東方Project  ―人生楽じゃなし―   作:ほりぃー

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24話 B

 異様な熱気に包まれている。

 輝ける太陽は一年で最も世界の天を照らす。「彼女」も今日の試合を観戦しているかのようだった。白い砂浜に集まる群衆、それらが囲むのは一枚のビーチバレーのコート。少女達に配慮してか、わずかに低いネット。おかっぱ頭の河童が座る審判台。

 それを挟んで向かい合う、二組のチーム。片方には青い髪の尼と毘沙門天。もう一つには地底の少女とネズミ。四人は思い思いに体を動かして、準備体操をしている。その一人である雲居一輪は空をふと、空を見上げた。

 

「おてんとさんもみている、のかな」

 

 そんな彼女へ声がかかる。

 

「一輪」

「はい」

 

 見れば虎のような髪の少女。寅丸が彼女を呼んでいた。その手には丸いボールが一つ。ビーチバレーのボールだった。屋内でやるバレーよりも少し大きい。寅丸はそれをぽんと投げた。一輪は両手で胸の前でキャッチする。

 

「こちらからサーブだそうです。まずはお願いします」

 

 一輪は頷く。にやりと不敵に笑うのは彼女の勝負強さであろう。恥ずかしい水着でも勝負となればテンションが上がる。

 一方の古明地こいしは肩を伸ばして、屈伸して、ジャンプをしながら気をためている。相棒のナズーリンは砂浜に体操座りをしてぶすっとしている。彼女からはあまりやる気は感じられない。

 

(最終的にご主人様と敵対している。ああ、もう。幻想郷のやつらは扱いにくくて嫌いだ!)

 

 心の中で悪態をつくがナズーリンはすました顔をしている。ただ、どうやってうまく負けるかを考えていた。とりあえず一輪・寅丸ペアと敵対しているが、考え方を変えれば相手に勝たせればネズミとしてはプラスになる。何より面倒ごとから一抜け出来る。

 

「よーし。かつぞー!」

 

 やる気満々なこいしは両手を振り回している。ナズーリンはそれを見て、「あれ」をどうするかを考えている。

 

 ★☆★

 

 ピーとおかっぱの河童が笛を鳴らす。ほっぺたを膨らませて笛を鳴らす姿が観客からくすくすと笑いものになっている。そもそも審判というが、おかっぱはビーチバレーなんてやったことはない。ノリとやる気で頑張るようににとりに言われているだけだ。

 まずは一輪がサーブ。

 彼女は手でボールを数回弄ぶ。感覚を掴んでいるのだろう。ふう、はあと息を吐いて意識的な呼吸を行う。バレーは長方形のコートの外からサーブを撃たなければならない。彼女は前衛に寅丸を残して下がる。

 爛々と光る一輪の瞳。彼女の対角線にいるのはこいしだった。彼女もにやりと笑う。

 

 ――いきますよ。こいしさん!

 ――髪が青いってスーパーサイヤ人ごっとみたい!

 

 アイコンタクトを終えて、一輪がもう少し下がる。

 観客は微笑ましい目で見ている。それはそうだろう、こいしにしろナズーリンにしろどう見ても少女である。スポーツとしてのエンターテインメントよりも彼女達の可愛らしさに期待しているのだ。だが、その期待は全て打ち砕かれることになる。

 

 しゅっとボールが空に浮かぶ。高く上がったそれより、一瞬遅れて一輪は砂を蹴る。前に出ながらのジャンプ、右手を伸ばすように天へ向ける。ジャンプサーブである。

 ボールがばしっと音をたてて、飛ぶ。速い。

 

 その瞬間である。こいしが思いっきり前にダッシュする。

 

「ネズミさん! かがんで!」

「へ?」

 

 ナズーリンは無意識に無意識なこいしの命令を聞く。僅かに腰を落として、曲げる。こいしは猛然とダッシュしてその背中に、

 

 乗った。

 

「げっ!」

 ナズーリンが情けない声を上げながら砂に倒れる。こいしはネズミを踏み台に空を飛ぶ。

 少女が宙に浮かんでいる。そこに飛んでくるサーブボール。こいしはくるりと回転しながら足を繰り出す。彼女のスカートが揺れる。胸のフリルがなびく。そんな彼女のオーバーヘッドキック。

 ボールの芯を打ち抜く蹴り。ばしっと高い音。あっけにとられる観客。鋭い角度で一輪達のコートへ打ち込まれるボール。

 一秒にも満たぬ時間。動けたのは毘沙門天だけだった。前衛にいた彼女は反応する。考えていない、横に全力で飛んだ。腕を伸ばしてこいしのキックボールをレシーブする。ぽんと上にあがるボール。

 

「一輪!」

 

 寅丸の声に前に出たのは青髪の彼女。やっとこいしが着地する一瞬。

 一輪は全力で走る。浮かんだボールは絶好のスマッシュチャンス。彼女は飛んだ、弓なりに体をそらして落ちてくるボールにスマッシュを合わせる。振りぬかれる腕、ボールはネットへ突き刺さった。

 

 一瞬の静寂。ぽとりと地面に落ちるボール。ぴーと審判が手を上げる。それが契機だった。

 歓声が空気を揺らした。囲んでいる群衆はパチパチと手を鳴らし、何かを叫び、口笛を鳴らしている。今の数秒で魅了され切っていた。事実数秒しかたっていない今を、もっと長く感じた者は多いだろう。

 こいしはすっと立ち上がって、にこにこと両手を振り回す。くううと悔しがる一輪、肩に手を置く毘沙門天。砂から立ち上がるネズミ。点を取ったというのにナズーリンは体についた砂を無言で払っている。ゴムに纏わりついて気持ちが悪い。

 

 鳴りやまぬ声。オーバーヘッドをする少女が全ての固定概念を奪い去っていた。老若男女問わず一気にボルテージを上げている。多少男性の方が高いだろう。

 そんな観客の中に一人の青年がいる。別にどうという事はない水着を着た青年である。彼は一輪をなんとなく見てしまっている。それこそがこの大会を主催した河童の狙いだった。

 青年に近づく一つの影。小さな背が河童の一人だと分からせる。ただ、今の状況では殆どの者が見向きもしない。彼女はモブ河童と言えばいいのだろうか、にとりの手下の一人である。肩から掛けたボックスには清涼飲料水が詰まっている。しかし、今はそれを売りに来たのではない。

 彼女は言う。おにいさんおにいさんと。青年はそれに気が付いて横を向けば河童。その手には「ブロマイド」。見れば雲居一輪が水着姿でくいこんだ水着をなおしている姿。河童は指を二つ立てる。

 青年。真顔になり指を一つ立てる。

 河童首を横に振る。右手の人差し指を一本、左手を五本。青年は考えてぼそりという「にまい」と。河童はさらに指を二本たてた。青年は頷く。そして二千円を河童に渡して「商品」を受け取った。

 

 河童は人ごみに消えていく。

 

 ★☆★

 

「へーけっこう順調だね」

 

 海の家でにとりは遠くから試合を眺めながらやってきた河童の報告を聞いている。横には憮然とした顔をしている霊夢。彼女は聞いた。

 

「何が順調なのよ、にとり」

「あ、ああ? 試合だよ。見てればわかるだろ? すごい熱気で飲み物も売れてるよ」

「まあ、あれだけ盛り上がるとは思っていなかったけど……」

 

 霊夢は腕を組んでにとりを睨みつけている。警戒しているのだろう。

 

「霊夢さん。そんなに警戒しなくてもいいよ。私は逃げも隠れもしないから」

「異変を起こした奴を信用なんてできるわけないわ」

「いや、私は起こしたわけじゃないから。依頼を受けただけだよ、アウトソーシングさ」

「あ、あう。意味が分からないんだけど」

「おっとこれ以上はこの話はやめておこう。ぽろっと何かを言ってもつまらないしね」

 

 そこに近づく緑の水着の少女。短い黒髪に細身の彼女は村紗水蜜だ。両手にはビンに入ったラムネ。ビー玉がころころと転がる妙なビン。

 水蜜がラムネを手にこっそりと霊夢の横に来る。すうとキンキンに冷えたラムネを霊夢のほっぺたの近くに持っていく。そして声を掛けた。

 

「霊夢さん」

「……」

 

 無視する。気が付いているわけではないが水蜜を無視するのは霊夢にとっては自然かもしれない。水蜜は仕方なくラムネを押し付けた。

 

「つめたっ!? あ、あんた何するのよ」

「……うりうり」

 

 水蜜は無視された恨みからかラムネをさらに彼女へ押し付ける。肌に直接当てられた冷えたラムネ。霊夢は背中にそれを当てられて「ひっ」といつもの彼女らしくない声を上げる。もちろん反撃として水蜜の剥き出しのお腹をつまみ上げる。

 

「いて、いてでで霊夢さんぎヴ、ぎぶ」

「あ、あんた。いみがわ、わかんないのよ」

 

 にとりは口を半開きにしてみている。仲のいいことだね、と呟く。妖怪と人間が戯れるのは、幻想郷では殆どあり得ない。にとりはそれを思ってみたが、どうでもいいことかと思考を切かえる。

 

「ところでミズミツ」

「はい、水蜜はここにいますよ。なんですか」

「そのラムネ……海の家のだろう。まあ、いいけどさ。後々千円くらい徴収するから」

「が、がめつい。霊夢さんどう思います?」

「…………」

 

 霊夢はビーチバレーを見ている。こめかみがぴくぴくしているのは怒っているからかもしれない。水蜜は苦笑をしつつ、ラムネを霊夢に渡す。巫女はふんと言いながら、取るとぐびぐびと飲んで炭酸を喉に直撃させる。

 

「げほっげほ」

「ほらほら、仕方ありませんね霊夢さん」

「あ、あんたこれ、た、炭酸じゃない」

「いつから炭酸じゃないと錯覚していたんですかね? ラムネって炭酸なんじゃないですか」

「うちは水か麦茶が普通なのよ!」

 

 経済的理由で。水蜜はそれにもくすりとして背中をさする。

 

「どうどう、そうなんですね。今度霊夢さんチに遊びに行ってもいいですか?」

「いいわけないじゃない」

「固いこと言わず。ケーキ持っていきますから」

「置いて帰りなさいよ」

「宅配業者じゃないんだから」

 

 どうでもいい会話を水蜜はする。なんでか分からないがこの幽霊の少女は嬉しそうな、楽しそうな顔をしている。長く「死んで」いる彼女にも思う所はいろいろとある。彼女は自分のラムネをぐいっと飲む。しゅわしゅわとしたのど越しをむしろ楽しみながら、遠くのバレーを見る。

 

「霊夢さんはこの試合どっちが勝つと思いますか?」

「ああ?」

 

 霊夢はぶすっとした顔でラムネをちびちび飲んでいる。見ると白い水着の毘沙門天が見えた。

 

「白いほうが勝つわ」

 

 その瞬間にとりと水蜜が霊夢を見た。霊夢は「な、なによ」と下がる。水蜜の眼は何故かきらきらしている。別に同僚のチームが勝つと言われているから喜んでいるわけではない。彼女は気取った口調で言う。

 

「ふふふ、霊夢は賢いな」

「はあ? 何よそれ。見てればわかるじゃない。青と白の方が体も大きいし。さとりの妹は……よく動いているけど相方のあれの動きが悪いわ」

「なるほどなるほど」

「とりあえず。あいつらを倒さないと河童も退治できないわ」

 

 にとりは「ん?」と首を傾げる。霊夢は水蜜へ続ける。

 

「この試合よりも私はあんたの方が心配なんだけど」

「私がですか?」

「あんた寺に味方する気じゃないでしょうね? わざと手を抜いたら承知しないわよ」

「おっ。そう言う意味ですね。普通思っていても言わないことをズバズバ言ってくれるその性格、私は好きですよ」

「…………」

 

 霊夢はそっぽを向く。水蜜はラムネを飲み干して、カランコロンとビー玉を転がす。透明なビンを手でもてあそびながら静かな口調で言う。

 

「まあ、本当の闘いであるならば私は聖に味方しますよ。千年前に救ってもらった恩もありますしね。でもね、霊夢さん」

 

 優しく微笑みながら、水蜜は言う。いつも、どことなく作っていた笑顔でなく、自然な顔と声で霊夢へ伝える。

 

「今日は貴女の味方ですよ。楽しくいきましょう。ね?」

「…………」

「ま、れーむは私の妹みたいなもんですから」

「意味が分からないんだけど……」

「まあまあ、一緒に河童を退治して異変の秘密をゲットしましょう」

 

 にとりは「ん?」と首を傾げる。

 

 ★☆★

 

「うああああああああぁ!」

 

 ナズーリンは投げ飛ばされた。投げたのはこいしである。ネズミの少女は地面に着く前のボールに当たり、レシーブする「ような形」になった。無意識というより不可抗力である。浮き上がったボールをこいしがすかさず駆け寄って撃つ。相手のコートに突き刺さった。

 

「やったぁ!」

 

 可愛くガッツポーズするこいし。ピーとなるおかっぱの笛。一応彼女も選手なのであるがブラック企業に休み時間など書類上にしかない。審判の横にはスコアボード。「こいしチーム 10」「一輪・寅丸チーム 14」と書かれている。

 

 こいしは汗を手で拭って「まだまだぁ」と唸る。流石に疲れも出ているらしい。殆ど一人で得点していると考えれば、健闘であろう。肌に汗がまとわりついている。それは対面の一輪や寅丸も同じである。汗で肌が光って見える。

 そんな中汗ではなく、砂まみれのネズミが立ち上がった。試合は中盤。なんとか負けようと工夫していたがこいしのトリッキーな動きに付いていけず、振り回されている。

 

(く、くそいつまでたっても点差が「広がらない」じゃないか。こんなはずじゃなかったのに)

 

 ナズーリンはこの数分間で投げられ、踏まれと「チームプレイ」に参加させられていた。それもうまく決まるのだ。こいしの無意識な勝負勘がハマる。それに彼女が動くたびに観衆が揺れ動く。次の読めない動きが、見たい様だった。

 

「ナズーリン。なかなかやりますね」

 

 ネットの後ろから声を掛けてくるご主人様。ナズーリンは真っ直ぐな彼女を見て、ちょっとげっそりする。武略は得意でも謀略が苦手な毘沙門天である。はあとため息をついて彼女はこいしへ振り返った。

 

 見れば三つ編み赤毛の少女に向かってピースサインしている。お燐である。彼女の手には板のような物があり、それで写真を写しているのだろう。タブレットである。

 

 ナズーリンは「ちょ、え?」と普段の彼女らしくない素っ頓狂な声を上げて慌てる。あのタブレットは見たことがある、というより自分で設定した記憶がある。何故ならばご主人様がどこかで「お失くしになられた」物とそっくりである。

 そのご主人様をナズーリンは振り返れば、既に一輪と話し手ながら「ここからですよ」と励ましている。見ていない。

 

「ち、ちー」

 

 舌打ちのような妙な声を上げてナズーリンはこいしに駆け寄った。彼女の肩を掴むと「なーに?」ときょとんとした顔でこいしが振り返る。目の前にはお燐がいる。

 

「い、いやそのタブレット。ど、どこにあったんだい」

「タブレット? なーにそれ?」

「こ、こほん。それだよ。そこの猫君が持っている」

「これ? これは砂浜に落ちてたのよ」

(やっぱりじゃないか! く、くそ。宝塔のことといい。何で砂浜にタブレットを落とすんだ、あのご主人様は!)

 

 しかし、あわてて奪い取ろうとしてもナズーリンはうまくいかないだろう。こいしが無意識に何らかの「Z戦士」の技を繰り出して来るかもしれない。ナズーリンはできるだけ穏やかな顔をしながら言う。

 

「猫君。それをちょっと見せてくれないかな」

 

 天敵に下手に出るネズミ。お燐はこいしを見た。こいしは頷く。

 無事にタブレットがナズーリンの手に渡る。どうやら壊れているところも傷が増えているという事もない。ほっとするナズーリンだが、なんで自分がほっとしなければならないのかとも思った。

 一応写真のフォルダを解放してみる。こいし達が撮っている写真がかなり入っていたが、前の方にはお寺の写真などがある。ナズーリンはこれは毘沙門天ご用達タブレットと確信しつつ、写真をスライドさせていく。

 おそらくお寺で撮られたナズーリンの寝顔の写真。ネズミはそれを見つけた時たたき割りそうになった。それでも抑えた。ナズーリンはさらに写真をめくっていく。お寺の風景。一輪や水蜜が縁側で談笑している風景。白蓮が袈裟姿でピースしているもの。ナズーリンがテレビを見ているだけのもの。

 

「………………」

 

 ナズーリンはタブレットをお燐に返す。別に彼女にとってはこんな機械の塊はどうでもいいのである。だが、なぜだか、しっかりと取り返してやりたいと思ってしまった。理由は自分でもよくわからない。

 力ずくではうまくいくかわからない。正直に話せばこいしとて返してくれるかもしれないが、妙な条件を付けられるかもしれない。だからナズーリンは考えた。今現在古明地こいしが欲しがっているものは何か。

 少ししてナズーリンはこいしにこう持ち掛けてみた。

 

「なあ、君。これを譲ってくれないか」

「えー?」

「もちろんただでとは言わない。そうだなこの試合に勝ったらただで欲しい」

 

 試合の勝利。それがこいしが欲しがっているはずのもの。優勝などと言わないのは、もしも断れた場合に「吊り上げる」為である。最初から最高の条件を出すのは交渉に置いてベストではない。

 

 こいしは少し考えてちらちら、タブレットを見る。やはり多少は執着もあるのであろう。その後スコアボードを見る。負けている。やる気の薄いナズーリンが動いてくれればうれしくもある。

 

「んー。負けたら、そこんところどーなんです?」

 

 とある魔法使いの真似をするこいし。ナズーリンは「ああ、それは」と返す。

 

「私が一つだけいう事を聞くよ。それで返してくれ」

 

 どちらにせよナズーリンはタブレットを手に入れる。多少自己犠牲もあるかもしれないが、それでも目的を達成できる。こいしはまた少し考え込んで。「わかったわ」と答えた。

 

「それじゃあ、ネズミさん。私とフュージョンしてね?」

「ふゅー、じょん……?」

 

 ナズーリンは一瞬呆けたが、思い出した。彼女の言うそれはとある漫画の合体技である。昨日はこいしの姉が「犠牲」になった。ぞわぞわと毛が逆立つのをナズーリンは感じた、あんなみっともないことをしてたまるか、と反射的に想う。

 だが眼はお燐の持つタブレットにいく。彼女は歯ぎしりをして、

 

「わかった」

 

 と言った。それから。

 

「勝てばいいんだろう」

 

 吐き捨てるように言った。素直さがほとんどない。少なくとも彼女は相手となる毘沙門天を振り返った時、眼の奥に闘志を燃やしていた。ネズミと虎が戦うのである。

 




 ここはどこだろうか。
 
 整えられたベッドの上。

 目を覚ますと一瞬自分の位置が分からなくなる。

 体を起こせば従者が一人。短い金髪に妙な股の別れた帽子。

 それに九本の尻尾。

 微笑んでいる彼女に時間を聞くとおもったよりもおそい時間。

 だんだんと冴えてくる意識を楽しみながら、久々に神社にでもいこうかと思っている。

 

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