無垢の少女と純粋な青年   作:ポコ

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 少し間が空きました。この先の展開を考えてたら、原作に無いイベントばかり思いついてしまい、原作沿いの話をどう改変するかがイマイチ思いつかないのです。ジェイドが有能(予定)なので、寄り道系のイベントがかなり省略されるけど。コーラル城なんか、絶対に行かないし。
 勿論、大まかな話は考えてますが。アリエッタをどこで合流させるかとか、そもそもどうやってティアをファブレ家に侵入させようかとか……ぶっちゃけファブレ家を強化しすぎて、ティア如きが侵入できそうにない!
 まぁ原作からして、精鋭揃いの筈の白光騎士団がレベル1桁のティアの譜歌に誰一人として抵抗できなかったのが不思議で仕方ないんだけど。

 あ、今回ヤナギ以外の烈火の炎のキャラが出ます。台詞は無く、ほぼ名前だけですが。


12話 新しい約束

 ルークとクリムゾンとの模擬戦から幾数日。

 あの戦いから何処か吹っ切れた様子のルークは、クリムゾンが修行に参加できる日は修行の最後に必ず模擬戦を申し込むようになっていた。

 当然、最初の戦いで使ったような絡め手は歴戦の勇士であるクリムゾンにそう何度も通じる筈が無く、毎回一方的にやられているのだが。それをヤナギが治療し、アリエッタが涙目でクリムゾンを睨み、クリムゾンが狼狽え、それをルークが諌める所までがここ数日の一連の流れになっていた。

 

 ルークを慕うアリエッタとしては、いくら修行とはいえルークが必要以上に傷つく事は耐え難い事なのだが、ルーク自身が少しでも強くなる事を望んでおり、自分に止める事は出来ないと理解していた。尤も、ルークが何の為に強くなろうとしているかについては、全く理解していないが。まさか主であるルークが、従者である自分を護る為に強くなろうとしている等とは、想像もしていないアリエッタだった。

 

 

 さて、ルークとクリムゾンとの模擬戦はこうして見守っているアリエッタだったが。努力家である彼女が強くなろうとしている主を見て何も行動を起こさない筈もなく。アリエッタ自身も強くなる為にある人物から師事を仰いでいた。

 

 アリエッタには、二年足らずでオリジナルである導師イオンの守護役になれるだけの才と、目標を決めれば決して諦めない情熱がある。

 七年間の魔獣と共に生きてきた経験の為か、残念ながら人間の技術の粋ともいえる武術には全くと言って良い程に適正が無いアリエッタだったが、接近戦に才が無いという訳では無く。野生の中で磨かれた動体視力や身体能力、反射神経には目を見張るモノがあり、単純な“速さ”で言えば、今のルークよりも上であった。

 それを知ったルークはその日一日、アリエッタを胡乱気な目で見つめていたが。自分が護りたい少女が自分よりも強いとなると、男の矜持とでもいうべきものが傷つくのは当然なのだが。少女であるアリエッタにその辺りの機微が分る筈も無く、ルークに嫌われたのではないかとまた涙目になっていたが。結局その騒動は、ルークがシュザンヌに一喝される事で収まる事になった。

 

 

 このように接近戦でも充分すぎる程に力のあるアリエッタだったが、彼女の本領は譜術師としての才にある。

 

 先にも述べたように人間の技術とは相性が悪いアリエッタだったが、ダアト式譜術という、ダアトでは究極の譜術とも言えるものを使うイオンが、己の守護役予定であったアリエッタが譜術を使えない事を是とする筈もなく。更に言えばオリジナルのイオンは気を許した相手に対してはやや嗜虐趣味と言うか、スパルタ気味な面もあり。アリエッタが守護役を目指したいと言った翌日から、譜術とは何たるかをアリエッタに叩き込むことにしたのだ。

 アリエッタの身体能力を知っていたイオンとしては、格闘戦の補助として使えるようになれば良いという考えだったのだが。彼の予想に反して、アリエッタは譜術師としての才能を開花させたのだ。それも、第一音素である“闇”と、第六音素である“光”という相反する属性である二つの音素に特化した、変わり種の才が。

 それを知ったイオンは教育熱が上限知らずに上がり、アリエッタは泣き言を零しながらもそれに応え、二年後にはまだ未熟ながらも導師守護役になれるだけの譜術師となったのだ。

 

 

 イオンの死を知りダアトと決別したアリエッタだったが、元導師守護役と言っても彼女はまだまだ未熟であり、守護役を続けながらも譜術師としての修練を積み重ねる段階だった。

 だが、ファブレ家には単純な実力者としてならクリムゾンや一部の白光騎士団員等、今のアリエッタよりも強い者が何人かいるのだが、アリエッタが師事出来るような純粋な譜術師はおらず。彼女の譜術師としての能力をファブレ家で伸ばす事は困難であり、アリエッタ本人も自身が伸び悩んでいる事に歯痒い思いを隠せずにいた。

 

 

 が、ここでアリエッタの現状を救ったのがヤナギだ。

 

 生傷の絶えないルークの治療役であるヤナギだったが、日に日に強くなっていくルークの様子を喜ばしく思いながらも何かを悩んでいる様子のアリエッタが気になったヤナギは、その日の夜に同室のアリエッタに詰め寄り、強くなりたいが師事する相手も教材も無いという彼女の悩みを聞き出した。

 

 それを聞いてからのヤナギの行動は早かった。

 愛すべき義妹に対し『お義姉ちゃんに任せて!』と一言告げると、翌日アリエッタが起きる頃にはヤナギの姿は屋敷に無く。朝食後にシュザンヌに尋ねると、昨夜突然、一日だけ有給が欲しいとヤナギが訴えに来たというのだ。

 突然すぎる申し出に疑問を覚えたが、余程大事な用事があるのだろうと判断したシュザンヌは笑って許可を出したというのが、今日ヤナギがいない理由だった。

 有給を取ってまで何処に行ったのかという疑問は残ったが、ヤナギなら大丈夫だろうという結論にその場の全員が達するまでに、そう時間はかからなかった。

 

 そして翌日。早朝に意気揚揚と帰ってきたヤナギは、やってやったとばかりの笑顔でアリエッタの下にに襲来。寝ぼけ眼のアリエッタの頭をこれでもかと言わんばかりに撫でまわしながら、アリエッタの為に譜術の教師を呼んだと爆弾発言を落としたのだった。

 

 

 その時は頭が目覚めておらずに生返事で流したアリエッタだったが、朝食の場で改めてヤナギがシュザンヌ達にその報せをすると、目を丸くして驚いた。ヤナギが自分のためにそこまでしてくれたという事にも驚いたが、それよりも希少な譜術師をどこで見つけてきたのかという事にこそ驚いた。

 シュザンヌ達三人も驚きを隠せない様子だったが、昨日ヤナギが向かったのが婚約者の実家だと話すと、苦笑しながらも納得する様子を見せ、結果アリエッタだけが困惑する事になった。

 

 

 そして朝食後。使用人としての仕事を終えてからいつも通りに修行場である中庭へと向かったアリエッタだったが、そこには見慣れない女性が二人立っていた。

 先に中庭に来ていたルークとヤナギが、硬い言葉遣いながらも親しげに話している様子を見て、ファブレ家に縁のある人物だと判断したアリエッタは、おずおずとだがルークの下へと向かう。

 

 アリエッタが来た事に気付いた女性二人は、それぞれの反応を見せた。

 裾が足首まで隠すような長さの黒衣のローブを纏い、肩まで黒髪を伸ばした妙齢の女性は、母性的な笑みをアリエッタに向けた。その笑顔を見たアリエッタは、その女性に対しては僅かに警戒心を緩めた。

 

 が、もう一人の女性が問題だった。

 黒く美しい長髪を腰まで伸ばした白いローブを着た女性だったが、露出という言葉からは縁遠かった先の黒いローブの女性とは違い、その豊満な胸の谷間が見える程にその白いローブを大胆に着崩していた。脚の太腿が見えるようにスリットまで入っており、ここまで着崩せば逆に動き辛くなるのではないかと言わんばかりの恰好だったが、当の本人は全く気にした様子は無く。

 その妖艶な恰好とは裏腹に無邪気とも言える明るい笑顔を見せると、アリエッタが僅かに気を緩めた瞬間に一瞬で彼女の背後に回り、その小柄な身体を抱き締め、可愛い可愛いと連呼しながら頬ずりまでし始めたのだ。

 

 何が起こったか分からなかった一同だったが、数秒程して我に返るとアリエッタは手足をじたばたと動かして拘束から逃れようとするも、白いローブの女性はびくともせず。

 ヤナギは『ルイさん! アリエッタちゃんを抱き締めるのは私の役目ですー!』等とアリエッタを拘束している女性の名前らしき名を叫びながら二人を引き離そうとし。

 黒いローブの女性は額に手を当てながら呆れたように溜息を吐き。

 ルークに至っては顔を真っ赤に染めてルイと呼ばれた女性とアリエッタとの間で目線を彷徨わせ。

 騒動の張本人であるルイは、かんらかんらと甲高い声で楽しそうに笑っていた。

 

 

 見かねた黒いローブの女性がルイの頭頂部に鋭い手刀を喰らわせて沈黙させ、ようやく騒動は沈静化した。

 涙目で自分を睨んでくるルイをよそにカゲロウと名乗った黒いローブの女性は、簡潔に自分達の自己紹介を済ませた。

 カゲロウはヤナギの婚約者の母……つまりヤナギの義母であり、ルイは彼女の一族に仕える家系の一人だと言い、ヤナギに頼まれてアリエッタの譜術の師になるために来たというのだ。

 カゲロウは優れた第一音譜術師であり、ルイは一族でも三本の指に入る程の第六音譜術師。ルイに至っては、光に比べればやや劣るが、第五音譜術師でもあった。と言っても、第五音譜術はFOFと呼ばれる音素変換技術を使わなければ扱えないアリエッタにとっては、あまり意味の無い事だが。

 

 突然決まった譜術の師の登場に戸惑いを隠せず、先の騒動でルイに苦手意識を持ったアリエッタは師事を受ける事に眉を顰めたが、ヤナギの根強い説得とルイからの押しの強すぎる勧めに、結局アリエッタの側が折れる事になった。

 

 カゲロウはともかくとして、第一印象は最悪であったルイとアリエッタだったが、意外にも師としてのルイには先のようなふざけた雰囲気は一切無く。それを感じたアリエッタも、真摯にルイの教えを受けるようになった。

 逆にカゲロウは術師としての実力は確かだが、師としては甘すぎる面があり。度々ルイに指導が温すぎると叱咤を受けては肩を落とす姿が頻繁に見られた。

 修行中とそれ以外では真逆とも言える二人の性格には次第にアリエッタも気を許し、やがてそれまで以上に修行に熱を入れる事になり、今までの伸び悩んでいた遅れを取り戻すかのようにメキメキとその実力を伸ばしていく事になった。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 こうして日々を修行に励むルークとアリエッタの二人。

 そんなある日。ルークとクリムゾンがいつものように模擬戦をしていた日のことだった。

 

「双牙斬ッ!」

「虎牙破斬ッ!」

 

 ガンッ!! と、木刀のぶつかり合う音が中庭に響く。

 互いの技の衝突と共に二人同時に後方へと飛びのき、間合いを開けた。

 

「はぁっ……はぁっ……」

「ふむ……遂に正面からでは弾き飛ばせなくなったか」

 

 息の荒いルークをよそに、息子の成長を喜ぶクリムゾン。

 二人が同時に放った技は、クリムゾンがルークの強さを認める事になったあの模擬戦での再現だった。

 あの時はルークが放った双牙斬が一方的に弾かれたが、今は真っ向から打ち合える程にルークは成長していた。

 目に見えて息子が成長してくれた事が、クリムゾンにとっては何よりも嬉しい事だった。

 

「ルーク、今までよく頑張ったな」

「……父上?」

 

 模擬戦の終了を告げるとルークに近付き、わしゃわしゃと乱暴に息子の頭を撫でる。

 突然の父の行動に困惑するルークだったが、頭を撫でられているうちに嬉しそうに眼を細めた。

 

「…………よし。頑張った息子には褒美をやらねばな」

「え、褒美ですか!?」

 

 そう言うと、駆け寄ってくるアリエッタとヤナギの方へと目を向けるクリムゾン。

 

 

「アリエッタ。ルークをフーに乗せて、飛んでもらえるか?」

「「「!?」」」

 

 

 褒美という言葉に目を輝かせていたルークだったが、クリムゾンの口から出たその内容に、やって来たアリエッタ、ヤナギと共に驚きを顕わにした。

 

「ち、父上? 俺は屋敷の敷地から出たら駄目なんじゃ……」

「ああ。だから、飛ぶとは言ってもこの屋敷の上空だけになるな」

「上空……というと、この屋敷のすぐ上ですか?」

「えー……なんだよ……それじゃあ屋根の上に上るのと変わんねえじゃねーか」

 

 屋根の上に上がる許可を出す事と似たような褒美ではないかというヤナギの言葉に、明らか気を落とすルーク。

 そんなルークを気遣わしげに見守るヤナギとアリエッタだったが、クリムゾンが珍しくニヤニヤという擬音が似合いそうな笑みを浮かべている事に疑問を覚えた。

 

「旦那様……?」

「ん? ああ、スマンなアリエッタ。二人が勘違いしている様子が可笑しくてな」

「勘違い……ですか?」

「ああ。私は上空(・・)と言ったのだぞ? 屋根と同じ高さでは空とは呼べまい」

「え!? でも、屋敷の敷地からは……」

 

 父の回りくどい言い方に何を言いたいのかが分からず困惑するルークとヤナギだったが、次のクリムゾンの言葉に大きく目を見開く事になった。

 

 

「真下に屋敷があれば、どこまで高く飛んでも屋敷の敷地内だろう?」

 

 

 屁理屈のようなその言葉に、唖然とする二人。アリエッタだけは意味がイマイチ伝わらず、不思議そうに首を傾げていたが。

 そんな三人を見て、手品の種を明かしたかのように得意気に笑うクリムゾンだったが、一頻り笑うと真剣な表情でルークを見つめる。

 

「ルーク。お前は近い内に外の世界へ出る事になるだろう」

「え……」

「だから、私はその前にお前に見て欲しいのだ。屋敷という狭い世界しか知らないお前に、私達の生きるこの広大な世界をな」

「父上……!」

 

 父の言葉に、感極まるルーク。

 そんな息子の頭を再び軽く撫でると、次にアリエッタの方へと向き直った。

 

「アリエッタ。ルークと一緒にこの世界(・・)を見てくれるか?」

「……? はい。分かった……です」

 

 クリムゾンの妙な言い回しに首を傾げるアリエッタだったが、ルークと一緒にフーに乗って欲しいという意味だと受け取ると、返事をしてからフーを呼ぶ為に離れて行く。

 

 その後ろ姿を、クリムゾンが眩しいものを見るように目を細めて見つめていた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

「すっげぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええッッ!!!!」

「ルーク、耳元でうるさい、です……!」

 

 ファブレ家の遙か上空。

 雲に手が届きそうな高さまでフーに乗り飛び立った二人。

 いくらフーが他のフレスベルグと比べて巨体だと言っても人二人を乗せても余裕がある程ではなく、ルークが腕の中にアリエッタを抱えるようにして、フーの背中へと乗る事になった。

 初めて見る広大な世界に、感激の雄叫びを上げるルークだったが、そのルークの腕の中にいるアリエッタとしては堪ったものではなかった。

 

「いや、だって、こんなん叫ばずにいられるかよ! 見てみろよ! 城があんなに小さいんだぜ! 屋敷なんかもっと小さいんじゃ――――」

「ルーク、危ない!」

「へ? あ、ああ悪い悪い」

 

 興奮のあまり、自分達がつい先ほどまでいた屋敷を見ようとして、真下を向こうとするルークを必死で止めるアリエッタ。普段の二人とは逆転し、子供のようなルークの面倒をアリエッタが見るようになってしまっていた。

 

「すげー! あの木がすげぇ沢山生えてるのが森で、遠くに見える青いのが海なんだよな! それで、えーと……王都からずっと西に行ったらベルケンド港があるんだっけか? なあアリエッタ、西ってどっちだ?」

「あっち、だけど。ここからじゃ見えないよ?」

「マジかよ!? こんなに遠くまで見えるのに、それよりもまだ遠いのか!?」

「うん。それにダアトは、ベルケンドよりも遠くにあるの」

「はぁー……すっげえなぁ……」

 

 見える物全てに感動しながらも、シュザンヌに教え込まれた地理と照らし合わそうともするその姿はシュザンヌの教育の賜物だろう。

 ルークと二人きりという事で敬語を無くしたアリエッタが分かる範囲で解説し、ルークからは見えないがその顔には満面の笑みが浮かんでいた。

 

 一頻り驚き通すと、満足したと息を吐くルーク。

 

「すげぇなー。俺が今まで生きてた世界なんか、どれだけ狭いんだっつー話だよな」

「うん」

「……そこは素直に頷くとこか?

 まぁいいか。けど、アリエッタはこの世界を俺よりは知ってるんだよな」

「え? うん……そう、なのかな? けど、アリエッタもダアト以外はよく知らないし……」

「ん? ダアトを出てから色々なとこに行ったんじゃねえのか?」

「…………あの時は、ママの森を出てからは、ただ歩いてただけだから、どこに行ったかとか、覚えてないもん……」

「げ……」

 

 ぽろっと零れたルークの迂闊な言葉に、当時の辛さを思い出し落ち込み始めるアリエッタ。

 落ち込ませてしまった事に焦りながらもどうすれば良いか分からず。慌てたルークはアリエッタの頭を先程自分が父にされたように乱暴に撫でながら、強引に話を逸らした。

 

「ルーク、何するのー!」

「あー本当に世界って広いんだな! 父上はもうすぐ外に出れるって言ってたけど、こんなに広かったらどこに行けば良いか分かんねーなー!!」

「……むー」

 

 露骨に話を逸らそうとするルークに対し、頬を膨らませ不満そうにするアリエッタ。

 ルークは腕の中から見上げてくるその不満気な視線を感じながらも、気づいていないフリをしてそのまま話を進める事にした。

 

「そ、そうだ! 俺が外に出る事になったら、アリエッタが一緒に来てくれよ!」

「……え?」

「んだよ。お前は俺付きの使用人なんだから、付いてくるのは当たり前だろ? 俺よりは世界を知ってんのは間違いねーんだから、サポートくらい出来るだろ?」

「…………アリエッタと、ルークが、一緒に世界を回るの?」

「……何だよ。嫌なのか?」

「う、ううん!」

 

 共に世界を回ろうというルークの言葉に、思わず息を呑むアリエッタ。

 

 それは、昔イオンと二人で話した事のある夢だったから。

 

 

『いつかアリエッタと二人で、この窮屈なダアトから飛び出せたら良いなあ。それで世界中を見て回るんだ! きっと楽しいだろうなー…………ま、無理だけどね。腐っても導師であるボクが、そんな好き勝手出来る訳が無いし』

 

 

 何気ない会話の中の、大事な思い出の一欠けら。

 

 所詮叶う訳が無いと、イオンの渇いた笑みと共に失くした筈の夢。

 

 その夢を、今の主であるルークが言いだした事に驚いて、それ以上に嬉しくて。

 

「うん! アリエッタ、ルークと一緒に世界を見て回りたい!」

「おっし! そんじゃあ約束な!」

「うん! うん! 絶対の約束だから!」

 

 以前夢を話してくれた相手(イオン)とは違う(ルーク)との、新しい約束。

 

 今度こそはこの約束()が叶いますようにと、アリエッタは願う。

 

 

 

 ――――そしてその約束は、近い将来、予想だにしない形で叶う事になる――――




ふう。なんとか書けました。本当は真実を話し始めるとこまで行きたかったんだけど、アリエッタの師匠の話がちょっと長くなりすぎました。
彼女らは原作に絡む事は無い、ただのアリエッタ強化要員なのでご安心を。



……まぁ、彼らの設定は考えてるんですけどね。出す気は無いけど、設定は考えるの楽しいんです。簡潔に八竜達の設定だけ書いとこう。興味ない人はスルーして下さい。


◇ナダレ(崩)
20歳。女。
第五音素術師。圧縮と同時展開に長けており、圧縮された数多の火球を雪崩のように放つものが得意技。
凛とした女性で自他ともに厳しいが、努力する者が大好きで、目にかけた相手は絶対に見捨てない。

◇サイハ(砕破)
22歳。男。
第五音素術師。第三音素術師としての適性もあり、風と炎の音素を混ぜ合わせた炎の刃による接近戦を好む。
真面目な兄貴分という性格で、時折ルークの良き話し相手にもなっていた。

◇ホムラ(焔群)
35歳。男。
後頭部以外の頭髪を剃っている、ストイックな鞭使い。
第五音素術師だが、術師としての能力は低い。が、低い火力を活かした尋問役としての能力は侮れない者があり、隠密としては随一の者。

◇セツナ(刹那)
26歳。男。
天災と呼ばれる第五音素術師。歴代の一族の中でも最大の火力を持つが、制御が出きず。視界に入った者は敵味方問わずに焼き尽くしてしまう。
本人の性格は至って温厚だが、視界に入った人間を燃やしたくなる殺戮衝動があるため、普段は布で目を覆っている。

◇マドカ(円)
32歳。男。
小太りで丸坊主な第六音素術師。第五音素術師としての能力も類稀なものであり、火球を起点にした光の障壁は驚異的な防御力を誇る。
アリエッタの師匠になる可能性のあった人物だが極端に口が悪く、アリエッタの教育に悪いという事でヤナギが却下した。根は割と良い人。

◇ルイ(塁)
23歳。女。
第五音素術師にして第六音素術師。マドカと似た素養を持つが、防御に特化したマドカとは違い、ルイは幻影に特化している。ホムラと組んでの潜入工作が主な任務。
任務、修行時は容赦が無いが、普段は気の良いお姉ちゃん。露出が高いため、サイハやホムラが日々頭を悩ませている。何やらセツナと良い雰囲気という噂が。

◇コクウ(虚空)
67歳。男。
先代当主。単純な実力では歴代一の第五音譜術師。
ナダレ以上に圧縮に長けており、火球から撃ちだす熱線は万物を貫く。
やる時はやるのだが、普段はただのエロジジイ。カゲロウやナダレの乳を揉んでは、オウカやサイハにボコられている。ルイの乳には恥じらいがないからという理由で手を出さないが、本当のところはセツナが怖いからだとか。

◇オウカ(桜花)
42歳。男。
今代当主の第五音譜術師。火力は然程でもないが、彼が放つ炎は敵を燃やし尽くすまで決して消えない。
妻であるカゲロウを溺愛しており、しょっちゅう手をだすコクウとは犬猿の仲。息子二人とは親子というより喧嘩友達のような間柄。


時間が無いので、以上!

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