二日目。承太郎等生徒は先生の指示の下、早朝訓練を受けることとなっていたが、頭の中では一つの事柄が彼を包み込んでいた。

 

今朝の夢はいったいなんだったのか。承太郎は鮮明に思い出されてゆくその夢に、違和感を覚えていたのだ。承太郎を見ていた視線の主、その主を己は観得てはいたのに見えてはいなかった。圧倒的何かが彼を包み、恐怖を与えようとしていた。だが、圧倒的数を前に敵の戦闘意欲を殺ぐような、そんな数の暴力の前だと言うのに、彼、空条承太郎は一切の戸惑いも一切の心の揺らぎも見せず、勇敢に対立を取った。しかし、自分の大切な存在の一人である楯無が何故か自分の敵となるなど、彼の心を揺らがせるには十二分にその役目を果たした。今だからこそ分かる。あれがもし現実ならば自分はあの声の主に負けていただろう。

 

「・・・・・・やれやれだぜ」

 

自分の弱さを改めて思い知らされた承太郎は帽子を深くかぶるとすでに着替えていた制服のまま、部屋を後にした。これから始まる早朝訓練に間に合うようにゆったりとした足取りで向かって行った。

 

承太郎は考えていた。夢の中での自分のISであるスター・プラチナの解放。あの時確かに自分は理解した。しかし、今となっては何を理解したのかが全くわからない。確かにスター・プラチナは解放され、その瞬間自分がそのISを見て理解し確信を持ち、眼前の敵を睨みつけたのだ。

 

いったい、何を理解したのかが一切見当たらない。

 

「お~、タロタロだ~」

 

不意に承太郎の思考が中断された。自分の背中に急激に重みが圧し掛かってきた。重いというわけではないが、急なことだったためか、すこしバランスを崩しかけた。しかしそこで倒れず平然と立っていられる承太郎はまさしく漢。どこかのフラグ建築士とは全く違った。

 

「・・・・・・重い、邪魔だぜ」

 

「女の子に重いとスッパリ言うとは、タロタロは女心を全くわかってない」

 

「分かりたかぁねえよ。んな事よりさっさとどきな。遅れたらそれこそ面倒だ」

 

無理やり剥がした承太郎は一つため息を吐くと、再び歩き出した。本音はさっきのことなどお構いなしに承太郎と会話をし始めた。内容は至ってシンプル。彼女の使えているあの簪の事についてだった。簪は今、この合宿には来ていないとの事、今は学園で自分のISを一人で作っているんだとか。

 

「・・・・・・その手があったか」

 

自分もISを作るといっていればこうやって面倒な早朝訓練も無かったのだろうと、少し後悔していた。まぁ、食事が旨かったので彼自身±ゼロといったところだ。

 

「どったのタロタロ?」

 

「・・・・・・なんでもねぇ、それよりそのてめぇの話す女・・・・・・簪だったか?」

 

「そうそう、カンちゃんはねー?」

 

本音の語るさなか、承太郎は自分のスター・プラチナについての考察をまとめていた。何がきっかけであのようなまるで人のように曲線で描かれたような姿になったのか。どうしてあのように変化をしたのか。自分の性分が祟ったのかをまるで探偵のように考察していた。

 

勿論本音の話に耳を傾けながら、彼は自分の答えを見つけるために脳の思考をフルに活用した。

 

「でね~って、聞いてるのタロタロ~?」

 

「・・・・・・あぁ」

 

「ブーっ、心ここにあらずだねぇ」

 

「そうか?」

 

膨れ面の本音が承太郎の腕をぶんぶんと振り回す。非常にうっとおしいと思う反面、彼女の話を聞かなかったのも悪いと思い。邪魔だと言うにも言えなかった。

 

「話はこれくらいでいいだろ。訓練にまにあわねぇぞ」

 

スター・プラチナの時計が既に早朝訓練5分前であることを知らせてくれる。専用機を持ってない一般生徒は専用機持ちよりも前に集合しなくてはならないのだ。本音はその事実を知ると慌てて承太郎に別れを告げて走り去っていった。騒がしい奴だと思いながらも、中々肝っ玉が太いなと感じる承太郎は、静かになった廊下をゆったりと歩んでいった。

 

 

 

 

浜辺では既に一般生徒達が点呼を取っていた。専用機持ちと違って数の多い彼女たちは10分前には到着して点呼を取っていないと訓練に移行できないからだ。専用機持ちの皆も既に揃っていて、承太郎だけがまだ並んでいない状況だった。

 

それを視た千冬は怒る事はしないが、こめかみを指で押さえながら

 

「遅いとは言わん。だが少し速く来い」

 

そう注意をした。だが、かの承太郎はため息を吐きながら。

 

「昨日は誰かさんの所為で寝る時間が短かったんだが。いったい誰だろうな?」

 

軽い牽制をしたのだった。そう言えば昨日酒飲んだなと思い出す千冬。迷惑かけたのかと思いながらも今ここで言うか? と少し目を細めた。

 

「そんなもの理由にするな、馬鹿もん。さっさと並べ」

 

「・・・・・・やれやれだぜ」

 

帽子を深くかぶった彼は専用機持ち列の一番後ろに並んだ。先ほどの中で一番背が高かった一夏の174cmよりも遥かに高い195cmが一番後ろに君臨した。それはまるで山だ。途方も無い山のようだった。顔一つ分超えた高さを誇る承太郎の背に改めて千冬は関心をした。

 

「専用機持ちはこれより専用機の整備を各自で行ってもらう。その他の生徒は支給された打鉄及びラファールの補助パーツの整備を山田先生管轄のもと行ってもらう。各自終わり次第次の訓練を行ってもらうつもりだ。くれぐれも遅れるなよ?」

 

『はい』

 

「では皆さん。グループの代表の方から受け取った補助パーツの整備を始めてください」

 

一般生徒は真耶の指示に従って、整備を始めた。流石はエリート校の生徒なだけはある。指示に即従うことができ、テキパキと作業を始めたのだ。流石はエリート校だと承太郎も改めて関心をする。これで公私関係なくキャーキャー叫ばなければ最高だと内心深く思ってしまう。

 

「それと篠ノ乃。お前はこっちに来い」

 

「はい」

 

何故か一般生徒と同じように整備をするはずだったであろう箒が千冬に呼ばれた。そこから承太郎はすべてを悟った。そして今回の視線の正体を。そして彼女が呼ばれた理由を。そしてそれにより箒が見た目浮かれている理由を。

 

(篠ノ乃束・・・・・・ヤローが関わってんだな?)

 

聡明で明晰な頭脳を持っている承太郎だからこそ、この周りにいた専用機持ちの誰よりも早く理解し、誰よりも速く確信を持ち、誰よりも早く苛立ちを見せたのだ。

 

(篠ノ乃束・・・・・・奴がISなんざ作らなければラウラの左目は)

 

確かに、左目の件は直接束が関与していたわけではない。だが、間接敵にというか根本的な理由の背景にはいつもISが付き纏っていた。あのドイツ軍人が居たというのに通ってしまった瞳にナノマシンを直接注入する人体実験。その内容は酷なものばかりだった。唯一あの軍人が出来たのは生命の保証と生活介護手当てのみだ。いくら彼が優れたものだとしても上階級の人間への意見が通るはずも無く、結果的にラウラは孤独という名の絶望に打ち拉がれた。あんな絶望的な時間を過ごした彼女のあの姿が承太郎の刻まれた記憶と共に蘇ってくる。吐き気さえした。ラウラにではない。そんな姿にまでした元凶に対してだ。

 

傍に待機していたラウラが心配そうに承太郎の顔を覗き込んでいた。その鋭い視線の先が千冬と箒に向けられていることに対して、心配をしていたのだ。何故そのような視線を彼女たちに見せているのか。そして、

 

(あんな目を、この方にしてほしくなかった。この方だけはこんな冷たい目をしてほしくは無かった)

 

もしかしたら自分が原因なのではないだろうか。彼女は以前のトーナメントでの失態を思い出す。いやだ。嫌われたくない。見捨てられたくない。そんな感情が彼女を支配した。以前よりも依存が増したことを自分自身理解はしている。しかしそれがただ罪悪感からくるものなのか、何なのかを彼女自身知らないでいた。

 

(承太郎殿は聡明な方だ。だからこそ、世界の醜いところをすぐに見抜く。私の醜いところも全て)

 

胸がきゅっと締まる感覚をラウラは覚えた。きゅっと締まり、その反動で張り裂けそうになった何とも言えない感情の激流に、彼女は押し流されそうになった。苦しい、気分が悪い、吐き気が襲う。

 

「篠ノ乃、お前にはISが用意された」

 

『!?』

 

その場にいた承太郎と箒を除く全員が驚きを隠せないでいた。承太郎はというとやはりな、と納得したようなはじめからわかっていたような表情をした。箒も前から知っていたらしく驚いた顔は一切しない。

 

すると、遠くの方から地響きが砂煙と共に現れる。一瞬銃弾の嵐が振ってきたようなその音はこちらに向かって一直線に来ていた。古典的な漫画表現のような音を立てながら、ウサ耳カチューシャをつけた女、篠ノ乃束は現れた。

 

「ち~ちゃぁあ――――ん!」

 

千冬は彼女の言葉に返答をすることも無くラリアットをぶちかました。慣性の法則やら物理法則やらが連動し見事にヒットした束はそのまま地面に勢いよく叩き落された。呼吸するのがやっとなのか、体を小刻みに震わせながら無言で蹲っていた。

 

「それで? いったい何しに来た。ISだけでいいだろうが」

 

何とか立ち上がった束は性懲りもなく千冬に飛びついた。

 

「だってだって~。ちーちゃんと愛を確かめ合いたかったんだもん・・・・・・それに」

 

会話の途中、束は不意に承太郎の方へと視線を向ける。その目は明らかに敵対する視線であった。対する承太郎は既に興味をなくしたように水平線を眺めている。先ほどまでの恨みがましい視線は何処へいったのやら、先ほどまでとは全く違った表情がそこにはあった。

 

「そこで余裕ぶっこいてる暑苦しいヤローの顔を見に来たんだよね~」

 

「・・・・・・」

 

指さしてまで承太郎の視線をこちらへ向けたかったのか、わざわざ聞こえる声でそのような事を言った。対して承太郎は全くの無反応。一切の感情をそちらに向けはしなかった。無視の連続に流石の束もご立腹のようだ。自分の作ったISを我が物顔で持ち歩き、しかもその製作者を前にしても無視を決め込むのだ。怒っても仕方がないのかもしれない。

 

「もしも~し。難聴なのかな~君は?」

 

束は承太郎の近くまで歩み寄る。目の前まで近づき、再びコンタクトを試みた。しかし相変わらず彼は無反応。その水平線の向こうに見える何かをずっと眺めていた。

 

そんな彼の態度がさらに腹立たしかったのだろう。束は怒りを露にしながらついに切れた。

 

「ちょっとさぁ。そこのゴミ。いい加減にこっち見ろよ。この世紀の大天才である束さんが声かけてんだよ? 卒倒ぐらいしろよこのぬけさく」

 

その言葉にやっと承太郎は視線だけを束のほうへと向けた195cmから見下された束は一瞬彼を山と勘違いするほどだ。それほどまでに近くで見る彼の姿は大きく感じてしまうのだろう。

 

やっと反応をした彼を見て束は面倒くさそうな顔をしながら、

 

「興味がねぇな。さっさと失せな。女」

 

承太郎の言葉に再び切れたのだった。

 

「空条。面倒ごとは起こすな。そんな奴でもお前のISの生みの親だ」

 

一触即発な雰囲気がそこら中に蔓延った。千冬はすぐにその厄介ごとを止めるべく声をかける。

 

「関係ないね。誰が頼んだ? こんなもんで天才を名乗っているようじゃあ、どうせその程度の奴だろうよ」

 

だが承太郎は千冬の束へのフォロー? を真正面から捻じ伏せた。IS戦はおろか、舌戦でさえも彼は真正面からたたき伏せたのだ。

 

だが、それをよろしくないと思う存在がいた。何を隠そう束本人である。額に青筋を立てながら普段ならそこら辺の人間の戯言など一切聞かない彼女でさえも承太郎のその言葉に怒りを感じていたのだ。

 

「それによ。自分の事を『さん』付けしてるようなナルシストに俺は関わりたいと思わないんでね。悪ぃが、これと関わるくらいなら訓練ふけるぜ?」

 

承太郎はそういって、昨日の岩場にむかって踵を返した。千冬の制止も聞かず、彼はその場を去っていった。

 

残ったのは、怒りに体を震わせる天災とそんな天災をその程度と言い払った承太郎に対して口が閉じられない専用機持ちと頭痛を悩ませた千冬のみだった。

 

仕方がないと束と共に箒のISの整備を始めるのに、10分はかかった。

 

そして、アメリカのISが暴走したと聞かされたのは、それから約30分後のことだ。

 

 

視点は変わり承太郎へ。彼は勿論、岩場にて海洋生物と戯れていた。心なしか目を輝かせながらその眼前の存在に目をやっていた。その目の前には自分のISと同じスターを持つ海洋生物、海星(スターフィッシュ)がいた。承太郎はスター・プラチナの格納庫から取り出したスケッチブックにその姿を模写した。精密性に優れたスター・プラチナを操っているのは紛れもない承太郎本人。その本人の絵が下手なわけがなく、きれいに模写された海星がその白い画用紙に存在した。

 

「悪ぃな」

 

承太郎はそう呟くと、水の浸かった場所まで海星を持ち歩き、そこへゆっくり置いた。心なしか海星は感謝するように触手の一つをゆっくりと動かし、海の中へと消えていた。

 

心を落ち着かせ、承太郎は一つ息を吐いた。先ほどの束との会話よりも見ておきたいものがあったのだ。

 

(スター・プラチナで確認したあの太平洋に出没したIS・・・・・・あれは高高度を維持しながら、超高速でこっちに来てやがった。ただの通勤じゃあないのは確かだろうな)

 

しかし、結局自分は関係ないかと結論付けた承太郎は再び岩場の海洋生物と戯れるべく再び歩みを進めた。

 

しかし結局、戯れていた途中に千冬から緊急徴集をかけられ、ため息を深く吐き。

 

「・・・・・・やれやれだぜ」

 

 

いつもの口癖を呟くのだった。

 

 

 

 

「今回の作戦についてだが、高速で移動できる空条のスター・プラチナと高エネルギー攻撃を持つ織斑の白式を使う。異存はいるか?」

 

今回、暴走ISの拘束をアメリカから直々に要請を受けたIS学園は千冬を主軸とした専用機を持つ代表候補生と専用機持ちの一夏や箒での作戦会議を行っていた。

 

「あの~、織斑先生。その話題に上がった承太郎はどこにいるんですか?」

 

「あぁ、あいつは一応ヨーロッパ代表という肩書きを持っていてな。オルコット達も聞いた事があるだろう? ユーロを形成しているヨーロッパは各国代表の上にユーロ代表がいるということをな」

 

「・・・・・・ま、まさか」

 

「そ、それがジョジョって事ですか?」

 

次第に顔が真っ青になってゆく二人。今までそんなに高い地位を持つ相手に自分たちがしてきたことを思い返していたのだ。野蛮人と印象を持ち戦闘を行った(セシリア)、タメ口(シャルロット)、罵倒(二人)。軍法会議にかけられてもおかしくはない。

 

「い、一夏さん」

 

「もしかしたら僕たち、来週あたり消されるかも」

 

「うぉい!? いきなりどうしたって言うんだよ!?」

 

事の大きさを理解していない一夏は、いきなり絶望した表情を見せる二人に驚きが隠せなかった。二人は項垂れ、両手をついた。口々にもう駄目だ、お終いだ。と呟いているその姿には哀愁が漂っていた。

 

「ばかもん、日ごろの行いが悪いのがいかん。まぁ、空条がどんなことを国に言いつけるかは知らんがな」

 

千冬のとどめで二人はノックアウト。涙を滝のように流すその姿に流石のラウラもあせってしまう。鈴と箒は何の話だと、未だに首をかしげていた。片方一応代表候補生だろうに。

 

すると扉が開かれ、中に入ってくる人物がいた。勿論噂の承太郎であるのは確かなのだが、少し不機嫌そうだった。

 

シャルロット達はまさか聞かれていたのかと顔を上げてそっちを見た。

 

「それで? どうだったんだ?」

 

「あぁ、一応ジジイに確認を取った。あんなのでも一応ユーロIS委員会の相談役をしてるからな・・・・・・今回の出撃、俺は出られねぇらしい。そこでオルコット。てめぇに白羽の矢が立った」

 

「え、私ですか?」

 

「あぁ、てめぇのIS・・・・・・確かブルーティアーズだったな。新型の高速型に変更するパッケージを貰ったと聞いた。すぐにそれをインストールした後、織斑と共に敵機を拘束しろとの事だ。いいな?」

 

自分が出られないことに不満を持っていたというよりも、多分ジョセフにからかわれたのだろう。特にラウラ関連なのは確かだ。セシリア達も自分達のこれまでの事を咎められるのかと身構えていたが杞憂に終わり、安堵した。

 

「織斑、一応てめぇのISは俺のスター・プラチナを除けばこの中で一番の攻撃力を有している。てめぇが決めてきな」

 

「お、おう! ようは俺の雪片で相手のエネルギーを削り取ればいいんだな?」

 

「・・・・・・あぁ」

 

簡潔に言ってはいるが、それを行うにはどれほどの浪費が必要なのだろうか。彼の技量はこの中では誰にも勝るところなどない。遠距離武器はない、近距離もラウラに劣る。中距離なんてものも論外。さて、ここで彼の勝率は如何ほどなのだろうか。仮に一夏の技量を1としよう。すると代表候補生の基本技量は最低でも5は必ずなくてはならない。そして今回相手をするISは暴走しているとはいえ、中身はアメリカ代表(ジョセフの情報から)。代表ならば技量は最低でも100くらい必要になるだろう。ここに100倍の差をどうやって埋めろというのだろうか。彼の機転を利かせた戦法か? それは無理だ。あれはシャルロットが相方だから出来たようなものだ。彼女ほどフォローが行き届く器用貧乏はほかにいない。むしろセシリアを行かせるならば一夏ではなく鈴を向かわせたほうがよっぽど勝率は上がる。ちなみに承太郎の技量は平均を取れば100。近接が300、残りが0といったものだ。彼ほど近接が強い存在など記録上存在はしない。それでいて彼自身の精神の強さによりスター・プラチナは十二分にその力を発揮する。彼ほど重宝される存在はいないだろう。

 

余談だが、千冬の現役での技量は承太郎と殆ど変わらなかったらしいが、記録が残っておらず真偽は分からなかった。

 

「てめぇがトーシロなのは周知の沙汰だが、てめぇは格上が相手な状況はいつもあった。その都度勝利し進化しているのは知っている。だからこそ今回てめぇに賭けることにした」

 

「待て空条。今回作戦の総指揮は私が取っている。勝手なことはするな」

 

「悪ぃが、ジジイは俺に出るなと言った。どうしようもねぇだろうが。勝手に動ける人間じゃあないんでな・・・・・・。それによぉ」

 

承太郎が千冬から視線を一夏に移す。一夏の表情は既に決心した顔で、それはとても凛々しい表情だった。不意な彼のその顔に好意を持っている者たちの顔が赤くなっていくのが見て取れる。

 

「こいつはもう決心したぜ? 賭けられねぇってぇのか? 自分の弟によぉ」

 

「・・・・・・」

 

「悪い賭けか? てめぇが一番分かるだろうが。今この時点であのISに対して有効打を持ち合わせてんのは一夏だけだ。ラウラのレールガンじゃあ避けられる。シャルロットのパイルバンカーじゃあ大振りすぎる。鳳の双天牙月も同様だ・・・・・そもそもこの四人の武器じゃああいつのシールドには歯がたたねぇ」

 

承太郎はそう言うといつの間にか手に持っている資料を作戦室のテーブルに置き捨てる。それはここにいる専用機持ちの資料だった。それも細部にまで書かれたものだ。

 

「これは?」

 

「俺がこいつ等を観察した時の戦闘データと今までの成長だ」

 

そう、先ほど一夏では難しいと考えながらも、彼に大役を任せる理由がその資料に載っていたのだ。彼の成長性。それこそが承太郎が一夏に賭けようと思った最大の理由だった。

 

「一夏の成長は異常といっても過言じゃあない。だからこそ、これに賭けて良いとおもわねぇか?」

 

「まさか、ここまで木目細かにデータを取っているとは・・・・・・だが」

 

未だに渋る千冬だが、分からないこともない。最もな理由としては、承太郎が行くことでこの暴走事故は何とかなるだろう。だが、彼が出られない以上、一夏しかいないのは知っていた。だからこそ、行かせたくないのだ。

 

自分の世界でたった一人の肉親なのだから。

 

すると、承太郎がテーブルを思い切りたたく。ドンッと大きな音が一瞬だけ木霊し、置かれていたものが少しだけ浮いた。

 

「提案したのは俺だ。だが、選択するのはてめぇだ。さぁ! 賭ける(コール)か! 賭けない(ドロップ)のか! ハッキリ言葉に出して言ってもらおうか」

 

承太郎の声が響き、その後静寂がその部屋の中を覆った。そう、さっさと答えを出さなくてはいけない状況なのだ。敵が態々待ってくれるはずもないのだ。ならば決断を迫られるのも必然。千冬は、顔色は変えないが内心焦ってしまっていた。選択を誤れば被害は果てしないだろう。

 

「・・・・・・分かった。それで行こう。オルコット、織斑、行けるな?」

 

「「はい」」

 

二人の返事を聞いて、少し安堵する。彼女もやはり人間なのだ。機械ではない。だからこそ、選択する時に感情に流されてしまうことがあるのだ。

 

だが、やはりそれを良しとしないものは必ずしも存在するもので。

 

「ちょっと待ったァ―――ッ!」

 

突然天井から声が響いた。唐突な声に皆驚きを隠せない。流石の承太郎もこればかりは驚いている。

 

そう、その良しとしない存在がいたのだ。

 

 

「これは断然、紅椿が行くべきだよ! ちーちゃん!」

 

篠ノ之束。またしても彼女は、この空間に面倒ごとを持ってきたのだった。

 

 

 




スマブラ3DSしてます。とても面白かった(小学生並みの感想)

友達がミュウツーが出てなくて泣いてました。俺もミュウツー使いたかった。

まぁ、スマブラ自体。64以降してなかったからどうなったのかはまったく知りませんがね?

あ、カービィが可愛い子とは知ってた。

でもさ、なんでピカチュウあんなに不遇なん?

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