ブラック・ブレット 転生者の花道   作:キラン

5 / 17
只今、原作を一巻から読み直し中。バトライド・ウォーの長いロード時間がこんな所で役に立つとはww極アームズ超楽しい!!では、本編をお楽しみください。


第五話 仮面ライダー 新たな協力者

「ふむ、強いな」

 

「も~、やり辛い!!!」

 

 可愛らしい言葉とは裏腹に高速で繰り出される斬撃を呉島さんは冷静に固定装備の盾、メロンディフェンダーと俺と同じ刀、無双セイバーで捌いている。

 

「凄いな、俺だったら何回か斬られてる」

 

「フン、あの人は俺達なんかよりもずっと強い。確かにあのイニシエーターの実力は高いだろう。だが、守りの剣である隊長の前では徒に体力を消費するだけだ。尤も、アイツ等の体力は底無しだがな」

 

 戒斗の言葉を聞きながらも目の前では高速で動き、斬りかかる彼女を事もなげにあしらう。

 

「う~ん、大丈夫かな?」

 

「嫌な予感がするんだろ?なら、気を抜くな」

 

 言われ、俺も頷く。小比奈が居るという事はあの仮面の男も近くでこの戦いを見ている筈だ。

 

(それにしても、俺は本当に【ブラック・ブレット】の世界に居るんだよな。なんか、身近な人物が鎧武の登場人物だから勘違いしてた)

 

 まぁ、これからは気を引き締めよう。そう思った時だ。視線の先、小比奈が聖天子を見て、小さく笑う。その笑みに俺は無意識に走り出していた。

 

【オレンジ!!】

 

「変身!!」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 戦いは終始、呉島隊長が圧倒していた。イニシエーターの少女もかなりの使い手らしく、その戦いは私にとって、まるで特撮やアニメの様な物に見えた。だけど、一瞬、イニシエーターの少女が私を見て、笑ったのだ。

 

(今のは?)

 

 気の所為だろうか、そう思った瞬間、イニシエーターの少女が消える。

 

「しまった!?」

 

「え?」

 

 呉島隊長の言葉を聞いた瞬間、先程の少女が私の目の前で跪いていた。そして顔を上げ、彼女の真っ赤な瞳と眼が合う。

 

「死んじゃえ♪」

 

 無邪気な言葉とは裏腹に瞳に映った狂気。そして突然の言葉に私は動けず、彼女が振るう刃が太陽の光を反射して。

 

【ソイヤッ!!オレンジアームズ!!花道・オンステージ!!】

 

「今だ、戒斗!!!」

 

「あぁ!!」

 

【カモンッ!!バナナアームズ!! Knight of Spear!!】

 

 その刃は私の前に現れたコウタさんの刀で防がれる。火花が散る中、聞こえたコウタさんの叫びに上から声が降って来る。

 

「バレてた!?」

 

 何処か嬉しそうな声と共にもう片方の刃で槍を防ぐ。

 

「せ、聖天子様を守れぇっ!!?」

 

 慌てた声と共に私とコウタさんの間に護衛隊の方が割って入り、私の四方を囲む。

 

「撃てぇっ!!!!」

 

 最早、悲鳴と変わらない保脇隊長の号令の下、彼と同じく恐怖と驚愕に歪んだ隊員達が構えた銃から弾丸を吐きだす。その先にはまだ少女と対峙しているコウタさん達がいるにも関わらず。

 

「待ち―――」

 

 私の声は幾重もの発砲音で掻き消される。驚くべき事に拳銃だけでなく、自衛隊の機銃掃射も混じったらしく、私の目の前は砂塵で覆い尽くされる。

 

「よし、やったぞ!!」

 

「赤目の化け物め!!これでは一溜まりもないだろ!!」

 

「あ、貴方達!!あそこにはまだ呉島隊長達がいたのですよ!?」

 

 私の声に保脇隊長は思い出したかのように眼を見開き、次いで小さく笑う。

 

「残念ですが、彼らのお陰で賊を討伐出来たのです。彼等は尊い犠牲となりました」

 

「なっ!?」

 

 沈痛な表情の中、その瞳は愉悦に歪んでいる。嘘だと思いたい。けど、この男は間違いなく、コウタさん達ごとあの少女を殺そうとしたのだ。

 

(確かに、理屈は分かります。けど……)

 

 胸の内から込み上げる悔しさの原因が分からず、視線を砂塵へと戻せば、砂塵の中から飛び出した楽しそうな笑顔の少女が刃を振り上げていた。

 

「え……?」

 

 その場にいた私達が固まる。ゆっくりと動く風景の中、私は目の前まで近づく刃を見つめて。

 

「させねえぞ、コラァッ!!!!」

 

 その後ろからやってきたコウタさんの叫び声が聞こえ、振り向いた少女に回し蹴りを叩きこんだ。

 

「コウタさん!?」

 

「おう、全員生きてるぜ?目論見が外れたな、無能隊長さん?」

 

 私に背を向けながら、元気よく返してくれるコウタさんに安心する。

 

「き、貴様……!!!」

 

「何をしている、保脇三尉!!直ぐに聖天子様を連れて此処から離れろ!!」

 

「く、呉島!!誰に向かって命令している!!そもそも、貴様があの小娘を殺していればこんな事にはならなかったんだ!!」

 

 煙の中から現れた呉島隊長が保脇隊長に命令する。けれど、彼は一向に動かず、ただただ、彼等を罵倒するだけだ。

 

「責任の擦り付けは後にしろ!!今貴様がやるべき事はなんだ!!!」

 

「それとも、そんな事を放棄して本当の無能になるか?」

 

 呉島隊長の叱責と続く戒斗さんの挑発に保脇さんが噛み付く。

 

「いやはや、そろそろ終わりにしようと思っていたのだが、この茶番は何時まで続くのかね?」

 

 その言葉と共にコウタさんと睨み合っていた少女の横に奇妙な格好の男性が何時の間にか、現れて声を上げる。

 

「何処の誰か聞いていいかな?それと悪いんだけど、舞踏会の予定はないぜ」

 

「おや、それは残念。気合いを入れて一張羅にしてきたのだが、踊れないとは残念だ」

 

 刀を突き付けて、一歩下がったコウタさんの言葉に男性はおどけた仕草と声でそう告げる。

 

「いや、なに。今日はほんの御挨拶だ。近い内にちゃんとした挨拶をしにいくから、待っていてくれ」

 

「今度来るときは穏便にお願いしたいもんだ。あぁ、後菓子折りの一つでも持ってきてくれると聖天子様も喜ぶかな」

 

 何言ってるんですか!?そんな私の心の叫びを余所に男性は顎に手を当て。

 

「ふむ、承知した。次は君達も驚く様な菓子折りを持って挨拶に来るとしよう。では、小比奈行くよ」

 

「そこのオレンジ、名前教えて。後、メロンとバナナも」

 

 今まで、黙っていた少女が唐突に聞いてくる。コウタさんは少しだけ考えた後。

 

「俺は鎧武。仮面ライダー鎧武だ。んで、バナナは仮面ライダーバロン。メロンは仮面ライダー斬月だ」

 

「鎧武、バロン、斬月。うん、覚えた。次は絶対に斬って食べる!!」

 

「おやおや、小比奈は食いしん坊だな。それにしても、仮面ライダーとは不思議な名前だね」

 

「覚えやすいだろう?悪を倒すヒーローだ!!【天誅ガールズ】と同じ位人気が出ると思うぜ?」

 

「そちらは私も知らないが、ふむ、覚えておこう」

 

 そういって、男性と少女が逃げる。逸早く事態を察知した民警のプロモーターとイニシエーターの何組かが後を追う。

 

「おい、葛葉。さっきのはどういう事だ?」

 

「あれ?呉島さんから聞いてなかった?俺達のコードネームだよ。ほら、こんな風に全身隠してんだし、個人名も隠した方が良いと思ってさ」

 

「まぁ、民警の前であれほどの大立ち回りをした状態で必要かと問われればそこまでだがな」

 

 そういって、変身を解いた呉島隊長が二人の間に入る。三人が無事だった事で胸の奥から安堵が広がっていく。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「それにしても、アイツ等何だったんでしょうね?」

 

「テロリスト、という言葉だけで片付けるには難しいな」

 

「あぁ、アイツ等は挨拶と言っていた。そして近い内にまたやってくるとな」

 

 あの後、聖居に戻った俺達は呉島さんの案内で廊下を歩いている。

 

「それにしても、一緒に来て大丈夫だった……んですか、聖天子様?」

 

「ふふ、敬語が苦手なら無理しなくていいんですよ?」

 

「そう言われても、菊之丞さんがいる手前だし」

 

 そういって、俺は隣を歩く聖天子の斜め後ろを歩いている菊之丞さんを見る。原作一巻までの知識を持っている俺にとって彼はあの場に現れた蛭子影胤の協力者であり、聖天子にとって無くてはならない存在と言う俺にとってはどう接していいかわからない男だ。

 

(コレが主人公の里見だったら構わず噛み付くんだろうけどな)

 

 原作を読んだ人間としての主人公への感想は無自覚に事態を引っ掻き回した後、自分で解決する厄介な人間だ。更にそれら全て丸く収まっているから性質が悪い。まぁ、俺達がいることである程度抑制できればいいのだけれど。ふと、前を歩く呉島さんが扉の前で止まる。

 

「そういえば、研究棟って何処にあるんですか?」

 

「地下だ。戦極ドライバーもロックシードも機密扱いだからな。普通の研究施設では警護が難しい」

 

 そういって、呉島さんは扉の横にある機械にカードをスライドさせて扉を開かせる。地下と言う事で、エレベーターのようだ。最初に呉島さんが入り、菊之丞さん。聖天子。俺と戒斗が入る順番になる。

 

「そういえば、まだお礼を言っていませんでしたね」

 

 エレベーターが動き始めた時、聖天子が告げる。

 

「私を守ってくれて有難うございます」

 

「勿体なきお言葉です」

 

 呉島さんは粛々と受け取り。

 

「護衛隊の奴等があまりに無能だったからな。もう少しマシな奴がいないのか?」

 

 戒斗が腕を組んで、やれやれと文句を垂れる。

 

「聖天子が無事ならそれでいいさ。俺も何ともないしな」

 

 俺は笑みでそう告げる。だが、その言葉を受けた彼女は直ぐに視線を逸らした。何故!?そう思った俺の思考を遮る様にエレベーターが止まり、扉が開かれる。

 

「呉島君、彼はガストレアと戦極ドライバー、ロックシードの解析を行っていたそうだが、どちらの用件で私達を呼んだのだね?」

 

「彼の言葉が本当ならば両方かと」

 

 そういって、大きな扉の前でエレベーターとは違うカードを装置にスライドさせ、その上にあるタッチ式の装置に掌を乗せる。

 

【ソイヤッ!!】

 

 何故かそんな電子音声と共に扉が開く。瞬間、パァンと軽快な音が連続で鳴った。

 

「ようこそ、我が城へ。歓迎するよ。仮面ライダー鎧武君」

 

 先頭に立つ呉島さんや聖天子を無視して一人の青年が俺に対して、そう告げる。突然の事に驚き、固まっている俺を見て呉島さんは苦笑して。

 

「紹介しよう。戦極ドライバー及びロックシードの解析を行っている」

 

「戦極凌馬だ。君には感謝している。とても興味深い研究資料を提供してくれた事にね」

 

「は、はぁ……」

 

 そう返した途端、俺の右手が素早く戦極に掴まれ、ブンブンと振り回される。

 

「いやはや、貴虎から聞いていたが、まさか駆紋君と同い年とはね。まぁ、年齢はこの際、どうだっていいか。さぁ、立ち話も何だ、入ってくれ」

 

 そういって、招き入れる戦極凌馬は原作のプロフェッサー凌馬その人である。違う点を上げれば白のメッシュが無く、完璧な黒髪な点だけだろうか。

 

「安物のコーヒーしかないけど、どうする?」

 

「そうだな、私はいるが、聖天子様と菊之丞様は?」

 

「私は結構だ」

 

「私は……一杯もらいましょう。あ、砂糖とミルクがあれば欲しいです」

 

「分かりました。残り二人もいるみたいだね」

 

 そういって、手際良くコーヒーを作る凌馬から眼を離して、室内を見る。見た事もない、使い方も分からない機械が並んでいる。だが、その反面、整理はされており、部屋自体は綺麗だ。そして視線の先、透明なシリンダーの中に幾本ものチューブに繋がれたクルミのロックシードが置かれている。

 

「ふふ、気になるかい?」

 

「え?あ、あぁ、そりゃ気になるさ。俺としてもロックシードとかこのドライバーだって良く分かってないんだし」

 

「そうだな、便利な力だが。未知の技術で出来ている以上、不安は残る」

 

「確かにそうだろう。そしてその未知を解明するのは科学者である私の役目だ。いやいや、ロックシードとその力を引き出す戦極ドライバー。とても興味深い。【機械化兵士計画】なんてものより面白い研究テーマだよ」

 

 そういいながら、彼は俺達の前にコーヒーを置いて行く。聖天子の前にはきっちりと角砂糖とミルクの容器を置く。

 

「聖天子様も先刻は大変でしたね。飛び入りのイニシエーターに襲われかけたみたいで」

 

「えぇ、ですが彼らのお陰で助かりました」

 

「彼ら、ね。先日も言いましたが、この際護衛隊長とその近くの物を解雇して貴虎達を護衛にしてみては?私としてはその方が戦極ドライバーのデータが多く取れますし、聖天子様の身も今よりは格段に安全になりますが」

 

「それは出来ません。彼らとて努力はしているでしょうし」

 

「……大変だね、貴虎」

 

「私に振るな。それと、報告で聞いたが、解析は出来たんだろうな?」

 

 呉島さんの言葉に彼は勿論、と両手を広げる。

 

「ガストレアの方、運ばれてきた肉片は解析完了済みだ。まぁ、ロックシードに関しては未だ解析中ですが、ある程度分かっていますし。さて……どちらから聞きます?」

 

 嬉しそうに聞いてくる戦極さんに聖天子は少しだけ考えた後。

 

「先ずはガストレアの方をお願いします」

 

「なんだ、そっちか。まぁ、楽しみを最後に取っておく心情も頷けますから異存はありませんよ」

 

 いや、そんな感じじゃないと思うんだけど。これは気にしない方がいいのか?そんな事を考えている間に戦極さんはコーヒーを持って立ち上がり、映写機のスイッチを押す。スクリーンに映し出されたのは焦げた肉片とソレに関するデータだ。

 

「さて、先ずは貴虎が持ってきたモデルワームのガストレア、その解析結果だ。先ず最初に資料で渡した通り、このガストレアはミミズの性質を持っている為、汚染物質。それも自身にとって有害な毒物に対して強い耐性を持っている。そして貴虎の証言を聞き、その前に現れた民警を襲った事を鑑みれば、このガストレアはプロモーターをバラニウム製の武装ごと丸飲みし、体内でバラニウムを分解、克服するほどの性質を持った。

しかし、問題はそのガストレア自身が東京エリアに来るまでに弱ってしまった事。捕食したソレを分解するまでに時間が掛かる事で発見が早く済み、貴虎率いる実働部隊に倒された事で最悪のシナリオは回避できた。ここまでは資料にある通りだ。そしてその後、とても興味深いモノを見付けた」

 

 そこで一端区切り、コーヒーを一口飲んだ彼は映写機を操作する。次に現れたのは細かな細胞の写真と薬品の資料だ。

 

「コレは非常に強い催眠効果を与える薬だ。ソレがこの肉片から出て来た」

 

「催眠効果……ですか?」

 

 聞き返す聖天子に戦極は頷く。

 

「催眠と言っても、そこまで高度な物じゃない。単に【条件付け】する類のようだ。例えば、東京エリアに向かえ、とね」

 

「では、プロフェッサーはこのガストレアが人為的に操作されたと?」

 

「私はその可能性が高いと思っている。この催眠薬の成分は自然界でも珍しくミミズのように地中から己の養分を接種するタイプでは全くといっていいほど無縁の存在だ。しかも、肉片一つから得られた量はかなりの物。恐らくは何処かでガストレアを利用するプロジェクトが立ち上がっているんだろう」

 

「そんな……」

 

 その言葉に絶句する聖天子。ガストレアは不倶戴天の敵であり、殲滅する物だというのは彼女にも分かっているのだろう。だけど、ソレを利用するという思考に彼女が驚き、固まっている。

 

「プロフェッサー凌馬。君はこのガストレアが兵器として運用されたと考えているかね?」

 

「いいえ」

 

 まさか、という感じに返した凌馬は続ける。

 

「私の意見としてコイツは試作でしょうね。データを取る為にわざと分かりやすい場所に向かわせ、潜伏期間、捕食回数、感染爆発を起こしたか否か、撃破された時のデータを取る為の捨て駒でしょう。恐らくですが、他のエリアでも確認されているでしょうね。そして少なからず、彼等も気が付き始めている」

 

「市民には伝えた方がいいでしょうか?」

 

「止めた方が良いでしょう」

 

 聖天子の呟きに戦極さんが即答する。

 

「人為的にガストレアを操れる。ソレは市民にとって悪夢でしかない。それでは余計に混乱が広がってしまう。更に言えば、その情報によって一番に被害が集まるのは【呪われし子供たち】だ。恐らくは今以上に暴走した市民によって今まで静かに暮らしていた子たちがリンチ、若しくはモノリスの外に追いやられてしまうでしょう。コレは公表しない方が彼女達の為ですよ」

 

 そういって、戦極さんは映写機の電源を切る。

 

「ガストレア自体は自然発生した個体ですから。恐らくは捕獲されてこの催眠薬を投与された後、放たれたのでしょうね。まぁ、これ以上は何とも。このガストレア一体で分かる範囲の情報は必要とあらば後で資料として提出しますが?」

 

「……私と菊之丞さんのみにお願いします」

 

「分かりました。では、この後、早急に作成しましょう。さて!!」

 

 パン、と手を叩いた彼は笑みを浮かべ。

 

「次はロックシードについてですね♪」

 

 そういって、笑顔を見せる彼はとても活き活きしている。放っておけばそのまま小躍りする位に上機嫌だ。

 

「最初に分かった事は、このロックシードは人の手によって加工されたという事です」

 

「人の手によって?」

 

「えぇ、何のためかは分かりませんが。戦極ドライバーを使う事でこのロックシードを加工するようです。流石にロックシードの許等は私にも分かりませんが。他にも面白い事にこのロックシード。ガストレアの再生能力を著しく阻害する効果があるんですよ。いやいや、冗談ではないですからね?しかも、その阻害効果は一般的に流通しているバラニウム製の武装の約数十倍。これは大発見だ!!直ぐにでも量産した方がいいでしょう。尤も、そのロックシードもその力を引き出す戦極ドライバーも製造法は不明なんですが。その事について葛葉君、君は何か知っているんじゃないかい?」

 

「え?俺ですか?」

 

「そう、君だ。貴虎の話では君のドライバーは他の二人と明らかに違う。ロックシードを加工せず、そのまま実として作り出すなんて、明らかにおかしい。だが、ソレを君に聞いても恐らくは私達が望む回答は得られないだろう。しかし、私は君がロックシードの謎の一端を知っていると考えている」

 

「根拠はあるのですか?」

 

「こればかりは科学者の勘としか答えられません」

 

 鋭い。やっぱり原作でドライバーを作り出した人だけはある。これは……隠さない方が面倒にならずに済むか?

 

「……俺としても突拍子もない事なんで言えなかったんですけど」

 

「ほう!!やっぱり、知っていたんだね?」

 

「いえ、知っているというより、教えられたんです」

 

「教えられた?成る程、貴虎達にドライバーを与えた謎の人物だね。それで?教えられた内容というのは?」

 

「……戦極さんって異世界信じます?」

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「成る程、ヘルヘイムの森の果実を人間にとって無害な物、ロックシードにするのが戦極ドライバーである……か。俄かには信じられない。それに君も見た事が無いのだろう?」

 

「はい、あの男はもう、この世界にヘルヘイムと繋がる場所はないそうです」

 

「実に興味深い。とはいえ、ヘルヘイムにはその実を食用としている生物、インベスがいる……か」

 

 コウタさんから語られたその言葉に私達は驚いて言葉が出ない。コウタさんを疑う様な事はしたくありませんが、やはり信じがたいです。

 

「しかし、何故、あの男はその事を君に?」

 

「自分の使う力の出自位は知っておいた方が面白いだろう?と言われました」

 

「君達が会った人物は愉快犯のようだな」

 

 やや硬い表情の菊之丞さんが呟く。その言葉にプロフェッサーが頷く。

 

「でしょうね。それも人間が無様に地を這い、踊るのを楽しむ高位の存在でしょう。貴虎の報告からの推測ですけど。まぁ、こちらとしては謎がある程度解けたからいいが、ヘルヘイムか~……」

 

「言っておくが、その未知の世界に対しての調査は無理だぞ?」

 

「分かっている。私も単なる興味でパンドラの箱を開ける様な愚かな真似はしないさ」

 

 そういって、プロフェッサーはコーヒーを飲み干す。

 

「さて、次に葛葉君、君の戦極ドライバーを調べてもいいかな?他の二人とは違うと思うから良いデータが取れると思うんだ」

 

「まぁ、構いませんけど」

 

 そういって、コウタさんは自分のドライバーをプロフェッサーに渡す。

 

「ふむ、見た目の違いは殆ど無いな。だとすると中身か」

 

「あの、壊さないようにお願いしますね」

 

 何だか、心配になってきた私がそう声を掛けるとプロフェッサーは人懐っこい笑みを浮かべて。

 

「御安心を。そんな事はありませんよ」

 

 そういって、早速空いているシリンダーにドライバーを入れて、機械を弄り始める。

 

「聖天子様」

 

 菊之丞さんが私に声を掛ける。彼は腕時計を指して、頷く。私も同じように頷く。

 

「済みません、この後会議があるので」

 

「では、私と戒斗が送りましょう」

 

「では、聖天子様。また後で資料を持ってくるので」

 

 そう告げるプロフェッサーは機械の方を向いていて、その姿が何処か新しい玩具に夢中になる子供の様で面白かった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ふむふむ、中々面白いね。取り敢えず、君のベルトからロックシードが生まれる理屈が分かったよ」

 

「早っ!?」

 

 調べ始めてまだ数分と経ってないというのに。恐るべし、戦極凌馬。

 

「簡単に言えば、君のベルトはヘルヘイムと繋がっている。まぁ、こっちから干渉が出来ないみたいだけどね。つまり一方通行だ」

 

「じゃあ、ロックシードはヘルヘイムからそのベルトを通して俺達の世界に?」

 

「その通り、原理は不明。恐らく同じ物を作って効率よくロックシードを得る様な事も不可能。とはいえ、これは面白い。悪いけど、幾つかロックシードを貰っていいかな?」

 

「え?あぁ、それは構いませんけど」

 

 さて、何を渡したらいいのか。今のところ、使わないコイツ等にするか。

 

「ふむ、面白いね。それに重複している物もある」

 

 そういって、受け取ったロックシードを机に置いた後、ベルトを持ってくる。

 

「ロックシード関連以外は他のベルトと変わらなかった。だから、コレは君に返そう」

 

「今のだけで大丈夫なんですか?」

 

「個人的にはもっと調べたい。けど、君達には大事な仕事がある。そしてその仕事を完遂する為にはこのベルトが必要だろう?なら、コレは君達の手にあった方がいいんだ。なに、調べたいときは貴虎を呼ぶから心配しなくていいよ」

 

 言われ、俺は頷きつつベルトを受け取る。

 

「じゃあ、俺はこれで失礼します」

 

「あぁ、気を付けてね。護衛隊が君の事を毛嫌いしている話はこっちにも届いている。精々、後ろには気を付けるように。君みたいな人間を死なせるのは私達にとって大きな損失だ」

 

「……分かりました」

 

 楽しそうな笑顔と共に告げられた忠告に思わず頬が引き攣る。そのまま、俺は聖居を出て、凰蓮さんの店に戻る。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ただいま……って、レヴィ!?」

 

 時刻は既に夕方、営業時間を過ぎた【シャルモン】の扉を開いて、中に入ると。そこにはソファーで寝ているレヴィがいた。

 

「どうしたんだ?」

 

「あら、お帰り。レヴィは疲れたから寝てるだけよ」

 

「凰蓮さん?疲れたって、あのレヴィが?」

 

「えぇ、今日は負けられない戦いだったのよ。その為にレヴィには接客を任せっきりだったの。そっとしておいてくれない?」

 

「それは構いませんけど、後ろの人は?」

 

「あぁ、そうね。紹介がまだだったわね」

 

 そういって、凰蓮さんはこっちに背を向けている男性の肩を叩く。

 

「ほら、京水。昼間話していたコウタ君が帰って来たわよ」

 

 京水?その名前を聞いて、俺の背中に冷や汗が伝う。そしてその男性が振り向く。

 

「あら、イケメン!!」

 

 あぁ、作品が違うのにこの二人が並ぶと違和感が無いのは何故だろうな。

 

 

 

 

 

 

「リベンジですか?」

 

「そう、かつて私は完膚なきまでにカノジョ、凰蓮に負けたわ」

 

「あら?大袈裟ね。私は単に長くなった天狗の鼻を折っただけよ?」

 

 テーブルを挟んで俺の前には屈強な男性が二人、オネエ言葉で話している。そして俺の膝の上では寝息を立てている少女一人。凄い状況だな。

 

「それで、今日はレヴィが疲れるほど繁盛したんですか」

 

「えぇ、出血大サービス。九割引きで店を開いたのよ」

 

「赤字覚悟ですね。だとするならかなり入ったんじゃ」

 

「えぇ、驚いたわ。あそこまで人気があるなんて。私でも最初は驚いて固まってしまったもの」

 

 そういって、頬に手を当てる京水。

 

「それで、勝負の結果は?」

 

「ワテクシの勝ち。といっても、僅差だけど」

 

「僅差だろうと関係ないわ。私はまた負けた。けど、以前は届かなかったアナタの足下にまでは辿りつけた。次は負けないわ」

 

「ふふ、いい気迫じゃない。このままフリーにしておくのは勿体ないわね。どうかしら、京水。アナタさえ良ければウチで働かない?」

 

「私を……この【シャルモン】で……?いいの?」

 

「俺は別に構いませんよ。レヴィにとってもいい事だと思いますし」

 

 そういって、俺は指でレヴィの頬を撫でる。京水はレヴィを見て、頷く。

 

「そうね。小さな後輩に先輩として色々と教えるのも悪くないわね」

 

「あら、レヴィはワテクシの弟子よ。横取りなんて無粋ね」

 

「そんな事はしないわ。単に後輩が欲しいだけ。序でにか・れ・し・も♡」

 

 ウィンクされ、顔が引き攣る。

 

「ダメよ、京水。残念ながら彼はもう既にキープされてるわ」

 

「なんですって!?」

 

 野太い悲鳴が上がる。取り敢えず、俺は素早くレヴィを背負って自室へ逃げる。

 




この作品の保脇さんはとことん無能で行きます。まぁ、自分的にそのほうが書きやすいわけなんですけどww取り敢えず、戦極さんは原作同様マッドではありません。えぇ、ヘルヘイムに興味持っていますが、ガストレア優先です。ガストレアの問題が片付いた後は保障できませんがww後、ロックシードに独自の設定を盛り込ませました。考えてみたらステージⅣ辺りから魔人ブウ並の再生能力なためで、これくらいしないと、この後の展開で力不足になるのが目に見えているからです。では、次回もお楽しみに



次回の転生者の花道は……



「いいですか?お、女の人と二人乗りなんてダメですからね?」



「それはウチの店長のお陰かな。この店はさ、主に【呪われし子供たち】を養っている親子や保護者を対象に商売してる店なんだ」



「えんちゅ……?」
「え・ん・じゅ!!」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。