ランサーとバゼットは部屋の中でノートパソコンを開き、動画に見入っている。
「ランサー、ついにFateの新アニメが始まりました!」
「おうよ、オレの出番も多いぜ!」
そう、ファン待望のFate/stay night [Unlimited Blade Works]のアニメが放映開始になったのだ。
「ランサーはプロローグ、第一話と大活躍でしたね」
ランサーは物語の前半からアーチャーと戦ったり、セイバーと戦ったり、士郎の胸を突き刺したりと忙しかった。むろん、アニメの中の彼がだが。
「なんといってもstay nightの中でオレが一番活躍したのはUBWルートだからな」
「そして、PS vita版 Fate/hollow ataraxiaの発売も近づいてきました」
「おお、そうだった」
今シーズンは新アニメに続き、フルボイス付きのコンシューマ版のhollow ataraxiaも発売されるのである。何と実り多き秋であろうか。
「ふふふ、これでようやく皆も私がダメットなだけではないと理解してくれるでしょう」
「他の作品ではほとんどお笑いキャラだったしなあ、アンタ」
「hollow ataraxiaではランサーの出番も多いですよ」
「ええと、バゼット。それはアンタの胸を貫いたりとかなんだが……」
何はともあれ、このFate新作品ラッシュによってランサーとバゼットの不運っぷり、いや活躍が多くの人に伝わるはずなのである。
「そして」
バゼットはノートパソコンのブラウザを立ち上げ、アドレスバーにカタカタっと文字を打ち込んだ。画面にWeb小説サイトが表示される。
「このWeb小説サイトでもFateの作品が続々と更新され、新作も増えています!」
「おお、新アニメに刺激されたのか、みんなどんどん投稿してるな!」
このWeb小説サイトにはFateの二次創作もたくさん載っているが、アニメが始まってから更新頻度が上がった作品も多い。作者の皆さんのやる気が伺える。
さて、Fateの二次創作では原作で非業の最後を遂げたキャラクターが救済されたり、強化されて聖杯を勝ち取る物語がたくさん書かれている。
「ランサー、ふと思ったのですが」
「ん、なんだ?」
バゼットは原作が「Fate/」の作品一覧をクリックしては開いて内容を見ている。
「このサイトに載っているFate作品を一通り眺めてみたのですが、なぜランサーと私が無双して聖杯をGETするFateのIFがないのでしょうか。間桐家の人々が出てくる作品はたくさんあるというのに」
「それは……やはり知名度の問題だろう」
「知名度補正というものは二次創作にも影響するのかもしれませんね……。
UBWの放映で我々の二次創作出演も増えるとよいのですが」
「ところで」
バゼットは話題を変えた。
「作品の中にはおもしろいのに更新が途絶えてしまっているものも多いですね」
お気に入り数も多く、感想もたくさんついているのに更新停止している作品は珍しくない。中には数年間更新がないものもある。
「ああ、バゼット。それはエタっちまったんだよ」
「エタる、ですか? 私はそのような日本語は知りませんが、どういう意味なのですか、ランサー?」
ランサーは耳なれない言葉を口にした。
バゼットは日常生活に困らない程度に日本語がわかるが、エタるという言葉は普通聞かないし、国語辞書にも載っていない。
「作品のエターナル化ってことらしいぜ。つまりいつまでも続きが書かれる事なく『永遠に終わらない作品』になってしまうということだろう」
「むむ、続きが読みたいのに残念ですね」
「そうだけど、コレばかりは作者の都合によるからしかたねえよな」
作者たちも作品の執筆が順調な時ばかりではない。他の事に時間や気をとられたり、どうしてもアイデアが出ず筆が進まない時だってあるのだ。
「それにしてもランサー、あなたはなぜそんな細かいことまで知っているのですか?」
「ああ、オレは別に覚えようとしたわけじゃないんだが。コレも聖杯がだな……」
ランサーが言うにこれも聖杯がサーヴァントに授ける知識の一つだったらしい。
しかし、とバゼットは思った。ランサーの聖杯知識は偏っている。もしかして、この世界での聖杯はアニメやネットに汚染されているのではないだろうか、と。
「とにかく、作品がエタってしまうのは作者が更新する気がなくなってしまうことが一番の原因なのですね」
バゼットは顎に手をあて、うーむと思案している。
「ランサー、お気に入りの作品がエタらないためにはどうしたらいいのでしょう。
たとえば、感想を時々書き込んであげるべきなのでしょうか? 更新おまちしています、とか」
「うーん、バゼット。それはだな、作者というものは感想が多くても、それはそれでプレッシャーになることがあるんだよ」
「む、作者という人々はなんともあまのじゃくなものだ」
「では」
と、うつむいて考え込んでいたバゼットが顔を上げた。瞳がきらり、と光っている。名案を思いつきました、という時の表情である。
「お、バゼット。また何か思いついたのか」
「はい、ルーンを用いて作品のエタ化を防止する策をこうじてみましょう」
「小説の執筆に役に立ちそうなルーンなんてあるのかよ?」
ランサーは怪訝にバゼットを見たが、バゼットは自信ありげにしている。ううむ、名案だといいのだが。
バゼットは一枚の紙を取り出すと、そこに3つのルーンを並べて書いた。
「この3つのルーンの加護でエタリ防止です!」
その3つのルーンを見たランサーがバゼットに尋ねた。
「それ、アンタがFateの格闘ゲームで出す超必殺技の蹴りのルーンと同じじゃねえか。
もしかするとエタったらアンタの蹴りが作者に飛ぶのか?」
それはルーンの加護というよりは、もはや
「似ていますが違います、ランサー。
このルーンのポイントは真ん中に配置した
最初の
最後の
そこまで言って、バゼットは真ん中のルーンをぴしっと指差した。
「中央のルーン
「な、なるほどな」
「このルーンによって読者が今読んでいる作品も、作者が今書いている作品もきっとエタりません。ルーン魔術の力でよい創作ライフを!」
ルーンの説明を終えたバゼットは再びノートパソコンに向かった。
「では、さっそく実践します」
「バゼット。実践って、そのルーンどうするんだ? 印刷して配るのか?」
ランサーが画面を覗き込むとバゼットはとある小説のページを開いて、その感想欄にカタカタと文字を打ち込んでいた。そして、たんっ!と投稿ボタンを押す。
「これで完了です!」
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さくしゃ さんの活動報告
みなさん、お久しぶりです。
前回の投稿からずいぶんと間隔が空いてしまってごめんなさい。
あのう……、実は感想に謎の文字化けが延々と書き込まれていたのですが、
ᚨ ᛇ ᛜ ᚨ ᛇ ᛜ ᚨ ᛇ ᛜ ᚨ ᛇ ᛜ ᚨ ᛇ ᛜ ᚨ ᛇ ᛜ ᚨ ᛇ ᛜ
これは何かのおまじない? 呪い……?
とりあえず、久しぶりに作品を更新しました。
一体なんだろう、アレ……。
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eihwaz(エイワズ)
象徴:イチイの木
英字:Y
意味:イチイの木を象徴するルーン。ケルト神話ではイチイの木は死と再生を意味する。イチイは他にも複数の意味を持ち、弓の材料であることから弓も意味する。また防御という意味もあり、危機回避を示す。
ルーン図形:
効果はお察しで……。
なお、本作品の作者は感想をお待ちしております!
■おまけ
エタリ防止のルーン
【挿絵表示】
ルーン文字はパソコンで表示ができる文字の規格(Unicode)に含まれているので、フォントをインストールすれば入力したり表示する事ができます。
(上記の「さくしゃ さんの活動報告」の文字も表示できます。)
ルーン文字フォントは「ルーン文字 フォント」で検索すると見つかります。
例えば、以下のサイトなどからダウンロードできます。↓
http://ja.fonts2u.com/category.html?id=24