現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版) 作:Amber bird
大団円「ツアイツ君のお気楽極楽転生ライフ」完結
ロマリア連合皇国……
始祖ブリミル降臨以来、6000年に渡りハルケギニアの宗教を独占してきた国。
しかし、変態ホモ野郎ヴィットーリオが教皇となってから衰退していった……同じ時期に、現代日本から転生した1人のオタク。
彼が自身の性癖で有るオッパイ大好きの為に、ホモを駆逐したからだ……
マザリーニ枢機卿を対抗馬とし、彼を修道女大好きの漢(変態)として持ち上げ、新しいブリミル教を興した。
最後まで違うと言い続けたマザリーニさんも、終いには諦めていた……
彼は聖職者として己を律していたので、修道女大好きなのは誤解だったのだ!
哀れマザリーニさん……
※しかし、その誤解のお陰で、人間関係は潤滑になったのだから良しとしよう。
帝政ゲルマニア・ガリア王国・アルビオン王国・トリステイン王国、そしてクルデンホルフ大公国を巻き込み、6000年の歴史を持つ宗教国家を打ち破ったのだ!
聖職者が国土を持ってしまった為に、権威あるブリミル教が権力も求めてしまった。
そして澱んで行ったのだ……彼はトリステイン王国のダングルテールに、新しいブリミル教総本山を造った。
そして光の国と言われていたロマリアを解体。ロマリア連合皇国は、地図上から名前を消した……
ブリミル教は、過去の栄光と権威を取り戻す為に苦労するだろう。
しかしハルケギニアの誰もが、マザリーニ枢機卿が次期教皇になるのを望んだ……此処まで教皇になるのを望まれた者は居ないだろう。
故に、誰もブリミル教の此からを心配していなかった……
心配なのは、宗教庁のトップとなった教皇マザリーニの趣味で有る修道女さん達の事だ。
彼は(誤解だが)修道女さんが大好物だと認知されている。しかし、手を出す事はイケない事だ!
マザリーニ聖歌隊を持つ彼が、何時暴走して彼女達に手を出すか……酒場で新生ブリミル教を祝う酔客達の興味は、専らコレだ!
賭事に迄発展した彼の性癖の暴走が、楽しみな民衆だった。
権威……難しいかも知れない。しかし、民衆や貴族にまで親しみやすい教皇となれたのだ。
何とかなるでしょう!
◇◇◇◇◇◇
荒廃した大地……
嘗てロマリアと呼ばれた大地に立つツアイツ。戦後処理の為に、何とか危険だからと騒ぐ周りを説得してやって来た。
見渡す限りの、極彩色のケバケバしい建物……そして周囲には、バラックが建ち並ぶ貧民層の建物。
此処まで宗教関係者と、一般信徒の格差が有るのか?
「光の国?コレが?アホらしい……」
予想以上に荒廃し、スラム街や貧民窟が乱立する宗教により澱んだ国。
「結局ヴィットーリオとジュリオ、そして男の娘聖歌隊は誰一人見つかりませんでしたね……何処へ逃げ出したのかな?」
独り言の様に呟く……
「逃げると言っても……ハルケギニアのどの国も、彼らを受け入れないでしょうね」
「周りは封鎖していた。だから、二百人以上が秘密裏に国外脱出は不可能なんだが……」
護衛に付いて来たジャネットと、同行したマザリーニ新教皇が応えてくれる。
ヴィットーリオは、虚無の担い手……そしてワールド・ドアが使える。最悪、別の世界へ逃げ出した可能性が有る。
201人の「男の娘」を従えるイケメンか……ソレは、ソレで嫌な感じがするんだ。
現代日本に行ってしまったら?敵ながら、有能だしカリスマも有るし……「男の娘」を受け入れる土壌が有る地域だったら、面倒臭い事になりそうだ。
「マザリーニ枢機卿……いえ、新教皇。先ずは、この国の立て直しですね。どうしますか?」
周りを見回して言う……何から手を付けるか分からないから。
「そうですな……先ずは貧しい人達の救済でしょう。施しでは、根本的な解決にはならない……
衣食住を何とかして、後は仕事ですな。大変だが、やりがいは有る……」
キリリとした表情で、中々のお言葉。
「マザリーニさんを素敵って慕う修道女が増えているのを知ってます?
やはり政治より宗教やってる方が、この鶏ガラなオッサンは輝くのですね。全く、こんなオヤジでも良いんですかね?」
ジャネットが毒を吐く……マザリーニさんがモテモテ?しかし、そこはスルーで……
「僕も、漢の浪漫本ファンクラブの売り上げの殆どを寄付します。復興に使って下さい」
「なっ?殆どですと!それは嬉しいが、ツアイツ殿が困るだろう?君が路頭に迷うと、大変なんだぞ?」
そんなに驚く事かな?
「今回のロマリア攻略……各国の負担は大変な額ですよね?
それに移民を受け入れてくれました……どの国も色々と大変なのに、ですよ。彼らが使ってくれた国家予算は膨大です。
だから、僕も微々たる物ですが寄付します。知ってますか?漢の浪漫本ファンクラブは営利団体……だから団体の維持運営費以外を寄付しますから」
「ツアイツ殿が、其処まで寄付をしてくれるなら……各国の同士達も、習うでしょうな。では、お願いします」
この惨状を見てしまえば、嫌だとは言えない。事前にガリアやゲルマニアに移民してくれた人々は……まだマシな人々だったんだ。
どうにもならない人々は、ロマリアに残されてしまったんだ……移民した人々の分まで、過酷な搾取が有っただろう。
「マザリーニ様……ダングルテールの総本山が完成したら。初めての結婚式は、僕達のをお願いしますね。
僕とイザベラ……
ルイズ・キュルケ・モンモランシー、それにテファとマチルダさん。全員で合同結婚式を執り行いたいと考えています」
物事にはケジメが必要だからね。延び延びになっていた結婚式をやろう!
「なっ、何ですと?モゲろや小僧!6対1で挙式だと!ふざけるな!結婚とは神聖な儀式なんだぞ。
それを一緒になど、聞いた事が無いわ!ああ?初夜は、まさか7Pか!」
首が、首を絞めないで下さい……興奮し過ぎですよ、マザリーニさん!
「エイッ!」
ジャネットが、脇腹に拳を撃ち込む……堪らずしゃがみ込むマザリーニさん。
ジャネット……もう少し、早く……
「ツアイツ様、私が入っていませんが?」
手を振って、それは無いとジェスチャーで伝える。酸素、早く酸素を取り込まないと……
「はぁはぁはぁはぁ……ジャネット、もう少し早く助けて……
落ち着けオッサン!別にブリミル教を冒涜してませんよ。
本来なら、最初にイザベラと……次はルイズ、キュルケと順番に考えてました。
しかし、僕らの結婚式を取り仕切ってくれるブリミル教の神官の方が居なかったし……
まぁ異端認定されてたし。もぅ待たせるのも可哀想だし、愛情に順番も無いんです。
貴族の習いには違反するかも知れない。しかし、そこはオッパイ教祖の僕ですから……」
大目に見て下さい。
「何処までも規格外なヤツめ……良いだろう!私自らが、結婚式を取り仕切ろう。しかし、覚えているが良い。
そこに、アンリエッタ姫とヴァリエールの売れ残りを加えてやるわ!」
中指を立てて言いやがった!
「なっ?何を言うんですか!アンタこそ、神聖な結婚式を冒涜しやがって!その三人は危険なんだぞ」
「はははははっ!だからだよ、リア充め。序でに、前教皇が認定した異端認定の件は、正式に撤回してやろう。だから諦めて貰おうか!」
「無理っ無理だって!イザベラ達が許す訳ないし……あっ逃げ出したな」
ハルケギニア全土を趣味友達と共に統一したツアイツ。新教皇として、ブリミル教を掌握したマザリーニ。
権力者と宗教家は共存が難しい。しかし、この2人なら何とかなるだろう。
40歳越えのオッサンと肉体年齢は15歳だが、精神年齢は同世代の2人……意外と馬が合うのかな?
◇◇◇◇◇◇
ハルケギニア全土で持ち切りの話題が有る。
巨乳派教祖して次期ガリア王、ツアイツ・フォン・ハーナウの合同結婚式についてだ……
「おい、聞いたか?噂では、始祖の血を引く王家の姫2人を同時に娶るらしいぞ?ガリアのイザベラ姫とトリステインのアンリエッタ姫だとか……」
「いや、俺が聞いたのはトリステイン王国の名家ヴァリエール公爵家三姉妹を同時に娶るって事だぞ!」
「いやいやいや……女神テファ様と義理の姉であるマチルダ様と同時に結婚するって話だろ?」
凄い内容の噂話が飛び交っている。
「どれもこれも有り得ないだろう?しかし、新教皇マザリーニ様が結婚式の準備を進めているのは確かだ。
詳細は未だ明らかにされてはいない。しかし布告は大々的にされた……でも合同結婚式なんて、聞いた事が無いぞ」
結婚とは神聖な物!
ブリミル教の神官の前で、永遠の愛を誓うのだ。それが1対複数なんて聞いた事が無い……
しかも、お相手がビッグネーム過ぎて笑い話にしかならない。普通なら信じない。
しかし普通じゃないのが、ツアイツ・フォン・ハーナウなのだ!
彼なら、何かトンでもない結婚式をやってくれそうだ。
「おい、みんな!詳細な布告が出だそ!何とツアイツ様は合同結婚式を本当にやるぞ」
「流石はオッパイ教祖!其処に痺れる、憧れるー!」
「皆が出来ない事を平気でやりやがる!チクショー、羨ましくてたまんねーぜ」
「7Pか……美女・美少女を侍らしやがって。くぅー何てお方なんだ!」
皆がツアイツの結婚式を祝福した。やっとオッパイ教祖も落ち着くんだな、と。しかし、この話を持ち込んだ男が爆弾発言をする。
「しかも10Pだ!
イザベラ様・アンリエッタ様・ルイズ様・エレオノール様・カトレア様・キュルケ様・モンモランシー様そしてテファ様とマチルダ様……新婦は9人だそうだ」
「「「「なっ何だってー!」」」」
各地で雄叫びが聞こえた……この布告を読んだ人々は明け方近くまで、その話で盛り上がったそうだ!
何もかも規格外な結婚式……しかしハルケギニア全土で祝福ムードだ!
ただ一カ所……不穏な空気を醸し出している場所が有った!
ガリア王国のツアイツの私室だ。
新郎ツアイツのみ、最後までイザベラ以下の嫁ズに説教されていた!しかも正座でだ。ちゃっかりメンバーに入ってる三人は何なんだ、と……
しかもジャネットが参戦!「どうして、私は駄目なんですか?」と。
北花壇騎士団ジャネット。他のメンバーより格下だが、何とか一緒に新婦になれた……
「ツアイツ様は約束なされました……波乱万丈な人生を約束すると!この合同結婚式に乱入以上な波乱万丈な人生は無いですよね?よね?」
約束は約束だ……そして+1名が追加された……
彼は初夜に10人切りを達成出来るのか?はたまた返り討ちに合うのか?
彼の幸せの過ぎる苦労は、始まったばかりだった!
「現代人のお気楽極楽転生ライフ・ツアイツ君のサクセスおっぱいストーリー!」
ここに二度目の完結とさせて頂きます。最後までお付き合い有難う御座いました!
オマケ……
「ツアイツ君、玉砕す!」
結婚式の翌日、ツアイツは疲労困憊だった。
絶望的な戦力差で挑んだ初夜……五回戦迄は完璧だった。
七回戦で刀折れ矢尽きた……八回戦は気力のみ。
九回戦で敗退……今まで戦い退けてきた相手が回復し、そして組織的に反攻してきた。
ツアイツは、なすがままの状態だ……
「ふーん……散々攻められたけど、こんな形なんだ」
「あらあら?意外と可愛いモノですわ……色も私の髪と同じ桃色なのね……」
「ツンツン……何かしら?ピクピクしてますわ」
「わぁ!近くで見たの初めてです」
「私達ばっかり攻められて……このイケない棒君に、お仕置きが必要かしら?」
「あら……賛成だわ!私達も旦那様に色々とシテあげたいですわね……」
「なっ何やってるんですか奥様方?たっ助けて下さいって!もう、アーッ……」
ツアイツは仕返しに散々観察され、色々悪戯されてしまった。
それでも彼は、生涯幸せだった……
性の伝道者・ハルケギニア最高の変態教祖は、生涯をオッパイ道に捧げ彼を慕う変態達が世界中にまみれた!
世は大変態時代を迎え、大いに栄えたのだった……
数々の漢の浪漫本やフィギュアを残した彼は、始祖ブリミルとならび人々に伝承されていった……
勢いとオッパイと変態達に支えられた、ツアイツ・フォン・ハーナウは80歳でその生涯を終える迄現役だったと記録されている……
此処に本当の完結です。
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先ずは、最後迄この変態おっぱい小説にお付き合い頂き、有難う御座いました。
オッパイやらホモやら……ギャグ路線ですが、下ネタを含むしょうもない素人小説も遂に二度目の完結を迎えられました。
レコン・キスタ攻略後、不遇で救済したかったイザベラ姫・ワルドさん・シェフィールドお姉ちゃんが幸せになってハッピーエンド……
一度、それで終わらすつもりでした。
しかし皆様からの感想にロマリアは?ハルケギニア統一しないの?ベアトリスちゃんは放置?アンリエッタ姫の扱いが酷くない?等々、色々な感想を頂きました。
一度完結した物語の続きを読みたいとの希望は、多分作者的に凄い嬉しい事なんだと思います。
対ロマリア編……
前作の最後では、時間を掛けて国力を弱体化させる案を考えていました。しかし、それでは戦記物語になってしまう。
この作品には血生臭い話は合いませんし……お馬鹿な話にしなければならないし……
幾らホモVSエロでも、ツアイツVSヴィットーリオではイマイチだな……ワルドさんやお姉ちゃんは、もう十分に活躍しちゃったし。
なのでマザリーニ枢機卿に白羽の矢が?
彼は、原作では苦労人で有り嫌われ者で有り……しかし頑張ってるオッサンだったので、彼にも活躍してもらおうと思いました。
実はマザリーニさんは、シスター大好きな人では無く宗教家らしく禁欲的で己を律する人だと思ってます。
そんな人が、次第にエロに染まって……染まり切らない前に完結しましたが、メインキャラとして頑張って貰いました!
此処に、この作品も本当の完結とします。
クリスマス記念電波作品
「どうして、こうなったんだろう?」
無駄に豪華な大広間、天井に煌めくシャンデリア。見慣れた此処はトリステイン魔法学院の大食堂だ。
テーブルの上には数々の美味しそうな料理。勿論、ワインもシャンパンも沢山用意されている。
壁面の本棚には漢の浪漫本が沢山並んでいる。
まさに夢の祭典?
だが、だがしかし……この会場には見渡す限りにムサい漢の群れが。綺麗どころは独りも居やしないぞ。今日は前の世界ではクリスマス。
元ネタの宗教的意味合いなんて関係ねー!
偉人の誕生日なんて知らねー!
な恋人達の性の饗宴の筈なんだけど。
「何故、何故だんだ?僕はロイヤルなハーレムを築いた筈だ。なのに何故、独り者の祭典の主賓として此処にいるのかな?」
僕の隣にはイザベラもルイズもキュルケもモンモンも、妻兼護衛のジャネットすら居ないんだけど。
確かに会場の外にはボインズナイトが警備を固めてはいる。メイドは居ないが執事は居る。
完全なる男祭り……
思わずオッパイ教祖として眩暈がした。立食形式の会場故に壁際にしか椅子は無い。なので壁際の椅子に崩れる様に座る。
ハァーと溜め息をつく。
無駄にクッションの良く効いた椅子に深々と埋まって思う。何故こうなった?
「ツアイツ殿、嫉妬団の宴へようこそ!歓迎しよう。我ら名も無い独り者達の尊敬と嫉妬・賛美と畏敬を集めし者よ……」
そこには煌めく蝶の仮面をし口に薔薇を喰わえたシャツのボタンが全開の男が立っていた……
「いや、お前ギーシュだろ?幾ら仮面をしても服装で分かるぞ。久し振りだな」
「ふはははは!私はギーシュなどと言うお洒落な紳士では無い。だが、だがな。彼の噂は知っているぞ。
何でも美しい婦人達の注目株の花咲ける美少年だが、愛する女性を教祖に奪われたそうだ……」
嗚呼、モンモランシーとか呟いているが「そもそも奪ってないから!」大体最初からギーシュはモンモランシーに相手にすらされてない筈だ。
でも原作では呆れられながらも二人はくっ付いたんだよな。確かにギーシュからすれば略奪愛か?
それから暫く名も無い男と言い張るギーシュの愚痴を聞いた。
後日、友達のギーシュの為に合コンを設定すると約束すると彼(本人)は去って言った……
◇◇◇◇◇◇
教皇ヴィットーリオが行方不明としてモヤモヤが残ったロマリアとの趣味を主張する戦いを終え、晴れてワクワクドキドキのハーレムライフを満喫する事が出来ると思ってた。
既にハルケギニアで僕らの「変態と言う名の紳士達・漢の浪漫本ファンクラブ」に立ち向かえる程の性癖を掲げる勢力は無い……
大国ガリアに、正妻の実家に複数の側室と転がり込んで楽しめたのも束の間。
次期ガリア王で有り、巨大趣味組織の教祖の僕に暇など有る訳ないよね?
しかも組織の下部構成員の中で不穏な動きが有ると報告を受けた。
ファンクラブの上級会員の殆どが、己の性癖に合った伴侶を得ていた。
ワルド殿にジョゼット。カステルモール殿にエルザ。モット伯には翼人の翼っ娘が。しかもダッシュ殿はロリっ子を集めた孤児院の院長だ。
心の友で有るウェールズ殿に至っては、先程ゲルマニアとの婚姻外交が成立した。アルブレヒト閣下の提示した三人娘との合同挙式だ。
合同挙式に関しては、僕が前例を作ったからなぁ……
ファンクラブの上級会員ばかりが幸せな伴侶を娶ってばかりでは、下級会員は面白くは無いよね?
だから、こうしてくすぶっている連中を一同に介して宴会を開いた筈が……
ドンドンドン、パフパフパフ!
「嫉妬団の宴inトリステイン魔法学院☆ドキドキハーレム王ツアイツ教祖を囲む会」
ドッカーン!と言う訳ワカメな魔宴となり果てていた。しかも僕以外が仮装してるって、闇討ち上等?
「これはこれは、巷で噂のハーレム王様では有りませんか!是非一献……」
ワイン瓶片手に呂律が怪しい中年が近付いて来た。グラスを差し出すとワインを注いでくれるが……
「零れてます、零れてますから……」
ワイングラスから零れる程に注いでくれた後に、隣にドカっと座る。妙にフサフサなカツラを被るこの男は……
「コルベール先生。お久し振りです。お元気でしたか?」
「なっ?私はコルベールなどと言う学者様では有りませんぞ!タダの独り者の寂しいオヤジですぞ」
次はこの人かよ……この人の活躍を潰し彼女を奪ったのは僕なんだよね。
隣に座り頭を垂れる姿は、哀愁の漂う冴えない中年でしかないな……
「ハーレム王様……私は最近良くブリミル様の啓示(電波)を受ける(受信)のです。
本来なら妖艶な美女を娶り趣味の発明を堪能出来る筈が、何かの拍子で変わってしまったと!私、私は……」
うなだれた拍子にカツラがスルリと床に落ちる。記憶に有る頭部よりも更に毛が抜けて地肌見えている。苦労しているんだな、学院長がアレだし……
「コルベール先生。
一度ガリアの研究機関に遊びに来ませんか?学術的なお仕事を専門にされると他の生活面が疎かになるとか。
我がガリアの研究機関にはコルベール先生と志を同じくした男女が集っています。このトリステイン魔法学院よりは出逢いの機会も多いですよ」
コルベール先生と話が合うとなると、専門的な会話が成り立つ女性じゃないと駄目だよね?
「わっ私は……でも、そのコルベールと言う学者様には良いかも知れませんな。
研究を共に出来る女性ですか……ふむふむ、ではお願いします。彼に遅咲きの花を咲かせてあげて下さい」
そう頭を下げて去っていった……僕はキラリと光る頭部から目を逸らせた。
この場所は辛い。宴は半ばだが、逃げよう。
ベランダから飛び立とうと窓を開けようとしたら、両肩を掴まれた。
「「これはこれは教祖様。どちらへ行かれますかな?」」
振り向けば微笑みを浮かべる地味な眼鏡と……誰かだ。眼鏡はレイナールだと思う。だけど隣は誰だっけ?
「えっと……レイナールと、誰だっけ?」
「ヴィリエだ!いっいや違うぞ。僕は至高の風メイジ、ヴィリエ殿では無い」
「僕も皆の人気者レイナール殿じゃない」
力一杯否定しているが、どう見ても彼ら以外の何者でもないけど……
「あっ!教祖様、やっと見つけましたぞ。実はお願い事が……」
「教祖様ー!僕のお願いを聞いてー」
筋肉と肥満。ギムリとマルッコリヌ?だっけ?四人に取り囲まれてしまった。皆さん目がね、ヤバい輝きをしてるんだよね。
これは逃げないと危険かも……
「「「「オッパイ教祖ツアイツ!モテナイーズとか変なグループ名を付けながら、自分だけモテモテになりやがって!
嫉妬の力は無限のパワー!我らが逆恨み、その身に受けてみよ」」」」
トリステイン魔法学院の脇役四人衆が手をワキワキさせながら迫ってくる!
「ちょ、ごめんなさい!ギムリ、首を絞めないで……マルッコリヌ、僕はカジっても食べれないから。
レイナール、無理に眼鏡を掛けさせないで。だっ誰かタスケテー!」
「ツアイツ……ツアイツったら。どうしたんだい?ほら……起きなよ……」
イザベラの声で目が覚める。目が、覚める?今のは夢だったのか?ベッドから上半身を起こして周りを確認する。
ガリアでの僕とイザベラの部屋だ。両手で顔を擦ると額にビッシリと脂汗をかいていた。
手がベタベタだ……
「ツアイツ?悪い夢でも見たのかい?」
イザベラが優しく背中を撫でながら聞いてくる。淡い魔法の光に照らされた寝室を見て、さっきの事が夢だと分かって安心した……
夢に出てきた彼らは、トリステイン魔法学院の友人達だ。
暫くご無沙汰だったし、本来原作で少なからず活躍するのだが、僕が居る為に脇役にすら成れなかった連中だ。
「イザベラ……新しい事業を思い付いたんだ。結婚活動を支援する、略して婚活だ!モテナイ男達を救済するんだ」
夢の中だと理解しても、彼らの嫉妬に狂った目は恐ろしかった……ならば僕を恨まない様に、早く結婚相手を探させるべきだ!
「貴族相手の商売なら無理さね。貴族の婚姻とは、家と家の繋がりなんだ。
それを無視して相手を宛てがうのは良くないよ。貴族が結婚出来ないのは本人の資質よりもお家の事情さね。
さぁまだ少し寝れるから……
明日はトリステイン魔法学院から使者が来るんだよ。ツアイツには久し振りに旧友と会えるんだ。
寝不足の顔じゃマズいだろ。全くツアイツの発想は何時も驚くけど、今回のは駄目だね」
そう言ってイザベラが額の汗を拭ってくれた。明日……トリステイン魔法学院の使者だと?
確かに報告書は読んだ。使者には僕と親交の有る連中だから楽しみにしてねって……まさか、まさか正夢じゃないよね?
隣に眠るイザベラの胸の谷間に顔を押し込んで、深呼吸をしながら心を落ち着かせる。
甘いミルクの様な匂いを深々と吸い込んだら、先程までの自分の行動が随分と滑稽だと思う。
「嫉妬のパワーは無限大……まさか、ね」
僕は頭を優しく撫でてくれるイザベラの手の感触を楽しみながら、深い眠りについた。
翌日、オールドオスマンを代表にコルベール先生・モテナイーズの連中が訪れて、僕をトリステイン魔法学院主催のパーティーに招待してくれた。
一学年の途中からガリアの魔法学院へ転入してしまったが、偉大な僕の功績を称える為に名誉学生としてパーティーに招待したい、と……
でもしつこく誘う彼らの暗い目の輝きが、夢の中の連中と同じだったんだ。
アレは、アレはヤバい目だった……
2人はmagical princess!「禁断の従姉妹姫」
「ツアイツ?何だい、この漢の浪漫本は?私は言った筈だよ。これは駄目だと……」
ガリア王宮の一室でソファーに正座させられ絶賛説教中で有ります。
イザベラが本気で怒ってるのは、人よりも若干広い額に浮かべた井形で分かります。
彼女は片手にイザベラとタバサを題材にしたレズ本……
禁断の従姉妹姫を持ち、もう片方にワインボトルを持っている。
お気に入りのアイスワインだが、今は鈍器でしかない。最愛の妻に、独身時代の一寸した悪戯心がバレてしまった。
「でっでも、何故バレたんだ?竜騎士やイザベラ隊の連中が、そんなミスを犯す筈が……」
あの本は厳重な管理体制の下、外部にバレる事は有り得ない筈だが?ワインボトルを僕の左頬にピタピタと当てながらニヤリと笑うイザベラ。
中々に漢らしい恫喝方法だ。
「随分と立派な製本だね。ハードカバーに箔押しのタイトル……何処の出版所に依頼したんだい?
増刷をガリア国内の出版所に頼んだのは失敗さね。私にも独自の耳も目も有るんだよ。
さて、ツアイツが仕込んだツンデレプリンセスのツンの部分をたんと味わって貰おうかな」
両手にワインボトルを握り締め、凄い笑顔で近付いてくる最愛の妻を見ながら脳挫傷は嫌だなーと……
「ばか、ばかばかっ!ツアイツのばかー!」
「グハッ!」
鈍い打撃音の後に、一瞬だが目の前が真っ暗になり星がスパークした!
意識が薄れる中で涙を浮かべ真っ赤になりながらワインボトルを振り回すイザベラを「可愛いなぁー」と思ってしまった。
視界の隅でニヤニヤしているジャネットは「お前は今夜、ベッドでヒィヒィ鳴かすからな!」と誓いながら意識を手放す。
王族とは、夫婦喧嘩も命懸けだなぁ……
◇◇◇◇◇◇
2人はmagical princess!
「禁断の従姉妹姫 序章」
私達は王家の兄弟の娘として生まれ育った。
私のお父様は現国王の長男だが、魔法第一主義のハルケギニアでは致命的な程に魔法の才能が無かった。
かたやシャルロットのお父様は次男だけれど、神童と言われる程に魔法の才能が豊か。
両極端の父を持つ私達の魔法の才能も、やはり両極端。
年下のシャルロットの方が既にコモン魔法を習得し系統魔法を習い始めた。
私は未だ満足にコモン魔法も成功しない落ちこぼれ。
ついついシャルロットに冷たく当たってしまい、周りも年下の彼女に辛く当たる私を同情と落胆の混じり合った目で見る。
「シャルロット、自慢かい。お前が唱えた魔法で私のスカートが捲れたよ。このイヤラシい娘が!」
「ちっ、違う。私はそんな事は……」
「じゃ、何かい?私の被害妄想だと言うのかい?ほら、どうなんだよ!」
「……………」
両手を握り締め、歯を食いしばりながら俯くシャルロット。私は彼女のそんな姿が嫌で、更にシャルロットに辛く当たってしまう。
「ほら、何とかお言いよ!人形じゃないんだろ?」
シャルロットを追い詰めてしまう、負のスパイラル……まるで良く出来た妹姫と、意地悪で出来の悪い姉姫が周りから見た私達だ。
だけど、だけど本当の私達を皆は知らない。
だって、だって私達は……
◇◇◇◇◇◇
「イザベラ、ん……」
王族故のキングサイズのベッドに2人で寝転がりながら銀の皿に盛られたフルーツをシャルロットに食べさせる。
苺を一粒摘み、シャルロットの口元へ。
「シャルロットは甘えん坊さんだね、ほらお食べ」
彼女は私の指ごと口の中に入れる。指先を舐めながら苺を奪い、小さな口でモグモグと食べる。
私達は薄い純白のシルクの夜着だけを着ている。サラサラな肌触りが気持ちが良い。
あとは同じく純白の下着だけ。真っ白な世界で違う色は、互いの蒼い髪だけだ。
「これはお返し、ん」
シャルロットも同じ様に苺を摘み……口にくわえて突き出してくる。
「ばか……」
苺を食べる為に2人の唇が重なる様に……
◇◇◇◇◇◇
「うがぁー!なっなんて破廉恥な本をバラ撒きやがって!」
内容を確認しなければ、どんな事になってるかが分からない。だから読み始めたけど、何て破廉恥な内容なんだい。
こんな物を読んでた連中が私の周りに居るなんて……放り出した漢の浪漫本を見ながら考える。
ツアイツ……
アンタ、未だ私を口説き落としてない内から、こんな内容の本を考えていたのかい?
幾らハルケギニアの常識を覆し捲るアンタでも、王族の姫を弄ぶなんて不敬罪で斬首される内容だよ。
全く私がベタぼれじゃなければ、アンタとアンタの一族が……
まぁもう良いか。
惚れた弱みだし、もう破廉恥な本は書かないって念書を書かせれば……この問題を収束させる方法を考えていたら
「ちょ、テファ!アンタ何で此処に居るんだい?」
真っ赤になりながら例の本をしっかりと抱えながら読む、天然ハーフエルフに気が付いた。目の前15センチまで本を近付けて熟読していた。
「ほっ他の方々がお茶にしましょうと……だから、わっ私が呼びに来たんです」
何故か漢の浪漫本を後ろ手に持ちながら、扉へ後ずさるテファ。持ち逃げは許さないよ!
「ああ、お茶かい?分かったけど……その本は置いていきな」
そんな本が、あの連中に知られたら大変だ!只でさえ第一子を身ごもるまでツアイツを独占してるんだ。
あいつ等が私への意趣返しのネタを放っておく訳が無いんだから。
「でっでっでも……これは旦那様のお書きになった本ですし。私達も読みたいなって」
ジリジリと後ずさるテファ。馬鹿な!そんな王家の醜聞を広める事が出来る訳ないだろ。
「駄目だ、返しなよ」
テファに襲い掛かる。必死に本を取られない様にする彼女の体を弄りながら、本を奪おうとするが……
巨大な乳が邪魔して、肝心な本に手が届かない。
「何だい、自慢気にこんな脂肪の塊をぶら下げやがって!揉んでやるわ」
ムギュっと擬音が聞こえそうな、けしからん乳を揉みしだく。結構気持ちの良い弾力だね。
「ちょイザベラ様。だっ駄目です、私には……私には、そんな趣味は……無いです……から……」
何だい趣味って?私はレズじゃないよ。
「ほらほら、本を返さないと体に言い聞かせるけど良いんだね?
本当にイヤラシい体だね、テファは。羨ましいくらいさね。ほらほらほら、気持ち良く鳴きな」
執務室で美少女2人が、揉み合いっこをしている。いや一方的に弄られているだけ?
そんな平和なガリア王宮の執務室だった。
この後、中々呼びに行って戻らないテファを心配してルイズが執務室を訪ねた。
何やら中から艶っぽい声が聞こえる。
それに護衛の兵士が鼻血を垂らして悶えているけど……
気持ち悪い護衛を視界の外に追いやり息を殺して、ゆっくりとドアを開ける。
「イザベラ様。テファが来ませんでした……か……ごっごめんない。お邪魔しました」
そこには良い笑顔でテファにゴニョゴニョするイザベラが居た。そっと執務室の扉を閉めた彼女は、ダッシュでキュルケ達に報告に行った。
「みっみんな聞いて!イザベラ様とテファが「2人はmagical princess! 禁断の種と性別を超えた愛」を実践してるわ!」
その日、ガリア王国に新たな伝説が生まれた。
「2人はmagical princess!」
この禁断の愛の記録に、新たな1ページが刻まれた。
この作品はデビュー作であり若き日の情熱だけが込められた思い入れの有るお馬鹿作品でした。
5年も前の作品ですが、今思うと色々と考えさせられる問題作でしたが楽しかった思い出しか有りません。
思えば原作で不遇なキャラを活躍させようと考えたのが自分の二次創作小説の始まりでした。
最後まで読んで頂き有難う御座いました。