やはり俺の加速世界は間違っている   作:亡き不死鳥

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空気主人公ハルユキ。
主人公二人を動かすのは作者には無理だと分かった。
ハルユキ君の活躍が見たい人は原作を読んで満足しよう。


病院ではお静かに

 

 

 

 

 

ダラダラノロノログッタリとしながら下校中の生徒達の間を歩いて行く。

あー疲れた。朝から人と喋る事なんて稀だから一日のエネルギー全てを使い果たした気分。その上授業中に寝ようと思っても倉崎先輩の声が耳から離れない。

よって疲労はあれども寝れはせず。朝に消耗した体力を回復する事も出来ず帰路につく事になった。

コミュニケーションで精神力を削られ、仕事によって体力を削られる。社畜の皆様は毎日こんな生活を送ってるのか。親父に感謝を送ったあとやはり専業主婦になるべきなんだと再認識した。専業主婦こそ勝ち組。超ヒモ王に俺はなる!

 

「……一応黒雪のとこにも寄っとくか」

 

どうせ通り道のすぐ近くだしな。帰るルートを少しだけ変更し朝行ったばかりの病院に足を向ける。一度立ち止まり病院の大きさを確認した後に入口に入ろうとした時、足が止まった。

 

 

……なんで俺黒雪のお見舞いに行こうとしてるんだ?

 

 

いやいや、俺と黒雪の関係ってそんなんじゃないだろ。ブレインバーストについてちょっと話す現実では無関係(俺からは)っていうのが本来の俺と黒雪の距離じゃないか。

「クラスみんなであいつのお見舞いいこうぜー」のみんなにすら入れてもらえない俺がお見舞いに行くのは正しいのだろうか?もちろん否である。

そもそも朝も思ったが俺が知り合いのお見舞いの時点でおかしいだろう。同じ考えが出るなんてもしかしたら今の俺は俺じゃないのかも知れない。ヒッキー?誰それ。俺、ベクター。ちげえから、俺八幡だから。つーかヒッキーマジ誰だよ。

 

「…帰ろ」

 

黒雪の無事は確認されたし入院してるのだって今日だけじゃない。だったらお見舞いに行くのは有田だけでも問題ないだろう。催促されたら行こう程度の心構えでいいはずだ。

…レイカーにも呼ばれてんだよなぁ。やっぱ帰るが正解だ。夜のためにとっとと寝よう。

帰ってすぐ寝て夜起きて遊ぶ。遊ぶわけでもないけど、この行動がなんか中学生っぽくていいよな。そして明日一日が辛くて授業中に寝て先生に起こされるのもまさに中学生。今しか出来ない事をやるのは大切だよな。よし帰ろう。すぐ帰ろう。今すぐ帰ろ……

 

 

『ピコン♪』

 

 

踵を返した瞬間視界の端にメールを告げるアイコンと音が響いた。

誰だ?思い当たるとしたら小町あたりだが。旅行先の自慢話とかありえる。だったら親父の可能性もある。小町とのツーショットでも撮ってきた日には、俺は小町を一日デートにでも連れて行かないと気が済まなくなる。むしろ帰ってきたら絶対連れてこう。結局上月のせいで小町成分補給してないし。これは最優先事項に決定だな。

気分的に鼻歌でも歌い出しそうな雰囲気でメールのマークを叩いた。

 

 

『差出人:黒雪姫

本文:学校が終わったら私の病室によってくれ』

 

 

………なるほど、親父よりも面倒くさい奴が送ってきたらしい。しかも振り返ればすぐそこには目的地である病院が。上がったテンションはだだ下がりだ。この時間だと『ごっめーん☆寝てて気づかなかった〜』という手が使えない。しかも発達しすぎたニューロリンカーのせいでメールそのものに気づかなかったという手も使えない。ぼっちには優しくない設計だ。

 

「…いくか」

 

 

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

 

病院の中に入り受付の人に聞いた番号の病室の扉をノックする。

 

「どうぞ」

 

すぐに聞き覚えがある声が響き、扉が自動ドアのように開いた。中に入るとベッドから上半身を起こし、髪を三つ編みにした黒雪と有田がベッドのすぐ横の椅子に座っていた。

 

「よう。ほれ、土産」

 

「あ、ありがとう。相変わらずだな君は」

 

黒雪は俺の渡した土産を見て苦笑する。

なんだよ、美味いだろMAXコーヒー。俺のソウルドリンク舐めんなよ、B○SSより絶対美味いぜ?さらにさらにBIG B○SSより美味い。BIG B○SS食えないけど。

 

「じゃあ寄ったんで俺はこれで…」

 

「待ちたまえ。お土産欲しさに呼んだ訳がないだろう」

 

「なら早くしてくれ。お前の見舞客が来るだろうが」

 

「安心したまえ。友人達には今日は来ないように言い含めてある」

 

「……さすが手が早いっすね」

 

俺の知り合いの中でこいつほど手が早い奴もそういない。

なんせ、

仕事を片付ける手が早く、

男(有田)に対して手が早く、

俺に対して(精神的暴力の面で)手が早い。

ピッチビッチタッチの三拍子揃った副会長。さすがですお姫様!

 

「おい八幡。目を腐らせているところ悪いが、本題に入ってもいいか?」

 

「お、おう」

 

ブルッと一瞬悪寒が走った。冷気の発生源は目の前のデスマイルを浮かべているお方。レイカーのデスマイルに勝るとも劣らないレベルの冷気を発している。なんせ笑顔を直接受けてない有田も影響を受けてるくらいだ。最近聞かなくなった温暖化を抑えてプチ氷河期起こせるレベル。どっちも迷惑には変わりないな。

 

「ハルユキ君から聞いんたんだが…倉崎楓子なる人物と共に病院を訪れたらしいじゃないか。詳しく聞かせてもらおうか」

 

「倉崎?誰すか?朝も俺一人でしたよ。有田の見間違いてすって。ほら寝不足だったし」

 

「そんな訳がないだろう。あとその気持ち悪い敬語をよせ。そもそもハルユキ君がその名を知っているはずがない」

 

「いや俺も連れてくる気はなかったんだよ。でも元メンバーだろ?一応マスターの危機を知らせといたんだよ」

 

「……ほんとあっさり手のひらを返すな」

 

ほんと連れてくる気どころかリアルで会う気もなかった。口は災いの元ってやつだ。お前も来るか?みたいな事を言ってしまったからあんなことになったんだ。ほんと過去は取り返しがつかない。

だけど俺にもっとコミュ力があればリアルでもあれくらい気やすく誘えるのだろうか?きっとそうなったら不良みたいな奴に「愛してるぜ!」とか言えちゃうし、俺以外女子だけの部活に入っても平気で、しまいには生徒会長になる後輩の手伝いとかしちゃうかもしれない。なにそれちょうリア充。そんな俺がいるなら変わって欲しいぜ。

 

「はぁ。まあフーコのことはいい。……まだ私には会う勇気が出てないからな」

 

「ならなんだよ。俺この後帰って寝ないといけないんだけど」

 

「うん。こう言ってはなんだが私は結構賢い方だと思っている」

 

「話変わりすぎだろ。いきなり過ぎてついていけないんだけど」

 

会話しようぜ言葉のキャッチボール。俺が投げると誰も返してくれないんだよ。むしろ俺の投げた玉でそのまま他人とキャッチボールし始めるまである。体育の時間とか。まあ投げる事自体が殆どないんですけどね!

 

「そして君も同じくらいの知識、知恵が備わってると確信している。偏った知識と悪知恵かもしれないがね」

 

「おうよく分かってんな。規制強化される前のアニメとかの話なら任せろ。便利な親父と名高いうちの親父のアカウントで自由自在だ」

 

元々小町が頭悪そうな雑紙が見たいっておねだりして親父のアカウントを家族皆が使えるようにしたんだが、結局小町が使ったのは数回だけで殆どは俺が使ってる現状。適当に調べて「ふむふむ、なるほどねー」と言う作業はすぐに飽きたらしい。そのおかげで数々の名作と出会えたから小町には感謝してる。一応親父にも。

しかし話題そらしも失敗したらしく黒雪は気にせず話を進めてきた。

 

「まあそんなわけで聞きたかったんだよ。今回の件で、八幡が何をしようとしていたかを」

 

「………終わったことだから別になんでもいいだろ」

 

黒雪の言葉に一瞬詰まってしまう。やましい事を考えていたわけではない。レイカーに説明した事で殆どあってる。

…途中までは、であるが。

 

「八幡の行動はあらかたハルユキ君に聞いたよ。八幡が早朝に来た理由は分かっている。小中学生での襲撃は早朝と相場が決まってるからな。ここまでは誰でもわかる事だ、それはいい」

 

「言葉を選べ黒雪。お前のすぐ隣に分かってなかった奴が居る事に気づくんだ」

 

「あ、あはは」

 

すぐさま隣で肩を落とした有田のフォローに回る黒雪。一瞬で二人だけの世界に入ってしまった。なに、こいつら付き合ってんの?もしかしなくても有田ってリア充?……爆発しないかなぁ。

 

「ご、ごほん。えー、そう!朝の事はいい。問題は朝八幡が何をしようとしていたか、だ」

 

「二回目だな」

 

「うるさい。…それで、朝何をしようとしていた?」

 

「そりゃ様子見だろ。有田がどうなるか見届けただけだ」

 

「嘘をつくな。お前がそんな大人しいわけがないだろう」

 

「お前クラスに居る時の俺を見ろよ。授業中も休み時間もめちゃくちゃ大人しいからな。机に突っ伏して全く動かないぞ」

 

ミミズだってオケラだってアメンボだって生きてるのにあいつだけ死んでるって言われるくらい大人しい。クラス委員長なのに悪口推奨した田中君は絶対許さない。またいやがったな田中君。

 

「それは普段の八幡だろう。問題が起きた時、お前は異常な程動く。二年前の事、忘れたとは言わせないぞ」

 

「………」

 

二年前。それは全ての、特に王と呼ばれるバーストリンカーにとって転機となった年だ。ほぼ同時にレベル9に到達した王達にレベル10になるためのルールが運営から通達された。そのルールとは『自分以外のレベル9プレイヤーを5人倒す事。ただし一度でも他のレベル9プレイヤーに敗れるとポイントが0になる』という鬼畜仕様。

そしてそれを受け入れられなかった王達がレギオン丸ごと停戦協定を結ぼうとしたのも二年前だ。それは黒雪が加速世界最大の犯罪者とされた事件でもある。

それは加速世界の人間なら誰でも知っている、停戦を特に進めていたレッド・ライダーの首を黒雪が斬り落とした事件だ。幸いにもそれ以上全損する奴は出なかったが、改めて王達にこのサドンデスルールの恐ろしさと身の危険を知らしめた事件だった。

 

ここで終わればまだ良かったのかもしれない。黒雪という加速世界の敵が現れた事で全レギオンが一致団結する事が出来た筈だ。

しかし、ここでさらに問題が生じた。

 

 

 

 

 

「そう……私に続いてお前まで停戦を拒否したことだ」

 

 

 

 

 

 




バーストリンクしろよって言われそうだから次話ですると保険を打っておく。まだ加速世界だと判断できる言葉は使ってないはず。

筆が進まなかったけど4000文字くらいだったから投稿しました。リアルが忙しくて嫌やわ。

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