無垢の少女と純粋な青年   作:ポコ

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なんか、この2日ほどデイリーランキングにこの作品が常駐してるんですけど……お気に入りが200件くらい一気に増えてるんですけど……そして何よりも、甘すぎて味覚死んだ系の感想が20件くらい届いたんですけどぉ! 前半のシリアスについての感想が殆ど無いよ!?
過去最高の感想数とその内容に驚きです。皆どれだけルクアリがくっつくのを待ち望んでいたというのか。

感想の数が嬉しすぎたので再度三日更新。僕はやるよ。かなりやる。


16話 これから

 アリエッタを捜してルークを訪ねてきたシュザンヌ達三人に、二人で抱き合って眠る姿を目撃されてしまったルークとアリエッタ。

 その衝撃的な光景を目撃した三人は十数秒はその場で固まっていたが、いち早く我に返ったシュザンヌが滅多に出さない大声を発した事により、二人は驚きのあまり、抱き合ったままベッドから転げ落ちた。

 

 何が起こったのかを理解する間もなく、シュザンヌからの絶対零度の眼差しにより一瞬で意識を覚醒させるルーク。その視線がルークにのみ向けられている辺り、ファブレ家での男性の立場の弱さが伺いしれる。その光景を見たクリムゾンは昔からの自分の立場を思い出し、無言で目線を上に上げた。

 無言の圧力を受けたルークは、冷や汗を流しながらもその場に正座。ルークのその反応に首を傾げながらも共に正座をしようとするアリエッタだったが、スカートの中が見えてしまうから止めなさいとヤナギとシュザンヌに窘められる。それを聞いたアリエッタはルークを一目見ると僅かに頬を染め、ベッドの縁に座る事にした。

 その可愛らしい仕草に思わず口元が緩みそうになるルークだったが、その瞬間にシュザンヌからの圧力が強まり、慌てて姿勢を正す。

 

「それでルーク? 何故、貴方の部屋にアリエッタが……しかも、二人で抱き合って寝ていたのか。説明して貰えるのかしら?」

「そうですよルーク様! 恋人でも無い二人がその、ど、どど、同衾するなんて! 私だってまだそんな大胆な事、レッカ君とした事無いのに――――」

「…………ヤナギ?」

「あっ……も、申し訳ありません奥様!」

 

 状況の説明を求めるシュザンヌだったが、隣に立つヤナギが真っ赤になって要らない事まで喋り出す様子に毒気を抜かれてしまう。

 ジト目でヤナギを叱責すると、彼女は自分が何を言ったのかに気付き、耳まで真っ赤にして俯き、黙り込んでしまった。

 溜息を一つ吐き気持ちを落ち着けると、再度ルークに問いかける。

 

「はぁ……。説明、して貰えますね? ルーク」

「は、はい! 説明させて頂きます、母上!」

 

 こうしてルークは、昨夜シュザンヌ達と別れてからの内容を語り始めた……と言っても、ルークがレプリカである事を知らないヤナギが居る為に、所々をボカしながらだったが。

 

 自分で自分が信じられなくなった事。

 

 自分の秘密を知ったアリエッタが自分を嫌い、いなくなってしまうのではないかと考えると、不安で、恐くて仕方が無かった事。

 

 もう死んでしまいたいとまで思いつめていたところへ、アリエッタが自分を訪ねて来てくれた事。

 

 そして、アリエッタが自分を受け入れてくれたおかげで、生きる希望を取り戻した事。

 

 

 ――――そこまで語ると、突然シュザンヌとヤナギが自分を抱き締めてきた。

 

 

「え…………は、母上? ヤナギ? いきなりどうしたんですか?」

 

 突然の二人の行動に、戸惑うルーク。気付けば父までもが傍に着ており、静かに自分の頭を撫でてくれていた。

 

「ち、父上まで……」

「……ごめんなさいねルーク。貴方なら大丈夫だと思って話した事が、ここまで貴方を苦しめる事になるなんて思わなかったの。この愚かな母を赦してちょうだい……!」

「私も同罪だ……すまなかったルーク。お前が望むなら、いくらでも私を責めてくれて構わない」

「な……お、愚かって、何言ってるんですか母上、父上も! あれは俺に必要だったから! それに、俺はもう苦しんでなんて……」

 

 あまりにも思いつめた父と母の様子に、慌てて自分は大丈夫だと告げるルークだったが、そこにヤナギからの思わぬ叫びが届く。

 

 

「じゃあ、何でルーク様は泣いてるんですか!」

「――――え?」

 

 涙を流すヤナギにそう言われ、自分の頬に手を当てる。

 触れた頬は自身の涙で濡れていて。そこで初めてルークは、自分が今も泣いている事に気付いた。

 

「お、俺、何で……」

「わ、私はルーク様の秘密を聞かされていませんから、それがどれだけ重たい秘密なのか想像しか出来ません! けど、けど! ルーク様がどれだけ辛い思いをしたのかは、その涙を見たら私でも分かるんです!」

「ヤナギ……」

「そんなに辛かったなら、どうして我慢するんですか! どうして私にも相談してくれなかったんですか! る、ルーク君の事を弟だって……家族だって思ってたのは私だけだったの!?」

「そ、そんな事ねえ! 俺だって、ヤナギの事を本当の姉貴みたいに思ってる!」

「だ、だったら……もっと頼ってよ……アリエッタちゃんだけじゃなくて、わ、私だって、ルーク君の事を助けたいのに…………う、う゛ぅ~~~~!」

 

 ルークが聞かされた秘密というものは、ファブレ家でも禁忌と言える程の内容だろう。自分が聞く事を許されないのは、信頼されていないからではなく危険な目に合わせない為だろうという事くらいは、ヤナギも解っている。

 

 それでも。

 

 知る事を許されなくても。

 

 愛しい弟分に頼って貰えない事が悲しくて。

 

 頼ってもらえない自分が情けなくて。

 

 こうして八つ当たり気味に感情をぶつける事くらいしか、ヤナギには出来なかった。

 

「どわぁっ!? や、止めろヤナギ! そんな汚い顔を押し付けんな!」

「だっでぇ゛……!」

 

 涙と鼻水でくしゃくしゃになった顔を、ルークの服になすりつけるヤナギ。

 いつの間にかシュザンヌとクリムゾンは傍から離れ、何とも言えない表情でその様子を眺めていたが、この場にはそのヤナギの行動を良しとしない人物がいた。

 

 

 ――――ぐいっ!

 

 

「…………ふぇ?」

 

 突然服を後ろに引っ張られ、くしゃくしゃの顔のまま振り向くヤナギ。

 するとそこには、頬を膨らませて服を引くアリエッタの姿があった。

 

「…………」

「……アリエッタちゃん?」

「……離れて」

「えっ?」

「る、ルークから離れて……!」

「え……う、うん…………?」

 

 アリエッタの発言に呆気に取られ、言われるままにルークから離れるヤナギ。

 冷静になって自分の涙と鼻水で濡れてしまったルークの服を見ると恥ずかしさと申し訳なさが襲ってくるが、その感情も次のアリエッタの行動により、驚きと困惑が上回ってしまう。

 

「あ、アリエッタ? どうしたんだよ……」

「……なんか、イヤ」

「へ?」

「ルークの傍は、アリエッタの場所なの!」

 

 そう叫びルークの腕の中へと飛び込み、すりすりと胸元に頬を擦り付けるアリエッタ。

 むふーと満足げに息を吐くその姿は、飼い主に自分以外の匂いが付くのを嫌がるペットのようだった。

 

 アリエッタがルークに抱き着く事は今までも度々見られた光景だったが、今見ているものはこれまでとはどこか質が違った。

 その事は三人ともすぐに気付くが、こうなった原因が全く分からず。特にルークから引き離されたヤナギは特に混乱しており、シュザンヌにくしゃくしゃになった顔を拭くようにと言われてやっと我に返り、慌ててハンカチで顔を拭き始めた。

 

「す、すいません奥様! 御見苦しい所をお見せしてしまい……あ、そ、それにルーク様にまで失礼な事を!」

「それはいいのよヤナギ。貴女がそれだけルークを大切に思ってくれているという証なのだから。これからも、ルークの事をお願いしますね」

「あ……ありがとうございます奥様!」

 

 自分の先程の感情のままに吐きだした言葉を思い返し青褪めるヤナギだったが、シュザンヌはこれからもルークを頼むと優しく微笑んだ。

 

「……それで、あのアリエッタの変わり様は何なのだ?」

 

 クリムゾンの言葉に気を取り直すと、揃ってルーク達の方に目を向ける。

 そこには先程と変わらずルークの胸に頬を擦り付けるアリエッタと、顔を真っ赤にしながら両手をアリエッタの背中で所在無さ気に動かすルークの姿があった。

 

「…………ルーク様、もしかしてアリエッタちゃんを抱き締めようとしてませんか?」

「……そう、だな」

「そうとしか見えないわね……とにかく、どうしてこうなったのかルークに直接聞く事にしましょう。

 ルーク! いつまでそうしているつもりですか! アリエッタも、一先ず離れなさい!」

「あ、す、すいません母上!」

「あ……ごめんなさい、奥様……です」

 

 そう言って話を纏め、二人を呼ぶシュザンヌ。

 二人の世界に入りかけていたルークだったがすんでの所で呼び戻され、慌てて両手を背中に回す。アリエッタも自分達以外が居る事を思い出し、慌ててルークから離れた。

 明らかに自分達の事が眼中に無かったその反応に、シュザンヌは頭が痛いとばかりに額を手を当てた。

 

「はぁ……もういいです。

 ルーク。アリエッタのおかげで一先ずは解決した事は分かりました。私達がしなければならない事をしてくれたアリエッタには、頭が上がりません。

 ――――ですが、昨日あった事は、それだけではありませんね?」

「うっ……そ、それは、その……」

「まさか、何の理由も無くアリエッタを布団に引き込んだ……などとは言いませんね?」

「そ、そうですね。それには、深い理由が色々とあり……」

 

 シュザンヌに問い詰められ、焦るルーク。

 アリエッタと恋人になったと言うだけなら、こうも躊躇はしなかっただろう。

 

 だが、恋人になった過程が明らかに問題だった。

 

(い、言えねえ……アリエッタに無理やりキスをして、恋人になったなんて……!)

 

 ――――恋について理解しきれていない無垢な少女の唇を奪った。

 

 思いが通じあっていると確信しての行為ではあったが、第三者に伝えるにはあまりにも犯罪の香りがする内容であり。ルークも今思い返してみれば、いくらアリエッタに自分の気持ちを理解して欲しいと焦ってていたとは言え、一歩間違えばアリエッタに拒絶されても可笑しくない行為だったと今になって顔を青褪めさせていた。

 

「……ルーク、顔色が悪いですよ。そんなに言えないような事なのですか?」

「いえその、別にそういう訳では……」

「…………」

 

 遂に言葉を発さず無言で圧力をかけてくるようになったシュザンヌに対し、どう言えばこの場を収める事が出来るかと、必死に頭を回転させるルーク。

 ヤナギとクリムゾンは二人の無言の戦いに冷や汗を流しながら傍観に徹する事しか出来なかった。

 

 完全に膠着していたこの状況だったが、そこに今まで黙っていたアリエッタが遂に爆弾を投下してしまった。

 

「ルーク、どうしたの? 何で悩んでるの?」

「あー……そのな、何で俺とお前が一緒に寝てたのかを皆に上手く説明しようとな……」

「…………? ルークがアリエッタにキスをして、恋人になったからだよ?」

 

 

 

 

 ――――その瞬間、時が止まった。

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

「それで貴方は、恋という感情を理解してもらう為に、アリエッタにキスをしたと。何も知らないアリエッタに、キ ス(・ ・) を !」

「はい。その通りでございます……」

「はわっ、はわわわわわわ…………!」

「る、ルークは悪くない、です! アリエッタも、嬉しかったから!」

(…………そのような大胆な事をするとは……褒めるべきか、叱るべきか…………むう……)

 

 肩を怒らせながら、昏々とルークを問いただすシュザンヌに、背中を丸め頬に赤い紅葉を作ったルーク。顔を真っ赤にしながらアリエッタを抱き締めるヤナギに、必死にルークを庇おうとするアリエッタ。そして、何を言えば良いのか考えが纏まらず、険しい表情で喧噪を見つめるクリムゾン。

 

 一言で言えば、混沌だった。

 

 アリエッタの爆弾発言の直後、またも真っ先に我に返ったシュザンヌが、愛息子の頬に張り手一閃。床に倒れこむルークに追い打ちをかけようとしたところを必死にアリエッタとヤナギに止められるも中々怒りは収まらず。今もこうして普段のシュザンヌとはかけ離れたネチネチとした言い回しでルークに怒りをぶつけていた。

 

 一通り話を聞き終わり、取り敢えずは説教も一段落したところで溜息をつくシュザンヌ。もうこの朝だけで何度溜息を吐いたか分からないと、思わず苦笑してしまった。

 

「はぁ……。まぁ、アリエッタが受け入れたのなら、もうこれ以上は言いません。

 それでルーク。貴方はこれからどうするつもりですか?」

「え? ……えっと、母上。どうする、とは?」

 

 その言葉に、更に大きく溜息を吐いてしまう。

 まさかここまで急にルークとアリエッタとの距離が縮まるとは予想していなかったが、こうなっては早急に手回しをしなければならないと夫に目配せをする。

 妻が何を言いたいのかを理解したクリムゾンは、妻に代わりルークに問いかける。

 

「ルーク、理解していないのなら教えてやろう。

 お前は今、ナタリア殿下と婚約しているのだぞ? そうだというのに、何も考えずにアリエッタと交際が出来ると、本気で思っているのか?」

「え? で、でも俺は……」

 

 そこまで言い、ちらりとヤナギを一瞥するルーク。

 大方、自分はレプリカだからオリジナルのルークがした婚約が関係が無いとでも考えているのだろうと、息子の考えを予想するクリムゾン。

 黙って首を横に振ると、ルークが考えるほど簡単な事では無いと言葉を続けた。

 

「婚約とは、そう簡単に解消出来るものでは無い。例えどんな理由があろうとルーク・フォン・ファブレ(・・・・・・・・・・・・)ナタリア・キムラスカ・ランバルディア(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)間の婚約は未だ有効なのだ」

「そんな……」

 

 自分がルークを名乗っている現状、自分とナタリアの婚約は解消されない。言外に父がそう言っていると理解したルークは、青褪めた顔で父とアリエッタを何度も交互に見るしか出来なかった。

 

「そ、それじゃあ俺は、アリエッタと恋人になれないんですか!? ナタリアと結婚しなきゃ駄目なんですかッ!?」

「そんな……!」

 

 アリエッタもようやく自分とルークが恋人になる事がそう簡単な事では無いのだと理解出来たのか、目に涙を浮かべてクリムゾンを見つめる。

 

「……だから、聞いているのだろう。ナタリア殿下との婚約を解消する事は、そう簡単な事では無い。それでもお前は、アリエッタと生涯を共にしたいか? 殿下が嫌だという理由ではなく、アリエッタだから共にいたいのか?

 ……どのような苦難もアリエッタと共に乗り越えると。この場で私達に誓えるか?」

「…………っ!」

 

 気付けばクリムゾンもシュザンヌも、そしていつの間にかアリエッタから離れ、夫妻の傍に付いていたヤナギも。真剣な表情でルークとアリエッタの二人を見つめていた。

 嘘偽りは許さないというその眼差しに一瞬息を呑むルークだったが、不安気に自分を見つめるアリエッタを一瞥すると強く頷き、真っ向からクリムゾンを見返す。

 

「俺は……俺は、まだ知識も実績も力も足りない未熟者です。アリエッタと恋人になるってだけでどれだけ苦労しなきゃなんねえのか、殆ど分かりません。

 けど、けど! 俺はアリエッタと一生一緒に居たい! アリエッタじゃなきゃ嫌だ! コイツと一緒になる為なら、どんな事だって乗り越えてみせます!!」

「ルーク……」

 

 ルークの決意を込めた誓いを聞き、涙ぐむアリエッタ。

 だが、その涙を腕で乱暴にゴシゴシと拭き取ると、目元が赤くなった瞳でルークと共に三人を見つめた。

 

「あ、アリエッタも! まだ、難しいことはわからない、です……けど! アリエッタも、ルークと、ずっと! ずっと一緒にいる! いたい! だから、アリエッタも頑張るから! その、る、ルークとずっと……ずっと…………!」

 

 言葉の途中で嗚咽が混じり、言葉にならない声を上げるアリエッタ。それでも目を逸らす事は無く。それだけでどれだけルークを大事に思っているのかは痛い程に伝わった。

 

「…………分かった。ナタリア殿下との婚約は、こちらで何とかしてみせよう。流石にすぐに解消は無理だろうが、凍結は出来るだろう」

「あら、それは私の仕事よ? 貴方には、別にお願いする事があるもの」

「わ、私もルーク様とアリエッタちゃんが結ばれるなら、何でも協力しますから!」

 

 先程までの硬い表情を崩し、次々と自分達に協力してくれると口に出す三人。

 思いが伝わったと安心するルークとアリエッタだったが、慌てて顔を引き締めると、自分達も出来る事は無いかと問いかける。

 

「あ、あの! 俺も何か……!」

「アリエッタも……」

「いや、二人には今はまだ急いでしてもらう事は無い。とにかく今まで通りに、力を付ける事に専念して欲しい」

「……分かりました」

「…………はい」

 

 クリムゾンにはっきりと足手纏いと言われた二人。

 思わず落ち込んでしまうが、そんな二人の頭をクリムゾンが苦笑しながら撫でつけた。

 

「そう落ち込むな。こちらの調べものが終われば、お前たちにも動いてもらう時が来るのでな。それまでに少しでも実力をつけていて欲しいのだ。剣術でも、譜術でも、知識でもな」

 

 そう言うと、シュザンヌを連れ添いルークの部屋を後にするクリムゾン。

 ヤナギもその後を追おうとするが、何かを思い出した様子で小走りでアリエッタの傍へとやってきた。

 

「ヤナギ? どうしたの?」

「アリエッタちゃん。これ、昨日落としてたでしょ? 奥様が拾っててくれたの」

「あっ……!」

 

 そう言ってアリエッタに手渡されたのは、昨日ヤナギと二人で選び、ルークの為にと購入したプレゼントだった。

 

「ありがとう、ヤナギ!」

「お礼なら奥様にね。もう落としちゃダメだよ?」

「うん!」

 

 アリエッタの満面の笑顔を見たヤナギは、アリエッタの小さな頭を撫でてから、軽く手を振りながらルークの部屋を後にした。

 

「ヤナギのヤツ。何を渡したんだ?」

「あ……あの、これはね……! その、ルークに!」

 

 アリエッタが受け取った小さな紙袋を、興味深そうに覗き込むルーク。

 ルークの顔が近くにある事に気付いたアリエッタは僅かに頬を染めながら、両手でルークにそれを差し出した。

 

「へ? これってアリエッタが貰ったんじゃねえのか?」

「違うの! あのね。昨日、ヤナギとお出かけした時に、ルークにお土産……プレゼントを買って……その、頑張って選んでプレゼントでね……」

「……俺に?」

「うん!」

 

 恋人からの、初めてのプレゼント。

 そうだと分かると、ただの紙袋がどんな宝石にも勝る宝石に見えてきたと、ルークは冗談抜きでそう感じた。

 

「あ、開けていいのか?」

「うん! ……いらないものだったら、ゴメンね?」

「――――っ!」

 

 上目使いで、恥ずかしそうに微笑むアリエッタ。

 二人の身長差からアリエッタが見上げてくるのはいつもの事の筈だが、何故かこの上目使いは、ルークの精神に多大な衝撃を与えた。

 顔を真っ赤にしながら、慎重な手つきで包装を解くルーク。

 そして、中から出てきた物は…………。

 

「これは……髪紐、か?」

 

 部屋の灯りで淡く金色に照らされた、美しい髪紐だった。

 

「うん! あのね、ルークの長い髪はアリエッタ、大好きだけど。戦う時は邪魔になるかもって思って……。だから、ヤナギと一緒にルークの髪に合いそうな色のを選んで…………ルーク? どうしたの?」

「何でもねえ。何でもねえから……! あ、ありがとうな!」

「あ……うん! えへへ……」

 

 笑顔でどうやってプレゼントを選んだかを語るアリエッタを見ていると、どれだけ自分を思ってこのプレゼントを選んでくれたのかが伝わってきて。そうしている内にどうしようもない嬉しさと、何とも言えない照れくささが混じり合った感情を持て余したルークは、顔どころか首まで真っ赤にしながらそっぽを向き、礼を言う事しか出来なかった。

 

「ルーク、だーい好きっ!」

「~~~~~~っ!!」

 

 ……自分がアリエッタに勝てる日は、一生来ないかもしれない。

 何故か父の後ろ姿を幻視しながら、そう思ったルークだった。




長ーい! 甘ーい!
ほら、甘いのが皆好きなんでしょう? くそう! 自分で書いててなんだけど、何だかとっても畜生!

次の投稿は、流石に三日置きでは無理かな。自分はプロットは大雑把にしか立てない上に、書き貯めもしない作者なんで。


後、5月からはFGOのイベント始まるから(ボソッ

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