赤き覇を超えて   作:h995

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ゼテギネア編、第三話です。

ここから、一気に加速します。
そして、リメイク版をやった事がある方なら、おそらく「それはない」と仰るであろうキャラが登場します。
あくまで平行世界という事で笑って見逃して頂けると幸いです。

追記
2018.11.12 修正


第六話 繋がれ始めた手と手

 かつてヴァレリアを統一した覇王ドルガルアに遺児がいる事が公表された事で、解放軍は少しずつだが厭戦気分が蔓延り、内部分裂を始めていた。その最中、ブリガンテス城がフィラーハ教徒によって占拠されたという知らせが届いた。それを受けて、デニムさんは単身、しかも非武装で教徒の説得に向かう事を宣言し、僕もそれに賛同する一方でブリガンテス城に到着するまではしっかりと武装して護衛もつける様に釘を刺した。フィラーハ教徒とは別のゲリラが潜伏している可能性があるという情報を得ていたからだ。そうして何事も無くブリガンテス城に辿り着いたデニムさんは、当初の予定通り非武装で単身ブリガンテス城の正門に立って説得を開始、最終的にはフィラーハ教徒の指導者の一人である少女によって城内へと招き入れられた。

 ……そこからの話は単身城内に入っていったデニムさんから聞かされた話になるが、やはりというべきだろう。そこで待っていたのは、死の淵に立っていた父親であるプランシー神父だった。デニムさんはプランシー神父からカチュアさんの真実を聞かされた後、大神官だったモルーバ様のご協力を請う様に示唆された上でカチュアさんの救出を託され、その最期を看取ったという。更にそこで、デニムさんは己の出自を城に招き入れた指導者の少女から知らされる事になった。

 

 父親であるプランシー神父はバクラムの指導者であるブランタ・モウンの実弟。そして、デニムさんの本当の名前はデニム・モウン。……デニムさんは、敵対民族のバクラム人だった。

 

 尤も、これについてはプランシー神父の足取りを追っていけば容易に解る事なので、たとえ僕に原作知識がなかったとしてもこの答えには行き着いていたと思う。だから、幼馴染であるヴァイスさんには既にこの事実を伝えていたし、ヴァイスさんもまた「今更だな、そんなことは」と一笑に付していた。

 

 ……この世界のヴァイスさんは、本当にデニムさんの良き親友だった。

 

 なお、この時にデニムさんに出自の真実を知らしめた少女。彼女は大神官モルーバ様の娘にしてセリエさんとシスティーナさんの妹、そして実はデニムさんの幼馴染であったオリビアさんだった。そして彼女達の会話からモルーバ様がバンハムーバにある古い神殿にいる可能性がある事が判明し、そこへ向かうことになった。

 しかし、ここで到底見過ごす事のできない情報が飛び込んできた。バルマムッサの町を屍人(ゾンビ)の大群が襲ってきているというのだ。

 まずは後顧の憂いを絶つべき。そう判断した僕はデニムさんにバルマムッサの救援を進言し、デニムさんもそれを了解してくれた。

 

 バルマムッサの町に急行した僕達は、そこで一人の僧侶(クレリック)の女性が屍人の大群に襲われている場面に遭遇した。僕達は急いで彼女を救出したものの、既に致命傷を負っていた彼女は屍人達が何かに率いられる様にアルモニカに向かっている事を伝えると、そのまま息を引き取ってしまった。こうなると、まずは自分達の足場を固める必要が出てきた僕達は急いでアルモニカ城に戻り、そこで屍人が港町ゴリアテに集結しつつある事を知った。もはや一刻の猶予もない。そう判断したデニムさんは僕達を率いて急いでゴリアテに向かった。

 そこで待っていたのは、かつてレオナールさんの救出任務のついでに討伐しようとした屍術師(ネクロマンサー)ニバス、そして彼と激しい口論を交わしている一人の少女だった。彼女はニバスの呼び掛けに応える様に現れた三体の屍人を見ると明らかに動揺し、そして身動きを取れなくされた所でまともに剣を受けてしまった。

 

 ……急がないと彼女の命が危ない。

 

 そう思った僕はデニムさんに彼女の元に自ら急行、まだ息があれば確保の後にそのまま戦線を離脱する事を伝えて、転移魔法で彼女の元に駆け付けた。改めて確認すると、彼女がまだ生きていたので背中に背負い、そのまま港町ゴリアテからアルモニカ城へと転移した。そうして身の安全を確保した上で彼女に治療魔法を施す。そうして無事に治療が終わってしばらくすると、少女が意識を取り戻した。そこで彼女は僕に自分の素性を明かし、何故あのような事態になったのかを説明していった。

 彼女の名は、クレシダ・オブデロード。屍術師ニバスの娘で自らも屍術士(ネクロマンサー)だと告白してきた。そしてあの場にいた屍人の中に、解放軍との戦いで命を落とした母親と姉、そして姉の婚約者がいたという。

 僕の知っている知識とは大きく異なるニバスの家族構成に、僕は内心驚きを隠せなかった。しかも家族総出で屍術(ネクロマンシー)を研究していたというのだから、尚更だった。だが、今の彼女からは屍術に対して余り良い感情を抱いていない様に見えた。これも無理はないだろう。よりにもよって実の父親が愛する家族とその婚約者を屍術の研究の為の実験材料としたのだから。

 そこまで話したクレシダさん(どうやら僕より年上らしい)は、辛い現実に耐え切れなくなったのだろう、とうとう泣き出してしまった。

 

 ……このままでは、彼女は一生過去に囚われたまま生きていく事になる。

 

 そう感じた僕は、彼女の母と姉、そして姉の婚約者の魂を魔導師(ウィザード)の赤龍帝であるロシウ老師から学んだ神聖魔術の奥義である降霊術で呼び出し、彼女に家族との最後のお別れをさせてあげる事にした。その際、僕は席を外して彼女達だけにした。この様な時、部外者は全く以て不要だからだ。

 

 それからしばらくして、部屋から出てきたクレシダさんは僕にお礼の言葉を懸けて来た。

 

「……ありがとう。貴方のお陰で、母上や姉様、へクターとちゃんとお別れする事ができた。確かに貴方は家族の仇であるけれど、これについては深く感謝しているわ」

 

 その頬は未だに涙で濡れていたが、どうやら前を向ける様にはなっていたようだ。僕は少しだけ安堵しつつ、恩に感じる必要はないとクレシダさんに伝えた。

 

「気にしないで下さい。あのままではいけないと思った僕の、ただのお節介です。それに呼び出す際に三人揃って、少しでいいから貴女と話をさせて欲しいと頼まれてしまいましたしね」

 

 すると、クレシダさんは何処か感慨深げな様子で語り始めた。

 

「……私達は、貴方を目指すべきだったのね。死者を生き返らせるのではなく、死者の魂と語らい、その意志を伝える事で生者との橋渡しを行う。そうしていればこんな、こんな酷い事には……!」

 

 自らの行いに対して改めて悔やみ始めるクレシダさんに駄目押しする様だが、僕はどうしても伝えるべき言葉があった。だから、それをはっきりと彼女に伝える。

 

「僕が以前聞いた言葉にこんなものがあります。死んだ者は死んだもの。無理に甦らせても、後から続く者達の邪魔になるだけだ、と」

 

 僕がとあるアニメにおいて、愛する者を含めた死者を蘇生させる力があるにも関わらず蘇生する事を否定した時の主人公の言葉を伝えると、彼女はまるで雷に打たれたかの様な反応を見せた。

 

「死んだ者は死んだもの、か……。本当にその通りね。こんなにも簡単で大切な事に、どうして私達はもっと早く気付けなかったの……?」

 

 そして、クレシダさんはその後、静かに泣き続けた。自分とその家族が行って来た事に対する後悔を、涙と共に流し出す様に。

 

 しばらくして、デニムさん達が港町ゴリアテからアルモニカ城に戻ってきた。僕がクレシダさんと共に戦線を離脱した後の話を聞くと、屍人を何人も作り出した張本人であるニバスにはあと一歩のところで逃げられてしまったようだ。またゴリアテを襲撃してきた屍人の中にロンウェー公爵がおり、デニムさん達に離反された揚句にレオナールさんに殺された事でデニムさん達に深い恨みを持っていた為、他の屍人を率いてゴリアテを襲撃したらしい。なお、ゴリアテを襲撃してきた屍人は全員再び永遠の眠りについた事も知らされた。

 ゴリアテでの戦闘に関する話を聞いた後で、その頃にはだいぶ落ち着いて来ていたクレシダさんが改めてデニムさん達に自らの素性を明かし始めた。そして、これ以上屍術によって尊厳ある死を弄ばれる者を生み出さない為に、何処かに逃げた(ほぼ間違いなく死者の迷宮だとは思うが)ニバスを討ち果たす事を共通の目的として、クレシダさんがヴァレリア解放軍に参加する事になった。ただし、全ての決着をつけた後で死者と生者の橋渡し役となる為、僕から降霊術を教わる事を条件として。

 ……その割には、僕に教えを請うクレシダさんの視線が妙に熱を帯びている様な気がするのだが。

 

 

 

Interlude

 

「……なぁ、デニム」

 

 今や解放軍の指導者と化した幼馴染のデニムに、同じく最高幹部となったヴァイスが問いかける。デニムもヴァイスの言いたい事は理解しているので、すぐさま答えを返した。

 

「解っているよ。ヴァイス。でも、ただでさえ僕達より四歳も年下な上に解放軍の政治と戦略を一手に引き受けていて自分の周りに気を回す余裕がないイッセイに対してクレシダの好意に気付けっていうのは流石に無理だと思う」

 

 デニムはここまで話した所で深い溜息を吐く。

 

「……今イッセイがやっている事は、本当なら首脳陣である僕達がやらなければいけない筈なんだけどね」

 

 年下の、しかもまだ成人すらしていない弟分の少年に解放軍の重要な仕事を任せきりにしている事実に、デニムは自らの不甲斐無さを実感していた。それを見たヴァイスもまた解放軍の実情と己の無学を悔む発言をする。

 

「そうだよな。ただな、今イッセイを軍師から外したら、その時点で解放軍が立ち行かなくなるのも確かだ。……今ほど俺自身に学がなくて、政治はおろか戦略すらまともに立てられない事を悔やんだ事はないぜ」

 

 解放軍のお寒い実情を改めて思い知ったデニムは、つい最近看取った父の遺言の一つを早急に実現する事を決意した。

 

「……モルーバ様を一刻も早く味方にしよう。それで少なくとも政治方面においてはイッセイの負担を軽減できる筈だ」

 

 それで自分を慕ってくれている弟分が、少しでも自分に寄せられる好意に目を向けられる様になってくれればと願いつつ。

 

Interlude end

 

 

 

 やがてバンハムーバの神殿でモルーバ様を味方につけ、任務に失敗した事でバクラム軍から見捨てられたシェリーさんを保護し、更に実はハボリム先生の婚約者であったオズマさんがハボリム先生から真相を聞かされた事で暗黒騎士団から離反、こちらに加わった事で、暗黒騎士団と行動を共にしているカチュアさんを救出する為の戦力が整いつつあった。

 

 ……だが、その前にやっておかなければならない事がある。

 

「死者の宮殿?」

 

 デニムさんが僕の進言に対し、確認の意味で問い直してきた。僕は早速手に入れた情報をデニムさんを含めた主要メンバーに説明していく。

 

「はい。最近エクシター島の大爆発によって入口が明らかになった古代遺跡で、一説には暗黒神を祭った神殿にして聖地とも言われている場所です。古代の秘術や遺産が多い事から盗賊や冒険家が入り込む事が多く、それ故に死者も多数出ていますから、屍術に固執するニバスにしてみれば正に宝の山でしょう。……それに、ジュヌーンさんにとっては到底聞き逃せないであろう情報もありますし」

 

 この僕の言葉に対し、ガルガスタンの穏健派から解放軍に参加しているジュヌーンさんが僕に尋ねてきた。

 

「それは一体どういう事だね?」

 

 それに対する答えは、ジュヌーンさんが犯した罪の証とも言うべきものだった。

 

「実は、死者の迷宮の通り道でバスク村が再興されつつあるという情報を入手しました。おそらくは生き残りが少なからずいたのでしょう」

 

 ……バスク村。

 

 潜伏する不穏分子の討伐の為にジュヌーンさんが兵を率いて攻め入った村の名前であるが、実際は民族浄化を掲げる強硬派に騙され、村人を虐殺する形になってしまった経緯がある。その為、バスク村の再興という情報はジュヌーンさんにとって余りにも重い意味がある。

 

「……デニム君」

 

 ジュヌーンさんの呼びかけに対し、デニムさんは決断した。

 

「バクラムや暗黒騎士団が秘術や遺産を求めて兵を派遣している可能性もある。だとしたら、僕達もそこに向かうべきだ。彼等より先に僕達が秘術や遺産を抑えてしまおう」

 

 こうして死者の迷宮に向かう事になり、その途中でバスク村の生き残りであったオクシオーヌ(確認したら僕と同い年だった)を仲間に加え、死者の迷宮ではまずラドラム(正体とその本性を知っている身としては、さん付けなんて絶対したくない)が解放軍に参加した。そして、地下三階の隠し扉から更に進んだその先で、レオナールさんとザエボスの遺体に屍術を施していたニバスを見つけた。クレシダさんとニバスの因縁に決着をつける為、多数の屍人を率いるニバスとの戦いが始まった。

 

 生者と屍人が繰り広げる乱戦の中、愛する人の死を汚されたアロセールさんの必殺の矢が仇敵となったニバスの胸を貫く。

 

「こ、ここまで……ですか……。し、しかたない……」

 

 ニバスは死者の指輪を使って不死者の王であるリッチへと転生するつもりだ。しかし、そうはさせない。

 

「テレポート!」

 

 この瞬間を狙っていた僕は、すぐさまテレポートを唱えてニバスの懐に入り込む。

 

「砕け散れ!」

 

 そして、ニバスがその手に持っていた死者の指輪を目掛けて自ら編み出した魂や精神世界面への直接攻撃、ダイレクト・アタックをゾーラブレードで叩き込む。模倣とはいえ太陽神の力と共に内包している魔力を直接攻撃された事で、流石に耐え切れなかったのだろう。ニバスが持っていた死者の指輪は、跡形もなく砕け散った。

 

「なっ! バ、バカな……これは、冥府の王、デムンザの力が……込められた、過去の……遺物。 そ、そう易々とは、破壊……されない、筈、なのに……」

 

 死に際の痙攣に合わせて驚愕に体を震えるニバスを前に、僕はまず死者の指輪の存在を知っていた事を明かした。

 

「……死者の指輪。知恵深く魔力高き者が所持した状態で死んだ時、その者を不死者の王であるリッチへ転生させるという古代邪神信仰が生み出した狂気の魔導具。古代文明、特に冥府の王デムンザとその信仰に関する文献を紐解けば、割とすぐに出て来る有名な話だ」

 

 そして、死者の指輪から想定されるニバスの行動とそれに基づく僕の目的もここで明かす。

 

「そんな死者の指輪にお前が手を出さない筈がないと判断して、死に際に使用する為に指輪を取り出す瞬間を狙っていたんだ。不老不死に拘り、何よりも死を恐れるお前からあらゆる希望を奪い去ることができる、この瞬間を。……クレシダさんの家族とその婚約者、そしてレオナールさんを始めとする多くの死者達を弄んだ、その報いを与える為に」

 

 因果応報。この場での行動の全ては、この時の為に。

 

「そ、そンな……刹那の、しゅ、瞬間の為、だけに、この戦闘では……あえて、に、逃げ……回って、いたと……いう、のですか……」

 

 この戦いにおいて僕が一貫して取り続けた行動の意味を理解したニバスの表情からは、迫り来る死への絶望しか感じ取れなかった。そして、僕はニバスに対して全ての終焉を告げる。

 

「命という名の責任から目を背け、生と死から逃げ続けたお前の妄執(ゆめ)はここで終わりだ。さぁ不老不死というありもしない妄想(ゆめ)から覚めて、迫り来る死という名の現実(いま)を受け入れろ。命から、家族から、全てから逃げ続けた唯の臆病者」

 

 しかし、最期の時を迎え始めたニバスには、僕の言葉はもはや届いていないだろう。

 

「わ、私の、夢。人類の、夢。ふ、不老、不死がぁ……!」

 

 こうして、屍術に誤った夢を抱いて幻想を追い続けたニバス・オブデロードはその生涯を閉じた。僕はゾーラブレードを鞘に収めながら、彼に訣別の言葉を送る。

 

「ニバス・オブデロード。命を散々弄んだお前の事は、たった二秒で忘れてやる。……歴史の闇に消え失せろ」

 

 己の欲の為に安らかに眠る死者を弄ぶ者に、歴史にその名を残す価値など絶対にない。

 この世界に来て以降、生と死が行き交う最前線に立って命のやり取りを重ねてきた僕は、本気でそう思っていた。

 

 

 

Interlude

 

 まだ解放軍がウォルスタ解放軍だった頃から雇われている腕利きの傭兵ザパンは、一誠がニバスの望みを断ち切る一部始終を見て、身が凍える様な思いをしていた。

 

「怖ぇな、オイ。腕っ節こそ滅法立つが、まだまだアマちゃんなヒヨッコ坊主だと思っていたけどよ。まさかこんなエゲツナイ戦い方ができたなんてな」

 

 一方、大国ゼノビアからこのヴァレリアに訪れていた白騎士(ホワイトナイト)ミルディンもまた今しがた目の当たりにした一誠の冷酷かつ狡猾な戦い方を悪魔の如しと評していた。

 

「どうやら、イッセイ君が持っていたのは神の頭脳だけではなかった様ですね。冷酷かつ狡猾に、そして完膚なきまでに敵を殲滅する。正に悪魔の如き智謀の冴えすら持っていたとは」

 

 ゼノビアでの同僚の言葉を聞いた、有翼人でも珍しいヴァルタンという種族であるカノープスは一誠が自分達の敵に回った時の事を仮想し、寒気を感じていた。

 

「神の頭脳と悪魔の智謀を持つ男って訳か。そんなイッセイが、もし俺達の敵に回っていたら。……正直言って、生きた心地がしねぇな」

 

 そして、古都ライムの攻略以降に解放軍に参加したハボリムの真実を知り、敵方の暗黒騎士団から離反したオズマは少しだけ安堵する事になった。

 

「私は、もう少しでこの子の真の恐ろしさをその身で味わう事になっていたのか。この島でハボリムと再会してその真実を知る事ができたのは、本当に天の采配だったのかもしれないな」

 

 歴戦の勇士達が一誠が仕掛けた智謀戦に対して評価している頃、一誠に最も近しいデニムとヴァイスは全く別の事を語り合っていた。

 

「この場は完全にアイツの独壇場だな。しかも決め台詞のオンパレードだったような気がするぜ」

 

 そのようなヴァイスの軽口に、デニムもまた軽口で応える。……なお、年下の一誠に想いを寄せている少女の事にも言及していた。

 

「お前の夢はここで終わりだ。さぁ夢から覚めて、今を受け入れろ。……それこそ子供向けの英雄譚にでも出てきそうだね。しかも凄くキマっているし。お陰で、唯でさえイッセイに好意を持っていたクレシダのイッセイを見る目が完全に変わっちゃっているよ」

 

 そのデニムの言葉に、ヴァイスが溜息交じりで心境を吐露していた。

 

「イッセイも大変だな……」

 

 ……今、この瞬間。この場にいたのは解放軍の指導者と最高幹部ではなく、ただ弟分を巡る恋模様に想いを馳せる思春期の少年達だった。

 

Interlude end

 

 

 

 その後も死者の迷宮の探索を続けたものの、ガーディアンを始めとする魔獣達が何故か僕に懐いた為にあっさりと四風神器を始めとする遺産の数々を手に入れてしまい、更に最奥部である地下百階において死者の迷宮の主といえるブラックモスと戦って勝利し、ディバインドラゴンの魂が封じられているという死者の迷宮最大の財宝、ファイアクレストをも手に入れてしまった。

 ……その戦いにおいてブラックモスと一騎討ちで戦って打ち破ったのが僕だった為、デニムさんからは僕がファイアクレストを所持する様に言われてしまい、少々困ってしまった。

 

 これで後顧の憂いは絶たれ、足場固めも完了した。次はいよいよ、覇王の忘れ形見であるカチュアさんの救出を目的としたバーニシア城攻略戦だ。正念場を迎えた解放軍の士気は、ただ天井知らずに高まっていった。

 




いかがだったでしょうか?

ここで一言言っておきます。

ゼテギネア編に甘さなんて物は期待しないでください。

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