青き炎、エイリアと戦う   作:支倉貢

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55話 大海原中サッカー部

グランside

「……はぁ…………」

 

自室のベッドに体を横たえ、俺は行き場のない溜息を吐いた。

 

『大嫌いだ』

 

穂乃緒ちゃんの冷たい声が、俺の脳内で何度もリピートされる。思い出す度に込み上げる嗚咽を何度も飲み込む。

俺はただ、彼女を救いたかった。俺に笑顔を見せてほしかった。それだけなのに。

 

「……情けないな、俺……」

 

拒絶された。愛した人に。これがこんなに辛いものだと思わなかった。嗚咽が飲み込みきれず、堰を切ったように涙がボロボロとこぼれてくる。

 

「……っく……ぅう……」

 

馬鹿なのは俺だった。彼女の気持ちなんて何も考えずに寄り添って。迷惑なだけだったんだ。

 

「……………」

 

俺は彼女に必要とされたかっただけなんだ。なのに、空回りしてばかりで……。

彼女は……俺なんか必要としなかったのか。

 

「なら……なんで、あの娘は俺と関わったの?」

 

いや、関わったのは俺からなのだが。

 

「なんで……君はあんな仕草を俺に見せたの?」

 

考える度に、おかしくなっていく俺の頭。やめろ、やめろ。

 

「手に入らないなら……」

 

手に入らないなら、いっそ。

 

「攫っていこうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青木side

今、私たちは大海原中に向かっている。まったく……つい最近までサッカーに興味ないって散々言ってたクセに。ノリで入りやがって……。行き場のない溜息をつく中、海からの風に髪をそよがせる。

大海原中は全国中学少年サッカー大会、いわゆるフットボールフロンティアに出場するほどの実力らしい。程度が全く分からんが、強いということなのだろう。

だが、その後の話には呆れた……。地区予選決勝前に、監督が村祭りにうつつを抜かしていたために、忘れていたと……。沖縄の人たちはどれだけ能天気なんだか……。

 

「着いたぜ! ここが大海原中だ!」

 

綱海さんが示した先には、学校というよりもリゾートのような施設だった。校舎と校舎が橋で渡されており、その下には沖縄の綺麗な海が広がっている。

 

「綺麗……」

「だろ? 気に入って良かった!」

 

私がボソリと呟くと、綱海さんは二カッと笑って、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。これ何回目だろう……。

しかし、肝心のサッカー部がいない。キョロキョロと辺りを見渡すが、全く見当たらない。匂いを知らなければ、私の鼻は使えない。

また探そうとして後ろを振り返ったその時。

 

「サプラァ〜イズ‼︎」

 

パァンパァンパァン‼︎

 

びっくぅぅう‼︎

 

小さい花火が上がり、『歓迎! 雷門中』と書かれた絵をバックに、お目当ての大海原中イレブンがいた。

……びっくりしすぎて、腰を抜かした。へたりと座り込んで大海原中イレブンを見上げる私に、監督らしき男性が話しかける。

 

「驚いた? 驚いた?」

「…………」

 

上手く言葉が出ず、ポカンと監督を見つめる他なかった私。黙っていると、今度は一人一人に驚いたかどうかを聞いてまわる。わ、めちゃくちゃ鬱陶しい……! どうしよう。今すぐにでも回れ右して帰りたい! でも立てない……。

くっ……こんなに情けないことはない。

ハァッと溜息をつくと、吹雪さんが私に気付いた。

 

「大丈夫? 穂乃緒ちゃん」

「……あまり大丈夫ではありません」

「手を貸そうか?」

「…………ありがとうございます」

 

あぁ……情けないところを見られてしまった。


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