鎮守府の片隅で   作:ariel

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ようやく、自分にとって重巡洋艦の中では一番お気に入りの利根を登場させる事が出来ました。料理…迷ったのですが、今回は松茸の土瓶蒸しです。いつもは私自身が普段居酒屋で食べられるリーズナブルな料理を中心に書いているのですが、たまには高級食材も食べたい…ではなく書いてみたい…という事で、今回のネタにしました。


第ニ六話 利根と松茸の土瓶蒸し

「鳳翔…鳳翔…我輩、ちと頼みがあるのじゃ。」

 

どうしたのでしょう。時間は正午頃、おそらく昼休みだと思うのですが、利根さんが私のお店にやってきました。勿論、開店までまだ時間がありますし、下準備も終わっていませんので、何か食べさせてくれ…と言われても、何もお出しできません。利根さんは、入り口で周りをキョロキョロしてから店に入ってきましたので、誰かに私のお店に来た事を気付かれたくないようですね。それに…物凄く大事そうに桐箱を抱えているのも気になります。とりあえず用件を聞いてみましょうか。

 

「利根さん、どうしたのですか?こんな早い時間から…。」

 

私が利根さんに問いかけますと、利根さんは黙って桐箱を私に差し出しました。中を見ろという事でしょうか?とりあえず開けて…まぁ!利根さんが大事そうに抱え込んできた桐箱の中には、それは見事な松茸が何本も入っています。こんな高価な物を…一体どうやって…まさか!?

 

「利根さん、この松茸はどうしたのですか?まさか…黙って山から持ってきた…なんて事はないでしょうね?」

 

「…し…失敬な…。この松茸は、我輩が購入してきたものじゃ!」

 

流石に利根さんでも、山から無断で持ってきたという事はなかったようですね。しかし、これを購入してきたと言われても、『はい、そうですか』とは、到底納得出来ません。どう考えても、利根さんが持ってきた松茸は、利根さんのお給金で購入するには、あまりにも高すぎる物ですから。

 

「そうですか、購入してきたのでしたら良いのですが…。しかし、どうやってこんな高価な物を…。よく余裕がありましたね。」

 

「フム…これはじゃな…鳳翔。我輩の正当な労働の対価として得たお金で購入した物だから…安心せい。」

 

…正当な労働の対価?利根さんには申し訳ないのですが、全く信用出来ません。いくらなんでも、このような高価な物を購入出来るほどのお金を労働で得たと言われましても…。利根さんも、私が不審そうな顔をしている事に気付いたのでしょうか。声を潜めて私に事情を話してくれました。

 

「仕方ないのぉ。鳳翔には事情を話すが、筑摩の奴には内緒だぞ。これはだな、先日から筑摩の奴が、長期任務で鎮守府を留守にしているから、鬼の居ぬ間に…ではないが、我輩が航空巡洋艦仲間の三隈達と麻雀をやって、勝った金で購入した物なのじゃ。我輩、あの時の麻雀は絶好調でのぉ。その…なんと言うか、いんすぴれーしょんが働いて、大勝したのじゃ。だから我輩、対戦相手の三隈に熊野、それと鈴谷の身包み剥いで、尻の毛まで毟り取ってやったぞ。」

 

…。全く…筑摩さんが居ない事を良い事に、碌でもない事をしたものです…。最近、三隈さんを始め鈴谷さん達が私のお店に全く来ていない理由、そしてそれと入れ替わるように、利根さんが贅沢な注文をここ数日連発していた理由がようやく分かりました。あれだけ贅沢をして、なおかつこれだけの松茸を購入した訳ですから…三隈さん達は一体どれだけ利根さんに毟り取られたのでしょうか…。そして利根さんから続けて事情を聞いていますと、更に碌でもない理由が判明しました。

 

なんでも、今日の夜遅くに筑摩さんが長期任務から鎮守府に戻ってくるようですが、筑摩さんに今回の出来事がばれない様に、麻雀で勝って三隈さん達から毟り取ったお金の残りを全て松茸に変え、食べてしまう事で証拠隠滅を図ろうとしているようです。…これは、ちょっと見逃せませんね…。

 

「鳳翔…言いたい事は分かるぞ。しかしのぉ、一応正当な賭け…つまり吾輩の労働の正当な対価という事であるし、負けた三隈達も納得済みだぞ?それと…口止め料という訳ではないが、もしこの松茸で今日料理を作ってくれるのなら、この中の一本は鳳翔に献上しても良いと思っておるぞ。その…なんだ…家に持って帰って、提督に食べさせれば、提督も喜ぶと思うが…どうじゃ?」

 

…それを言われると、とても弱いです。たしかに利根さんが持ってきた松茸は、間違いなく国産の高級品。これ一本でも晩酌のお供にお出しすれば、間違いなくあの人は大喜びするでしょう。…止めなければいけないと思いますが、私も流石にぐらつきます。

 

「えぇ~い、鳳翔も面倒だのぉ~。分かった、提督と鳳翔の二人分という事で、二本じゃ。」

 

…仕方ありません。ここは悪魔に魂を売って利根さんの要求を呑みましょう。流石にこれだけの松茸が二本も手に入るのですから…。ごめんなさい三隈さん達…鳳翔は悪い女です…。そして私が承諾した事を受けて、意気揚々と利根さんは鎮守府に戻っていきました。

 

 

その日、お店が開店してからしばらくすると、利根さんが一人で入店し、カウンターの片隅に陣取りました。そして何事もない雰囲気で普通にお酒や料理の注文をしています。いつもでしたら、周りの他の艦娘と会話を楽しむ賑やかな利根さんですが、今日は極力目立ちたくない…という事でしょうか。もっとも、いつも賑やかな利根さんが静かに片隅で飲んでいますから、他の艦娘達も心配しているようで、逆に目立っているような気もするのですが…。

 

「鳳翔、そろそろアレを頼むぞ。鳳翔にもちゃんと分け前を渡すのじゃから、しっかり頼むぞ。」

 

…どうも利根さんに良いように使われている気がしないでもないですが、今回ばかりは致し方ありません。早速頼まれた料理の方を作りましょうか。渡された松茸は、かなりの量がありますから、焼き松茸と土瓶蒸しを今回は作る予定です。焼き松茸の方は、汚れを丁寧に水を染み込ませた布で拭き取ったら、後は金気を避けるために包丁ではなく、手で裂いて焼けばOKですから、直ぐに作れますね。

 

問題は土瓶蒸しの方です。こちらはシンプルな味の料理であるだけに、誤魔化しが効きませんから、丁寧に料理をしなくてはいけません。幸いな事に昼頃に利根さんが来て、料理の依頼をしましたから、その日の内に追加の注文を行うことが出来たため、材料は全て揃っています。まずは…一番出汁をとらなくてはいけませんね。そして今回だけは、出汁作りもいつも以上に慎重に行わなくてはいけません。

 

既に水の中に昆布を入れてしばらく寝かしてあります。これを火にかけて…沸騰させないギリギリの状態になったら、昆布を抜き取ります。後は…鰹節を入れたら直ぐに火を消します。ここからはスピード勝負ですね。出汁をよりクリアーな味にするために、丁寧にアクを取ってから30秒程放置して…布巾を敷いたザルで、出来上がった出汁をこします。いつもはここまで丁寧に出汁を作っていませんが、流石に今回はいつも以上に素晴らしく綺麗な出汁が出来ました。鰹節の量も違いますし、昆布も水の中で寝かしてから火を入れていますので、香りそして旨みも段違いの一番出汁です。

 

さて、次に松茸の準備ですね。これも焼き松茸と同じように丁寧に汚れを落として…少し薄くなるように縦に裂いていきます。少し松茸が多めのような気もしますが、香りは素晴らしい物になるでしょう。次に松茸とは少し違う香りを楽しむための三つ葉ですね。これは軽く湯通しして…冷水に通しておきます。今回、土瓶蒸し用に私が準備した材料は、車海老と銀杏。本当でしたら、これに淡白な白身魚を入れても良いのですが、今回は松茸の量が多いので、白身魚を入れてしまいますと具が多くなりすぎてしまいます。ですから、今回の具材は車海老と銀杏だけですが…十分美味しい土瓶蒸しになるでしょうね。それでは、車海老の殻を取除いて…背綿も取除いたら、これも湯通しして身を引き締めるために水に通します。赤と白の綺麗な海老の身が確認できたら、これで具の準備は完了です。

 

次は土瓶蒸しの命でもある出汁に味をつけましょう。醤油に日本酒…今回は余計な甘みは必要ありませんので、味醂や砂糖は使いません。ですから、塩を使って最後の微妙な塩加減の調整を行います。…味の方はどうでしょうか。えぇ…素晴らしいですね。流石は一番出汁です。余計な雑味が全くないクリアーな味ながら旨味が凝縮された素晴らしい汁が出来上がりました。具がなくても、この汁だけでも美味しく食べられてしまいますから、これに松茸などの具が入れば、素晴らしい料理になる事は間違いありません。

 

いよいよ仕上げですね。湯通しした車海老と銀杏を綺麗に見えるように土瓶の中に配置します。そしてここに、先ほど味付けをした出汁を加えて沸騰しないように細心の注意を払って火を通します。海老からは少しだけアクが出てきますが、これだけクリアーな味の料理ですから、丁寧にアクを取除いていかなくてはいけません。…大体、火は通ったでしょうか。それではついに松茸の登場ですね。この中に松茸を入れて、土瓶の蓋を閉めたら、弱火で松茸に軽く火が通るように2分程煮込みます。これで大丈夫ですね。

 

最後に湯通しした三つ葉を入れて…スダチを添えて…完成しました。土瓶の蓋は閉まっていますから、松茸の香りはまだ土瓶の中に閉じ込められており、カウンター席の他の艦娘達も松茸の土瓶蒸しが利根さんの手元に渡された事に気付いていないようです。土瓶の蓋を開けたら直にバレると思いますが、一応利根さんに気を使って、小声で伝えましょう。

 

「利根さん…リクエストの松茸料理です。他の松茸は、しばらくしたら焼きますので…まずはこの料理を食べていてください。」

 

 

 

重巡洋艦 利根

 

 

ウム、松茸の土瓶蒸しじゃな。これは我輩の大好物であるぞ。流石は鳳翔じゃ。さて…どこから食べるべきか、我輩も迷うのぉ。…うん、そうじゃ。やはりまずは汁からじゃな。土瓶蒸しの蓋はまだ開けずに…おちょこに慎重に、土瓶から汁だけを入れて…ここにスダチを絞って…フム…早速いただくかのぉ。

 

…ほぉ…良い香りじゃな。汁に移ったうっすらとした松茸の香り…落ち着くのぉ。味の方も…フム…いいのぉ。出汁の濃厚な旨味に、スダチの酸味、そして非常にクリアーな塩味…これこそ極楽じゃ。味自体は薄味なのじゃが…旨味が凝縮しておる感じだのぉ。それに鼻から入ってくる、ほんのりとした松茸の香り…本当に幸せじゃな。これは三隈達に感謝しなくてはならん。

 

さて…我輩、もう我慢の限界だな。松茸を食べなければ、始まらんぞ。土瓶の蓋を開けて…おぉぉ、土瓶に閉じ込められていた松茸の匂いが一気に広がったぞ。…中は…松茸がたくさん入っておる。それに綺麗な赤と白の海老の身に…これは銀杏じゃな。それに緑の三つ葉の色合いも良いのぉ。…しかし、やはりまずは松茸からじゃ。これまで我慢した甲斐があったというものじゃな。

 

うむ…これぞ秋の味覚の王様じゃ。シャキシャキした歯ごたえに、噛む度に口に広がる松茸の香り…もうこれは何も言う事はないのぉ。この香りと出汁の旨味が合わされば…我輩、箸が止まらんのじゃ!美味是唯淡…いや、これは松茸自体には手を加えておらんと思うが、汁や他の具には物凄く手を加えておるから、少し違うかのぉ。しかしこの香りは…やはり松茸の素材が良いからに違いないぞ。

 

えぇ~い、お前達邪魔なのじゃ。これは我輩の土瓶蒸しだぞ。気付いたら、我輩の周りに巡洋艦はおろか、戦艦や空母娘共まで集まって、我輩の土瓶蒸しを見ておる。特にそこの一航戦、目が怖いぞ。あ…あまり我輩にプレッシャーをかけていると、我輩もうお前達を守ってやらぬし、索敵もしないぞ!?

 

「…姉さん…とっても、美味しそうですね。私が留守の間に、散々好き勝手やっていたようですが…、これはどういう事ですか?」

 

な…なぬ!?な…何故、筑摩の奴がここに居るのじゃ。まだ、帰還予定時刻ではないと思ったのじゃが…まずいぞ…。

 

 

 

鳳翔

 

 

…土瓶蒸しの蓋を開けた瞬間、松茸の素晴らしい香りが利根さんを中心に広がりました。そのためその香りで、利根さんが松茸を食べている事が、周りの艦娘達にあっという間にばれたようですね。そしてその良い香りに誘われて、利根さんの周りに多くの艦娘が集まっています。利根さんも流石に回りの異常に気付いたようですが…赤城さんと加賀さんが凄い視線を利根さんに向けていますね…。しかし赤城さん…あなたは一応店側の人間なのですから、本来であればそれを止める役割なのですよ?分かっていますか?…それに…。

 

利根さんの妹の筑摩さんが、三隈さんに熊野さん、そして鈴谷さんを連れて来店です。…これは一波乱ありそうですね…。おそらくあの調子では、筑摩さんは三隈さん達から事情を聞いているようですし…。まぁ、利根さんの自業自得という話もありますが、どうやって切り抜けるつもりなのでしょうか。

 

「ち…筑摩か?は…早かったのぉ。それで任務の方は無事に終わったのか?」

 

「はい、利根姉さん。おかげで鎮守府には予定よりもだいぶ早く戻ってくる事が出来ました。利根姉さん?三隈さん達から話は聞きましたよ。また賭け事をやったのですか?姉さんは他の艦娘達よりも運が良いのですから、やるなとは言いませんけど、ちゃんと配慮してあげないと駄目じゃないですか。ですから、その松茸は皆で仲良く食べませんか?」

 

流石は筑摩さんですね。おそらくここで強く利根さんを叱っても、絶対に利根さんは反発するでしょうから、上手に嗜めていますね。利根さんも、妹の筑摩さんからこのように言われてしまっては、少し居心地が悪いようですね。ですが、あの利根さんが大人しく松茸を渡すでしょうか…。

 

「そ…そうじゃな。流石に我輩も今回は、少しだけ反省しておる。す…少しだけだぞ?元はと言えば、三隈達から誘ってきたのじゃからな。だ…だから、その賭けで勝ったお金で購入した松茸は、わ…我輩が全部食べるのじゃ。こ…これだけは、筑摩と言えども譲らんぞ。」

 

どうやら三隈さん達から誘ったのは本当のようですね…。利根さんの言葉に、三隈さん達が目を背けましたから、たぶん間違いないでしょう。それにしても…利根さんの食い意地には脱帽です。この状態になっても、まだ松茸を独り占めすると言っているのですから。しかし、こうなったら利根さんはテコでも動かないでしょうね…筑摩さんどうするつもりなのでしょうか。

 

「鳳翔さん、今日はシメジありますか?もしあるのでしたら、それで何か料理を作ってもらえないでしょうか。三隈さん達も一緒に食べましょうよ。お代の方は問題ないので…一緒に食べませんか。」

 

なるほど…そういう作戦ですか。たしかに、この作戦ならば食い意地のはった利根さんが引っかかる可能性は高そうですね。それでは…そうですね、シメジの他にエリンギもありますから、時間もありませんし、簡単にマリネにしましょう。

 

「むぅ…ほ…鳳翔、そろそろアレだ、我輩に松茸を焼いてくれ。」

 

利根さんも対抗して、焼き松茸ですか。これは意地でも自分で全部食べるつもりですね。利根さんの周りでは、主に一航戦の二人が『焼き松茸…素敵な響きです。』『これは気分が高揚します』なんて言っていますが、おそらく利根さんは、貴方達に一つたりとも渡さないと思いますよ…。

 

 

「筑摩さん、シメジとエリンギのマリネを作りました。どうぞお上がりください。利根さん、焼き松茸です。醤油をお好みで垂らして食べてください。」

 

 

 

重巡洋艦  利根

 

 

ムハー。いよいよ来たのじゃ。我輩のもっとも愛する焼き松茸じゃな。これは醤油を少しだけ垂らして、醤油の焦げる香りと松茸の香りのハーモニーを楽しむ事が出来る完璧な料理なのじゃ。筑摩の奴が、我輩から松茸を取り上げようとしておったが、我輩これだけは譲れんぞ!早速いただくのじゃ。…おぉ、これは素晴らしいのぉ、先程の土瓶蒸しも良かったが、やはり焼き松茸の香りは最高じゃな!筑摩の奴もくやしかろう…。ん?

 

「あ~、シメジのマリネ本当に美味しいですね~。香り松茸、味シメジと言いますが、やはりこのシメジは最高です。それにこのキュッとしたシメジの歯ごたえ、そしてシャキッとしたエリンギの歯ごたえ…本当に素晴らしいですね~。」

 

なぬ!?香り松茸、味シメジだと?という事は、筑摩の奴が食べているシメジは、我輩の松茸よりも旨いという事か?気になるのじゃ!

 

「ち…筑摩、我輩もその料理、少し食べてみたいぞ。ひ…一口食べさせるのじゃ!」

 

「駄目ですよ、利根姉さん。姉さんは、もう美味しそうな料理を一人で食べているではないですか…。ですから、この料理はあげません。あぁ、本当にこのシメジとエリンギのマリネ、美味しいですね…。筑摩も任務帰りの疲れがあっという間に吹き飛びました。」

 

くそ…筑摩の奴め…そんなに美味しい料理を我輩に渡さないつもりか。しかし、このままでは我輩、美味しい料理を食べ逃がす事になりかねんぞ。どうすれば良いのじゃ…。焼き松茸は美味しいのだが、何故か知らんが筑摩が食べている料理の方が美味しく感じてきたぞ!?…えぇ~い、背に腹は変えられん…美味しい料理を逃すなど、我輩にあってはならん事じゃからな…仕方がない。

 

「ち…筑摩。その料理…我輩の焼き松茸と少し交換せぬか?我輩も、それが食べたいぞ!」

 

「駄目です、姉さん。先ほど私が姉さんに言ったように、三隈さん達にもちゃんと分けてあげてください。そうしたら、この料理分けてあげますよ。折角そんなに美味しそうな焼き松茸があるのですから、皆で食べましょうよ。その方がきっと美味しいですよ。」

 

えぇ~い…面白くないのぉ。何故か知らんが、結局筑摩の言いなりになってしまうではないか。しかし…筑摩が食べている料理は絶対に食べたいのじゃ。…ウヌヌヌ…我輩どうすれば…し…仕方ない…筑摩の言うとおりにするぞ…。

 

「し…仕方ないのぉ。三隈達にも焼き松茸を分けてやるから、さ、さ、早くその料理を我輩に渡すのじゃ!」

 

 

 

鳳翔

 

 

どうやら、解決したようですね。筑摩さんは嬉しそうですし、三隈さん達も嬉しそうです。そして、利根さんも何か吹っ切れた感じで楽しそうに三隈さん達と話し始めましたね。…いくら賭けで勝ったとはいえ、元々は三隈さん達のお金で購入した松茸です。皆で仲良く食べた方が良いと思いますよ。もう少し松茸に余裕もありますから、筑摩さん達にも土瓶蒸しを作ってあげましょうか。

 

…こら、赤城さんに加賀さん、あなた達の分はありませんよ。折角、利根さん達が仲直りしたのですから、これ以上ややこしくしないでください。貴方達にも、その内松茸を食べさせてあげますから、今日は我慢するのです。…もっとも、私は期せずして松茸が二本も手に入りましたから、今日は帰宅したらあの人と一緒に松茸を肴に一杯やりたいですね。今日も鎮守府は平和…。

 

「利根姉さん…今日の私達の勘定はよろしくお願いしますね。これまで散々、三隈さん達のお金で贅沢したらしいですから、余裕ありますよね?」

 

「な…我輩、賭けで勝った分は、もう全部使い切っておるぞ!」

 

「姉さん…あまりウジャウジャ言っていますと、今回の任務の報酬で提督から貰った間宮さんの所のおやつ券、あげませんよ?…そろそろ、姉さんの好きなぜんざいが、間宮さんの所に並ぶと思いますが…残念ですねぇ。」

 

「ぜ…ぜんざいだと!?…し…仕方ないのぉ。…わ…我輩が全部払ってやるわ。だ…だから筑摩よ、おやつ券の件は…。」

 

「流石は利根姉さん、感謝します。」

 

その言葉を聞いた筑摩さん達四人は、急に追加注文を始めました。利根さん…筑摩さんが居ない事を良い事に、これまで贅沢してきたツケを全て払う事になりそうですね。…ご愁傷様です。




利根を贔屓しすぎですか?…いえ、気のせいですよ…たぶんw。以前、あとがきで書いていたと思いますが、ようやく自分の好きな艦娘を登場させる事が出来ました。ですから、料理の方も松茸の土瓶蒸しと大奮発ですw。松茸…高いですから、一年に一回か二回しか食べる事は出来ませんが、土瓶蒸しが一番好きですね…。勿論、松茸御飯なども好きなのですが、汁やその他の具とのコンビネーションとなると、やはり土瓶蒸しに軍配が上がる気がします。

香り松茸、味シメジ…これも確かにそうだな…と思います。歯応えはお互いに互角(好みがあると思いますが)、香りは松茸に軍配が上がり、味という点ではシメジかな…と思いますので、何も値段が高い物だけが美味しいという訳ではないという所が面白いですよね。ちなみに筑摩が利根に対抗して鳳翔さんに作ってもらった、シメジとエリンギのマリネ、これ絶品ですw。

さて、今回のお話で誰が一番得をしたのか…となると…


                               
ギャンブラー利根  勝利ポイント  人の金で松茸を購入し、贅沢をする事に一部成功
          敗北ポイント  筑摩の罠にかかり松茸の大多数を失う
                  今回の支払いで、お小遣いが消える
          判定:戦術的敗北 C

悪女 鳳翔     勝利ポイント  二本の松茸を得る事に成功
                  今日のお店は大繁盛
          敗北ポイント  一航戦が松茸の香りを嗅いでしまった
          判定:勝利 A (将来的には敗北Eになる可能性あり)

統制者 筑摩    勝利ポイント  仲裁により三隈達からの信頼を得る
                  松茸を食べる事に成功
          敗北ポイント  特になし
          判定:完全勝利S 

被害者ABC     勝利ポイント  結果的に松茸にはありつける
(三隈・熊野・鈴谷) 敗北ポイント  利根に有り金を全て毟り取られる
                  筑摩に大きな借りが出来る
          判定:敗北 D    

どうみても、一番得をしたのが筑摩で、次点が鳳翔さん(現時点)なんですよね…。もっともその後の展開によっては、鳳翔さんには、レイテ級の戦略的大敗北の可能性もあるわけですがw

今回も読んでいただきありがとうございました。



松茸の土瓶蒸し(一人前)

松茸  :1本(多くてもよし)
車海老 :1尾
銀杏 :2個くらい
三つ葉 :ちょっと香り付けに
白身魚があった方がいいけど、無しでも問題なし
スダチ :半分

一番出汁 :200mLくらいかな…
醤油   :小さじ1で十分だと思う
塩    :適量
日本酒  :ちょっと

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