ちょっと短かったのでまたルークの日記を入れようかと思いましたが、色々と原作と違う事が増えてきたので、今回のおまけは設定集にしました。TOA原作のネタバレもあるので、未プレイの方は設定は読まない方が良いかもです。いないと思うけど。
アリエッタがファブレ家で暮らす事になってから数日。シュザンヌの号令により、公爵夫妻の居室にルーク、アリエッタ、ヤナギの3人が呼ばれていた。
シュザンヌとクリムゾンという屋敷の主である2人からの報せを受け、少し怯えたようにルークの後ろへと隠れるアリエッタ。そんなアリエッタを皆が微笑ましく見つめながらも、シュザンヌが3人を呼び出した理由を話し始めた。
「そんなに緊張しなくても良いのよアリエッタちゃん。今日はね、貴女にプレゼントがあるのよ!」
「アリエッタに……です、か?」
言葉に詰まりながらも、返事を返すアリエッタ。
数日前に屋敷に残る事を決めた彼女だったが、準備が出来たら伝えるから待っていて欲しいと言われただけで、今日まで自分がこれからどう過ごしていけば良いのか少しも聞かされていなかった。
この呼び出しで自分の処遇が決まるのかと、弱弱しいながらも覚悟を決めてやってきたアリエッタだったが、自分にプレゼントがあると予想もしていなかった言葉を受け、若干眉を顰めて訝しげに首を傾ける。
ヤナギは嬉しそうにニコニコと笑っていたが、アリエッタのこれからが決まると思っていたルークは、アリエッタと同じように首を傾げた。
「あの、母上。コイツは結局どうなるんですか?」
「そう焦らないのルーク。これからは貴方も主になるんですから、心に余裕を持ちなさいな」
「……へ? 主?」
突然主になると言われ何の事か分からず困惑するルークを尻目に、シュザンヌはアリエッタに大き目の包装紙に包まれた物を手渡した。
「はい、アリエッタちゃん。これが私達からのプレゼントよ」
「え、あ、えっと……ありがとう、です?」
「いいのよそんな事。さ、後はヤナギにお願いしてあるから、向こうで着替えてらっしゃいな」
「着替え……?」
「それじゃあヤナギ。お願いね」
「はい奥様! じゃあアリエッタちゃん。向こうに行こっか!」
「え? え……?」
あっという間に話が進んでしまい、困惑しながらもヤナギに隣室へと連れられていくアリエッタを、呆然と見送るルーク。
扉の閉まる音で我に返ると、シュザンヌに説明を求める。シュザンヌは問われるのが分かっていたとばかりに、優しく微笑んだ。
「あの、母上。あのプレゼントとか、俺が主になるとか、どういう事なんですか?」
「その説明の為に、貴方も呼んだのですよルーク。この数日、アリエッタちゃんがどうなるかが心配で仕方がない様子でしたし」
「んなっ!? べ、別に俺はあいつの事を心配なんてしてねーし!」
クスクスと笑いながらそう言うと、ルークは顔を真っ赤にしながらも慌てて否定した。敬語を使う事も忘れる程の焦りように、目元を緩めるシュザンヌ。クリムゾンは妻と息子の仲睦まじい様子を見て、ほんの僅かだが口元を綻ばせていた。
「そ、それで母上! 結局アイツはどうなるんですか?」
「あら。ちょっとイジメすぎちゃったかしら?」
「は・は・う・え!」
「はいはい、ゴメンなさいね。でも、貴方もあの時話を聞いてたんだから、予想は出来るでしょう?」
そう問われ、数日前の会話を思い出す。
あの時シュザンヌはアリエッタに、客人のままでは屋敷に長期間は残れないと言った。つまり、アリエッタが屋敷に残る為には、客人で無くなるしかない。
そうなると、思いつく方法は――――。
「使用人にするか、養子にするか……貴族じゃないアイツを養子にするなんて出来ねーだろうし、使用人ですか?」
ルークの答えを聞くと、息子の成長が嬉しいのか満足そうに頷くシュザンヌ。
「正解よルーク。アリエッタちゃんには、貴方専属の使用人になってもらいます」
「あぁ、俺が主って言うのはそういう…………はぁ!? お、俺専属の使用人ですか!?」
「ええ。だってアリエッタちゃんが来たばかりの頃に言ったでしょう? アリエッタちゃんがこの屋敷にいる間は、貴方とヤナギに面倒を見てもらうって」
「え、いや、それはそうですけど……」
アリエッタが自分付きの使用人になると聞き、思わず叫びながら聞き返すルークだったが、アリエッタと初めて会った時にシュザンヌから下された命令を思い出すと何も言い返せずに押し黙った
「私もあの時はこんな事になるなんて思ってなかったのだけれど。それを抜きにしても、アリエッタちゃんは貴方に一番心を開いているでしょう? だから、貴方の傍に付くのが一番なのよ」
「うっ……」
「ヤナギに教育係をお願いしておいたから、使用人としての仕事は心配無いわ。元導師守護役なんだから、少しは誰かの傍に付くのにも慣れてるでしょうし」
「そうなんですか?」
「ええ。導師守護役は導師に一番近い人間なんだから、護衛だけが仕事という訳じゃない筈ですよ」
「アイツがねぇ……」
アリエッタが誰かに仕えていたという事実に、違和感しか無いと呟くルーク。
実は導師守護役と言っても、オリジナルの導師はアリエッタを同世代の大切な友人としか見ておらず。シュザンヌの考えているような世話役としての仕事は、殆ど未経験だった。
「あれ? アイツが俺付きになるって事は、ガイの奴はどうなるんですか?」
「ガイは貴方の護衛という立場でしたが、これからはペールの補助として勤めてもらいます。女性恐怖症のガイでは、アリエッタちゃんと一緒に貴方に付くなど出来ないでしょうし。それ以上に、貴方への不敬が目に余りますから」
「あぁ、成程」
ふと現在の自分付きの護衛であるガイはどうなるのかと気になり尋ねてみたが、返ってきた答えに普段からガイの自分への態度を問題視していたルークは、深く納得した。
「……大丈夫だろうか」
その光景を、難しい表情で聞くクリムゾン。ガイの息子に対する執着に気付いているクリムゾンは、ルークから離されるガイが何か不穏な事をしないだろうかと少し不安を覚えていた。
三人が今後の事について考えていると部屋にノックの音が響き、ヤナギが入室してきた。一仕事終えた職人のような、とても満足した表情で。
「あらヤナギ、お疲れ様。アリエッタちゃんに説明はした?」
「はい奥様! これからは私と一緒にルーク様付きの使用人になる事を伝えると、とても嬉しそうに承諾して下さいました!」
「あらあら。慕われてるわねルーク?」
「~~~~~~ッ!」
アリエッタが嬉しそうにルーク付きの使用人になる事を受け入れたとヤナギから聞くと、顔を真っ赤にして顔を背けるルーク。そんなルークをシュザンヌとヤナギはニヤニヤという擬音が似合いそうな笑顔を浮かべながら見つめ、クリムゾンはこれからも妻やヤナギに弄られる事になるだろう息子を、憐憫の眼差しで見つめていた。
「それで、アリエッタちゃんは?」
「扉の前で待って貰ってます。ですが、良いんですか奥様?
「ルークなら大丈夫よ。私とあの人の息子なんですから」
「はぁ……奥様がそう仰られるなら。アリエッタちゃん、入ってきてー!」
何やら怪しい会話をしつつも、アリエッタを部屋へと招き入れるシュザンヌ。
「あの、着替えてきた……です」
そう言って入ってきたアリエッタに、ルークとクリムゾンは目を奪われた。
アリエッタは、その小柄な身体によく似合う、ヤナギや他のメイド達とは若干意匠の違うメイド服を身に纏っていた。
黒のメイド服の上に、純白のエプロンドレスを付けている点は一緒だが、他のメイド達と比べて袖やスカートの裾にはフリルがバランスを損なわない程度だが大量に着けられており、胸元と手首にはシックな形状の赤いリボン。スカートの丈はギリギリ膝が見える程度の長さで整えられており、その脚にはタイツではなく、黒のニーソックスを履いていた。
その愛らしい服装だけでもかなりの破壊力だが、ルーク達が注目しているのは、アリエッタの頭部だった。
メイドが本来頭に着けるべきホワイトブリム。それは彼女の頭には装着されておらず、代わりに着けているものは――――。
「な、んな……!」
「…………」
「……?」
赤面しながら声にならない声を上げるルークと、無言で
そんな二人を不思議そうに見つめるアリエッタだったが、遂にルークが耐え切れなくなり、
「なんで犬の耳なんか着けてんだよ―――――――――ッッ!!?」
アリエッタの頭に装着されていたのは、茶色の犬の耳が付いたカチューシャだった。それも無駄に精巧に作られた、職人の芸の細かさが見える、垂れた犬の耳が。
指されたアリエッタは何故叫ばれたのかが分からず、不思議そうにしながらもルークの叫びに答える。
「ヤナギが、これ、着けるって……その、シュザンヌ様も着けるように言ってたって、言ってた……です」
メイドとしての自覚があるのか、慣れない敬語でシュザンヌとヤナギが犯人だと答えるアリエッタ。
それを聞き、勢いよく二人を振り返るルーク。ジト目で睨まれる二人だったが、どこ吹く風でルークからの無言の抗議に答える。
「だって、アリエッタちゃんって犬っぽくて可愛いんだもの。着けたら絶対に似合うと思って、メイド服と一緒に発注しておいたの!」
「私は猫耳の方が似合うと思ったんですけど、こうして見ると犬耳も素敵ですね! あ、猫耳も勿論発注してるんで、安心してくださいルーク様!」
「何を安心すりゃいいんだよ!?」
母と姉のような人の暴走に、思わずツッコんでしまう。果たして自分の慕うこの二人はこんなキャラだっただろうかと疑問に思いつつ、ふと隣に立つクリムゾンに目を向ける。
アリエッタが入って来た時から微動だにせず、彼女の犬耳を凝視する姿を疑問に思い話しかけようとするが、それよりも先にクリムゾンの口が動いた。
「――――――――兎耳はどうだろうか」
「父上ぇ!?」
ファブレ家当主クリムゾン・ヘアツォーク・フォン・ファブレ。
彼は意外と、可愛い物に目が無かった。
◇ 設定 ◇
◎アリエッタ
14歳。身長140㎝(原作148㎝)。
この作品の主人公で、元導師守護役。7歳の頃まで、魔獣達に育てられた過去を持つ。原作では最後までオリジナルイオンの死を知らず、その短い人生を終わらせた悲しい少女。
この作品ではオリジナルイオンの死亡後まもなく真実を知ったため、ダアトを脱走。放浪の末、ファブレ家に拾われる。
元から内向的な性格だったが、イオンの死を知った為に、原作よりも更に人間不信気味。他者の悪意に非常に敏感。その分、一度心を赦すと決して離れない。現状は自分を認めてくれたルークに依存とも言える程に懐いている。それが単なる好意以上に昇華されるかどうかは、ルーク次第。
現在はルーク専属のメイドとして、勉強の真っ最中。ヴァンに日常生活を送る為の最低限の常識しか教えられていないため、かなりの世間知らず。特に世界情勢に関しては、長年自分が所属していたダアトの事ですらなんとなくでしか知らない。ルークと一緒に、シュザンヌを家庭教師として猛勉強中。2人揃って毎日のように涙目になっていたり。
ちなみにケモミミは普段は装着していないが、頼まれれば付ける。頼むのは主にヤナギ。
◎ルーク・フォン・ファブレ
15歳。身長165㎝(原作171㎝)。
この作品のヒロイン(?)。5年前の誘拐事件で記憶を無くしたが、シュザンヌやヤナギの献身的な補助により、1年で日常生活に支障が無い程度には回復した。
実は導師イオンと同じく、本物のルークのレプリカ。記憶喪失ではなく、産まれたての為に記憶が無かった。
原作ではレプリカという境遇故に不幸な最期を迎えたが、この作品では両親を含めた屋敷の者達からの愛情を一身に受けて育ったため、若干性格にゆとりがある。
シュザンヌの熱心な教育により、世間一般の常識は完全に身に着けている。が、世界情勢に関してはまだまだ世間知らずであり、アリエッタと共に勉強の日々を送っている。
原作との大きな相違点として、ガイとの不仲。ヴァンへの疑惑。ナタリアへの嫌悪が挙げられる。
まだ粗削りだが貴族としての義務を身に付けつつあるが故に、ガイのあまりにも使用人として常識外れな行動を不快に感じている。一応記憶を失ったばかりの頃に面倒を見てくれたので多少は恩義を感じていたが、マイナス面の印象が大きすぎた。
両親との仲が良好なため、ヴァンには原作ほど依存していない。憧れの師匠兼、誘拐犯から助けてくれた恩人として尊敬していた。
アリエッタからの情報提供により、信じたいと思いながらもヴァンに疑いを持ち始めている。
ナタリアは原作通りルークの記憶を取り戻す為に、まだ言葉も喋る事が出来ないルークに無理やり難解な書物を読ませようとしていた。ルークを庇ってくれたヤナギを酷い剣幕で詰ったので、今すぐ婚約を解消したいと思う程にはナタリアを嫌っている。
原作とは違い貴族としての教育を受けている為か、頭の回転は悪くない。が、それ故にか割と常識人気質。フリーダムなシュザンヌ。天然なヤナギとアリエッタ。稀に爆弾発言をする父に囲まれ、色々と気苦労が絶えない苦労人。
◎ファブレ公爵夫妻
どこで歴史が狂ったのか、原作では病弱だったシュザンヌが、王妹としてのカリスマ全開の女帝として君臨している。
息子であるルークを誰よりも大事に思っており、誘拐から帰ってからはそれが顕著になっている。が、決して甘やかしているというわけではなく。ルークが立派な王族になれるよう、愛情を注ぎながらも厳しく教育している。ルークを誘拐犯から連れ帰ったヴァンを、あまりの行動の早さに当時から不審に思っていた。
夫であるクリムゾンは、原作では預言を恐れて必要以上にルークに近付かなかったが、この作品ではシュザンヌの影響で愛情を持って接している。預言に詠まれた時期が近づく事に苦悩していたが、アリエッタの証言から預言に疑問を持つようになっている。
◎ヤナギ・サコシタ
16歳。158㎝。
ファブレ家に仕えるメイド。原作には未登場のオリジナルキャラクター。
出典は週刊少年サンデーで連載されていた【烈火の炎】に登場するメインヒロイン【佐古下 柳】から。アリエッタと同世代の同性キャラが欲しいという理由で登場。
とても温和で明るく誰からも好かれる性格だが、プライドの高い者からは敬遠されている。
4年前よりファブレ家に仕え、ルークとは幼馴染と言える関係。ファブレ夫妻の前以外では、砕け気味の敬語でルークに接している。当然、ルークの許可は得ている……というか、ルークから堅苦しい話し方は止めろと頼まれた。
才能ある第七音譜術士だが特に訓練等は受けておらず、初級~中級の治癒術が使える程度。実は六神将級の強さの第五音譜術師(火属性に特化した譜術師)の婚約者がいる。
その婚約者は1年前、実の父親に腹違いの兄と共に「5年くらい武者修行の度に出て来やがれ」とバチカルから放り出された。現在は兄とは別れ、友人4名と共に騒動に巻き込まれながら旅を続けている。兄は兄で4名程仲間を連れ、旅を続けているらしい。
ファブレ家では度々婚約者からの手紙を読みながら頬を染めるヤナギの姿が目撃され、白光騎士団の若い騎士達はそれを見る度に絶望の涙を流しているとかなんとか。
◎ガイ・セシル
19歳。身長182㎝(原作184㎝)。
ファブレ家に仕える使用人だが、同じくファブレ家に仕える庭師のペールの主でもある。
とある理由からルークに執着しているが、距離感を間違えているせいでルークに嫌われている事に気付いていない。ルークは自分がいないと何も出来ない子供だと思い込んでいる節がある。使用人らしからぬ態度をルーク本人やシュザンヌから指摘されているが、全く直そうとしていない。
アリエッタがルーク付きになってから思うようにルークと接触出来ずに苛立ちを募らせている。ルークに最も近い場所にいるアリエッタを逆恨みしている……と思いきや、「何で俺を傍に置いてくれないんだ」と、ルークの方に理不尽な怒りを抱いている。
物陰からルークを胡乱気な目で見つめる姿が度々メイド達に目撃されており、ガイ自身の女性恐怖症もあってか男色を疑われていたり。
アリエッタのメイド服の描写が満足に出来ないのが悔しい……ッ! 絵心も文才も無い自分には、アリエッタの愛らしさを伝えきれませんでした。無念。
ついにクリムゾンまでキャラがぶっ壊れてしまいました。反省も後悔もしてない。だって、ああいう強面って可愛いのは甘いスイーツとか好きそうって思ったんだもの。クリムゾンが壊れるのはたまにだから大丈夫!
ヤナギと愉快な婚約者達の設定は、実は無駄に色々と考えてます。彼らの設定だけで普通に5000字いきそうなくらいには。使う予定は無いですけどね。