ブラック・ブレット 転生者の花道   作:キラン

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さぁ、先ずは前哨戦です。大ショッカーは尖兵。つまり、これ以降、戦力は強化、増加される事を念頭にご覧ください。取り敢えず、ムリゲー感を出しつつ仮面ライダーの活躍を書いてみましたが、上手く出来たか怪しいですww


第十一話 新たな敵 極秘会談

「仮面ライダー斬月、バロン、鎧武の戦闘を確認しました」

 

「よし、私達は彼らの戦闘データを計測しよう」

 

「おいおい、市民の避難はしなくていいのかよ?」

 

 プロフェッサーの言葉に将監さんがそう聞いた。私も同じ意見です。

 

「それは既に聖天子様から民警へと依頼されているよ。彼等もステージⅤ襲来から間が空いてないから直ぐに動いてくれている」

 

 そういって、プロフェッサーは視線を画面へと向ける。

 

「しかし、異世界からの侵略者とは恐れ入る」

 

「信じてんのか?」

 

「では、君は今の我々にあのような怪人を作り出す技術と人材、資金的余裕があると?」

 

「んなもん、分かる訳ねえだろ」

 

 吐き捨てるように告げる将監さんの言葉を背中に受けて、思わず苦笑してしまう。

 

「夏世君、君はどう思う?」

 

「俄かには信じられませんが、恐らくは真実でしょう」

 

 ガストレアの脅威に怯える私達にあのような存在を作り出せる余裕はない。だが、それでも異世界というのは突拍子が無さ過ぎる。

 

「とはいえ、私達がここで考えても仕方ない。彼等が頑張って情報を引き出せればいいのだが」

 

 そういって、プロフェッサーは視線を画面へと向ける。私達も同じように画面へと視線を向ければ敵の雑兵らしき者達は既に倒されており、残るは怪人だけだ。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「コイツでラスト!!」

 

 そう叫んで、最後の戦闘員を斬り伏せる。武器が増えたのもそうだが、どうやらフレッシュになったお陰で戦闘能力が上がっているようだ。やっぱり食い物は鮮度が重要って事だな。

 

「ほほう、やるな。だが、この俺は倒せるかな?」

 

「なぁに、蜘蛛とはこれで二度目だからな、楽勝だ」

 

 奇声を上げて、跳びかかる蜘蛛男を避ける。着地と同時に奴は跳躍を何度も繰り返し、俺を撹乱しつつ、爪で攻撃してくる。

 

「くぅ!?」

 

「ハハハ、口だけではないか!!」

 

そう告げる蜘蛛男の攻撃する瞬間を見切って大橙丸を振り下ろす。

 

「おら!!」

 

 ガラ空きの背中に斬りつける。鮮血が舞い、悲鳴が上がるが、即座に繰り出された回し蹴りをガードして後ろに下がる。ダメージは殆どない。どうやら攻撃力だけではなく、防御力も強化されているようだ。

 

「取り敢えず……余裕だな」

 

「舐めるな!!」

 

 叫び、口から糸を吐き出す。すかさず大橙丸で斬りつけるが、逆に糸が絡め取り、動きを封じられる。

 

「くくく、俺の糸はそんな鈍じゃ、斬れねえぜ?」

 

「本人は斬れるみたいだがな!!」

 

 糸に絡まった大橙丸を上へ放り投げる。糸によって繋がった奴の頭が上へ向くと同時に残った大橙丸を両手で握って、一歩目を踏み出し。

 

「っ!?身体が……!?」

 

「くくく、糸がこれだけだと思ったのか?」

 

 一歩目を踏み出した途端、身体が金縛りのように動かない。

 

「俺が無意味に動きまわっていたと思っていたか?糸を出す場所が口だけだと思うなよ!!」

 

 よく見れば、俺の周囲には太陽を反射してキラキラと輝く糸の軌跡が見える。どうやら四方八方に動きながら糸の結界を張っていたようだ。

 

「そうら!!」

 

「ぐぅあ!?」

 

 ギチ、という嫌な音と共に身体が糸によって縛られる。

 

「仮面ライダーは抹殺する!!」

 

 そんな叫びと共に身体が凄い勢いで横に流され、ショッピングモールの壁を突き破る。

 

「痛ってぇな」

 

「ほほう?頑丈だな。ならば、どれだけ保つか試してみるのも一興!!」

 

 その言葉と共に俺の身体がまた勢いよく浮かび上がる。これって、結構ピンチなのでは?

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「ハァッ!!」

 

 叫びと共にバナスピアーで突き刺すも僅かな火花と共に一撃が逸れる。

 

「キイエェー!!」

 

 体勢が崩れたその隙を狙った鋏の一撃が俺を捉える。

 

「くっ!?」

 

 蟹とコウモリを合体させたような、そんなふざけた姿だが、その力は本物だ。更に奴の急所は固い殻によって守られている。

 

「なら、コレだ!!」

 

【マンゴー!!】

 

 俺の頭上にマンゴーが現れる。同時に奴が跳び上がり、自身の体重すら無視した速度で飛翔。こちらに突っ込んでくる。

 

「ふん、舐めるな!!」

 

【ロック・オン!!】

 

 ファンファーレが鳴り響く中、俺は跳び、突撃してきた奴の背を足場に更に跳び上がる。同時に奴はバランスを崩して地面とぶつかる。

 

【カモンッ!!マンゴーアームズ!! Fight of Hammer!!】

 

 バナスピアーから持ちかえたマンゴパニッシャーを振り被り、同時にカッティングブレードに手を当てる。

 

【カモンッ!!マンゴースカッシュ!!!】

 

「喰らえぇ!!!」

 

 エネルギーを纏ったマンゴパニッシャーを奴の後頭部に叩きつける。直後、爆発を起こし、敵が粉々に砕ける。

 

「ふん、他愛もない」

 

「ほほう?ガニコウモルを容易く破るとは。どうやらこの世界の仮面ライダーは中々歯応えがありそうだ」

 

 背後から聞こえた声に俺は即座に振り向く。

 

【カモンッ!!マンゴーオーレ!!!】

 

「つあぁ!!!」

 

 叫びと共に声が聞こえた場所に向かってエネルギーを纏ったマンゴパニッシャーを投げる。爆発を起こす瓦礫の上。そこには無傷の軍人が立っていた。

 

「そして油断もせず、即座に全力の攻撃。ふふ、面白い奴だ」

 

「貴様に評価される気はない。お前達の目的はなんだ?」

 

【バナナ!!】

 

 黒い軍服を纏った男は俺の言葉に口端を持ち上げる。

 

「当然、我等【大ショッカー】の目的は支配!!全ての仮面ライダーを根絶やしにし、世界を掌握する事だ!!」

 

【ロック・オン!!】

 

「つまり、世界征服か。下らんな、貴様に似合いな場所へ行くがいい」

 

【カモンッ!!バナナアームズ!! Knight of Spear!!】

 

 姿を変え、槍を奴に向かって放つが、奴は姿を消す。

 

「なに!?」

 

『ふははは!!今日は単なる挨拶よ。我が名はブラック将軍。仮面ライダーバロンとやら、また何れ貴様の前に現れよう。その時を楽しみに待っているがいい』

 

 高笑いと共に奴の声が遠ざかる。気配が完全に感じられなくなった事で俺は息を吐く。今回は相性が良かった為に勝てたが次はどうなるか分からない。

 

「ふん、望む所だ」

 

 そう呟き。駆け付けた自衛隊と共に救助作業に当たる。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「シザァーズ!!!」

 

 奇声と共に繰り出された刃をメロンディフェンダーと無双セイバーで弾き、蹴り飛ばす。

 

「非難はまだ完了していないか」

 

 私の背後では未だ市民の悲鳴が上がり、助けを呼ぶ声が聞こえる。民警の助けもあり、スムーズに行くかと思ったが。

 

「赤眼が俺の娘に近づくな!!」

 

「コイツ等も一緒に殺してよ!!」

 

 背後から聞こえる声に歯噛みする。今はそんな事を言っている場合ではないのに。これでは埒が明かない。

 

「シザァーズ!!」

 

 奴が叫び、身を屈める。瞬間、今までとは段違いの速度で懐に入られる。

 

(コイツ!!様子見をしていたのか!?)

 

 驚き、対処が遅れる。瞬間、身体に奔る鋭い痛みと共に吹き飛ばされ、コンクリートに身を打ち付ける。近くにいる市民が悲鳴を上げる。

 

「直ぐに避難しろ!!」

 

「で、でも赤眼がすぐそこに……」

 

「彼等は味方だ!!君達を命懸けで助ける人間だ。詰まらん意地を張るな!!!」

 

 以前までの私では決して口に出来なかった言葉が自然と出た。

 

「カカカ!!人間とはやはり、詰まらん物だ!!たかが、己よりも優れているからといって即座に排斥するその醜さ。やはり、人間は残らず我等のように改造するべきだな」

 

 嘲るように告げる奴に私は立ち上がり、武器を構える。

 

「ほほう?後ろの人間どもが如何に醜いか、確認した上で俺とまだ戦うのか?」

 

「無論だ。元より、この力は牙無き者達を守る為にある。此処からは一歩も通さん!!」

 

「ふん、ならば試してやろう!!」

 

 叫びと共に奴が駆ける。だが、その動きは既に見切っている。

 

「なに!?」

 

「様子見していたのはお前だけでない!!」

 

 刃を受け止めたメロンディフェンダーをはね上げ、万歳の姿勢になった奴の身体を十字に切り裂き、蹴り飛ばす。

 

「ぐぁ!?」

 

【ロック・オフ!!】

 

 ベルトから外したロックシードを無双セイバーに装着する。

 

【ロック・オン!!イチ・ジュウ・ヒャク・セン・メロンチャージ!!】

 

 刃に緑色のエネルギーが溜まると同時に持ち手の部分、バレットスライドを引く。そしてメロンディフェンダーを放り投げると同時に無双セイバーにある銃口を奴へと向ける。奴は叫びをあげて襲いかかってくるが、遅い。

 

「これで終わりだ」

 

 告げると同時にトリガーを引けば、緑色のエネルギーが奴にぶつかり、巨大なメロンとなって奴を拘束する。

 

「ハァァ……!!!」

 

 無双セイバーを両手で構え、走る。同時に投げたメロンディフェンダーが宙を舞い、奴へと襲いかかる。

 

「デヤァッ!!!」

 

 叫びと共に奴を擦れ違いざまに切り裂く。同時に斜め上からやってきたメロンディフェンダーの突起部分が奴の胸の中心を貫き、私の左手に戻る。同時に背後で爆発が起きる。

 

「成る程。この世界の仮面ラーイダも侮れんという訳か」

 

 突然、後ろから掛けられた声に振り向けば。そこには蠍を模した兜を被り、盾と斧を持った男が立っていた。

 

「何者だ?」

 

「我が名はドクトルG。ハサミジャガーを倒した事は褒めてやろう。だが、ハサミジャガーは我が配下の中でも弱者!!仮面ラーイダ。貴様が何処まで足掻けるか楽しみだ」

 

 そう告げた瞬間、ドクトルGが消える。まるで手品のようだ。

 

「戦闘は避けられただけマシか」

 

 そう考え、私は救助活動を手伝う為に歩き出す。視線の先には救助した子供達を安心させるように笑いかけている光実がいた。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

【フレッシュ!!オレンジスカッシュ!!!】

 

「セイハー!!!」

 

 叫びと共に蝙蝠男を跳び蹴りで叩き落とし、下にいたサラセニアンを巻き込んで爆発する。

 

「シュシュシュッ!!!」

 

「うっさい!!!」

 

 背後から迫りくる蠍男を振り返りながら大橙丸と無双セイバーで切り裂いて蹴り飛ばす。蜘蛛男を倒して、落とした大橙丸を取りに行こうと思った矢先に何故か現れた怪人軍団。正直、疲れるのだが。コイツ等、個々の戦闘力が低い。つまりコイツ等は再生怪人。

 

「纏めて行くぞコラァ!!」

 

 投げやりに叫び、無双セイバーと大橙丸を合体させる。

 

【ロック・オフ】

 

「ギェギェッギェー!!」

 

「アァッアッアッアッ!!!」

 

「クワックワックワッ!!!」

 

「ウクククク」

 

 おわかり頂けだろうか?コイツ等、見事なまでに初期のショッカー怪人なのである。まぁ、蜂女にトカゲロン、ゲバコンドルが見当たらないが。前者二つは別にいいが、ゲバコンドルがいないのが有難い。アイツ確か旧一号と互角以上の力持ってる筈だったからな。

 

【ロック・オン!!イチ・ジュウ・ヒャク・セン・マン・フレッシュ!!オレンジチャージ!!!】

 

 音声と共に五体の怪人が襲いかかる。

 

「オラァッ!!!」

 

 その場で一回転。円を描く様に無双セイバーを振り、巨大なオレンジを作り出して怪人達を拘束する。回転を止めた俺は跳び上がり、地面の巨大なオレンジに向けて、足を伸ばす。同時に無双セイバーからロックシードをベルトに戻し、カッティングブレードを倒す。

 

【ソイヤッ!!フレッシュ!!オレンジオーレ!!!】

 

「セイハー!!!!」

 

 叫びと共に何時もより色が鮮やかなオレンジを突き進み、オレンジを蹴って爆発させる。

 

「ふぃ~、これで終わりか?」

 

「必殺シュートだ!!!」

 

 ですよね~。そう内心で愚痴りながら身体に衝撃が奔り、数メートル飛んで地面を転がる。凄く痛いです。

 

「油断大敵だな。仮面ライダー!!」

 

「やっぱり、伏兵がいたのかよ。勘弁してくれ」

 

 これで、更に追加とか泣ける自信があるぞ。

 

「くくく、苦戦しているようだな。仮面ライダー」

 

「今度こそ、詰んだか……?」

 

 視界の先、ショッピングモールの看板。その上に立つ人物を見て、俺は知らず呟いていた。

 

「再生怪人とはいえ、八体の怪人を倒したその力は素晴らしい物だ。だが、我等の計画遂行の為に散って貰うぞ」

 

「やなこった。ていうか、アンタ誰だよ?」

 

「我が名は地獄大使!!大ショッカーの幹部よ。さぁ、トカゲロン!!やるがいい」

 

「ウオォォォーッ!!!!」

 

 叫びと共に棘のボールを蹴る。避けるのは簡単だが、アレって確か爆弾だったよな。そして俺の後ろには逃げ遅れた市民。

 

「キャッチ!!!」

 

「なに!?」

 

 故に俺が取った行動は一つ。先ずは向かってきた爆弾を両手でキャッチ。京水さんの鞭によって鍛えられた俺の動体視力を舐めるなよ。

 

「&リリース!!!!」

 

 思いっきりブン投げる。だが相手も負けていない。返す様にシュートを決めて来る。しかし、それが狙いだ。

 

【ソイヤッ!!フレッシュ!!オレンジスパーキング!!!】

 

「うっしゃ、来~い!!」

 

 大橙丸を振り被る。片足を上げて、勢いを付ける。そして襲いかかる爆弾をエネルギーが溜まった大橙丸で打ち返す。甲高い音が響き、爆弾をオレンジのエネルギーが包み込んだ状態でトカゲロンの腹部に激突。大爆発を起こした。

 

「ホ~ムラ~ン、てか?」

 

「ふふふ、中々面白い男だ。今回はコレで退くとしよう」

 

「出来ればお前も今の内に倒しておきたいけどな」

 

 挑発の言葉と共に大橙丸を向けるが、地獄大使は口端を持ち上げる。

 

「そう焦るな。先ずはこの世界を調べ、そして手駒を増やした後、じっくりと相手してやろうぞ」

 

 そういって、奴が消える。

 

「あぁ、しんどい……」

 

 体中が痛い。そりゃ、怪人数体からの不意打ちや攻撃の中を立ち回って、その後、爆弾をモロに喰らったのだから当たり前か。

 

「お~い」

 

 声の方へ向けばそこには里見と延珠が走って来ていた。

 

「市民の救助を頼めるか?」

 

「あぁ、別にいいけど」

 

「葛葉は手伝わないのか?」

 

 その言葉に俺は変身を解く。すると、目の前の二人の顔が強張る。同時に視界がグラリと揺れた。あぁ、これは拙いわ。

 

「お、おい!?」

 

「悪い、後頼んだ」

 

 そのまま俺は倒れて意識を失う。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「さて、集まったようだな」

 

 とある場所。切れかけの電灯によって照らされた室内で我々は向かい合う。電球が点滅し、部屋が薄暗いが、元より我等にとってそんなもの瑣末に過ぎん。

 

「それにしても、杜撰な奴らよ。このような場所を放っておくとは。よほど、ガストレアが恐ろしいと見える」

 

 ゾル大佐が呆れたように告げる。ソレに対して、対面の死神博士が喉の奥で笑う。

 

「よいではないか、お陰で怪人製作が思ったより早く取り組める。このレールガンも我等の技術で修復すればよりよい侵略兵器になるだろう。施設の設備を上手く使えば量産プラントも問題ない」

 

「しかし、素材はどうするのだ?」

 

 ブラック将軍の言葉に私は鞭を振るう。地面を穿ち、部屋の片隅から悲鳴が上がった。

 

「今回の作戦は素材を回収する為の物だ。ソレに仮面ライダーと怪人共が戦ってくれていたお陰で戦闘員が役立った」

 

 部屋の隅では猛獣を入れる為の頑丈な檻の中に成人男性が五人ほど入っていた。

 

「ふむ、後はガストレアだったか……しかし、捕獲はしたがアレは扱いが難しいぞ?」

 

 モノリスと呼ばれる建造物の外で調査をしていたゾル大佐の言葉に死神博士が笑う。

 

「それこそ、腕の見せ所よ」

 

『頼もしいな、死神よ』

 

 瞬間、我等の頭上からあの方の声が響いた。我等は一斉に膝をつき、頭を垂れる。

 

『異世界の仮面ライダー。やはり、我が悲願を邪魔するは仮面ライダーだったか』

 

「はい、しかしこの世界の仮面ラーイダは我等が知る者たちよりも若く、未だ未熟と思われます」

 

 ドクトルGの言葉に内心で頷く。確かにあの鎧武という者は仮面ライダーを名乗る程の力を持っている。だが、その実力は未だ発展途上。アレならばかつての仮面ライダー一号よりも劣るだろう。

 

『だが、忘れるなドクトルよ。我等はその慢心で倒されたのだ。故に失敗は許されぬ』

 

「お任せ下さい、大首領。この死神、この世界で最強の怪人を作ってご覧にいれましょうぞ」

 

『その言葉、期待しているぞ。……地獄よ』

 

「はっ」

 

『貴様にはこの世界ではなく、外からのあ奴を任せる』

 

 その言葉に呼応して思い出すのは忌々しい男。

 

「ディケイド、ですな」

 

『そうだ。我等がこの世界に来たという事は遠からず奴もこの世界に来るだろう』

 

「仮面ラーイダディケイド。それほどの者なのか?」

 

「うむ。世界の破壊者という二つ名は伊達ではない」

 

 告げて、私は顔を上げる。頭上には巨大な一つ目が浮かんでいた。

 

「お任せを大首領。この地獄、見事にその任を全うしましょうぞ」

 

『では、後の事は任せる。この世界、必ずや我が手に献上せよ』

 

『ははぁ』

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 静かな病室の中、私の前にはベッドの上で規則正しい呼吸をしながらコウタさんが寝ている。その身体には包帯が巻かれ、不完全なミイラ男の様な外観だ。昼間の戦闘によって受けた怪我は街の破壊された光景からは軽く。全治一週間と医者は言っていた。その話を聞き、そして傷だらけのコウタさんを見た時、思わず悲鳴が出そうになった。

 

「コウタさん……」

 

 読んでいた本から視線をコウタさんの寝顔へ映す。菊之丞さんから受け取った本の内容が全く頭に入ってこない。きっと、この人の所為だと思う。

 

「コウタさんのバカ……」

 

 気付けばそんな言葉を呟いていた。そして言ってしまえば後は止められない。

 

「何時も笑って誤魔化して。それで隠しているつもりなんですか?私には全部お見通しなんですよ」

 

 ずっと、喉の奥で止まっていた言葉がどんどん溢れ出て来る。握った彼の手は何時もより冷たくて胸がチクリと痛む。

 

「アナタが昼間、どんな敵と戦ったのかは私も見ていました。アナタが転んだり、吹き飛ばされたりする度に私がどんな思いをしたのか、きっとアナタは気付いていないんでしょうね」

 

 傷ついて欲しくない。危険な目に遭って欲しくない。最初はお人好しな同年代の少年という印象だったというのに。何時の間にか、私の心を掴んでいるこの人がとても怖い。

 

「いなくならないで下さい……私を一人にしないで下さい」

 

 俯き、両手でコウタさんの手を握る。

 

「私、コウタさんが居なくなった後なんて、想像できないんです」

 

 だから、目を覚まして。そんな心の声に応えてくれたのだろうか。握った手がゆっくりと握り返された。

 

「……分かった。絶対に一人にさせない」

 

 薄く目を開けた彼はそう告げて、小さく笑った。

 

「本当ですか?」

 

「あぁ、絶対に破らない。だから笑ってくれると嬉しいんだけど」

 

「それは……心配させた罰です。甘んじて受けて下さい」

 

「参ったな……泣き顔は慣れてないんだけどな」

 

 苦笑した後、私達は小さく笑い合う。

 

「俺、どれくらい寝てた?」

 

「大体、五時間位でしょうか。全治一週間ですからね?」

 

「……了解。それと、アイツ等の事だけど」

 

 頷く。取り敢えずはこちらで纏めた情報を知らせよう。

 

「彼ら【大ショッカー】はテロリストとして扱う事にしました。異世界からの侵略などは誰も信じないでしょうし。一応【大ショッカー】の事を知っているのは私と菊之丞さん。そして実働部隊の皆さんだけです」

 

「そうか。他のエリアへの説明は?」

 

「情報が纏まり次第、先ずは大阪エリアの代表に映像通信で会談した後、各エリアの代表へ同じように連絡します」

 

「そうか……」

 

 そういって、視線を天井へと向けるコウタさん。

 

「彼ら【大ショッカー】はまた来ると思いますか?」

 

「来るだろうな。奴等、この世界を知る必要があるって言ってたからな。だから暫くは情報収集と俺達が倒した怪人の補充が主だろうな」

 

「それなら、此方も防備を固めた方が良いですね」

 

 そう告げてから内心で大きくため息を吐く。先日のステージⅤ襲来から漸く落ち着きを取り戻しつつあった東京エリアに新しい火種が舞い込んだ。しかも、その規模は下手すればガストレアと同等かそれ以上と見ていいだろう。

 

「勝てますか……?」

 

「勝つさ。絶対に守ってやる」

 

 そういって、しっかりと手を握り返してくれた彼に微笑む。

 

「コウタ~?」

 

 すると、入口の方で声が聞こえた。振り向けば入り口から心配そうに顔だけ覗かせたレヴィちゃんがおり、その後ろでは口に手を当てて驚いている凰蓮さんがいる。

 

「レヴィ。今は二人だけの時間よ。聖天子、頑張りなさい」

 

 サムズアップと笑顔を浮かべた凰蓮さんがレヴィちゃんを連れていく。思わず頬が熱くなる。

 

「二人だけの時間か。それじゃ、もう少し聖天子の手を触っていようかな」

 

「こ、コウタさん……」

 

 まさか追い打ちが来るとは思わなかった。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「昼間の騒ぎはテロだったんですか~」

 

「らしい、詳しい事は俺にも分からんがな」

 

 何故、俺はまたこの少女、ティナと会っているのか。そして何故彼女にドーナツを与えているのか。いや、ドーナツの件はコイツが腹を空かしているという事なので与えているだけか。

 

「戒斗さん?」

 

「なんでもない。俺の分も食うか?」

 

「是非!!」

 

 夕日が空をオレンジに照らす中、ティナの笑顔を見る。偶然だった。救出活動を終えた俺は隊長に報告を済ませた後、この場所まで歩いていた。そんな俺を見付けたティナはまるで仔犬のようにじゃれついてきた。仕方ないので、ドーナツを買い与えているが。

 

「本当にドーナツでいいのか?」

 

「はい、このドーナツ凄く美味しいんです。それに……」

 

 頬を染めて、俯いたティナは俺を上目づかいで見ながらはにかむ。

 

「戒斗さんが最初に買ってくれた物ですから」

 

「そうか」

 

 そんな物か。そう思って告げると何故か、ティナは拗ねてしまう。

 

「あまり、急いで食うな。喉に詰まるぞ?」

 

「は、はい」

 

 だが、拗ねていようとも根は素直らしい。俺の言葉にも素直に頷く辺りが証拠だ。

 

「あの、戒斗さん」

 

「なんだ?」

 

 プレーンシュガーを半分ほど食べたティナが俺を見て、聞いてくる。

 

「どうして、何も聞かないんですか?」

 

 素朴な疑問であり、確信がある疑問だ。恐らくティナは俺が自身を【呪われた子供たち】である事を知っていると思っているのだろう。事実、俺は知っている。そもそも、あんな夜道を子供が一人で歩く事自体が有り得ないのだ。確かに東京エリアは他のエリアよりも治安が良いだろう。だが、それでもマトモな親なら子供をこんな夜に出歩かせたりはしない。

 

「聞いてほしいのか?」

 

 だが、俺にとってはどうでもいい事だ。ただ、コイツとは偶然会って、このような関係を持っているだけだ。そこにティナの出生は関係ない。

 

「え?そ、それは……」

 

「聞かれたくない事を聞くほどデリカシー無いと思われていた訳か」

 

「ち、違います!!で、でもいいんですか?その、私悪い子かも知れませんよ?」

 

 その言葉に反射的に拳で彼女の額を軽く小突く。

 

「馬鹿も休み休み言え」

 

「うぅ~」

 

 ため息を吐いて、空を見る。オレンジ色の夕日がゆっくりと夜の色へと変わっていく。

 

「手を出せ」

 

「え?」

 

 疑問の声を上げながらもティナは右手を差し出す。俺は懐から取り出した小さな箱を乗せる。

 

「これは……?」

 

「開けてみろ」

 

 視線を空へと向けながら告げる。ティナは首を傾げながらも箱を開けて、息を呑む。

 

「髪飾り……ですか?」

 

「まぁ、なんだ。お前も女の子だからな。少しはお洒落した方がいいだろう」

 

 本当は昼間にザックが無理矢理押し付けて来た物だ。全く、アイツにはティナの事を黙っていた方が良かったか。

 

「あの……どうでしょうか?」

 

 その声に視線を向ければ、向日葵の髪飾りを付け、照れたように笑うティナ。

 

「あぁ、似合っている」

 

「ありがとうございます。その……誰かにプレゼントを貰うのって初めてなので……凄く嬉しいです」

 

「そうか……」

 

 輝かんばかりの笑顔に気恥しくなった俺は視線を外す。

 

「でも、どうしていきなり?」

 

「気紛れだ。それに」

 

「それに?」

 

「いや、何でもない」

 

 そういって、俺はベンチから立ち上がる。

 

「明日も暇だったらここに来るかもしれないな」

 

「……じゃあ、私待ってます」

 

 嬉しそうな声に俺は手を上げて答える。

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「いやしかし【大ショッカー】か。随分と面倒な相手が出て来たね」

 

「その割には深刻そうには見えませんけど?」

 

 【大ショッカー】の襲撃から今日で四日目の夜。地下研究所でプロフェッサーを横目で見た私は素直に感想を告げる。

 

「まぁね。彼らの技術力と兵力は確かに脅威だ。とはいえ、こちらには仮面ライダーがいるからある程度は大丈夫だろう」

 

「ある程度?」

 

 テーブルに足を乗せて、寛いでいる将監さんが問いを投げる。すると、プロフェッサーは徐に立ち上がる。

 

「そう、ある程度。彼らの会話を聞く限り、彼等は尖兵。つまり、彼らの本隊はまだこちらに来てはいない。異世界侵略という事はこの世界以外も進行している筈だ。正確な数は分からないが、相当な数だというのが推測できる」

 

 私と将監さんに近づいて来て、説明をしながら、元の場所まで戻ったプロフェッサーはパン、と手を叩いて将監さんを指さす。

 

「つまり!!彼等は無数の異世界を行き来できる技術力と攻略可能な兵士を持っている事となる」

 

「ハッ、随分と絶望的な戦力差だな」

 

「その通りだ。このままだと何れ此方が押し切られる。どう足掻いても彼らに対抗出来る仮面ライダーは現状三人だけ。まぁ、量産はしているので、それよりも増えるだろうが」

 

「新型ドライバーはどうなんですか?」

 

「そう、そこが問題だ。残念ながら新型ドライバーが難しくてね。一応、プロトタイプは完成したんだが、問題はテストする人間が居ないという事だ」

 

 私はその言葉を聞いて、迷わず将監さんを見る。すると、プロフェッサーは肩を竦める。

 

「実はこのドライバー。戦極ドライバーよりも高い性能を引き出す代わりに少々、無茶な設計をしてね。そこら辺の調整をしない限り、正規のテスターに装備させる訳にはいかないんだ」

 

「つまり、俺より先にモルモットが必要って訳か?」

 

「まぁ、その通りだ。それがまた問題でね。そんなモルモット役を引き受けてくれそうな人間がいないんだ」

 

 そう告げた時、扉が開いて呉島隊長が入ってきた。

 

「おや、貴虎。こんな夜更けにどうかしたのかい?」

 

「緊急の要件だ」

 

 その言葉と共に私達にも見えるように書類をテーブルに置く。

 

「大阪エリアの代表【斎武宗玄】と非公式に会合する事となった」

 

「菊之丞様がいない。更に先日の【大ショッカー】そしてネット上で広まった【仮面ライダー】の件だろうね」

 

 楽しそうに告げるプロフェッサーの言葉に私は頭痛がしてくる。先日の一件、何処かで野次馬が撮影していたのだろう。ネット上に呉島隊長さん達が変身する仮面ライダーが怪人達と戦っている動画が大量にアップされていた。

ネット上の物は仕方ない為、放置し、報道関係に圧力を掛けて、情報を拡散させないようにしたが、それでも水面下であらゆる憶測が飛び交っていた。私も一部の掲示板を覗いたが、何というか凄かった。

 

「しかし、ネット上の仮面ライダー人気は凄いじゃないか。ねぇ、正義の味方君」

 

「茶化すな」

 

 【正義の味方】【平和の使者】耳に良いお伽噺の存在と同一視する声や純粋に仮面ライダーのデザインの格好よさを述べる声、ガストレアを駆逐する新たな兵器。果ては【赤眼を滅ぼす戦士】逆に【人を滅ぼす悪魔】等と好き放題言われている。ネット上での言葉なので私にはどうする事も出来ませんが、それでもやっぱり嫌な気分になったりします。

 

(きっと、掲示板の人達は葛葉さんたちが人間だとも思っていないんでしょうね)

 

 小さくため息を吐く。

 

「それで?会談の日時は?」

 

「三日後だ。我々は聖天子様の護衛と斎武殿の要請で出動する事になる」

 

「まぁ、彼は軍の拡大を目指しているしね。無理もないか。葛葉君はどうする気だい?」

 

「無論、彼には辞退して貰おうと思ったが、断られたよ」

 

 何処か嬉しそうな口調と表情を見るに。恐らくは分かっていたのだろう。

 

「だが、彼も病み上がりだ。その為に彼には聖天子の護衛を民警と協力して行って貰う」

 

「ふむ、この前千番に上がった彼だね。しかし、そうすると例の護衛部隊が煩いんじゃないかい?」

 

「言うな……」

 

 疲れたような声に私は胸の内で合唱する。以前、彼らと擦れ違った際、露骨に舌打ちされたのを覚えている。その時、一緒に歩いていた将監さんが睨んであの人達を怖がらせた時はちょっと頼もしかったりしましたが。

 

「ふむ、襲撃の可能性は?」

 

「充分にあるだろうな」

 

「因みに元SPとして、護衛部隊がちゃんと犯人を捕まえられると思うかい?」

 

「……難しいな」

 

 ため息と共に呟く。不可能だ、と言わないのが呉島さんらしいです。

 

「アイツ等はプライドを優先する人間だ。一回目の襲撃は我々がいれば問題ないだろう。拙いのは二度目以降にアイツ等がこちらの邪魔をする事だ」

 

「あん?なんで、アイツ等がお前等の……あぁ、そういう事か」

 

 護衛部隊の事を鼻で笑った将監さんがソファーに深く沈みこむ。

 

「つまり、アイツ等。テメエ等が守れなかった責任をどっかの誰かが犯人、または犯人と繋がっているって事にして責任逃れしたい訳だ」

 

「あぁ、恐らくはその通りになるだろう」

 

「その人たち、バカなんですね」

 

「おいおい、そう言ってやるなよ。アイツ等にとって自分達の言葉が真実なんだからよ」

 

「そうなると、事前に彼等を何とかしないといけないね」

 

「だが、そんな時間はない」

 

 そういって、ため息を吐いた呉島さんの対面、プロフェッサーが嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

「貴虎。少し協力してくれないか?」

 

 嫌な予感がします。

 




投稿完了!!そしてショッカー、ゲルショッカー、デストロンの幹部登場!!取り敢えずはこの人たちが【当面の】敵になります。それと、ドクトルGの口調なのですが、役者さんが言うには仮面ライダーの伸ばしは歌舞伎を意識したものらしく、発音的には【仮面ラ~イダ】な感じだと思うのです。しかし、文章に起こすと何と言うか間抜けな感じが否めないんですよね。ですので、威圧感とか迫力とかを出す為に【仮面ラーイダ】にしたわけですが、読者の皆さん的にはどうでしょうね。そこらへん、意見がほしいです。
また、地獄大使が登場した場面。実は最初の時はもっと深刻な感じになっていたんですよね。どれくらい深刻かと言うとゲームの難易度的に地獄大使がハード。ベリーハードではデルザー軍団の鋼鉄参謀辺り、更にその先ではジンドグマ以降の幹部とか特にヤバイのばっかです。
まぁ、取り敢えずは栄光の七人ライダー辺りの幹部位しか出しませんが、それでもデルザーは……ま、まぁ、次回もお楽しみにww



次回の転生者の花道は……



「もし、君が自身の復讐を完遂した後。君はどう生きるんだい?」



「誰だって従うならムサイおっさんより綺麗なお嬢さんの方がいいだろ?」



「コウタさんは私の護衛なんですよ。それなのにあの人は自分の部下にだなんて……コウタさんもコウタさんです!!」



「その通り、この世界の覇者であるガストレア。その解析は既に終わっている」

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