現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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親父達の哀歌・アルブレヒト閣下頑張る

 オヤジ達の哀歌

 

 祖国に帰る空中船の中でツェルプストー辺境伯と差し向かいに座り、出された紅茶を飲む。

 

 そして一連の騒動について考える、レコンキスタの乱。

 

 ブリミル教の司教がおこした武力による反乱軍。

 蓋を開けてみれば、最後まで我が子の掌で踊っていた美乳派なとと言う戯言を錦の御旗に掲げていた男。

 最後は逃走中に捕まえた、理由は荷馬車に積んだ金貨が重過ぎて逃走の速度が遅かったからだ。

 金と権力に固執した小者、オリヴァー・クロムウェル……愚かで哀れな男だったな。

 

「実に間抜けな司教だったな。美乳派とほざいていたが、最後は金貨を捨て切れずに捕まるとはな」

 

 向かいに座っているツェルプストー辺境伯は吐き捨てる様に言う。

 

「確かにな……無理に乳に拘るから、浅はかさが際立つ。乳の偉大さを語れる漢なら、或いは苦戦したかもしれん」

 

 自身が貧乳教祖として、また幼女愛好家のトップに君臨する漢でも苦戦すると言うのか?

 

「苦戦?お前とお前の息子がか?」

 

 何やら眉間に皺を寄せながら語り出す。

 

「美乳派……

それは貧巨乳派としても認めなければならない意義が有るんだよ。バインバイン、ペタンペタン……それはそれで素晴らしい。

しかし、乳の大小に関わらす形や肌のきめ細かさ。

造形美や全体とのバランス等、語り出せば幾らでも支持を集める事が出来ると思わないか?

特に女性ならば、現状で一番美しく魅せる手立てを構築出来るのだ。息子と2人、目からウロコが落ちる思いだったよ……」

 

 なる程、確かに真にオッパイを愛する漢だったなら簡単には勝てなかったか。

 

「だから我らの新しい教義には盛り込んだよ。今までは信者の比率は圧倒的に男が多かった。

しかしツアイツと、この教訓をもとにエステなる美容に関する新たな試みを考えているのだ。

最初は貴族の子女らに試して、徐々に広げていく。女性向けの商売だな……」

 

 これは新しい商売だな。今までも美容に関する秘薬等は有ったが、画一的な物ではないし……効果が有れば、当事者は秘匿して広まらない。

 これに、アヤツのバストアッパー神話を組み込めば……ハルケギニア中の女性の美が底上げされるな。

 

「ウチも噛ませろよ。これからアルブレヒト閣下に報告に行くのだからな。助力はしてやる。お前達はこれからが大変だからな」

 

「当然だ。我々だけでは手が足りん。それにな、もっと大きな問題も有るんだよ」

 

 未だに眉間の皺は取れない……手に持ったカップを一気に煽り、息を吐く。

 

「最近になってツアイツが何処からか1人の女性を連れてきた。今はウチの諜報部隊で働いている。

中々どうして有能だ。一国の戦闘部隊の隊長が務まる位にな……

そして他国から来るスパイ達の捕縛率が上がった。結果的に我が領地に一番スパイを送っているのは……ロマリアだ」

 

 苦々しく吐き捨てる。

 

「なっロマリアのスパイだと?それはロマリア教皇直属の密偵団か?」

 

 ロマリアと言う国は代々諜報に力を入れている。異端を探し出し処罰する為に……後はサハラ砂漠で何やら捜索をしているらしいが。

 

「捕まえた奴を尋問、いや拷問かな。

その女はラウラと言って火のトライアングルだが、荒事に馴れている。拷問も大した物だったぞ。

そして聞き出せた事は、貧巨乳派とアイドルは教皇にとって、またブリミル教にとって都合が悪いとさ」

 

「つまりブリミル教と言うか現教皇はお前たち父子と、その嫁を排斥する気か?

ホモ教皇がトチ狂いやがって!しかしブリミル教はマズいな……どうするつもりだ?」

 

 宗教戦争など双方が疲弊するだけだし、異端審問など奴らが一方的に出来るのだ。

 

「ブリミル教と敵対と言うか、現教皇と敵対する事は事前に分かっていたさ。

201人分の男の娘用の衣装をタカってきた時からな。対策は講じているよ。問題はツアイツの立場だな。

ゲルマニアの一貴族の跡取りが、隣国の次期王になるかも知れないのだ。閣下の気持ちを考えれば、面白くはないだろう?」

 

 確かに家臣が他国の、それも最大国家の次期王となれば思う所も有るだろう……

 

「イザベラ姫が親書を届ける前に、我らは閣下と謁見せねばならぬ。どうする?

アルビオン王国の件は上手くいった。しかし、ガリアの件は何の予備知識も無いはずだ……」

 

 胃を押さえる2人。

 

「くっ……しかし悩んでも仕方ないだろう。腹を割って正直に話すしかあるまい。

閣下は疑り深いから無用な画策は返って反感を買うだろう」

 

 しかしアルビオン王家からは正式な国交に加え、かなりの優遇措置を得られた。

 アルブレヒト閣下の念願の始祖の血を帝室に入れる件については……

 

「なぁ?ウチの閣下がもしトリステイン王国との政治的な問題でアンリエッタ姫と婚姻を結びたいと言ったら……どうする?」

 

 凄く嫌な顔で聞いてくる。

 

「止めるのが家臣の務めだと思うな。しかし、その件については心配なかろう?ウェールズ皇太子との謁見を思い出せ。

彼はゲルマニアと婚姻外交を結んでも良いと言っていたな。条件は巨乳でお淑やかな美少女が良いと……

アルブレヒト閣下には、該当する娘が何人か居る。帝室に始祖の血を入れる事は可能だ。

ご自身の子供にと言われればアルビオン王国には薄い血ならば、王家に連なる娘が居るらしいな。

適齢期の娘が……これに掛けるしかあるまい」

 

「確かに成果はデカいな……これを材料に交渉するしかあるまいな」

 

「「全く面倒ばかり押し付けおって……」」

 

 此処には居ない息子に愚痴の一つも言いたくなる。悩みはしても、船は順調にヴィンドボナに向かっている……

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 昼夜を問わず急いだ為に割と早く着いてしまった……

 

「着いたな……」

 

「ああ、早かったな……」

 

 背中が煤けたオヤジが2人、閣下の居城を見上げている。

 ゲルマニアでも有力な貴族であり親アルブレヒト派である2人は、問題無く謁見を許された。

 勿論、援軍の報告と言う本来の目的が有るのだから取次がスムーズなのは当たり前だ。

 気持ちを落ち着けているウチにアルブレヒト閣下が謁見の間に入ってくる。

 

「ご苦労だったな!バカなブリミル教の司教の捕縛は我らゲルマニアの手柄か。連絡は既に入っているぞ」

 

 ご機嫌なアルブレヒト閣下を目の前に暗い表情のオヤジ達だった……

 

 

 

 

 忘れがちなアルブレヒト閣下頑張る!

 

 

 アルビオン王国で始まったブリミル教の司教がおこした武力反乱……

 少し前からアルビオン王国は、我が国に対して外交を持ちかけてきていた。

 内容は今までのブリミルの血を引くナンタラな高圧的な物でなく、対等な物だった……その後におこる反乱。

 直ぐさま対応したのが、ハーナウ一族だ。

 

 オリヴァー・クロムウェルは美乳派を錦の御旗とし反乱をおこした。

 それをあのオッパイ大好きな一族が黙っている訳が無かったのだ……至極普通にヤツは戦乱の中心に収まっていった。

 

 ツアイツ・フォン・ハーナウ……不思議な小僧だ。

 

 色事に関して言えば、精通して高々5年程度だろうにアヤツの紡ぎ出す萌えと言う世界観は凄い。

 私室に設えた特別の本棚に目をやる……豪華ガラス張り六段鍵付きの特注品だ。

 スクエアメイジの固定化を何重にも掛けた逸品。自分以外は決して触らせない特別な本棚。

 ヤツも律儀に男の浪漫本の最新刊を献上し続けている。

 

 しかも2部ずつ……

 

 後宮を持つ俺が、思わず感化されてしまう位に多岐に渡る性癖の嵐……

 ヤツは次々と他国の有力貴族と縁を結び、ハルケギニア全土に自身の趣味を広げていった。

 武力でゲルマニア一国を纏め上げきれぬ俺を嘲笑うかの様にエロで国の垣根を軽々とこえるとは……もはや完璧なオッパイ宗教だろう。

 

 しかもガリアの王女をアイドルに仕立て上げ、仕舞には口説き落としたとか……俺の信頼する密偵の報告でなければ笑い飛ばすところだ。

 しかもロマリアから警告が来ている。

 

 異端の疑い有り、か……ホモの貴様の方が余程異端だろうに。

 

 さてどうするか?アヤツをロマリアに引き渡す?バカな!何のメリットも無い。

 

 無駄にガリア・アルビオン・トリステインの反感を買うだけだ。

 もはやブリミルの直系でアヤツの影響を受けていない国家は無い……俺の打てる手立ては既にアヤツと、アヤツの紡ぎ出す世界に乗るしか無い。

 まぁ良いか……あの規格外な変態ツアイツのオヤジズが来るのだ。どんな言い訳をするかが楽しみだよ。

 

 今晩はどのシチュで夜を楽しむかを考えていると「閣下、ツェルプストー辺境伯及びハーナウ伯爵が謁見の間にて待機しております」侍従の報告が有った。

 

 さて、漸く来たか……では会いに行こうとするかな。色々な思惑、今後の展開を考えながら廊下を歩き謁見の間に向かう。

 

 部屋に入り2人を見てみれば……今にも死にそうな顔だな、アイツ等は。仕方ない。労いの声でも掛けてやるか……

 

「ご苦労だったな!バカなブリミル教の司教の捕縛は我らゲルマニアの手柄か。連絡は既に入っているぞ」

 

 取り敢えずは報告を聞こうか……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

「何だかご機嫌だな閣下は……」

 

「これからの話次第ではそうも言えないのだぞ」

 

 オヤジ2人、アイコンタクトで会話する。何時からだ?こんなスキルを身に付けたのは……

 

「アルブレヒト閣下には、ご機嫌麗しく……」

 

「社交辞令など良い!報告を聞こうか」

 

 くっ……仕方ないか……

 

「レコンキスタの乱。我らがアルビオン大陸に上陸した時点で、既に勝敗はついていました。

恐れながら、我が息子ツアイツがガリアの……イザベラ姫と、アレでして……その……」

 

 くっ、何と言えば良いのだ。懇意になっただと!

 

「アレとは何だ?お前の息子はイザベラ姫と結ばれるそうだな……信じられんな。ガリアの狂王ジョゼフが許すとも思えないのだが」

 

 既にご存知とは……流石は閣下と言う訳か。

 

「それにつきましては、イザベラ姫より直接お言葉を貰っております。正式にガリア王国として帝政ゲルマニアと外交を結び協議を進めると……」

 

 我ら2人が呑まれてしまったんだよ、あの姫に!

 

「くっくっく……良いわ。確かにツアイツはガリアのイザベラ姫の婿になるのだろう。

アヤツの功績はデカい。始祖の血を引いてないだけで見下していたヤツらを……対等な立場で外交を結ぶまでに軟化させた訳だ。

アルビオン王国とは正式に婚姻外交を結ぶぞ。ガリア王国も、イザベラ姫の配下が交渉に来るのだろう。

まぁ問題無いな、トリステイン王国は……どうでも良いな。

俺の2つの目標の内の一つであるゲルマニアの帝室に、始祖の血を入れる事が出来る。

このメリットはデカい。それと……そうだな、執務室に移動するぞ。余り公にしたくない話が有るのでな」

 

 そう言って、王座から立ち上がり自分の執務室へと行ってしまう。慌て追い掛ける……

 

 執務室に入ると、衛兵を扉の前に配置し「サイレントとロックをかけろ」そう言って自分は応接セットに座ってしまわれた。

 2人して魔法を重ね掛けをする……

 

「終わったら、まぁ座れ」

 

 先にソファーに座り、寛いでいる閣下の前に並んで座る。

 

「ロマリアの教皇から、こんな物が来たぞ」

 

 机に放り投げたのは……手紙か?恐る恐る手に取って読み始める……

 

「こっこれは……異端の疑い有り、か。脅しでしょうな」

 

「閣下に命令調で、この様な物を……これではまるで臣下に宛てた手紙ではないか!」

 

 ロマリアの教皇め……先ずは揺さぶりを掛けてきたか。

 

「閣下、これは……」

 

「相変わらず傲慢だな。俺を家臣扱いか……しかしアヤツがこれを予測してないとも思えないのだが?」

 

 何か面白そうな物を見ている様な表情なのだが……

 

「閣下。お察しの通りロマリアと言うか、現教皇及び神官達への対策は考えております」

 

 そう言って、対教皇対策を説明する。真剣に聞き入るアルブレヒト閣下……

 

「ふむ。

お前達親子の趣味を文化と産業に食い込ませる訳だな。そして正しきブリミル教を掲げるか……

確かにアルビオン王国は、反教皇の下地が出来ているか。ガリア王国はアイドルイザベラ姫が纏める。

なら我がゲルマニアはどうなのだ?ツアイツがガリアに付きっ切りは不平等だろう?

それともサムエル、貴様が我が国の漢達を纏めるのか?お前達の大好きなオッパイで」

 

 ニヤニヤと我らを見ておられるわ……

 

「恐れながら、閣下は我が息子をどうなさりたいのでしょうか?」

 

 話の流れでは、我がゲルマニアも対ロマリアな感じなのだが……

 

「貴様の息子の企みに俺も乗るぞ。これを機に始祖の血を帝室に入れ、ロマリアの力を削ぐ。

俺のもう一つの目的。オッパイ教でも何でも使って、ゲルマニアを統一するぞ!

ツアイツに目的が同じなら、こっちも手伝えと伝えろ。何もガリアでなければ出来ない事だけじゃなかろう?

ロマリアがウザいのは我らも同じだからな。良いな!ツアイツのガリア婿入りは認めてやる。ならば俺の為にも力を貸せ!」

 

 嫁の国に他の婚約者も連れ込んで、あはは・うふふ!の素敵なマスオさんハーレム付きライフを目論んでいたツアイツ。

 しかし自国のトップから、こっちの面倒も見ろと言われてしまった。しかし所属する国のトップが折衷案を提示したのだ!

 

 まだまだ楽はさせて貰えない……

 


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