Angel Beats! 星屑の記憶   作:刻焔

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第41話 戦線への疑問

 

テストから一週間が経過した

 

俺と音無はいつものように戦線本部へと向かっていると、職員室から出てくる天使を見かけた

 

「立華、どうした?何かあったのか?」

 

「何も」

 

音無の問いにたった一言だけ返事をし、天使はそのまま学習棟の方へと戻って行った

 

「俺達がテストのときにした事で教師に呼ばれたんじゃないか?」

 

「え?」

 

「少し考えればわかるだろ、不真面目な回答をした生徒を呼び出さない教師がどこに居る?誰かの仕業だと考えるだろうが、まずは回答者を呼び出すだろ」

 

「……弁解したのかな、立華は」

 

「さぁな、本人に聞かない事には分らないな」

 

俺と音無の会話はそこで途切れ、戦線本部まで無言のままだった

 

考えてみれば、この時から俺の中でちょっとした疑問が浮かび上がっていた

 

そしてその翌日

 

「天使の全教科0点の噂が、流れ始めたわ」

 

「マジかよ…」

 

昨日のアレはやっぱ教師に呼び出されてたのか

 

「しかも、教師をバカにしたような答えばかりだったと」

 

「そんなことまで!?」

 

それは俺も意外だった。0点はともかく、回答内容の噂まで広がってるのか

 

「でも教師は、そんなの天使自身じゃなく。誰かの仕業だって、分かるだろ」

 

「何度言わせるの?そんなの教師には分らない。生徒会長が不真面目な回答をしてきた。なら、天使自身を呼び出して るに決まってるでしょ」

 

「(月斑の仮説が当たってる)」

 

「全教科、不真面目な回答だからな。教師からしてみりゃ、一人きりの反乱ってとこだろうな」

 

昨日から考えないようにしてきたが、日向のその言葉で、俺の中で渦巻いていた物が、一層大きくなった気がした

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「おい月斑!聞いてるのか!?」

 

「え?」

 

突然声を掛けられ、俺は我に返った

 

「え?じゃないよ全く。アタシの歌、聴いてなかっただろ」

 

そう言われ、俺は今の状況を把握するべく、思考を回転させる

 

確かガルデモの雑用をしてる時に、新曲を聴いて欲しいと岩沢に呼び出されて

 

………あれ?確か空き教室に入るところまでは覚えてるんだが、その先が思い出せねぇ

 

「すまん岩沢、考え事に夢中になってた!今度はちゃんと聴くから、もう一度歌ってくれないか?」

 

「しょうがない奴だな、もう一度引いてやるからちゃんと聴けよ」

 

そう言うと岩沢は、再びギターを弾き始めようとする

 

しかし、それを邪魔する者が現れた

 

「あー!先輩こんなところに、ひさ子先輩いましたよー!」

 

「こんな所にいたのか月斑!」

「今日はユイの練習成果を確認するって自分で言ってましたよね!」

「さっさと行きますよ!」

 

ひさ子・入江・関根に引っ張られ、練習に使っている空き教室へと連行されてしまった

 

「……あの、アタシの曲は?」

 

ただ一人、岩沢だけが取り残されてしまっていた

 

そしてそれを誰も気にしないまま演奏が始まり

 

♪~~

 

岩沢ではなく、ユイがボーカル&ギターを担当するニューガルデモの演奏が終わる

 

「どうでしたか先輩!?」

 

「う~ん、まだいまいちだな。リズムがズレてる部分がまだあるぞ

 初めて合わせたから緊張もあるんだろうけな」

 

「うへぇ、まだまだって事ですか」

 

ユイは露骨に落ち込む

 

「まぁ、今の調子で練習すれば問題ないだろ

 そろそろトルネードもするはずだしな」

 

「テストまでもう少しって事ですか!?」

 

「そうなるな」

 

そういうとユイは再び練習に戻った

 

やる気があるのはいいことだ

 

そんなユイの練習風景を見ていても、俺の頭からテストの時のオペレーションが気になっていた

 

そして数日後

 

全校生徒が体育館へと集められ、全校集会で天使の生徒会長辞任が告げられた

 

「辞任じゃなく、解任ね」

 

「ゆりっぺ…」

 

「はたして一般生徒に成り下がり、大義名分を失った彼女に私達が止められるかしら

 今夜、オペレーショントルネード決行よ」

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「ユイ、準備はいいか?」

 

「は、はい!」

 

緊張しまくってるじゃないか…

 

俺はユイの背中を軽く叩いてやった

 

「落ち着け、ひさ子達がしっかりフォローしてくれるから大丈夫だ」

 

ひさ子達の方を見ると、任せろと言った感じにユイに笑顔を向けていた

 

「先輩方、今日はよろしくお願いしまっす!!」

 

ユイは腰を直角に曲げ、深々とお辞儀してきた

 

「……まぁ頑張れ」

 

それだけ言って、俺はユリに指示されたポイントに移動する

 

そこにはTKと椎名がいた

 

「さて、ホントに天使は来るのか?」

 

そんなことをつぶやきながら、本心では別の事を思っていた

 

来ないでほしい

 

そう思っていたのだ

 

そう思った理由としては、テストの時の罪悪感と壇上にいた天使の表情がなんとなく悲しげに見えたからだ

 

そしてThousand Enemiesが始まて数分後、天使は現れた

 

「来ちまったか……」

 

仕方なく戦闘態勢にはいるが、屋上にいた音無からの合図で、攻撃は中止となった

 

「……何を考えてるんだ?音無」

 

俺達は天使が過ぎていくのを黙って見送り、演奏も終盤に差し掛かった辺りで食券が舞った

 

中で何があったのかは分からないが、オペレーションは成功したらしい

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

「どうでしたか先輩!」

 

俺が焼肉定食を食べていると、目の前のユイが話しかけて来た

 

「いい演奏だったと思うぞ。話を聞く限り、ライブも盛況だったみたいじゃないか」

 

「まぁ初めてにしては中々だったな」

 

俺とひさ子の感想を聞き、ユイは体で喜びを表していた

 

「じゃあユイは正式採用何ですか?」

 

隣にいた入江がそう尋ねて来た

 

「このテストを発案したのは岩沢だからな、岩沢の合格が出ないとな」

 

「え?アタシが決めるのか?」

 

「は?当たり前だろ、ガルデモのリーダーが決めないでどうするんだよ」

 

岩沢はきょとんとした表情のまま

 

「いや、普段の練習もしっかり見てて、ガルデモのマネージャーである月斑が決めるんじゃないのか?」

 

とんでもない発言をしてくれた

 

コイツ今なんて言った?マネージャー?

 

どうして雑用係からマネージャーにランクアップしてるんだろうか

 

「俺はただの雑用係だぞ」

 

『えっ!?』

 

「えっじゃねぇよ!てか今、全員えって言っただろ」

 

「だって、なぁ」

 

「ですよねぇ」

 

「うん」

 

「あたしもマネージャーだと思ってました!」

 

ひさ子・関根・入江・ユイの順で肯定されてしまった

 

「お前らなぁ、俺は支援班という名の雑用係なの忘れてんのか」

 

『………あっ』

 

「あっじゃない!全く…」

 

「はぁ!?」

 

一息つこうとしたら、突然藤巻の怒声が聞こえて来た

 

「馬鹿言ってんじゃねぇぜ!これまでどれだけの仲間が奴の餌食に、…あ、いや、餌食っつうか、皆ピンピンしてっけど、どれだけ痛めつけられてきたか!」

 

「そうだそうだ!今日は大人しかったかもしれないが、何時また牙をむくか!」

 

「寝首かかれかねねぇぜ!」

 

藤巻に続き、その周辺にいた戦線メンバーも音無に向かって叫んでいた

なんて言ったのかは分からなかったが、天使がらみなのは分かった

おそらく仲間になれるかも、とか言い出したんだろうな

 

今日の攻撃を止めたのは音無だ、それくらいの事は言っててもおかしくない

 

「なんの騒ぎだろう…」

 

「気にするな、飯が冷めちまうぞ」

 

そう言って俺が食に戻ろうとした瞬間

 

大勢の一般生徒が食堂へと入ってきて、俺達戦線メンバーを囲った

 

「なんだ貴様らは!」

 

メンバーの誰かが叫んだが返答は無かった

 

「なんなんでしょうか…」

 

「分かるかよ。ただ、大人しくするしかなさそうなのは確かだ」

 

すると一般生徒の中から帽子をかぶった少年が前に出て来た

 

「そこまでだ。色々と容疑はあるが、とりあえず時間外活動の校則違反により、全員反省室に連行する」

 

アイツは確か、天使の代わりに生徒会長になった

 

「僕が生徒会長となったからには、貴様らに甘い選択はない」

 

直井文人って言ったか、どうもこいつは普通じゃない気がする

 

「…連れて行け」

 

一般生徒には手を出せない為、俺達はただ従うしかなかった





諸事情により今回からあとがきコーナーは廃止させていただきます。
身勝手な理由でまことに申し訳ありません!

今度とも本小説をお楽しみください!

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