今回は、第一期の時の青木さんの話を書きます。宮坂くん出ます。どうでもいいけど風丸くん、君ってホントにいい後輩を持ったね。
それではどうぞ。
青木side
皆様どうもこんにちは。青木穂乃緒です。
今の時間は、生徒達が好きなことに情熱を燃やす部活動の時間です。
私のような部活動に入ってない人は、本当は下校しなければならないのですが、この時間、私は基本的ぶらぶらと校内を歩き回っています。
家に帰りたくないのでね。
今日は何処で時間を潰そうか、そんなことを考えながらグランドを歩いていると。
ドン、誰かにぶつかった。
私は少しバランスを崩したが、すぐに立て直した。だが、ぶつかった相手は、尻餅をついてしまった。
よく見てみると、ぶつかった相手は男子だった。
黄色い長めのセミロングの髪に、緑の瞳。中性的な顔立ちで、人によれば女子に見えてしまうだろう。オレンジのタンクトップを着ている。恐らく陸上部だ。そして見るからに1年……。
…………って、何解説してるのよ私は。こんな事してる場合じゃないわ。
私はくるりと回れ右をして、その場から去ろうとした。
後ろに座り込んでた彼を無視して。
……今日は図書室にしよう。そこで静かに本でも読んでよう。
そう決めた私は、早足で図書室へ向かった。
ーーーーーー時間ギリギリまで図書室で本という本を読み漁った私は、下校時刻が近付いてきたので、校門を出ようとまたグランドへ出ていた。
「ッ、あっ、いた!」
1人の少年が、こちらへ駆け寄ってきた。
あれは、あの時ぶつかった彼だ。
何でこのタイミングで……。
私は彼を無視して、校門へ向かう。だが、それは彼の声によって阻止された。
「待ってってば、君に渡したい物があるんだ! さっきぶつかった時に落としてったよ、このマスコット‼︎」
足を止めてしまった。
振り返ると、彼は肩で息をしながら手を差し出した。
その手の中には、小さな子猫のマスコットがあった。確かに、私の物だ。
呆然とマスコットを見つめる私に、彼が続ける。
「渡さなきゃと思って、ずっと探しまわってたんだ。また会えて本当に良かった……」
ホッと、安堵の表情を浮かべ、ふにゃっと笑う彼。
……笑うと本当に女の子みたいだな、という言葉を呑み込み、黙ってマスコットを受け取る。
こういう時、何て言うんだったっけ。
えーと、確か…………。
「…………」
「あ、俺、宮坂了! 君は?」
「……青木穂乃緒」
「青木って言うんだね、よろしく!」
さっさと話を進めていく宮坂さん。
おかげで何言おうとしたのか忘れたじゃない!
……でも私、
今までずっと屋上とかでサボってたからなぁ……。
学校に行かずにぶらぶらしてた事もあったし……。
「青木はここの生徒……だよね! 雷門のだし……。部活だった?」
「…………いえ」
これが私の初めての誰かとの会話。
こうして話し合う事が、全く無かった。
何故、こんな私に話しかけるのかしら。
彼とは会ってあまり時間が経っていないというのに……。
「…………あの、」
「何?」
また宮坂さんが、私に微笑む。
私はわざとその表情を見ないようにして、口を開いた。
「……あ、ありがとう…………」
私はそれだけ言って、走り出した。
何だか不思議と、胸の辺りが温かくなる。
感じた事の無い温かさを振り切ろうと、私は足を速く動かした。
この時、私は気づかなかった。
彼が、私の走っていった後ろ姿を、見えなくなるまで見ていた事をーーーーーー。