宮坂side
皆さんどうも初めまして。宮坂です。
突然ですが、俺は今自分の部屋を片付けています。別に年末の大掃除が少しでも楽になるからとかそんなワケでなく。
実は、今日は青木さんの誕生日なんです。ちなみに知ったのは今日の朝。電話で、青木さんが……。
『了、私、今日初めて年を重ねたと感じたわ』
「へ⁉︎ あ、青木さん今日誕生日だったんですか⁉︎」
『? ああ……そういえばそうだったわね。あ、でも今回のこれは特に関係ないわ。ちょっと筋肉のせいで体重が増えただけなんだけどね』
「…………そ、そうですか」
と、いうことで今自分の部屋を片付けて、青木さんを招く準備中です。あ、青木さんどころか……お、女の子を家に上げるなんて初めてだけど……青木さんなら……大丈夫、かな! うん!
あらかた片付いたところで、家のインターホンが鳴った。
「あっ! は、はい!」
ドアを開けると、そこには普段見たことのない私服姿の青木さんが腕を組んで立っていた。
「あ……」
「久しぶりね、了」
「お、お久しぶりです! あの、どうぞ」
青木さんを部屋に連れてから、俺はドリンクを持ってくる。あれ? そういえば青木さんって何飲むんだろ?
そういえば……俺、青木さんのことについて、何も知らないな……。
……そうだ! 青木さんと、出かければ何か分かるかも!
「? 了?」
「……あ、あの、青木さん‼︎」
俺は青木さんの手を引き、立ち上がらせた。
「俺と、か、か、か……買い物行きませんか⁉︎」
「買い物? 別に買いたいものはありませんが」
「いいから! 行きましょう!」
「はぁ……」
俺はとにかく青木さんを連れ出し、なんでも売ってるショッピングモールに向かった。せっかく上がってもらったのにわざわざ連れて行くのはちょっと失礼だったかな……と思ったのはショッピングモールに着いてからだった。
「あ、青木さん! 欲しいものがあったら、何でも言って下さい!」
「そうね。あれとあれとあれとあれとこれとそれと……」
「いや、いやいや‼︎ ちょっと多すぎませんか⁉︎」
「冗談よ」
「も、もう……」
相変わらず俺をからかう青木さんに、俺は溜息を漏らす。まあ、この人はドSだって知ってるけど……しばらく会わない間に変わったかと思えば全く変わってない。まあ、久々に会ってめちゃくちゃ変わってたら、それはそれで何か嫌だけど。
もし俺の知らないところで、青木さんが他の男のことを好きになっちゃったら……そう思うだけで、胸が苦しくなる。青木さんが美人だってことは、俺もよく理解してるつもりだ。だからこそ、心配なんだ。青木さんが、どこかへ行っちゃいそうで。そんなの嫌だ。俺だけを見ていてほしい。こんなの我儘だって分かってる。でも、それでも絶対嫌なんだ……。
「……了?」
「へっ……⁉︎」
青木さんの驚いたような声を聞いて、俺も一緒に驚いてしまった。俺の手が、自然に青木さんの手を掴んでいた。
わああああああああ‼︎ な、な、何してるんだ俺⁉︎ あ、でも青木さんの手って、意外と柔らかいんだな……。いつも鍛えてるって言ってたから、筋肉質なのかなって思ってたけど、ちゃんと女の子みたいに脂肪つくんだ……って、何考えてんだ俺はぁあぁああ‼︎
「了」
「は、はいっ⁉︎」
「了の手……温かい」
青木さんは小さく微笑みながら、俺の指に自身の指を絡めるように握った。突然の青木さんの大胆な行動に、俺の心拍数は上がりっぱなし。
青木さんの笑顔……やっぱり、綺麗だな……。普段無表情だから、時折見せる笑顔が、いつもよりも輝いて見える。いつも、この笑顔を俺だけに向けてほしい……なんて、恥ずかしくて言えないから……。俺は、ゆっくりと繋いだ手に力を込めて握った。
「了」
「はい……?」
「私は、別にほしいものなんてないわ。ただ、貴方とこうしているだけで。それで充分。今日は、とても嬉しい誕生日になったわ。……ありがとう、了」
「青木さん……」
その言葉が嬉しくて、俺も笑顔で頷いた。
「はい!」
それから、俺たちはたい焼きを一緒に食べながら帰った。
青木さん、誕生日おめでとうございます!