グランside
「……はぁ…………」
自室のベッドに体を横たえ、俺は行き場のない溜息を吐いた。
『大嫌いだ』
穂乃緒ちゃんの冷たい声が、俺の脳内で何度もリピートされる。思い出す度に込み上げる嗚咽を何度も飲み込む。
俺はただ、彼女を救いたかった。俺に笑顔を見せてほしかった。それだけなのに。
「……情けないな、俺……」
拒絶された。愛した人に。これがこんなに辛いものだと思わなかった。嗚咽が飲み込みきれず、堰を切ったように涙がボロボロとこぼれてくる。
「……っく……ぅう……」
馬鹿なのは俺だった。彼女の気持ちなんて何も考えずに寄り添って。迷惑なだけだったんだ。
「……………」
俺は彼女に必要とされたかっただけなんだ。なのに、空回りしてばかりで……。
彼女は……俺なんか必要としなかったのか。
「なら……なんで、あの娘は俺と関わったの?」
いや、関わったのは俺からなのだが。
「なんで……君はあんな仕草を俺に見せたの?」
考える度に、おかしくなっていく俺の頭。やめろ、やめろ。
「手に入らないなら……」
手に入らないなら、いっそ。
「攫っていこうか」
青木side
今、私たちは大海原中に向かっている。まったく……つい最近までサッカーに興味ないって散々言ってたクセに。ノリで入りやがって……。行き場のない溜息をつく中、海からの風に髪をそよがせる。
大海原中は全国中学少年サッカー大会、いわゆるフットボールフロンティアに出場するほどの実力らしい。程度が全く分からんが、強いということなのだろう。
だが、その後の話には呆れた……。地区予選決勝前に、監督が村祭りにうつつを抜かしていたために、忘れていたと……。沖縄の人たちはどれだけ能天気なんだか……。
「着いたぜ! ここが大海原中だ!」
綱海さんが示した先には、学校というよりもリゾートのような施設だった。校舎と校舎が橋で渡されており、その下には沖縄の綺麗な海が広がっている。
「綺麗……」
「だろ? 気に入って良かった!」
私がボソリと呟くと、綱海さんは二カッと笑って、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。これ何回目だろう……。
しかし、肝心のサッカー部がいない。キョロキョロと辺りを見渡すが、全く見当たらない。匂いを知らなければ、私の鼻は使えない。
また探そうとして後ろを振り返ったその時。
「サプラァ〜イズ‼︎」
パァンパァンパァン‼︎
びっくぅぅう‼︎
小さい花火が上がり、『歓迎! 雷門中』と書かれた絵をバックに、お目当ての大海原中イレブンがいた。
……びっくりしすぎて、腰を抜かした。へたりと座り込んで大海原中イレブンを見上げる私に、監督らしき男性が話しかける。
「驚いた? 驚いた?」
「…………」
上手く言葉が出ず、ポカンと監督を見つめる他なかった私。黙っていると、今度は一人一人に驚いたかどうかを聞いてまわる。わ、めちゃくちゃ鬱陶しい……! どうしよう。今すぐにでも回れ右して帰りたい! でも立てない……。
くっ……こんなに情けないことはない。
ハァッと溜息をつくと、吹雪さんが私に気付いた。
「大丈夫? 穂乃緒ちゃん」
「……あまり大丈夫ではありません」
「手を貸そうか?」
「…………ありがとうございます」
あぁ……情けないところを見られてしまった。