赤き覇を超えて   作:h995

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2018.12.23 修正


第十二話 恋する少女の本気とは

Side:紫藤イリナ

 

 イッセーくんがソーナの眷属である生徒会の皆に強化プランを提案していき、ソーナの強化プランについては説明を省略して残りはあと一人という所になって、その当事者である僧侶(ビショップ)の草下さんがいきなりその場を走り去ってしまった。彼女の尋常ではない様子を見て取ったイッセーくんがすぐに追いかけようとしたけど、その前に私に任せる様に言い含めてイッセーくんをその場に押し留めた。走り去る直前に見た彼女の表情を見た時、あくまで直観なんだけど「今の草下さんはイッセーくんに会わせられない」と思ったからだ。そして、蹲って泣き崩れる今の草下さんの姿を見れば、この直感が正しかったのは一目瞭然だった。私はその姿を見て、無性に腹が立った。理由は、解っている。

 

「……後を追おうとしたイッセーくんを止めたの、やっぱり正解だったみたいね。こんな媚を売る様な姿、イッセーくんにはとても見せられないもの」

 

 こんなに辛辣な言葉が自然と口から飛び出してしまうのも。

 

「ねぇ、草下さん。貴女、イッセーくんの何になりたいの?」

 

 弱り切っているにも関わらず、その意志を問い詰める様な事を仕出かしてしまうのも。

 

「ソーナには悪いけど、貴女の答え次第ではここで貴女の心を折らせてもらうわ」

 

 ……場合によっては、彼女を潰す事すら厭わない事も、全ては彼女の今の姿がイッセーくんに依存していた以前の私そのものだったから。

 一方、草下さんは蹲ったまま私の方を向くと一瞬だけビクッと体を震わせたけど、その後はキッと私を睨みつけた。そして、私にキツイ感じの声色で詰問してくる。

 

「……会長の眷属悪魔である私にそんな事ができる権限なんて、天界に属している貴女にあるの?」

 

 草下さんはそう言ってきたけど、私はある種の確信を持って彼女に言い放った。

 

「少なくとも、貴女みたいに甘ったれた女をイッセーくんに近づけさせない様にする事はできると思うわ。その辺りを説明すれば、ソーナも解ってくれると思うし」

 

 すると、草下さんが私の方に向き直りながら立ち上がり、私の言葉に対して不信感を露わにして問い詰めてくる。

 

「……ずっと不思議に思っていたけど、貴女はなぜ会長とそんなに親しいの? はっきり言って、純血悪魔の会長と天使の突然変異である貴女は、けして相容れない敵同士の筈よ?」

 

 ……まぁ、何も知らなければそう思うのも無理はないか。

 

 私は草下さんの不信感に納得しつつ、ソーナとの関係がどういったモノなのかを説明する。

 

「簡単に言えば、ソーナとは同じ想いを共有する盟友なのよ。それこそ、まだ私が人間だった時に私が寿命を迎えた後のイッセーくんの事を託す事ができるくらいのね。だから、私はソーナを信用も信頼もしているわ。それで寝首を掻かれるなら、ただ私の見る目がなかっただけね」

 

 ……そう。本来なら「悪」にして「魔」という存在にも関わらず、ソーナはその心に光を宿していた。そして、イッセーくんが背負い続けてきたものの全てを知り、幻滅するどころか愛情を更に深めたからこそ、ソーナはゾーラドラゴンとレイヴェルトに認められたのだ。だから、私は自分の命を預けられるくらいにソーナを信用してるし、信頼もしている。

 

「……(ずる)い」

 

 でも、草下さんからは全く違う様に見えているらしかった。

 

「狡いわよ、そんなの! いくら幼馴染だからって、自分だけが一君の事を理解しているみたいな事を言って! それじゃ、最近会ったばかりで一君を好きになった人には一君の側にいる資格がないとでも言うつもり!」

 

 草下さんはヒステリックな声で私に食ってかかってきた。でも、私にそんなつもりは毛頭ない。

 

「そうじゃないわ! 本当の意味でイッセーくんと一緒にいたいなら、ただ縋り付くだけじゃ駄目だって言ってるのよ!」

 

 ただ、以前の私と同じでは駄目だと、そう言いたいだけだった。

 

「……縋り付く?」

 

 私の指摘を受けて呆気に取られた草下さんに対し、私は更に追及していく。

 

「私が声を掛ける前、貴女は何を思っていたの? ……それが答えになるわ」

 

 私がそう問い掛けた時、草下さんは狼狽した。……あの時、確かに草下さんはイッセーくんに縋り付こうとしていた。それを今、はっきりと自覚したのだろう。それでも、草下さんは言い訳がましい言葉で繕おうとする。

 

「で、でも、会長達とは違って、私は特別なものなんて何もない。だから……」

 

「だから、優しいイッセーくんのお情けを待っているの? 弱い姿を見せれば、イッセーくんが振り向いてくれるから」

 

 でも、私は草下さんの言葉を遮って、言葉の刃で一刀両断した。

 

「そんな事! そんな事なんて、考えてなんか……」

 

 草下さんは最初こそ勢い込んで反論しようとしたけど、次第に声が小さくなっていき、やがて顔を俯かせた挙句に再び膝を付いて蹲ってしまった。私の言った事が、自分自身でも今まで気付いていなかった本心だったからだと思う。

 ……草下さんの一連の反応を見る限り、どうも自分と自分が抱いているモノの立脚点を見失っている気がする。だから、私は草下さんにイッセーくんを好きになった切っ掛けについて尋ねてみた。

 

「ところで、どうしてイッセーくんなの? イッセーくんにベタ惚れな私が言うのも正直変な話だけど、イッセーくんより木場君の方がずっとカッコ良いと思うんだけど」

 

 ……イッセーくんはきっと苦笑いで済ましてくれるだろうけど、間違っても私が言っていい事じゃなかったわ。言ってしまってからそう気付いたけど、一度口にした言葉を引っ込める事はできない。草下さんがこの事を黙ってくれる事を祈るしかなかった。

 一方、私の問い掛けに反応した草下さんがゆっくりと顔を上げて、少しずつ自分の気持ちを言葉にし始めた。

 

「……確かに、紫藤さんの言う通りだと思う。実際、二年生になるまでは木場君に夢中だったわ。でも、それは恋と呼べる様なモノじゃなかった。ただ熱に浮かされた様に木場君の事を「木場きゅん」なんて呼んだり、周りと一緒になってキャーキャー騒いだりしていただけ。その時の私は、ただの「木場きゅん」ファンだったのよ」

 

 ……確かに、普通の女子高生なら爽やかイケメンの木場君に目移りするのは当然よね。

 

 私は自分もまた女子高生である事を完全に棚上げする様な事を思ってしまった。そして、話は本題へと入っていく。つまり、イッセーくんを好きになった経緯へと。

 

「でも、追い詰められてやむを得ずとはいえ一君が私達の仲間になってくれて、私達を信じて心からの笑顔を見せてくれた時、私の胸が暖かくなった。その後、家に帰って、その時に感じたものがどんなものか考えて、一君の笑顔を思い浮かべる度にそうなる事に気付いた時に解ったの。これが、本当の恋なんだって。……その時から、ずっと一君だけを見てた」

 

 言ってみれば、イッセーくんの笑顔から溢れ出た心に一目惚れした訳か。そして、それからはずっとイッセーくんの事だけを見ていたと。……既視感(デジャヴ)なんてものじゃなかった。

 五歳の時にイッセーくんを危うく殺しかけ、その罪の重さに心が潰されそうになっていたのを被害者であるイッセーくんからの優しい言葉で救われたのが、全ての始まり。そんな私にとって、明らかに身に覚えがある事だった。

 

「だから、気付けたのかもしれない。私達の仲間になって、……ううん、たぶん人間を止めてから、一君がずっと苦しんでいた事に。一君は、ただ強くてカッコいいだけじゃなかった。私達と同じ様に何かに悩み、苦しむ弱さもあった。でも、私はそんな弱さを持った一君に幻滅するどころか、逆に私が支えてあげたいって、そう思えたの」

 

 ここまで聞いた時点で、私にとってはもう他人事ではなくなっていた。その意味合いは、話が進むにつれて更に増していく。

 

「でも、私じゃ助けにならないと思って、結局何もする事ができなくて、ただ一君の事を見ているだけだったわ。……いいえ。私には、ただ見ている事しかできなかったのよ。それが凄く悔しくて、情けなくて、でもどうしてもあと一歩が踏み出せなくて、そんな自分が嫌いになりそうだった」

 

 悩み苦しんでいるイッセーくんを助けられる力がなく、ただ見ている事しかできなかった草下さん。

 一番大事な時にイッセーくんを助ける事ができず、一時は永遠の別離すら覚悟するしかなかった私。

 ……本当に、私達は似た者同士だった。

 

「一君が貴女と付き合う事になったのは、そんな時。……私は後悔したわ。たとえフラれたっていい、一君にちゃんと想いを伝えれば良かったって」

 

 だから、この後に続く言葉も容易に想像できた。……私だって、イッセーくんから人間をやめた経緯を聞いた後で真っ先に考えたのが正にそれだったから。

 

「だから、決心したのよ。もし一君が上級悪魔として独立したら、せめて一君の側で一君の力になれる様に会長にお願いして、交換(トレード)で一君の眷属にしてもらおうって」

 

 ……ただ、私と違ったのは。

 

「ただ、私と同じ僧侶であるレイヴェル様とアルジェントさんが私と同じ事を考えているのは誰が見ても明らかだったから、二人に負けない様に頑張ってきたけど、二人と違って特別なものが何もない私じゃその可能性が殆どなくて。会長や貴女が扱える()(どう)(りき)の話が出た時、特別なものが本当に何もないのは私だけだって事を嫌でも理解して、それでもう一君に手が届かなくなる、その背中がもう見えなくなると思ったら、凄く怖くなって……」

 

 偶々レイヴェルトという特別な何かを手に入れていた私に対して、草下さんは何も手にする事ができなかった。ただ、その一点だけだった。そうして、全てを語り終えた草下さんは再び頭を下げて蹲ってしまった。

 でも、気付いているのかな? 今や負け犬と言っても過言じゃないくらいに情けない姿を晒し、出てくる言葉も自虐や弱音ばかりだけど。……地面に置かれたその手は、しっかりと握り締められている事に。だから、私はあえて辛辣な言葉を投げ掛ける。

 

「イッセーくんは、そんな貴女の事をきっと嫌いはしないでしょうけど、同時にただ「守るべき対象」としてしか見てくれないわ。別の言い方をすれば役立たず、……じゃないわね。むしろ邪魔になるから足手纏いね。ひょっとしたら、貴女のせいでイッセーくんが死んでしまうかもしれないわ」

 

 私の「足手纏い」と「そのせいでイッセーくんが死ぬかもしれない」という発言に、草下さんは面白いくらいに反応した。

 

「私が、一君の足手纏い? そのせいで、一君が死んじゃうかもしれない? ……嫌! 一君の足手纏いなんて、死んでも嫌!」

 

 そして反芻した言葉を、草下さんは自ら拒絶した。そこで、私は草下さんに一つの決断を迫る。

 

「えぇ、その通りよ。だから、草下さんには悪いけど、イッセーくんの事は諦めてほしいの。貴女だって、自分のせいでイッセーくんが死ぬのは嫌よね? だったら、愛する人の為にあえて身を退くのも、一つの愛の形よ。……解ってくれるわよね?」

 

 ……あえて暴言という名の狂風をぶつける事で、燻ぶっているモノを激しく煽り立てる為に。そして、その効果は覿面だった。

 

「……嫌」

 

 草下さんは俯いていた顔を上げて私の方を見ると、はっきりと拒絶した。

 

「嫌よ、そんなの! 人に言われて「はい、その通りです」って諦められる程、私は物解りが良くないし、一君への想いもそんなに安っぽいものじゃないわ!」

 

 消える間際でただ燻ぶっていただけだったモノが、炎となって燃え立ち始めた。だから、今度は罵倒という名のガソリンをその炎に注ぎ込む。

 

「だったら、イッセーくんに甘えないで、自分の足で立って歩いたらどうなの! イッセーくんは今、聖魔和合なんて主さえもなさろうとはしなかった事に挑戦しようとしている! そんなイッセーくんに、縋り付いてお情けを待っているだけの足手纏いなんていい迷惑なのよ! 解ったら、黙ってそこで這い蹲っていなさい! それならまだ役に立たないだけで、イッセーくんの邪魔にならずに済むわ!」

 

 私が罵倒したその瞬間、草下さんの目に劫火と思えるほどの激しい闘志が宿った。そして、彼女は勢い良く立ち上がる。

 

「よくも言いたい放題言ってくれたわね! いいわよ! だったら、ここで宣言するわ! 幼馴染とか、主とか、特別なものとか、そんなの関係ない! 私は、一君が好き! だから、ずっと一君の側にいて、ずっと一君を支えていくの! この想いは、この想いだけは、けして誰にも負けない! アルジェントさんやゼノヴィアさん、リアス様、レイヴェル様、会長、それに紫藤さん、貴女にだって! だって、世界で一番一君を愛しているのは、私なんだから!」

 

 そんな草下さんの吼える様な啖呵を聞いた私は、もう笑うしかなかった。

 

「アハハハ……」

 

 もし同じ立場にいたら、私でも全く同じ事を言いそうだったから。でも、完全に頭に血が上っている草下さんはそれを嘲笑と受け取ったみたい。

 

「何がそんなに可笑しいの!」

 

 ……少なくともイッセーくんには絶対に見せられない、正に鬼の形相で私に怒りをぶつけてくる。どうやら思いっきり誤解させてしまった様なので、私は草下さんに素直に謝った。

 

「ゴメンなさい、草下さん。違うの。けして草下さんの言葉や決意が可笑しいから、笑ったんじゃないの。ただ、私が草下さんの立場でもきっと全く同じ事を言ってたんだろうなって。そう思ったら、急に可笑しくなっちゃって」

 

 笑顔でそんな事を言った私を見て、草下さんは先程の鬼気迫る表情から打って変わって呆気に取られた様な表情になった。この好機を逃す訳にはいかなかったので、私は自分の感じた事を草下さんに伝えていく。

 

「でも、お陰で草下さんの本音を聞くことができたわ。それで、解った事があるの。草下さんは、本当に私にそっくりなんだって。イッセーくんの心に惹かれた事とか、イッセーくんの欠点や弱さを知って、幻滅するどころか余計に愛おしく思える様になった事とか。……それに、もうどうしようもないくらいにイッセーくんが大好きだって事も」

 

 それで、私に謀られた事を悟った草下さんはそのまま拗ねてしまった。

 

「……狡いわ、紫藤さん。私を散々煽っておいて、そんな顔でそんな事言われたら、もう何も言えなくなっちゃったじゃない」

 

 どうやら、草下さんの誤解は解けたみたいだった。ただ勘違いして欲しくないので、私はけして嘘は言っていなかった事を改めて草下さんに伝える。

 

「確かに私は本音を引き出す為に、草下さんを散々煽ったのは事実よ。でも、私が口にした言葉にけして嘘はなかったわ。前人未到の難題に挑むイッセーくんに足手纏いはいらないっていう、私の思いもね」

 

 ……そして、イッセーくんが本当はどういう人なのかも。

 

「それに、草下さんはまだ知らないけど、イッセーくんは凄く重いものを既に背負ってるの。草下さんから見れば、イッセーくんはそれこそ何でもできる天才で失敗なんて絶対しない様に思えるかもしれないけど、実際は何度も手痛い失敗をしてるし、助けたくても力不足で手が届かなかったり、手を出さない方がずっとマシだったりなんて経験もいっぱいしてる。……結局ね、イッセーくんはただ私達よりもずっと多くの、そして濃密な経験を幾つも重ねて、少しでも次に生かそう、繰り返さないようにしようって、一生懸命頑張っているだけなのよ」

 

 そう。ただ、普通より少しだけ我慢強くて、その分だけ多く頑張る事ができる「人」。そんなイッセーくんだから、私はずっと一緒に生きていきたいのだ。……二人で、お互いの手を取り合いながら。

 

「だから、ソーナやレイヴェルさんには既に言ってあるけど、草下さんにもお願いするわ。ただイッセーくんに手を引かれるままには、けしてならないで。明らかに間違っているって思ったら、たとえイッセーくんの手でも突っぱねてほしいし、逆にイッセーくんの手を引いて正しい方向へと連れて行くくらいになってくれたら、イッセーくんも喜んでくれると思うの」

 

 そうした私の「お願い」を聞いた草下さんの瞳に闘志とはまた違う、けれどもそれ以上に力強い炎が灯った。

 

「……解ったわ、紫藤さん。私、もう一君に甘えるだけの女でいたくない。自分の足でしっかり立って、一君をしっかりと支えられる女になってみせる。だから、その暁には私と貴女のどっちが一君の隣に立つに相応しいか、勝負よ?」

 

 ……あぁ、もう。結局、強力なライバルを増やしちゃった。

 

 自分のお人好し具合に自嘲気味の笑みを浮かべつつ、草下さんの宣戦布告をしっかりと受け取る。

 

「えぇ。その勝負、受けて立つわ。草下さん。……ただ、ソーナやレイヴェルさんには既に伝えてあるけど、イッセーくんの隣を譲る気なんて私はこれっぽっちもないから」

 

 そうして挑発交じりで返答すると、草下さんは少しだけ意外な事を言い出した。

 

「憐耶よ。これからはそう呼んで。恋の最大のライバルから他人行儀で呼ばれたくないもの」

 

 ……何だか、色々と突き抜けちゃった様な気がする。

 

 内心「やり過ぎた」と冷や汗を流しつつも、私も名前で呼ぶ様に草下さん、いいえ憐耶に伝えた。そして、イッセーくん達の待つ駒王学園へ戻る様に憐耶を促す。

 

「それじゃ、私もイリナでいいわ。……憐耶、そろそろ学校に戻りましょ。イッセーくん、私達が戻ってくるのを首を長くして待ってるわ」

 

 私の言葉を聞いた憐耶は、言葉では「ちょっと」なんて言っているけど、実際にはかなり嬉しそうな笑顔を浮かべて返事した。

 

「えぇ。解ったわ、イリナ。……自分勝手に逃げ出しておきながらこんな事言うのは不謹慎だって、私も解ってはいるんだけど、一君が私を待っていてくれるのはちょっと嬉しいかも」

 

 今泣いた烏が何とやら、か。随分と現金なものね、と私は思った。

 

 

 

 こうして、私は落ち着きを取り戻した憐耶を伴って駒王学園へと戻っていったんだけど、その途中で憐耶とは色々と話をした。ただ、レイヴェルトと共に私自身の想いも託していたソーナの時と違って、今回はお互いに自分自身の事を教え合ったり、悪魔祓い(エクソシスト)として生活していた事から一般常識が少々疎くなっていた為、色々と穴埋めしてもらっていたはやてちゃんでも追いつき切れない女子高生の流行りを教えてもらったりと、恋のライバルとしてより女友達としての会話の方が多かった。……尤も、それとなくイッセーくんの好みの音楽とか料理とかを聞き出そうとする辺り、戦略家タイプだというソーナに従う眷属らしい所もあったけど。

 そうして、ふと思った。戦略家として優れているというソーナが、果たして本当に何も取り得がない普通の女子高生を眷属にするのかなって。もし私の想像通りだとすれば、グレモリー眷属に異色な逸材ばかりが集まっているから霞んでしまっているだけで、退魔の家系の出身であるという副会長や巡さんはもちろん、一般家庭の出である由良さんや仁村さん、そして憐耶も実は相当に高いポテンシャルを秘めている筈だ。そう考えると、憐耶は「特別なものなんて何もない」なんて言って思い悩む必要はないんじゃないかなって思う。

 その辺りを憐耶に伝えてみると、憐耶は何を言っているのか解らない様なキョトンとした表情を見せた。その可能性については、全く考えていなかったみたいだ。自分の事を解っている様で解っていない辺り、変な所でイッセーくんに似ていた。……割とイッセーくんと感性が近い可能性がある憐耶は、結構強力な穴馬(ダークホース)になるのかもしれない。私はレイヴェルさんの時と同様、密かに警戒レベルを上げる事にした。

 ……ところで、イッセーくん。憐耶の強化プランって、一体どんな感じにしたのかな? 何故か知らないけど、唯でさえ突き抜けちゃった感が強い憐耶が更にとんでもない事になりそうな気がするんだけど。

 

Side end

 




いかがだったでしょうか?

……本気の恋する少女は天下無敵。

今話を端的にまとめると、これでほぼ網羅できそうです。

では、また次の話でお会いしましょう。

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