これ、ホントびっくりしましたよ、はい。そんなにどうでもいいことなんだね。
それではどうぞ。
瞳子監督の携帯のバイブレーションがキャラバン内に響く。瞳子監督はすぐに内容をチェックしていた。どうやら、響木さんという人かららしい。だが、その内容は雷門イレブンにとって驚愕のものだった。
「影山が脱走し、愛媛に真・帝国学園を設立した?」
「何だって⁉︎」
円堂さんや染岡さん、土門さんが驚きを隠せずに、声を上げる。勿論、私はその影山という人が何をしたのかは知らない。名前も当然、聞いた事が無い。円堂さん達は、すぐに愛媛へ方向転換した。其処でふと、財前さんが疑問を口にした。
「なあ、影山って中学サッカー協会の副会長だったんだろ? 何でそんな人を倒さなきゃならないんだ?」
財前さんの言葉に真っ先に答えたのは、円堂さんだ。
「勝つ為なら手段を選ばない奴だったんだ!」
「其れも、自分の手は汚さず人を使って相手チームを蹴落とそうとする」
「ああ、卑怯が服を着て歩いてるような男さ」
円堂さんの言葉に上乗せする形で、土門さんと風丸さんが言う。更に、鬼道さんが付け足す。
「其れだけじゃない。奴は勝つ為に神のアクアを作った」
「神のアクア?」
此れは、私が問い返した。別に此れに興味を持ったワケじゃない。ただ……名前がダサいなと思ったからだ。答えたのは、鬼道さんではなく、風丸さんだった。
「人間の体を根本から変えてしまうものさ。神の領域にまで……」
「……‼︎」
人間の体を、根本から変えてしまうもの……。私が受けたのと同じだ。あれのせいで、私の体も変わってしまった。奴も、あいつと同じ……? なら、行きたくない。私はあいつの元から脱走してきたのだ。もし其の影山に捕まれば……あいつの元に、連れ戻される……?
っ……いや、考え過ぎだろう。多分其れは無い。あるはずが無い。大丈夫だ……。そうやって自分を何とか落ち着かせた。すると、何やら叫び声が聞こえた。
「うわーーーー‼︎」
「壁山、どうした⁉︎」
「木暮くんが酷いッス! 此れ見て下さいよ!」
見てみると、壁山さんの顔に落書きがされていた。また木暮さんがやったのか……。ハァ……。
其れを見た皆は大爆笑。バカな事をやるものね……。私は呆れて、笑う気にもならなかった。
窓の外を見てたい焼きを口に運ぶ。うん、宇治金時は美味しいな。何て呑気な事を考えながら、私は1人でたい焼きを頬張るのだった。
やっと、愛媛のコンビニに着いた。座りっぱなしでちょっと腰が痛い……。私は外で少し伸びようと、窓からキャラバンを降りた。で、ぐーっと伸びていた所、何処からかボールが飛んできた。しかも凄い球威。私は右足を旋回させ、ボールに叩きつけた。今までに無いくらいの力が、私の右足にかかる。私は其れに負けないくらいの力で、何とかボールが飛んできた方向へ蹴り返した。
其のボールを、いつの間にか居たモヒカン頭の男が受け止めた。恐らくさっきのボールも、彼が蹴ったのだろう……。私も地面にしっかりと足を付け、モヒカン頭を睨み付けた。私に並んで降りてきた円堂さんが、其奴に掴みかかるように言う。
「な、何だよ‼︎」
「へーぇ、なかなかやるじゃんよ」
モヒカン頭は円堂さんの問いに答えず、私を見て企んでいるような笑みを見せる。何だかイライラする。気のせいであって欲しい。私のイライラを遠くに飛ばし、彼に疑問をぶつける。
「貴方、真・帝国学園の生徒ですね?」
「え⁉︎」
「何⁈」
後ろに居た円堂さんと鬼道さんがモヒカン頭を警戒し、構える。勿論私も体勢を崩さない。更に私は彼についての推測を語った。
「……恐らく、瞳子監督に送ったメールも、貴方が送ったのでしょう。私達を此処に誘う為に」
「…………ふーん。随分と勘が良いんだな、あんた」
「貴方は、何?」
「俺の名は不動明王だ」
「貴方が案内してくれるのでしょう? さ、真・帝国学園に案内して下さい」
「へいへい」
私は不動明王を睨みながら、彼をキャラバンに乗せた。でも私よりも、鬼道さんの方が不動明王を鋭く睨み付けていた。でも何故、鬼道さんが其処まで睨むのかしら。其れに、鬼道さんは影山の話が出てきた時、特に反応していた……。何故かしら……。私はじっと険しい表情の鬼道さんを見つめながら、キャラバンに乗り込んだ。
来ましたね、真・帝国……!
次回佐久間達出るかな?
円堂「次回もお楽しみに‼︎」