今日は、バレンタインデー。女性が男性に愛を込めたチョコレートを渡す日だ。最近は友チョコという女子同士のチョコレート交換が流行っており、男子が貰える確率はだんだん低くなっている。そんな中、雷門イレブンの女子陣はというと……。
「青木さん! これ、バレンタインデーのチョコです!」
「はい、青木さん。チョコよ」
「私が直々に作ったのよ。受け取りなさい、青木さん」
「ほいっ! 青木、コレやるよ!」
「青木! ウチからのラブラブチョコや!」
「……」
何故か、青木がモテモテだった。青木は相変わらずの無表情をキープしつつ受け取り、両手に抱えたチョコをどうすればよいものかと悩んだ。それを見かねた秋が、青木に耳打ちする。
「青木さん、食べてみて」
「あ、はい……」
青木は丁寧にラッピングされた袋を開け、入っていたハート型のチョコレートを食べた。口に広がる、甘い味。青木はその味に少し頰を緩ませ、率直な感想を述べた。
「美味しいです」
「ホントですか? 良かった!」
青木の優しい声音に、春奈が安堵の息を吐く。青木は気に入ったのか、もう一つ口に運んだ。だがここでふと、青木は気になったことを秋に尋ねた。
「あの、つかぬ事をお聞きしますが……何故今日突然チョコレートを?」
「そんなの決まっとーやんか‼︎ バレンタインや、バレンタイン‼︎」
「ばれんたいん……?」
リカが発した聞き慣れぬ言葉に、青木は首を傾げる。夏未がその疑問に答えた。
「女の人が好きな男の人に告白するためにチョコレートを渡す日よ。まあ、私は仲間ということで貴女にあげたけど」
「最近では、女の子同士渡し合う友チョコが流行ってるんですよ!」
夏未の説明に、春奈がさらに付け足した。青木は2人(特に春奈)の勢いに圧倒され、たじたじである。青木は貰ってばかりでは何だかやりきれない気持ちになり、何かチョコレートをと探すが、突然チョコレートが出てくるわけではない。だが、ハッと思い出した。
「では……私からも」
青木はキャラバンの自分の座席に置いてあったたい焼きの袋を取り、袋からたい焼きを取り出して塔子に渡した。
「これ、チョコ入りたい焼きです。これで良ければ」
「え? うわぁ、ありがと‼︎」
青木は秋や夏未、春奈、リカにもちゃんと渡し、彼女らの輪からスッと離れた。
人気のない河川敷の橋の下に、青髪を靡かせ空を見上げる青木がいた。流れる雲を見つめながら、青木は彼を待つ。ふと、背後から気配がした。その背後に青木が振り向くと、青木が待っていた人物が来た。
「来ましたか」
青木は無表情ながらも何処か嬉しそうにしていた。その人物も、青木のまだ拙い笑顔に微笑む。青木は彼の元に歩み寄り、彼の胸に顔を沈めた。彼が優しく、青木の美しい青髪を撫でる。青木は持ってきていた袋からたい焼きを取り出し、彼に渡した。
「あの……き、今日はバレンタイン、と教わりました……。好きな人に想いを伝える日、だと……。受け取って下さいませんか……?」
俯きがちに、少し頰を染めてたい焼きを渡す青木を見た彼は、フッと微笑み、再び彼女の頭を撫でた。
そして青木は幸せそうに彼を見上げ、彼は優しいキスを彼女に落とした。
青木さんの幸せはいつ来るんでしょうか。
それでは、また次の機会に。