赤き覇を超えて   作:h995

26 / 125
何とか今日中に仕立て上げられたので、投稿します。

使い魔契約のプロローグ回です。

また、今回の話からオリジナルキャラである武藤瑞貴が本格的に参戦します。

ご都合主義の塊といえる独自の解釈と設定があり、人によっては受け入れられない可能性があるのでご注意ください。

追記
2018.11.17 修正


第八話 水氷の聖剣使い

 アーシアがグレモリー眷属に加わり、礼司さんと孤児院との関係を断ち切ってから、早一週間。

 アーシアのチラシ配りの下積みが終わり、小猫ちゃんや朱乃さんの付き添いで契約をこなせる様になった。そしてその日の契約活動を始める前に、リアス部長から提案があった。

 

「私の使い魔ですか?」

 

 アーシアがリアス部長に問い返している。

 

「えぇ。悪魔は自分に仕える使い魔を持っている物なの。使い魔は雑用や変わり身、偵察などで活用できるから、悪魔にとってとても有用なのよ。それでアーシアも契約をこなせる様になってきたし、そろそろかなって思ったのよ」

 

 確かにそうだろう。しかもアーシアの場合、自身の戦闘能力が皆無だ。護衛という意味でも、使い魔は特に重要になるだろう。

 

「……あの、皆さんはどんな使い魔を持っているんですか?」

 

 アーシアは皆が持っている使い魔について尋ねて来た。すると、皆は自分の使い魔を呼び出して来た。リアス部長は蝙蝠、朱乃さんは小鬼、木場は小鳥、小猫ちゃんは白猫だった。それを見たアーシアは僕が何も呼び出していない事に気が付いたのだろう、僕の事について言及してきた。

 

「イッセーさんは使い魔を持っていないんですか?」

 

 それを聞いた皆は苦笑いを浮かべている。……まぁ、それも当然だろう。

 

「イッセーはいいのよ。正直言って、反則にも程があるから」

 

 代表してリアス部長が説明するも、アーシアは納得がいかない様だ。

 

「どういう事ですか?」

 

 アーシアが尋ねた所で、部室のドアがノックされた。

 

「リアス、私です。入りますよ」

 

 そう言って入って来たのは、駒王学園高等部生徒会ことシトリー眷属だった。しかし、入って来たシトリー眷属の中にある人物を見出した時、僕は思わず声を荒げてしまった。

 

「瑞貴! 何故、お前がそこにいる!」

 

 一学年上で先輩である瑞貴に対する僕の余りの反応に、当人である僕と瑞貴、そしておそらく瑞貴から全てを聞かされているであろうソーナ会長の三人以外は驚きを隠せないでいた。……いや、木場だけは瑞貴の姿を見た時点で驚きを露わにしていたので、別の意味で驚いている様だ。そして、場の動揺が収まらない内に、ソーナ会長が瑞貴の紹介を始めた。

 

「本人の言葉通り、一誠君とは顔見知りの様ですが、他の方もいますので紹介致しましょう。昨日、私の新たな眷属となった、武藤瑞貴君です。彼もまた学園の有名人なので、同学年であるリアスと朱乃は特に存じ上げているでしょう。なお、彼の駒は騎士(ナイト)です。では、武藤君。グレモリー眷属の皆さんにご挨拶を」

 

「この度、支取蒼那生徒会長ことソーナ・シトリー様の騎士となった、武藤瑞貴です。宜しくお願いします」

 

 ソーナ会長に促される形で瑞貴が初対面での挨拶をするが、内容は非常に簡潔な物だった。気配の変化で薄々感づいてはいたが、やはり瑞貴は悪魔となっていたのだ。

 

 ……しかし、どうしても理由が解らない。

 

 だから、僕は思わず瑞貴への問い掛けを立て続けに口に出してしまっていた。

 

「何故だ、瑞貴。何故、お前までこちらに来てしまったんだ! 礼司さんはそれを了解したのか! 孤児院に残された薫君とカノンちゃんは、一体どうするつもりなんだ!」

 

 僕の激しい剣幕に、今度はソーナ会長も含めて戸惑いの色を見せているが、瑞貴は涼しい顔をして受け流していた。そして、涼しげな表情をそのままに、瑞貴はその答えを口にし始めた。

 

「こちらに来た理由としては幾つかあるし、支取会長は全てをご存じだけど、流石にここで全ての理由を言う事はできないかな? それに、義父さんは了解してくれたよ。「動くに動けない自分の代わりに一誠君を頼む」。そう言ってね。後は、この場で言う事のできる理由としては」

 

 そう言って視線を僕から切ると、木場の方へと変えていった。

 

「……遠目には君が一誠と一緒に入学してきた時点から見守っていたんだけど、こうして面と向かうのは四年ぶりだからね。やはり久しぶりというべきかな? どうやらあの後、追手から逃れて生き延びる事ができたみたいだね。君に未来を託した同士達も、今の君を見てきっと喜んでいると思うよ」

 

 その言葉で、僕は全てを理解した。木場もまた、あの忌まわしき聖剣計画の犠牲者だったのだ。一方、瑞貴から親しげに話しかけられた木場は、戸惑いのままに瑞貴に疑問をぶつけていた。

 

「……僕の事を解っていたのなら、どうして。どうして今まで!」

 

 納得と歓喜、それに驚愕と戸惑いで混乱して感情的となった木場の質問に対して、瑞貴は落ち着いて返答していた。

 

「今までは信仰は個人の意思によるという教義の正教会に所属しているとはいえ、義父さんが運営している孤児院で共に生き延びた年下の同士二人と一緒にお世話になっていたからね。流石に悪魔となった君と接触するのは君の立場上不味いと思って、遠慮していたんだ。……でも、もはやそんな些細な事を言っていられる状況ではなくなってしまったからね」

 

 そう言うと、瑞貴は視線を再び僕の方に向けた。

 

「どういう事なのか、教えて頂いても?」

 

 瑞貴の視線に何かを感じ取ったのだろう、木場が改めて問い掛けるも瑞貴は時と場所を考えて、後に改めてという事にした。

 

「それについては、また後でね。あの時の辛苦を共にした者達だけで話をしたいから」

 

「……解りました。では後に改めて。それと、他の二人にも逢っても良いですか?」

 

 その提案を納得して受け入れた木場は、薫君とカノンちゃんに会いたい旨を瑞貴に伝えると、瑞貴は二つ返事で快諾し、面会の場を用意する事を木場に伝えた。

 

「後で義父さんに連絡を入れて、外へ連れ出してもらう事にするよ。そこでさっきの話と合わせて、とくと語り合う事にしよう。流石に歴とした神父のいる教会の敷地内に、悪魔である僕達が入る訳にはいかないだろう? 因みに、その二人と僕は義父さんに引き取られて同じ姓を持つ兄弟になったんだ。今では何を差し置いても護るべき、大切な「家族」だよ。この想いは、悪魔となった事で孤児院を出る事になっても変わる事は無いさ」

 

 悪魔となった事で逢う事すら困難になるにも関わらず、薫君とカノンちゃんに変わらない愛情を抱き続ける瑞貴を見た木場は、何処か安堵した様な表情を浮かべて頷く。

 

「……確かに、その通りですね」

 

 瑞貴と木場による一連のやり取りでようやく皆が落ち着きを取り戻した事で、僕はソーナ会長達がここにやってきた意味を考えてみた。

 

 ……そう言えば、ソーナ会長も新人の匙に使い魔を持たせる事を考えていた。そこで、僕に使い魔となる幻想種を選ぶ為のアドバイザーを務める様に言われて、スケジュールが合えば問題ないと答えていた。だとすると、今回のオカ研訪問は瑞貴の顔通しと合わせて、それを直に顔を合わせる形で連絡しに来た訳か。不味いな、報告が遅れた形になってしまった。

 

「部長さん、この方達は?」

 

 事情を理解していないアーシアはリアス部長に確認を取っている。

 

「一言で言えば、イッセーのもう一人のご主人様とその眷属達よ。ソーナ、わざわざここまで来た用件を聞きましょうか? まさか、新しい眷属の顔通しの為だけにここに来た訳ではないでしょう?」

 

 リアス部長はソーナ会長に用件を尋ねている。

 

「リアス、武藤君のことについては後ほど。実は今回、サジの使い魔を探しに行こうと思い、その際に一誠君に同行してもらうことにしたのです。一誠君からはスケジュールが合えば問題ないという事でした。リアス、当日には一誠君を連れて行くけど構いませんね?」

 

「イッセー、私は聞いていないわよ?」

 

 自分に話が通っていない事に、リアス部長は怒っているようだ。僕はリアス部長に謝罪するしかなかった。

 

「リアス部長のお話が終わってから報告するつもりでした。流石に主の言葉を遮って報告する訳にもいきませんでしたので。ただ、報告が遅れたのは事実です。申し訳ありませんでした」

 

 それを聞いたソーナ会長は、バツの悪げな表情を浮かべてしまった。

 

「どうやら、私達が早く来過ぎた様ですね。それに、まずは私からリアスに話を通すべきでした。一誠君、貴方に非はありません。詫びるのは、むしろ私の方です」

 

 しかし、それは違う。責められるべきは僕だった。

 

「いえ、ソーナ会長から指示を受けた時点で、僕がリアス部長に連絡を入れるべきでした。申し訳ありません。僕の不手際です」

 

「いえ、ですから……」

 

 ソーナ会長が反論しようとしたところで、リアス部長が待ったをかけた。

 

「こういう時に、共有の眷属であることの問題点が出て来るわね。イッセーは普段こそグレモリー眷属として活動しているけど、本当はシトリー眷属としてソーナの命に従っても全くおかしくないのよね。……ソーナ。この際だから、今後のイッセーのスケジュールは貴女と私で管理しましょう。その方が今回の様な問題が出なくて済むわ」

 

「そうですね。私も一誠君にしなくてもいい失態をさせたくありませんから」

 

 こうして、僕のスケジュールは今後リアス部長とソーナ会長が管理する事になった。

 

「あの、横から済みません。イッセーさんって使い魔を持っていないみたいですけど、問題はないんですか?」

 

 アーシアが訊きそびれた事を改めて質問してきた。

 

「リアス、まだ説明していなかったのですか?」

 

「これからしようとした時に貴女達が来たのよ、ソーナ」

 

 ソーナ会長とリアス部長が顔を見合わせている。

 

「いいわ。イッセー、実演をお願い。百聞は一見に如かずよ」

 

「解りました」

 

 リアス部長の命によって、僕は召喚魔法を発動する。

 

「我が声に応え、ここに出でよ。紅玉の獣、カーバンクル」

 

 そして、空中に展開した魔方陣から可愛い鳴き声と共に飛び出して来たのは、額にルビーが埋め込まれた翠色の小さな獣だった。

 

「キュクー!」

 

 その可愛い容姿にハートを鷲掴みにされたらしい。何人か、明らかに眼の色が変わっていた。

 

「おいで、カー君」

 

 僕の声に応えたカー君は素早く僕の肩まで駆け上がり、親愛の情を示す頬擦りをして来る。

 

「えっ? あの、部長さん?」

 

 アーシアは疑問符が幾つも浮かんでいる様な戸惑いの表情を見せる。リアス部長は溜息を吐きながら、アーシアに説明する。

 

「イッセーはね、幻想種と召喚契約を交わせる召喚師(サモナー)でもあるの。だから、イッセーには使い魔が不要なのよ。……本当に反則だわ」

 

 その後、話し合いによって、今回は両眷属合同で使い魔となる幻想種がいるという迷いの森に行く事になった。僕がいる以上、下手に分かれていくよりもその方が良いだろうという事になったからだ。そして、ソーナ会長が持ち掛けた話については二人だけで話したいという事で、今日の部活動は早めに切り上げられる事になった。

 

 

 

Side:リアス・グレモリー

 

 ソーナから二人で武藤君についての話がしたいという事だったので、私は生徒会室に来ていた。そして、そこで武藤君がソーナの眷属になった理由について聞かされた。

 

「……それが、武藤君がソーナの眷属になった理由なの?」

 

 私は思わずソーナに問い返したけど、ソーナの答えは当然ながらYesだった。

 

「えぇ。今思えば、一誠君の転生の一部始終を目にしておきながら、どうして思い至らなかったのか。……逸脱者(デヴィエーター)。世界中のどの存在にも当てはまらない為に、あらゆる存在から命を狙われるという可能性に。私は私自身の余りの頭の悪さに、怒りと絶望を覚えてしまいそうです」

 

 ソーナは自分の思慮不足に対して、明らかに憤慨していた。

 

「それを言ったら、私も同罪ね。私達、そんな事で本当にイッセーを守り切れるのかしら?」

 

 私は思わず弱音を口に出してしまったが、それこそが私達に対する武藤君の不安材料だった。

 

「武藤君はそれを不安視したからこそ、私の元を訪れて一誠君と同じ主を持つ眷属悪魔となる事を選択したのです。更にそれをより確実にする為の手段として、「兵藤一誠が上級悪魔として独立した時には、交換(トレード)の形で自分を兵藤一誠の眷属とする」という一文を、私の眷属になる際の契約条件に加えるように求めて来ました。そして、私はそれを了承しました」

 

 ソーナが武藤君を眷属とする際の条件内容に、私は呆れるしかなかった。

 

「……よく受け入れられたわね、そんな契約条件。時が来れば、即座にイッセーに鞍替えするっていうことじゃない。武藤君の気持ちは解るけど、私なら多分突っぱねているわよ?」

 

 しかし、その呆れはソーナの次の発言で完全に消し飛んだ。

 

「後に私の元を離れる事が確実である点を差し引いても、なお見返りが大き過ぎましたから。何せ、彼はあの「水氷の聖剣使い」ですよ?」

 

「何ですって! 「水氷の聖剣使い」と言えば、今や剣を扱う悪魔祓い(エクソシスト)としては現役最強の一人とすら言われているのよ! そんな強者が、あの武藤君だと言うの!」

 

 私は思わずソーナに問い返してしまったが、ソーナの答えは私の想像を遥かに超えていた。

 

「実はその契約条件を提示された際、それに相応しい力量があるのか確認する為の模擬戦を行ったのです。……結果は想像以上でした。一誠君を除いたシトリー眷属が総掛かりであったのにも関わらず、私達の方が一分持ったかどうかでしたから。しかも私達が怪我をしない様に明らかに手加減した上で、です。もし本気の殺し合いとなれば、おそらくは数秒で皆殺しにされていたでしょう」

 

「なっ!」

 

 もはや絶句するしかなかった私に、ソーナは武藤君の強さと本来なら為し得ていたであろうことを語っていく。

 

「彼の剣士としての図抜けた力量と私以上に水や氷を操る「氷紋剣」という技術、更に水を創り出すのみである水の施し(アクア・クリエイト)の亜種で聖水を創り出す浄水成聖(アクア・コンセクレート)で膨大な量の最高純度の聖水を戦闘中でも絶えず生成し続ける事で自身の戦闘力を跳ね上げる桁外れの精神力。そして、一誠君が元々強力な「聖」の力を持っている事を合わせて考えれば、私達を皆殺しにした上で一誠君を悪魔の力から解放する方が遥かに容易だったことでしょう。……先に私が言った、逸脱者という一誠君が抱えてしまった最大級の爆弾さえなければ」

 

 ソーナにここまで言わせた以上、私はもう認めるしかなかった。

 

「……私達、本当に無力ね。確かにそこまで力量差があるのなら、さっきの言は撤回するわ。多分私でも武藤君の条件を呑んでいるわね。イッセーをより確実に守る為に」

 

 武藤瑞貴という少年が持つ、強さと信念を。

 

「確かに、私の(キング)としての器が一誠君に及ばない事を突き付けられた様で、正直面白くはありません。ですが、一誠君にその様な重荷を背負わせてしまったのは、紛れもなく私なのです。その重荷を背負う一誠君に肩を貸して共に歩もうとする彼の意志を無碍にすることなど、私にはできませんでした。……それに、本人達にはまだ伝えていない、というよりも伝えられないのですが、実は武藤君の本当の主は、一誠君なのです」

 

 ……ソーナが口にした「絶対にあり得ない」事に、私は口調も強く問い質す。

 

「待ちなさい! それは一体どういうことなの!」

 

 私の疑問に対して、ソーナはおそらく自分でも何度も考察を重ねた上での答えを返してきた。

 

「おそらく、一誠君を転生させた時に私とリアス、そして一誠君がお互いの力を融合させて転生の術式を発動させた事で、私達の間にある種の繋がりが形成されたのでしょう。そして本来、私程度の力では眷属化などできない筈の武藤君を眷属化できたのは、おそらく武藤君に使用した騎士の駒が私と繋がっていた一誠君の方を武藤君の主としての基準とした為でしょう。つまり、武藤君は自分に使われた騎士の駒と王である私を通して、一誠君の騎士として転生した事になります。その意味では、私はあくまで一誠君と武藤君の仲介者であり、正に眷属契約の条文通りの関係と言えるでしょう」

 

 ソーナはここまで話し終えると、自分でも何を言っているのか解らないといった様子で髪を掻き毟り始める。

 

「……この様な事が起こり得るなんて私も到底思えないし、これ以上深く考えると気が狂いそうだけど、そうでも考えないとそれこそ辻褄が合わないのよ!」

 

 最後は丁寧な言葉使いを取り繕う余裕すら消し飛び、殆ど絶叫に近い声でソーナは今回の一件の説明を終えた。ここ最近、立て続けに発生する「あり得ない」出来事に対して、私は頭を抱え込みたくなる衝動を抑えながらも、ただ受け入れることしかできなかった。

 ……ただ、それと同時に私の眷属の一人が抱える心の闇を照らす光明が見えた様な気もした。

 

「悪魔の駒の基本ルールを超えられる程に強い繋がりがあるのなら、確かにイッセーにとって、武藤君は正に最良の騎士といえるわね。そう思う事にしましょう。これ以上考えるのは、お互いの精神の為にも良くないわ。……それに、そういう事情があるのなら、武藤君は祐斗とも関係が深い事になるのね。ひょっとすると、イッセーと武藤君なら祐斗の心の闇を晴らせるかもしれないわ」

 

「……そうですね」

 

 そんな私の言葉に、疲れ切った様子のソーナはただ肯定を返しただけだった。

 

Side end

 

 

 

 そして、使い魔を探しに行く当日。因みに、瑞貴は今回の使い魔探しを見送って次の機会に、ということになった。

 

「しかし、遅いな。もうすぐ約束の時間だぜ?」

 

 匙は予約した使い魔の専門家が待ち合わせの場所にまだ現れない事に、苛立ちを隠せないでいた。

 

「でも、驚いたね。さっきここに来る前にイッセー君が召喚したウンディーネには。アレが本来のウンディーネだったんだね」

 

 木場がこの待ち合わせ場所に来る前に僕が召喚する事になったウンディーネについて言及した。

 

「あぁ、アレな。俺にしてみれば一誠が呼んだ方が普通だよ。……というか何だよ、鍛え上げられた肉体による肉弾戦での縄張り争いは。しかもアレの方が一般常識って、どうなっているんだ? 見るに見かねた一誠が幻界のウンディーネを召喚して仲裁していなかったら、本当にトラウマになっていたぜ」

 

 そう、環境破壊が進んだ事で精霊が住む事のできる程の泉や湖が減少した事で縄張り争いが熾烈となり、その結果として、人間界に住まうウンディーネは屈強な肉体を持ち合わせなければ生きていけなくなっていたのだ。……ただ、精霊魔法を扱える上に召喚師でもある僕は、幻想種の住まう「幻界」に在住するウンディーネを召喚できる。その為、余りにも酷い縄張り争いだったのと匙が酷くショックを受けていたのを懸念した僕はウンディーネを召喚して仲裁させた。なお、ウンディーネの本領は当然ながら水の支配使役。肉弾戦しかできない人間界のウンディーネに勝ち目はなかった。そして、大人しく共存する事になったのだ。

 

「……しかし何だな。会長の事で変に意地を張っている俺が馬鹿みたいだぜ」

 

 匙が何か呟いて来たようなので、僕は尋ねてみた。

 

「何か言ったか、匙?」

 

 しかし、匙は取り合うこと無く別の事を言い出した。

 

「別に何でもねぇよ。それより一誠。俺だけ名前を呼んでいるのも変な話だ。これからは俺の事を元士郎と呼べよ」

 

 何かを振り払った様なさっぱりとした表情から放たれた言葉を聞いて、僕はやっと匙、いや元士郎に仲間として認められた様な気がした。

 

「……解ったよ、元士郎。お前の相棒に出会えると良いな」

 

 すると、元士郎は男臭い笑みを浮かべてこう返して来た。

 

「あぁ。頼りにしているぜ、一誠」

 

 こうやって少しずつ繋がりが広がっていく事を、僕はとても嬉しく思っていた。

 




いかがだったでしょうか?

……瑞貴の眷属化のメカニズムについては、正直言って自分でもかなり無茶をしたと思います。

ただ、剣術面においては一誠をも凌駕する彼をソーナの手持ちの駒で眷属化するのは、幾らなんでも無理だと判断した故の今回の処置です。
なお、ソーナが瑞貴を眷属化するにはリアスが原作一誠に使用した様に兵士八個、あるいは女王か戦車二個が必要になるというのが私の見解です。

そして、リアスはまだ気づいていませんが、実は今回ソーナに起こった事はリアスにも起こり得ます。

正に、知らぬが仏というやつです。

尤も、今回の考察で苦悩した分、ソーナには後で凄くいい目を見てもらう予定にはしていますが。

では、次の話でお会いしましょう。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。