IS ―Another Trial―   作:斎藤 一樹

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18.祭とかパーティーは準備してる時が一番楽しい

 クラス代表決定戦をした日から、週末を挟んで月曜日。その朝のホームルームで、にこやかに山田先生が言った。

 

「ということで、クラス代表は織斑一夏君に決定しました〜。ちょうど『一』つながりで、いい感じですね〜?」

 

 ……そうか?

 

 内心で首を捻る俺とは対照的に、クラスの女子達は中々盛り上がっているようだった。……まあいいか、楽しそうだし。

 

 

 

 休み時間。

 

「ねえねえ織斑くん!」

 

「今日の放課後、空いてる?」

 

 俺の机の周りには女子が群がっていた。人気者は辛いぜ、という軽口もこの状況ならあながち的外れでは無さそうである。

 

「おう、空いてる空いてる。どうした?」

 

「えっとね、今日の19時から食堂で、織斑くんのクラス代表就任パーティーやるの!」

 

「でねでね、織斑くんにも来てほしいなぁ、なんて…………」

 

 周りの女子達が矢継ぎ早に説明しようとしてくれるが、同時に何人も口を開くので大変姦しい。だがまぁ、状況は分かった。

 

「そりゃ主役が行かないってわけにゃあいかねぇよな。喜んで参加させてもらうぜ」

 

「本当? やったぁ!」

 

「絶対だよ!」

 

 きゃいきゃいと女子が騒ぐ。そこまで喜んでもらえるとは嬉しい限りだ。

 

 

 

 

 

 さて、本日の授業も恙無く終わったわけだが、現在の時間は大体16時。パーティーは19時かららしいのでそれまでの3時間はヒマになってしまう。ちなみにパーティーの手伝いを申し出たら慌てた様子で断られてしまった。若干の疎外感を感じて寂しいような気もするが、女子だけでやりたい事もあるのだろう。無理にでしゃばる必要は無いだろう。

 

 

 

 

そんなわけで俺は今、生徒会室に来ていた。

 

「はいはい。いらっしゃい、一夏くん」

 

 部屋の中にいたのは、刀奈姉だけだった。

 

 先週生徒会室を訪れたときに俺は生徒会に所属する旨を伝えたのだが、余ってるからと渡されたのは何と副会長の役職だった。ちなみに虚さんは会計で、のほほんさんは庶務とのことだった。

 

「取り敢えず副会長になったから来てみたんだけど、何かやることある?」

 

「無いわね」

 

「無いの!?」

 

 書類仕事とか、俺もやるべきなのでは。

 

「一夏くんは例外よ、特にこちらから呼ばない限りはわざわざ生徒会室(こっち)に来る必要は無いわ。その分をISの訓練に充てて、少しでも強くなって。いざという時は自分一人で戦うこともあるだろうし」

 

 そう、だな。

 

「了解。ISの戦闘に関してはまだまだ弱いからね…その分伸び代もあるだろうから鍛えるのが楽しみだけど。刀奈姉みたいな国家代表クラスにまで届くのは一体何時になるやら……」

 

「いやいやいや、まだIS稼働合計時間が50時間も無いような素人に国家代表が負けたら、国家代表の立場が無いから」

 

「それもそうだ。今度、模擬戦の相手してくれない?」

 

「いいわね、近い内に久しぶりにやりましょうか。稽古をつけてあげるわ」

 

 そう言って、彼女は猫のような笑みを浮かべた。

 

 

 

 ……困ったな、またヒマになってしまった。

 

 

 

 仕方がないので自室に帰ることにしたのだが。

 

「箒ちゃんいる? 今入っても大丈夫?」

 

 ノックと共に声を掛けると

 

「はい、大丈夫ですよ」

 

 と声が返ってきた。ノックは大事だ、不幸な事故が防げるという意味でも。例え相手が箒であっても、相手が女子である以上はそのあたりの配慮は大切だろう。親しき仲にも礼儀あり、という言葉もあるのだ。

 

 そんな訳で部屋に入ると、そこにはなんと

 

「…何で着替え途中なんだよ!」

 

 着替え中の箒がいたのだった。ちくしょう、前振り全部無駄にしやがった。

 

「一夏になら見られてもいいかと思いまして」

 

 良いのか。確かに今まで箒ちゃんの胸を揉んだりしているので今更といった感は無いではないが。…いや違う、そうじゃない。

 

「箒ちゃん、俺が言うのもアレかもしれないけれどさ、慎み深さとかそういうものを身につけてほしいなって思うんだ」

 

「えっちな女の子は嫌いですか、一夏?」

 

 上目遣いと共に箒が言った。心情的にはカウンターパンチがクリティカルヒットしたといった具合だ。正直ノックダウン寸前だった。

 

「大好きです。……いや、そうじゃなくてだな」

 

 気が付けばそう答えていた。いい加減そろそろ理性の限界だった。着替え途中の箒を見た時点でかなりキていたのに、それに重ねるように先ほどの台詞だ。…もうゴールしても良いよね、という悪魔の囁きが脳裏を過ぎる。おい、天使はどうした。

 

 違うんだ、俺はもっとこう何というか、彼女に慎みというものを持ってほしいのだ。

 

「安心してください、私がこんな姿を見せるのは一夏だけですよ」

 

 それなら良い…のか? 「良くないだろ」という良識・常識と、「でもエロ可愛い箒ちゃんもっと見たくない? 俺だけにしか見せないって言ってるんだしこのままで良いんじゃないか」という欲望に満ちた心の声が胸の内で鬩ぎあっている。

 

「……じゃあ良いか」

 

 俺は欲望に負けた。

 

 箒ちゃん、昔はこんな性格じゃなかった筈なんだけどなぁ…。生真面目というか堅物というか、そんな感じだったのに何故こうなってしまったのだろうか。俺のせいだと言われればあながち否定できない気がするのが悩みどころである。

 

 

 

 

 

 18時30分。IS学園第三食堂には、20名ほどの女生徒が集まっていた。

 

 その中の一人……相川清香が、右手の拳を突き上げつつ口を開いた。

 

「パーティーまであと30分……。みんな、頑張って間に合わせるよっ!」

 

『おーっ!』

 

 残りの女子は、声をそろえて声を挙げた。それから、彼女達はそれぞれ散らばり、机や椅子を動かし始めた。

 

「この机はどこ置いたらいいー?」

 

「それは壁側に運んでー!」

 

「誰かー、この机運ぶの手伝ってくれへんかー!」

 

 わいわい、がやがや。みんな他の声にかき消されないようにと大きな声を出すので、語尾がのびている。

 

 そして5分後。

 

「はいはーい、お菓子とジュースと紙コップ! 持ってきたよ〜っ!」

 

 そこに新たに10名ほどの女子がやってきた。みんな、手に手にビニール袋を下げている。その中身は、ビスケットやらポテトチップスやらといったお菓子と、ジュースや紅茶等の飲み物類、そして紙コップと紙皿。

 

「あ、買い出しお疲れ様!」

 

「飲み物はそっち置いといてー!」

 

 声が飛び交う中で、彼女達の顔は楽しげに輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 7月7日は箒ちゃんの誕生日。というわけで、少々無理やり投稿です。無理矢理なので今回は少々短めです。今回はFC2版だと18話と19話の部分から継ぎ接ぎしながらあちこち書き直したり書き加えたりしています。

 あんなサブタイトルのくせに、実際にパーティーの準備をしているシーンは最後に少しあるだけという半ばタイトル詐欺のような回です。話を少しずつ進めつつ箒ちゃん回になるように書き直したので、上手いこと箒ちゃん回っぽく見えるようになっていると良いなぁと思います。如何でしょうか。まだ足りない? そんな~。

 次回はパーティー本番です。今月中に投稿できたらいいなと思いますが、果たして。それではまた次のお話でお会いしましょう。


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