赤き覇を超えて   作:h995

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レイナーレとの決着回です。

……しかし、余り派手なものは期待しないでください。

追記
2018.11.17 修正


第六話 堕ちた天使と堕ちた聖女の違いとは

 リアス部長から堕天使達の討伐の命を受けて、旧校舎から徒歩で移動して三十分 僕達は堕天使が拠点としている教会の敷地のギリギリ外にいた。なお、既に位置は知っていたので転移するのは簡単だったが、それでは事前の位置が解ってしまいかねないので、徒歩で移動すると同時に作戦も構築していた。

 

「今回の作戦を説明するよ」

 

 僕は二人に敵の現状とこれからどう動くのかを説明し始める。

 

霊脈(レイライン)から探知して、教会の構造を粗方スキャンした。堕天使のリーダー格であるレイナーレという女堕天使は、現在地下の礼拝堂にいる。入口は地上の礼拝堂にある祭壇の下だ。最終的には彼女を討てば作戦終了となる。また、こちらの様子を窺っていた他の三名の堕天使については、既にリアス部長と朱乃さんが動いてくれている。だから後は、教会の地上と地下にそれぞれ残っている「はぐれ」の悪魔祓い(エクソシスト)達だけど、地下にいる分については先制攻撃で僕が叩く。取り零した分と地上にいる分を二人に任せる事になるけど、問題はないかな?」

 

 僕が二人の意志を確認すると、木場はそのまま承諾する一方、小猫ちゃんから一つ質問を受けた。

 

「僕は特にないね。小猫ちゃんは?」

 

「……一つだけ。先制攻撃はどんな風にするんですか?」

 

 小猫ちゃんの質問に対する答えはこうだ。

 

「魔導師の前に拠点と繋いだ霊脈を無防備に晒す事がどれだけ危険な事か、小猫ちゃんは知っているかな?」

 

 僕はそう言うと、霊脈が走っている地面の上に立つ。

 

「フンッ!」

 

 そして、()(どう)(りき)を無詠唱で霊脈に直接叩き込んだ。……それから、数分後。

 

「……よし、これで大半は無力化できたな。二人とも、突入するよ」

 

 先制攻撃が終わり、霊脈から中の状況を確認した僕は突入する旨を二人に伝えるが、反応が返ってない。

 

「木場? 小猫ちゃん?」

 

 二人の方を向くと、二人して表情が引き攣っていた。

 

「……まさか霊脈を利用して攻撃魔術を打ち込み、拠点への経路を通して強化した状態で中にいた敵を狙い撃ちするなんてね。イッセー君。僕達、本当に必要だったのかい?」

 

「イッセー先輩、済みません。私、正直言ってイッセー先輩の事を疑っていました。でも、今ならイッセー先輩が本物の赤龍帝だって信じられます」

 

 二人はこの様に言ってきた。……良く考えてみれば、二人の前で戦ったのはこれが初めてだ。それを思うと、二人が僕の事を半信半疑であっても不思議ではない。これは自分の力をちゃんと見せておかなかった僕の落ち度だろう。僕は認識を修正する必要性を言葉にしていた。

 

「この分だと、朱乃さんも少し疑っていそうだな。一回、木場と模擬戦でもしてみせた方が良かったかな?」

 

「それは別の機会にお願いするよ。今は残った敵を叩く事から考えよう」

 

 木場がそう言って先を促して来たので、僕もそれに同意した。

 

「そうだな。それでは、突入開始!」

 

 そして、僕達は全速力で敵の拠点へと突入した。まずは地上の礼拝堂に突入すると、そこで待っていたのはつい先程遭遇した時に蹴り飛ばして拘束していた筈の変態悪魔祓いだった。

 

「アッハハ~! フリード・セルゼン、復・活! リベンジだぜ、このクソ悪魔!」

 

 地上にいる悪魔祓いは二人に任せる事にしたのだが、地上にいたのがコイツだけなので、僕がさっさと終わらせる事にした。……コイツに付き合って遊ぶつもりなど、毛頭ないのだから。

 

「邪魔だ、失せろ」

 

 だから、僕は縮地法で後ろを取った上で外に向かって蹴り飛ばした。

 

「グウェェェェェ! やな、感じぃぃぃ!」

 

 すると、随分と愉快な事を口にしながら、変態悪魔祓いは吹き飛んでいった。因みに、蹴ったのは食らう直前にこちらを向いたので、またも鳩尾。さっきより威力は上なので確実に教会の敷地からは飛び出しているだろうし、数日間は何も受け付けないだろう。

 

「無駄に時間を使ってしまったな、急ごう。……フン!」

 

 僕は祭壇を蹴り飛ばすと、地下への入り口を露わにした事で先へと歩みを進める。だから、二人がどんな会話を交わしているか、僕には聞こえなかった。

 

「さっきの、凄いね。瞬間的な速さなら、騎士(ナイト)の僕より上だよ。しかも神器(セイクリッド・ギア)の強化なしで」

 

「蹴りの威力も戦車(ルーク)である私以上ですけど、それ以上に言動が普段と全然違います。アレじゃ殆ど別人です」

 

「きっと日常の時と戦闘の時の意識の切り替えが、凄く上手いんだろうね。だからこそ、今まで僕達に全く気付かれなかったんだ」

 

「……そうですね」

 

 

 

Side:リアス・グレモリー

 

 イッセーからの提言を容れて廃教会に拠点を構える堕天使に関する調査を朱乃に命じた結果、上層部の許可のない独断の隠密行動であることが判明した。そして、朱乃から齎された情報からイッセーが考察した結果、この堕天使の動きはアーシア・アルジェントというシスターから神器を奪う為であり、イッセーを狙ったのはここに訪れる為の名目も兼ねていたのだという。彼の頭の回転の速さについては、ここ一週間の付き合いで既に理解している。そして、そんな彼がこう言ったのだ。舐められている、と。

 

 悪魔を統べる魔王の妹であり、紅髪(べにがみ)滅殺姫(ルイン・プリンセス)と呼ばれている、このリアス・グレモリーが。

 

 ……だったら、その代償を命で賄ってもらう。

 

 そう思っていた矢先に、イッセーの「奏上」だった。……白状しよう。あの瞬間、私は彼の姿に魅入られてしまった。

 

 ……彼は、実は何処かの名家の出身ではないのか?

 

 そう考えてしまうほどに、彼の振る舞いには気高さが感じられた。しばらくして我に返ってから、イッセーの奏上を容れて、堕天使達の討伐に動き出した。

 

 イッセーが祐斗と小猫を伴い本拠であろう廃教会に攻撃を仕掛けている間に、私達はこちらを窺っていた堕天使三名を討伐する事で万難を排してから、アーシア・アルジェントを伴って廃教会に向かった。

 私達が到着した時点で廃教会の扉は既に壊されていて、廃教会の中に入ってみると既に戦場が変わっているのか、誰もいなかった。ただ、祭壇があったと思わしき場所には地下への階段があり、祭壇自体は吹き飛んでいた。どうやら、戦況は順調に推移しているようだった。そこで様子を探る意味で、朱乃に使い魔の小鬼で偵察するように命じた。小鬼が地下に辿り着いた時点で感覚共有をすると、そこには礼拝堂があった。最奥には実際に人一人を拘束できる大きさの十字架を備えた祭壇があり、そこには顔色をすっかり蒼くした女堕天使がいた。

 ……顔に見覚えがある。イッセーを狙って偽りの告白をした堕天使、確かレイナーレという名前だったはずだ。

 既に悪魔祓いは全員床に倒れ伏していて、残っているのはこのレイナーレだけだった。ただ、気になるのは倒れ伏している悪魔祓いの様子だ。何人かには祐斗の手による物か切り傷もあるが、全員が少なからず火傷を負っている。やったのは、おそらくイッセーだろう。そんな中、レイナーレと対峙しているイッセーが彼女に現実を突き付ける。

 

「レイナーレだったか、これで残っているのはお前だけだ。アーシアの神器を狙ったお前達の悪企みも、これで終わりだな」

 

 ……イッセーの言葉遣いが、かなり変わっていた。

 

「……何なのよ」

 

 すると、レイナーレがヒステリックに大声を挙げる。……小物臭が尋常じゃなかった。

 

「一体何なのよ! 神器摘出用の儀式の魔方陣から突然床を何かが駆け抜けたかと思えば、そこから無数の光弾が射出されて、私を除いた殆どの悪魔祓いが戦闘不能になるなんて!」

 

 ……何と言うか、イッセーは随分と派手にやったみたいだった。そして、彼女の言葉を受けたイッセーは、かなり辛辣な言葉を彼女に叩きつける。

 

「魔導師の前に拠点と繋いだ霊脈を無防備に晒しておくから、こうなる。霊脈を通じて攻撃を仕掛けることなど、魔導師にとっては児戯のレベルだ。次からは気を付けるんだな。尤も、次など与えるつもりはないが」

 

 ……イッセー。それは断じて児戯なんてレベルじゃ済まない筈よ?

 

 ふと朱乃の方を見ると、朱乃は「あらあら、ウフフ」と言ってはいるけど、顔がかなり引き攣っていた。私と同じ事を考えているのは間違いなかった。

 

「何故、悪魔がシスターのアーシアを助けようとするのよ! 一体どういう関係よ!」

 

 イッセーに言葉で叩きのめされつつあったレイナーレは、ヒステリックなままにイッセーに問い詰める。それに対して、イッセーは律義に答えていった。

 

「最初は道を迷っている所を出会って、困っていたから手助けした。そうして、様々な巡り合わせの中で色々話をしている内に友達になった。そして、アーシアを踏み躙ろうとするお前達の独善的な企みを知った。だからリアス・グレモリー眷属が一騎として、またアーシアの友達としてここに来た。主と仲間、友達を傷つけようとする悪意を断ち切る為に」

 

 子鬼を通してその言葉を聞いていたアーシア・アルジェントは、また泣き顔になって両手で顔を押さえている。そしてイッセーさん、と繰り返し呟いている。……嬉しいでしょうね。私だってこんな事言われたら、たぶん嬉し泣きしてる筈。

 一方、言うべき事を言い終えたイッセーは左手に赤い籠手を纏った。

 

「あら、フリードの報告通りだったわね。それ、形は少し違うけど龍の手(トゥワイス・クリティカル)じゃない。上層部は貴方の神器に警戒していたみたいだけど、どうやら考え過ぎだったみたいね」

 

 レイナーレは発現した彼の神器を見て、見下したように言葉を放つ。その表情には、かすかな安堵が含まれていた。

 

 ……知らぬが仏って、本当なのね。

 

「ひょっとして、彼女は気付いていないのかい?」

 

 祐斗はすっかり呆れている。……確かにそうだろう。少しでも力を持っていれば、直ぐにでも理解できる。アレは明らかに別格だと。

 

「無様、ここに極まれり」

 

 小猫も毒舌を発揮する。確かに無様以外の何物でもないわ。そして、イッセーがレイナーレの希望を圧し折りにかかる。

 

「勘違いしている所を申し訳ないが、これは龍の手じゃない」

 

『多少の力さえ持っていれば、それこそ一目瞭然だろうに。大体、神器から発する波動の強さからして別格の筈なんだがな』

 

 驚いたのは、神器から発せられた声を聞いたレイナーレだ。

 

「なっ! 神器から声が!」

 

『驚いている所を申し訳ないが、自己紹介をさせてもらおうか? 嘗て神をも超えると謳われた二天龍の一角、赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)のドライグだ。せめてもの情けだ、冥土の土産に俺の名を持って行け』

 

 ドライグの自己紹介が地下の礼拝堂に響き渡る。

 

「そ、そんな。それじゃ、コイツは……」

 

 そして、やっと全てを理解したレイナーレはその表情を恐怖と絶望のものへと変えた。

 

「自己紹介をしようか、堕天使レイナーレ」

 

 イッセーは今度こそ自身の名を名乗り出した。

 

「駒王町の管理者、グレモリー家次期当主リアス・グレモリー様の眷属にして、シトリー家次期当主ソーナ・シトリー様の眷属が兵士(ポーン)。そして今代の赤龍帝、兵藤一誠だ」

 

 赤龍帝である事よりも私達の眷属であることを先に名乗ってくれた。それが、凄く嬉しい。

 

 私が嬉しさで体を震わせている中、イッセーは更に言葉を続ける。

 

「己の虚栄心を満たす為だけに、アーシアを踏み躙ろうとするのなら、お前の汚れ切った野望を僕がこの手で叩き潰す! ……天を背負う、赤龍帝の名に懸けて!」

 

 ……どうしてこう、イッセーの前口上は格好良く決まるのかしら?

 

Side end

 

 

 

「黙りなさい! そうよ、私にはまだ堕天使の仲間がいるのよ。間もなく此方にやって来る筈よ。そうしたら……!」

 

 レイナーレが最後の望みを援軍に託している様だが、その様な存在はいない。だから、僕はレイナーレに現実を教える。

 

「援軍は来ないぞ」

 

「何を言っているのかしら? 現に以前赤龍帝と戦った時の仲間はまだ」

 

 レイナーレは解っていなかった。何故、僕が挟み打ちになる危険があったのに、あえてここに攻め入ってきたのかを。……その様な危険など、既に取り除かれているからだ。

 

「その三名なら、我が君(マイ・ロード)達によって既に無へと帰っている」

 

 僕はレイナーレに希望などない事を突き付けた。

 

「そういう事よ」

 

 そして頃合いと見たのだろう、地上で様子を窺っていたリアス部長と朱乃さん、そしてアーシアが一緒に降りて来ていた。

 

「初めまして、というべきかしら? 私が今代の赤龍帝の主でもあるこの土地の管理者、リアス・グレモリーよ。さっきの堕天使の話だけど、確かにイッセーの言う通り、私自らの手で無に帰したわ。これがその証。同族である貴女になら、これ等の羽根が誰の物かは解るわね?」

 

 リアス部長は自己紹介の後にそう言うと、三枚の黒い羽根を取り出してレイナーレに見せた。宿っている力の波動が一枚ごとに違う上に、以前襲撃してきた堕天使の物と一致する。仙術の基礎を修めただけの僕でも解るのだ、同族のレイナーレなら解るだろう。

 

「で、でも! ドーナシーク達が死んだとしても、本隊から援軍が……」

 

 しかし、それでもレイナーレは希望を捨てずにいた。視野が狭いが故の諦めの悪さであるが、ここまで来ると呆れを通り越して清々しさすら感じられる。

 

「来る訳がないでしょ? ただでさえ、独断で行動を起こしているのだから。それに貴女達が請け負ったイッセーの抹殺指令も、イッセーが悪魔側についた事を通達したから、既に撤回されている筈よ。だから、貴女に助かる道なんて既になくなっているのよ」

 

 だが、その様なレイナーレの悪足掻きもリアス部長が一刀両断した。

 

「……私は、私は聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を手に入れて、至高となる堕天使よ! アザゼル様やシェムハザ様からご寵愛を頂くの! そして、今まで散々私を見下してきた者達を見返してやるのよ!」

 

 全ての望みが断たれた事で、レイナーレは心の平衡を失ったようだ。自身の妄想をただ口にしていく。……随分と、自分だけに都合の良い話だった。

 

「アーシア! 貴方の神器を私に寄こしなさい! そうすれば! そうすれば、私は!」

 

 彼女は光の槍を携えてリアス部長の後ろにいたアーシアの元へ突撃してきた。朱乃さんが迎撃しようとしたが、その前にレイナーレの突撃が止まった。

 

「拘束魔法、チェーンバインド。魔力の鎖で対象を拘束する魔法だ。僕とお前の力量差から言って、自力で解除するのはまず無理だろう」

 

 正確には、僕が止めた。締めはリアス部長が行った方がいいだろう。しかし、出番を奪われた格好になった朱乃さんは少し拗ねている様だ。

 

「正直言って、少し自信を無くしそうですわね。魔法や魔術の腕前が女王(クィーン)の私より上なんですから」

 

 ……流石にフォローを入れておかないと不味いだろう。そう思った僕は早速フォローの言葉を朱乃さんに伝える。

 

「師匠に恵まれただけですよ。朱乃さんなら、直ぐに僕を追い抜けますから」

 

 すると、朱乃さんは自身の指導を頼んで来た。

 

「あらあら。それでしたら、今度魔法の先生をお願いしようかしら?」

 

 しかし、指導については先約がいるので、それを朱乃さんに教える。

 

「……ソーナ会長達が先約ですよ?」

 

「では、後で私も参加しても良いか、確認を取っておきますわ」

 

 朱乃さんはそう言って、拗ね気味だった機嫌を直してくれた。そういったやり取りの後、リアス部長はその手に膨大な魔力を集めている。その性質はかなり特殊だった。

 

「……さて、レイナーレ。覚悟は良いかしら?」

 

 このリアス部長の特殊な魔力を見て、僕はロシウ老師が仰っていた事の意味を理解した。 

 

「ロシウ老師が仰っていたのは、こういう事だったのか。我が君の魔力はさしずめ「無」の属性と言ったところかな?」

 

 すると、僕の言葉に応える形で朱乃さんがリアス部長の力と二つ名を語っていく。

 

「イッセー君、あながち間違ってはいませんわ。我等の主であるリアス・グレモリーは「滅び」の魔力を扱う事ができます。その「滅び」の魔力と代々伝わる紅色の美しい髪から、「紅髪の滅殺姫」と呼ばれていますわ」

 

「あれ、そう言えばグレモリーは……。まぁ、後で確認すればいいか」

 

 それを聞いた僕には少々腑に落ちない所があったが、それは一先ず置いておこう。一方、滅びの魔力を目の当たりにしたレイナーレは死の恐怖に怯えて拘束から逃れようとするが、彼女の力では到底解けない。

 

「い、いや! 私はまだ死にたくない! まだアザゼル様やシェムハザ様から愛して頂いていない! それなのに!」

 

 そうして泣き叫びながらも愛に拘るレイナーレに、僕は真実を突き付ける。

 

「レイナーレ。愛は誰かに強請るものでも、誰かから恵んでもらうものでもない。ただ、見返りを求める事なく、与え続けるものだ。そうする事で、愛は与えられた人達を通して果てしなく広がっていき、やがては自分の元へと帰ってくる。アーシアはそれを正しく理解していた。だが、お前は余りにも間違え過ぎた。その差が、この末路だ」

 

 リアス部長も僕の言葉に同意した。

 

「イッセーの言う通りよ。貴女の愛は、余りに醜く歪んでいるわ」

 

 そして、遂にその時が来た。

 

「イッセー、貴方の言葉を借りるわね。……貴女の妄想(ゆめ)は、ここで終わりよ!」

 

 リアス部長のこの発言と共に、「滅び」の魔力弾がレイナーレに撃ち込まれた。レイナーレの肉体は完全に消え去り、黒い羽根が名残として飛び散る。

 

「さらばだ、愛を誤解した憐れな堕天使」

 

 僕は手向けの言葉をレイナーレに送った。こうして、堕天使達が引き起こした一連の事件は幕を下ろした。しかし、問題がない訳ではない。復命すると同時に再び「奏上」する為に跪いた。

 

「我が君。堕天使討伐の命、ここに達成しました。ですが、その前に一つ、ご確認させて頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「……何かしら?」

 

 リアス部長が訝しげにしているが、これだけは確認しておかなければならない。

 

「我が君が朱乃さんとアーシアを伴って行動している時から、我が君達の様子を窺っている悪魔がいる様ですが、何か心当たりは御座いませんか? 気配と魔力の波長から判断致しまして、我が君とそう変わらない位の力量を持った、おそらくは同年代の男性の純血悪魔だと思うのですが」

 

 僕の言葉を聞いて、リアス部長は唖然としている。これでリアス部長が手配した援軍という線が消えた。この分では、おそらく上級悪魔がリアス部長に断りも無く、この地に侵入しているのだろう。

 

「……気配が消えました。私に気付かれたことに驚いて、慌てて転移したのでしょう。どうやら我が君と朱乃さん、そしてアーシアの内の誰かを余り褒められぬ理由で狙っていた様です」

 

 ……どうやらアーシアに関しては、禍根が残ってしまったようだ。アーシアについてどうするのか、これから考えなければならないだろう。しかし、それは一先ず脇に置いてから、僕は跪いていたのを解いて立ち上がると部室に帰る様に皆を促した。

 

「さて。招かれざる客も帰りましたし、これからオカ研の部室に帰って、アーシアの今後についてゆっくりと考えましょうか?」

 

 そして、僕達は駒王学園へと帰っていった。

 




いかがだったでしょうか?

Q. 戦闘は?
A. 戦いとは、戦う前に勝つのが常道です。

因みに、レイナーレの口から語られた攻撃魔法の描写で解る人には解りますが、一誠が先制攻撃で放ったのは炎の魔動力であるエネルギーボルトです。
なお、祐斗と小猫からはただ単に魔力らしき力を霊脈に叩き込んだようにしか見えませんでした。

では、次の話でお会いしましょう。

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