IS ―Another Trial―   作:斎藤 一樹

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2018/05/16 スペース等の修正


27.あの人参ロケットどうなってるんだろうな。

 ゴールデンウィーク5日目の朝。

 

 日課の早朝ランニング中に巨大な人参を見かけた。より正確に言うのなら、巨大な人参型の正体不明の機械である。人が1人乗れそうなサイズであることを考えると、ロケットだろうか。

 

 ……現実逃避をやめて真面目に考えるならば、十中八九この人参モドキの持ち主は束さんだろう。俺が近寄っても無反応な辺り、今この機体は無人なのかも知れない。千冬姉か箒のところにでも行っているのだろうと判断し、その場を離れる。後で会う約束をしているし、用事が済めば白式の反応を頼りに束さんが会いに来るだろう。

 

 あ、でも束さんもここ何年かは箒から距離を取ってるっぽいから、多分箒のところにはいないか。じゃあ千冬姉の所なんだろうけど……連休中の生活リズムとか生活態度が我が姉ながら不安で仕方がない。またビールの空き缶が山になっているんだろうか。一晩中飲み続けているのでもなければまだ寝てるんだろうけど、その辺りは束さんに任せよう。千冬姉とそこそこ長い間幼なじみをやってるんだし、対応の仕方はきっと分かっているだろう。

 

 束さんを信じて、俺はそのままランニングを続けることにした。

 

 

 

 

 

 今日は箒は四十院さんや夜竹さんたちと遊びに行くらしい。クラスでボッチになっていないようで何よりである。特に四十院さんは、部活が同じ剣道部だからか仲が良いらしい。おっとりしている四十院さんが剣道部に所属している、という事が少し驚きではあったが。

 

 そんなわけで、今日は午前中から部屋には俺1人だった。箒を見送った今は束さんを待つ身である。箒が既に出掛けた旨は連絡済みだ、まだ返信が来ないが多分そろそろ来るんじゃなかろうか。そう思っているところに、ちょうどコンコンとノックの音が聞こえた。

 

「へいへい、今開けますよっと」

 

 ドアを開けるとそこには、

 

「いっくんお待たせ~♪」

 

 何故かIS学園の制服に身を包んだ篠ノ之束の姿があった。

 

 いや、本当に何でだよ。

 

「何でまたそんな格好を……」

 

 コスプレみたいだな、という感想を呑み込んでそれだけ言う。素材が良いから勿論似合っているが、矢鱈とエロい。端的に言うと胸周りがとても窮屈そうだった。IS学園の制服はそこそこ布地に余裕を持たせた作りのはずなのに、胸周りを見ればそれはもうパッツンパッツンである。

 

 もしこの制服の胸周りがボタンで留めるタイプだったら弾け飛んでそうな勢いだったが、IS学園の制服はホック型の金具で留めるタイプである。弾け飛ぶことはないだろう……金具が壊れるかもしれないが。

 

 いや、待て。

 

 上着はホック式だ。とても窮屈そうだが、それでも何とかその巨大な双子山を詰め込んでいる。

 

 ……ならば、その下のワイシャツは? そこはどうなっている?

 

 ワイシャツは結構タイトだ。姉に似て巨乳な箒ちゃんは、結構ギリギリでワイシャツを着ている。なら、その姉であり箒よりも更に大きな胸を持つ束さんは……!?

 

 そう、弾け飛ぶのではない。そもそもボタンが閉まっていないのでは……!?

 

 そこまで考えが及んで、俺は束さんの胸を二度見した。

 

「いっくん、見すぎ」

 

「ウッス」

 

 二度見というかガン見だった。束さんの声が心なしか冷たい。

 

「似合ってるかどうかはその顔を見れば分かるから良いとして、いくらなんでも胸を見すぎなんだよ。揉んでみる?」

 

「揉む」

 

 間髪入れず伸ばした手は、無情にもぴしゃりと叩き落とされた。

 

「食い付き良すぎて束さんドン引きだよ」

 

 返す言葉も無い。

 

「そこに山があるから登るのだ、って言いますし」

 

 目の前に山があれば仰ぎ見たくもなるのである。だからきっと俺は悪くない。そういう事にならないだろうか。ダメか。

 

「で、そもそも何でうちの制服着てるんです?」

 

「ほら、束さん有名人だし? 目立たないように変装とかした方が良いかと思ってね!」

 

「むしろ悪目立ちだよ!」

 

「え~……」

 

 変装とかに気を使おうとしたところは良いが、着地の仕方を思いっきり間違えている。もうちょっとこう、この人は自分の見た目を考えてほしい。その辺りは束さんの同居人に期待したいところだけど、あの娘束さんの事は何でも肯定しそうだしなぁ……。

 

 ちなみに変装とかを考えなかった頃の束さんは、移動式ラボの最寄りのコンビニに全身ジャージで通っていた。尤も、あの篠ノ之束がジャージ姿でコンビニに来るという事自体が世間一般のイメージからかけ離れているため、意外と気付かれないのかも知れなかった。

 

 そんな茶番はさておき。

 

「久し振りです、束さん。大体1ヶ月ぶりですね」

 

「うん、久し振りいっくん。背ぇ伸びた?」

 

「1ヶ月でそんな伸びるか」

 

 ISの開発者にして稀代の天才、篠ノ之束が俺の目の前にいた。

 

 

 

 

 

 篠ノ之束という人物は俺にとってどんな相手か、と言われると少々返答に困る。俺の姉の親友であり、俺の幼馴染みの姉。俺たち姉弟の面倒を篠ノ之家に家族ぐるみで見てもらっていたので、俺にとっても幼馴染みの近所のお姉さん、といった存在でもある。文字で見るとややこしいな。

 

 とまあこれが俺と束さんの、世間一般に知られているであろう関係である。篠ノ之束と織斑千冬が友人関係にあったことは広く知られていることであるし、俺が千冬姉の弟である事もまた周知の事実である。俺にISの適正が見つかったと全世界に報じられた後、どこぞの週刊誌が俺と束さんの関係を虚実織り混ぜながら好き勝手書いていた事は記憶に新しい。潰れれば良いのに。

 

 そしてこの問いが表には出せない、つまりあまり大声では言えない類いの関係性も含めるとなると、そこに幾つか言葉を付け加えなければならないだろう。

 

 それはパイロットとメカニックだったり、或いは師弟関係だったりと色々あるが、中でも一番分かり易く簡潔な単語で表すならば『共犯者』だろうか。

 

 お互いに目的は同じで、目指す未来も同じ。

 

 だからこその、共犯関係。

 

 

 

 

 

「お待たせいっくん、白式のデータ全部見終わったよ~」

 

 いつものウサ耳アリス服に着替えた束さんが言った。

 

「早いですね、まだ10分ぐらいしか経ってませんよ」

 

「まあ束さんだし?」

 

 答えになっていないが説得力がすごい。この情報処理能力の高さも、束さんという天才の持つ高い能力の1片でしかないのが恐ろしい話である。

 

「それでだねいっくん」

 

「はい」

 

「……ちょっとお話しようか?」

 

 …あれ、どこかでフラグミスった?

 

 束さんは笑顔のはずなのに眼が笑っていないのでとても恐い。これ結構マジで怒ってるやつだ。え、何?

 

 取り敢えず腰掛けていたベッドの上で正座をする。

 

「いっくんは戦闘中、相手からの射撃ってどうやって回避してる?」

 

「どうやってって、そりゃロックオンアラートと弾道予測線を見て……」

 

 そう答えると、束さんは頭を抱えつつ馬鹿を見る目でこちらを見てきた。何故だ。

 

「いっくんさぁ、バカでしょ」

 

 とうとう直接バカと言われた。何でさ。

 

「あのねいっくん、普通の人はそんな事しないの」

 

 セシリアも似たようなこと言ってたな。そもそも普通のISには弾道予測線の表示機能なんて無いとか。

 

「でもそれは白式の装備が剣1本しかないからで」

 

 そう言い訳をしようとしたが、束さんは首を横に振る。

 

「ちーちゃんの暮桜もブレオンだったし白式とおんなじ弾道予測線表示機能もつけたけど、いっくんみたいな事にはなってないよ」

 

 むしろ俺の場合はどうなっているというのだ。

 

「端的に言うよ。いっくんの今の戦い方は、脳に負担がかかりすぎてる」

 

 脳に、負担? 言われてみれば確かに、戦闘中と戦闘後に頭が痛むが。

 

「Oh,脳」

 

 場の空気を和らげるためにふと思い付いたジョークを言ってみるが、言った直後に死にたくなった。言わなきゃ良かった。

 

「……いっくん?」

 

「ほんとすんません」

 

 視線の圧が増した。もう正座を通り越して土下座である。どうか鎮まりたまえ。

 

「でもあれってそういう風に使うものじゃないのか?」

 

 ジョークがすさまじい勢いで滑ったので、次善の策として話題を逸らす事にした。

 

「いっくんは多分、予測線とかを一々全部視てから避けてるよね?」

 

 確認するように束さんが言う。

 

「ええ、まあ」

 

 見なきゃ分からんと思うのだが。

 

「それだよ」

 

「どれですか」

 

「弾道予測線とかをちゃんと視て確認して、それを回避する……って言うのが問題なんだよ」

 

 そう束さんは言った。

 

「じゃあどうすれば?」

 

 見なきゃ良いのだろうか。

 

「見なければ良いんだよ」

 

 そんな無茶な。

 

「そんな無茶な、って顔をしてるけど。出来る筈だよ、ちーちゃんはそうやってた」

 

 こちらの感情が筒抜けだった。

 

「ISにはハイパーセンサーがある事、そしてハイパーセンサーの役割は以前教えたよね?」

 

「はい」

 

 宇宙空間での活動を目的として開発されたISは、前後左右に加えて上下の状況を知ることが出来る必要がある。その為に開発・搭載されたのがハイパーセンサーである。

 

「ハイパーセンサーは、確かに視力を強化する。でもその本質は、知覚能力の拡大にこそある。つまり……一々見る必要はないんだよ。感じるだけで良いんだ、必要最小限の情報以外は受け流してみて」

 

 受け流す、か。言葉にすると簡単そうだが、やるととんでもなく難しそうだ。

 

「分かりました、練習しておきます」

 

「頑張って。練習して詰まったらちーちゃんに訊いてみると良いよ。ちーちゃんも同じことやってたはずだから」

 

 千冬姉が割と感覚派であることが不安要素である。

 

「だからさ、いっくん」

 

 束さんは言った。

 

「あんまり、無理しないでね?」

 

 そう言ったその顔は、たまに見せる真面目なもので。

 

「……頑張ります」

 

 改めて見るとやっぱりこの人顔が良いな、等と考えながらそう答えるしかないのだった。

 

 

 

 

 

 その後、昼食を挟んでから白式についてのあれこれの話し合いに入る事になった。ちょうど良いので常々思っていた事を言おうと思う。

 

「白式って剣が一本あるだけじゃないですか」

 

「うん」

 

 それがどうした、といった顔の束さん。

 

「追加装備って載せられないんですか?」

 

「難しいかな、既に拡張領域(バススロット)が結構カツカツなんだよね」

 

 束さんは首を振りながら言う。頭上のウサ耳がゆらゆらと揺れた。だがこちらも諦めない。そこまでなら俺も知っている。

 

「量子化させずに、外装を換装する形で武器を追加する事は?」

 

 変化球ならどうだ。

 

「出来るけど、製造と調整にちょっと時間かかるよ?」

 

 出来るのか。

 

「出来るなら是非」

 

「でもブレオンってロマンじゃない?」

 

 束さんも食い下がる。いや、ロマンは分からないでもないが。

 

「ロマンだけじゃ勝てんのですよ」

 

 剣一本は、正直キツい。

 

「じゃあ何が欲しい?」

 

 欲しい武器は色々あるが、白式の高機動近接機と言うコンセプトを考えると。

 

「動きを阻害しないガントレッドのようなシールドと投擲用としても使えるダガー、あとはアンカーですね」

 

 近接戦での立ち回りを考えるならこの辺りだろうか。

 

「射撃武器は良いの?」

 

 束さんがからかうように言う。

 

「白式に射撃管制システム入ってないでしょうに」

 

 そう問い返すと、

 

「あっはっは、やっぱり知ってたんだね」

 

 束さんは悪びれた様子もなく笑った。

 

 確信犯だ。

 

「でも意地悪で入れなかった訳じゃないんだよ?」

 

 半笑いのまま言う束さん。意地悪でなかったことは本当かもしれないが、その半笑いのせいで信憑性に欠ける感はある。

 

「いやいや、本当だって。白式の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)が当初の想像以上に容量取っちゃってね~」

 

 そう言いながら椅子から立ち上がった束さんは、俺が座るベッドの隣にすとんと腰掛けて、そのままごろんと後ろに倒れる。その豊満な胸がゆさりと揺れ、また元に戻った。おい待て俺のベッドの匂いを嗅ぐな。

 

「零落白夜ですか?」

 

 あれがコア2つ分のスロットの容量食ってる原因なのか。

 

「うーぅん、違うよ?」

 

 あっさりと彼女はそう言った。

 

「え、違うって」

 

 白式の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)って零落白夜じゃないのか? 燃費最悪というデメリットがあるとは言えあれだけのチート紛いの能力、単一仕様能力だと思って疑いすらしなかったが。

 

「そもそも白式はね、いっくん」

 

 むくり、と束さんが上半身を起こし、そのまましなだれかかるように俺の上半身にもたれ掛かってくる。右腕に柔らかい感触が伝わってたまらない気分になるが、鋼の理性(自称)でルパンダイブを堪える。お互いに受け入れてりゃ問題ないんじゃないかとか思わないでもないが、今すごい大事な話してる気がするから我慢だ。後で覚えてろよ。

 

 俺が一人理性と戦っている間にも話は進む。

 

「白式はこの束さんが対IS用のISとして作り上げた機体なんだよ」

 

 柔らかな息が耳元を擽る。

 

 待て。

 

 対IS用のIS?

 

 それは知っている。

 

 IS学園に来る以前、束さんから直接そういう機体を送ると聞いた。

 

 だからこその零落白夜、という事ではないのか?

 

 俺は白式という機体について、最初から勘違いをしていたのか?

 

「白式はね、いっくん。王様なんだよ」

 

 体をこちらに預けたまま足をぱたぱたと揺らしながら、束さんは言った。

 

「王?」

 

「そう、王様。ISの、王様なんだ」

 

 ISの王。その言葉に含まれている意味を考える。黙り込んでしまった俺に、束さんは言葉を続けた。

 

「まあ、コアの人格は女の子なんだけどね。白式は、束さんが対IS戦のために作った子だよ。それまでに作った宇宙開発用の白騎士、競技用の暮桜とは根本的に違うんだ」

 

 束さん……IS開発者、篠ノ之束に「対IS戦用」と言わせる機体、白式。ぞくりとした。

 

「今はリミッターをかけて競技用のレベルまでスペックや機能を制限してるけど、戦いの時は解除できるようにしてあるよ」

 

 でもね、と束さんは続ける。

 

「単一仕様能力ワンオフアビリティー……切り札は、まだ使えないんだ。調整が済んでないから、まだ封印されてる。調整自体は今も白式の内部でやってるみたいだけど、当分かかりそうだね」

 

 ふぅ、とため息を吐きながら束さんは言った。喉乾いちゃった、と言う束さんに冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して渡す。ついでに俺は先程まで束さんが座っていた椅子へと腰かける事にした。ああも引っ付かれたままだと話に集中出来やしない。

 

「単一仕様能力が調整中って……白式の単一仕様能力は零落白夜じゃないんですか?」

 

 先程から気になっていた話だ。いや、束さんの口ぶりから考えると違うであろう事は明らかであるが、束さんの口から聞きたかった。

 

 束さんはチッチッチと口で効果音を出しながら指を振った。

 

「それじゃあ久しぶりに授業の時間です」

 

 その豊かな胸の谷間から眼鏡を取りだし、すちゃりとかける束さん。四次元ポケットかよ。

 

「ちなみに今のどう? ムラっときた?」

 

「まさかのメガネに驚きの方が強いかな……」

 

 眼福であったのは確かなのだが。

 

「ちぇー、まぁそれは良いや。それじゃあ束先生のはちみつ授業、はっじまっるよ~」

 

「あ、今回こんなノリなんだ」

 

 いや、いつもこんなノリという気もするが。

 

 それにしてもこの束さんノリノリである。

 

「さていっくん、前に教えたはずだけどもう一回復習ね。第三世代型ISの特徴は何だったでしょうか。はいどうぞ!」

 

「えーと、『単一仕様能力の人工的再現、若しくは近似する武装を搭載しているIS』、でしたよね?」

 

「うん、正解。まぁその分類分けしたの私じゃないんだけどね。単一仕様能力を人工的に再現した装備とかイメージインターフェースとか、それっぽい感じの謎テクノロジーが使われてる装備を持ってることが条件なんだけど、そこの辺りを踏まえた上でもう一回白式の事を考えてみようか」

 

 どうでも良いけど「謎テクノロジー」と「ナノテクノロジー」って響きが似てるよね、と言う束さんにそーですねと生返事を返しつつ、考える。謎技術の固まりであるISを世に送り出したアンタが謎テクノロジーとか言うなとも思ったが、優先順位が低いからツッコミは後回しだ。

 

「イメージインターフェイスを利用した特殊装備って、要は単一仕様能力を人工的に作ってしまおう、或いは再現してしまおうって考えのもとに研究・開発されたものなんだよね」

 

 白式も第三世代機だ。ならば、単一仕様能力を再現した装備が搭載されているはずで。

 

「……あー、何となく分かったぞ、この話のオチ」

 

「考えてみれば当然の話で、いつどんなものが発現するか…そもそも発現するかどうかすら分からない単一仕様能力をアテにするよりも、それに準ずる特殊能力を自分達で開発して組み込んだ方が使い勝手は良いわけだよね」

 

 それはつまり、

 

「雪片は……零落白夜は、第三世代機体特有の単一仕様能力を再現した特殊装備でしかないってことか?」

 

「うんうん、頭のいい子は好きだよ」

 

 花丸あげちゃう、と言いながら束さんはつい、と右の人差し指を一本立てた。その動きに連動して、束さんの前にホロウィンドウが幾つか出現した。その内の一つを指の動きで俺の前に飛ばしながら、束さんは言う。

 

「白式に搭載している雪片弐型は、ちーちゃんの暮桜に装備されてた雪片の発展型。そこのところは、多分いっくんも知っての通りだよ」

 

 ミネラルウォーターを口に含んで、束さんは言葉を続けた。

 

「発展させるといっても、方向性は一つじゃないよね。威力の強化やエネルギー効率の上昇、軽量化とか小型化するのもそう。雪片弐型が強化されたのは、エネルギー効率の上昇。零落白夜を展開出来る時間は、ちーちゃんの雪片……ややこしいからこっちは壱型って呼ぼうか。壱型の2倍以上になってるはずだよ」

 

 すごいだろう、と言わんばかりのドヤ顔を決める束さん。胸を張った拍子に、その大きな双丘がぶるんと揺れた。いや、丘というよりも山だな。箒もかなり大きかったと思うが、見たところ束さんはそれ以上だ。遺伝子は良い仕事をしている……って違う。思考が逸れた。

 

「逆に考えると、千冬姉はアレの半分以下の時間しか戦えなかったのに世界一になれたのか……」

 

 やっぱりあの人おかしい、と再認識したところで。

 

「ちーちゃん曰く『近付いて剣を振るだけの簡単なお仕事』らしいけど」

 

「開発者・技術者としての一言をどうぞ」

 

「そんな簡単に出来る訳ないからね、念のため言っておくけど」

 

「まぁそうですよね」

 

 知ってた。

 

 相変わらず存在自体がバグみたいな人だった。

 






 今回は以前から2000字ほど書いていたものがあったため、それを加筆修正して更に書き足せば四月中旬、もしかしたら上旬の内に投稿できるかもしれない! そう思っていた時期が私もありました。気が付けばそれから数週間が経ち、月が変わっておりました。何てこったい。

 そんなわけでISAT、4月分の投稿になります。遅れた理由は新学期が始まったとか風邪引いたとか色々ありますが、その内の1つに「予想以上に分量が増えた」というのがあります。最近は一話あたりの文字数を4000~5000文字程度としているのですが、今回は何と7000字を超えました。ざっくり1.5倍ですよ。でも分けるには微妙な分量&一気にやりたい内容だったという事もあり、このような形になりました。

 本編が半端なところで切れてるように見えるかもしれませんが仕様です。あの後は二人でいちゃついたりたまに真面目な話をして、そして箒ちゃんが部屋に帰ってくる前に束さんが帰るという流れでしたがカットされました。そこの内容は多分R-18未満の筈。きっと。

 今回の話は以前からやろうと思っていた話のひとつです。白式の単一仕様能力が実は零落白夜ではない、というのは結構前から考えていたのですが、更新が止まっている間に公式が同じネタやっててビックリしました。公式がこっちに寄せてきたな、と思ったり思わなかったりしましたが、そのネタをやっと書けたのが今回なのでこっちの方が後出しになってしまいました。しまった。

 そう言えば私は主にスマホからハーメルンで文章を書いているのですが、何故かスマホからだとスペースが反映されません。何故だ。前話と合わせて来週辺りにPCから修正しますのでご容赦下さいな。

 これで書くことは全部書いたかな? そんなこんなで今回は束さん回でしたが、次回の内容は未定です。取り敢えず今回でゴールデンウィーク編は終了となります。長かったような短かったような。お次は5月中に投稿できることを祈ります。ではまた次回お会いしましょう、斎藤一樹でした。


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