アバン先生に2度目の弟子入りしてから一週間が経った。
スペシャルハードコースの内容は魔法使いの俺には厳しいものがあった。
それでも、ダイを救う為だったらと自分に言い聞かせ、ひたすらに研磨を積んでいった。
そして、一週間のスペシャルハードコースを乗り切った俺は、
先生から卒業証書であるアバンのしるしを無事受け取ることができた。
「ポップ。あなたの呪文の才能は、もう並の魔法使い、僧侶の域を超えています。
使い道を誤らないよう十分気を付けて、これからも研磨を続けてください」
最早、呪文の才能で先生を大きく超えていた俺は、
短時間のうちに様々な呪文を習得していた。
呪文の契約には職業や才能で違いがあるけれど、
俺は過去ほとんどの魔法使い、僧侶の呪文を極めた大魔導士。
契約のコツも全て掴んでいた分、先生から見ても驚異的なスピードで成長していた。
「はい、先生。短い間でしたがお世話になりました」
そう言って、俺は先生に直接かけてもらったアバンのしるしをそっと握りしめる。
スペシャルハードコースを卒業したのは、俺を含めて3人だと先生は言っていた。
恐らく、その2人はヒュンケルとマァムだろう。
前回の世界では、共にダイを支えた大切な仲間。
ヒュンケルに関しては、マァム関連で色々複雑な感情があったけど、
頼れる兄弟子として、最後まで俺たちと共に戦ってくれた。
ヒュンケルの方は、恐らくもう魔王軍に拾われて順調に軍団長への道を進んでいるはずだ。
本当はそうなる前にどうにか先生への誤解を解いてやりたいけど、
そうしてしまうと、ダイの成長の場が減ってしまう。
それに、既に俺自身が前回と違う行動を起こしてしまっている以上、
あまり他の件で前回との差異を増やし、不確定な事象を引き起こすわけにはいかない。
卒業認定を受け、先生と別れた俺は一度ランカークスへ戻った。
既にルーラ、トベルーラの契約は終わり、習得済みだったから移動は楽だった。
一週間ぶりの我が家で、両親に修行中の出来事を語り、家族の団欒の時を過ごした。
その後、自分の部屋でベッドに寝転がり、今後の事について考える。
「先生がダイの元に行くまで、まだあと4年近くあるんだよなぁ・・・・・・」
先生の元で修行していた時、表向きでは中級呪文までしか契約していなかった。
けれど、裏で先生に隠れてこっそり上級呪文、極大呪文までは契約してある。
今の所、使えるのは相性のいいメラ系、ヒャド系の上級呪文だけだけど、
レベルが上がればベギラゴンやイオナズンも使えるようになるだろう。
だけど、はっきり言って手持ちのカードが極大呪文だけじゃ不安が残る。
俺の頭の中では既にある案が浮かび上がっていた。
「やっぱり、多少無理してでも前倒しした方がいいよなぁ・・・・・・」
前回、俺が最後まで生き残れるだけの力を付けることができた。
ある意味、アバン先生以上に世話になった俺の師匠。
大魔導士マトリフへの弟子入りだ。
彼の作ったオリジナル呪文、『ベタン』、『メドローア』は、
後に戦うバラン引き入る超竜軍団や、ハドラー親衛隊を相手にする時に役に立つ。
特にメドローアの方は、俺の手持ちの札の中でも最上級の切り札になる。
流石にホイホイと使うわけにはいかないが、早めに覚えておくに越したことはない。
今の時期、もう師匠はパプニカの相談役を辞めて、
バルジ島付近の孤島で隠遁生活をしているはずだ。
ついでにパプニカの情勢も確かめられるし、メリットは大きい。
「よし、やっぱり一度師匠に会いに行ってこよう」
そうと決めたら善は急げだ。
俺は両親を説得する為に部屋を出た。
「親父、母さん。実は・・・・・・」
この後、トンボ帰りでまた旅に出ると言った俺に、
両親から小言と拳骨が飛んできたのは言うまでもなかった。
ポップは、一応スペシャルハードコースを終えているので、
アバン流の基礎中の基礎だけは教わっています。
ただ、自分が非力な魔法使いだというのは十分承知している為、
近接系の武器は使う予定がないです。
となると、使う武器が杖以外では限られてきますが……その辺は追々書いていきます。