現代人のお気楽極楽転生ライフ(修正版)   作:Amber bird

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新章第24話

謀略教皇VS謀略教祖!趣味と趣味の闘い・第24話

 

 

 始祖ブリミルが降臨してから6000年……

 

 始祖の血を引く子孫の三王家よりも、弟子であるフォルサテのブリミル教の教皇の方が立場が上と言われてきた。

 そしてロマリア連合皇国、最後の教皇。聖エイジス32世・教皇ヴィットーリオが就任した。

 

 但し、このヴィットーリオ!歴代の教皇など及びもよらぬ変態だった。

 

 「男の娘」なる美少年女装軍団を聖歌隊として侍らす、ホモだったのだ!

 

 確かに過去の教皇にも、少年が大好きと言う奴も居た事は居た。それに文句を言える者が居なかっただけだ。

 しかし異端児ヴィットーリオの生まれた時代に、もう1人の異端児が生まれたのだった……

 

 ツアイツ・フォン・ハーナウ、現代日本からの転生者。

 

 中世ヨーロッパに近い時代で停滞しているハルケギニアに、日本のサブカルチャーを持ち込んだエロのオタクだ!

 彼の現代知識や、数々の名作のオマージュやらリスペクトやらパクリやら……

 兎に角、現代のイケない文化を純真無垢なハルケギニアに広めてしまった。

 オッパイ大好き、美女・美少女大好きのツアイツ君は、現代では苦手だった「男の娘」を布教するホモ教皇ヴィットーリオとは、相容れ無い相手。

 

 それは向こうも同様なのだが……そして遂に、女好き・男好きの性癖を!

 

 趣味と趣味の戦いの最終局面が始まった!

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 ロマリア連合皇国。

 

 既に心有る神官達と敬虔なブリミル教の信者達は、ツアイツの策略によりガリア王国へ移民していた……

 合法・非合法を問わず、かなりの人数が逃げ出していた。

 そして、教皇ヴィットーリオがツアイツを異端認定した事により、各国がヴィットーリオを非難。

 所謂ヴィットーリオ派閥と、汚職にまみれた神官達をロマリアに強制送還した……

 今、ロマリアには教皇直轄の「男の娘聖歌隊」と利権に塗れ現状を把握出来てない高位神官と、その取り巻き達。

 それと聖堂騎士団の連中が溢れている。

 

 彼らは未だにブリミル教を絶対と信じ、それに携わる自分達に非は無いと考えていた。

 なに、異教徒など6000年の歴史有るブリミル教の我らから見ればゴミの様な存在だ!簡単に蹴散らしてやる!

 

 そう息巻いていた……

 

 実は、これはヴィットーリオが煽動していた。

 

「我ら尊き神官達、聖堂騎士団が負ける訳が無い!これを機に、逆らう三王家を支配しよう。

彼らの領地は、切り取り御免だ!奪い取った者の領地として構わない。皆、気張れば領地持ちとして、此まで以上な生活が出来るのです!」

 

 こう宣った……目の前にぶら下げられた餌は、現状を見失わせる程デカかった……頑張れば、領主になれるのだ。皆の意気込みは凄い。

 

 それと今まで寄付・寄進と言う搾取し続けた財貨を使い傭兵を雇い入れ、彼らに貸与した。

 流石にアルビオン王国でのレコン・キスタの件も有り、さほど集まらなかった。しかし、傭兵とは金を払い続ける迄は味方だ。

 

 兵力の嵩ましには十分だろう。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 宗教庁の一室で、教皇ヴィットーリオと向き合うジュリオ助祭枢機卿……

 

 ロマリア連合皇国に、ガリア王国を筆頭に各国が攻め始める準備をしているのを密偵団を使い、正確に把握していた。

 

「ヴィットーリオ様、折角の信徒からの寄付や寄進をあの様な傭兵達にお使いになられて……良かったのですか?」

 

 宗教庁に蓄えて有った財貨の、かなりの分を使っている。傭兵を雇い入れたり、此方に残った連中にバラ撒いたり……

 それらの連中に新たな官位を授けたりと、随分と無茶をしている。

 

「構いません。思えば、ジュリオがクルデンホルフ大公国でヤツを暗殺しようとした事。アレが最初で最後の勝てる手立てだったのかもしれませんね」

 

 穏やかな微笑みを浮かべて、愛妾を見る……今日のジュリオは、正統派修道女服を着ている。

 中々似合っているのが、流石は「男の娘」と言う事か……残念ながら肉感的な魅力は無いが、楚々とした美しさは有る。

 

「すみません。私が失敗したせいで、この様な状況に……しかし、既に私達に勝ち目は少ないでしょう。私が、再度ヤツの居場所に急襲を……」

 

 残された手段は、玉砕覚悟でヤツを殺すしか手は無いだろう。

 

「それは無駄でしょう……私は、ツアイツ・フォン・ハーナウを魂の敵と分かっていながら半ば放置していました。

もっと早く、奴が頭角を現す前に何とか出来たものを。アレの作る、ジュリオ達に着せる服が欲しいが為に……

ヤツは異常な迄の女好き。ならば我がジャスティス(趣味)とは相容れ無いのですから……」

 

 ガリアのイザベラ王女を落とす前なら。

 

 アルビオン王国でのドサクサで。

 

 トリステイン魔法学院に居る頃なら……考えれば、幾らでも奴を殺すチャンスは有ったのだ。

 

「ジュリオ……ロマリア連合皇国と言う名の国は滅びるでしょう。しかし、タダではやられません。

ヤツらの勢力を少しでも削ぐ為に、残された連中には捨て駒になって貰います。まぁ嫌がらせですね」

 

 宗教に国土は要らない……正論だ!

 

 権威で無く権力を求めだしたブリミル教は、廃れる定めだったのだ。

 

「ヴィットーリオ様……最後までお供致します。例え最後の1人となってもヴィットーリオ様をお守り致します……」

 

 そう言って頭を下げる。負けは必定……しかし最後の一兵となっても、ヴィットーリオ様の為に戦う。

 

 悲壮な迄の決意を固めた!

 

 そんな彼は、修道女服の魅力を含めて中々魅力的だ?思わず、「ゴクリ」と生唾を飲み込む……

 

「何か勘違いをしていませんか?私はサッサと逃げますよ。勿論、ジュリオや聖歌隊の皆は一緒にです。

残りの連中は、ヤツへの嫌がらせの為に最後迄戦って貰いますけどね……」

 

 あっけらかんと逃げると言う。

 

「しっしかし、私達に……ハルケギニアに逃げ場など……」

 

 私達を受け入れてくれる国は、もう無いでしょう。もはや未開拓の地に逃げるしか……

 

「ジュリオ……私は虚無の担い手ですよ。

その私をブリミル教のトップの私の趣味を理解出来ない連中が沢山居る……こんな世界に、もう興味は有りません」

 

 こんな世界……世界?まさか?

 

「ヴィットーリオ様……まさか異世界へ、お逃げになるのですか?」

 

 ジュリオの言葉に深く頷く……

 

「そうです!ワールド・ドアで覗き見た世界。

その1つに、「腐女子」なる同性愛者を支援する民族が居るのです。しかも彼女達は、BLとか攻め・受け……

萌えなる独自の言語を持つ知的種族です。彼女達なら、私達を受け入れてくれます。

そして「腐女子」の国で力を付けて……私達の「男の娘」ワールドを広めるのです!」

 

 キリリとした表情で、ヤバい事を言い出した!

 

 腐女子?腐った女子?それはゾンビみたいな連中ですか?しかしヴィットーリオ様は、その妖しい部族の国に行くつもりなのでしょう……

 

 ならば、共に逝くだけです。

 

「ヴィットーリオ様……何処までもお供致します。しかし……

かの魔法は、ヴィットーリオ様の体力と精神力を大量に消費します。もしも、使い過ぎでお体に……」

 

 確か、人1人通すだけでも大変な労力だと。

 

「有難う、ジュリオ……心配してくれるのですね。可愛い、私だけのジュリオ……私は君を手放さない。ずっとだ……

それに虚無魔法とは、精神の高ぶりで威力を増すのです。分かりますか?」

 

 歓喜の涙を流しながら、ヴィットーリオに抱き付くジュリオ……力強く抱き締めるヴィットーリオ。

 

 端から見れば、美男美女の抱擁シーンだ……両方ナニがぶら下がっているのだが……そして精神を高ぶらせる為に、ナニを始めやがった!

 

「ヴィットーリオ様……まだ、昼間ですから……やん!落ち着いて下さい」

 

 修道女服のジュリオを弄るヴィットーリオ……

 

「むほほほほー!聖歌隊の皆も呼ぶのです。今日は初の201人切りを達成しますよ……ほらほらほらほらー!」

 

「きゃ?ちょ、待って……下さい……ヴィットーリオ……さま……」

 

 爛れきったオーラを撒き散らし、精神力を高ぶらせるヴィットーリオ……彼は今、凄まじい精神の高ぶりを感じている。

 

「きっキタキタキター!ふははははー!ツアイツよ。

こんな世界はくれてやりますよ!私は、私達を受け入れてくれる世界に旅立つのです……

ユル・イル・ナウシズ・ゲーポ・シル・マリハガス・エオルー・ペオース……

さぁ私の虚無を成功させる為に、みんな刺激的なポーズで……

 

私を挑発しなさい!

 

私を高ぶらせなさい!

 

私を逝かせなさーい!

 

そして、発現したゲートを潜るのです!さぁ、早く……ハリーハリーハリー!」

 

 

 この日の夜、ハルケギニア中から敵視されたホモ教皇ヴィットーリオと愛妾ジュリオ。

 そして201人の男の娘達は異世界へと旅立った……己の趣味を理解しない民衆に見切りを付けて、「腐女子」なる不思議な呼称を持つ民族の国へ。

 その後、ハルケギニアで彼らを見た者は居ない。

 

 しかし……その夜は、禍々しいオーラが、ハルケギニア全土を覆ったそうだ。

 

 教皇ヴィットーリオは、未だにロマリア各地でマザリーニ枢機卿派に抵抗する大勢の味方を捨てて、趣味の国へと旅立った!

 彼の言う「腐女子の国」とは一体どこなんだろう?

 

 尻たく、いや知りたくはないのだが……

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 同時刻、ツアイツは何やら不穏な気配を感じて眠りから覚めた……

 マザリーニ枢機卿と、趣味のディスカッションをして彼の屋敷に泊まっていたのだ。

 胸騒ぎが酷く、ベランダに出て夜風に当たる……気持ちの良い風にあたり、少しだけ落ち着いた。

 

 満天の星空に、未だに慣れない双子の月……その時、沢山の流れ星が!

 

 二百近い数だ。

 

「なっ?何て綺麗な流れ星なのに……何て禍々しいんだ……」

 

 初めて見る、素晴らしき星降る夜なのに……そして最後に、2つの巨星が絡み合う様に落ちて行った……

 

「巨星墜つ……何か……ハルケギニアから厄災の何かが……消えていった気がする。何だったんだろう?」

 

 ツアイツを包む星空は先程までの禍々しさはなく、綺麗な夜空へと変わっていた……

 まるで世界が異物を捻り出した後の様な、爽快感が有ったりした?

 


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